魔王の馬鹿息子(五歳)が魔法学校に入るそうです

何てかこうか?

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皇帝生誕九十年祭

第二十八話 クラウディアの実家

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「そうですか、残念です」
「まあ、あきらめろ。俺にも母の拘束を解くのは不可能だ」

 目の前の校長はがっくりと肩を落としている。
 パーティの後、一日遊んで、学校に来た。
 校長も実状はジブリルを通して知っていたようだが、俺が魔法を使えないと直接言うまで信じていないようだった。
 シュンカほどの魔法狂いでも母の拘束は解けない。
 口惜しそうに見つめているが手が出せないのはわかったようだ。

「あぁ、せっかくの魔法研究のチャンスだったのに……う~ん、せっかくですからカテイナ君を実験台にして……」
「おれを目の前にして、堂々と実験台といいきったな。いや、純粋にすげぇ。もちろん抵抗させてもらうが、お前はまだ研究するつもりか」
「ええ、特に今年は皇帝陛下の生誕九十周年ですからね。華々しい研究成果を添えたいというのは私の本音です」
「そういえばジブリルもなんか作っていたな」

 昨日、ジブリルが大使館で何か作っていたのを思い出した。あいつの作るものだ。欲しくないと言えばうそになる。

「それはいつだ?」
「一か月後ですよ。各国の贈り物には検疫があるから二週間前には集まり始めますがね。研究成果なら当日とか前日にセンセーショナルに発表することも可能です。皇帝陛下に最高の魔法研究を献上し、最高位の叙勲を得る。研究者冥利に尽きると言うものです」
「そんなものか?」
「そういう物です」

 こいつは何を夢見ているのか、頬を赤らめている……まあ名誉が大事っていうのはわかる。だが、俺がこいつの名誉のために犠牲になるのは考えられない。

「まあ、俺は俺で勝手にやらせてもらう。好きに授業にでるからな」
「それは構いません。私は魔力結晶の研究を進めますよ」
「ほほう? できたのか?」
「ま、爪の先ぐらいですがね。あなたのおかげです」

 俺は肩をすくめて、どうでもいい。ということを示す。ま、校長にも確認したし、後はクラウディアに会いに行こう。
 「じゃあな」一言挨拶して俺は校長室をでようとする。
 
「そういえば、クラウディアさんですが」
「どうかしたのか?」
「今、休学中で実家に戻られていますよ」
「! ……そ、そうか。どこだ? そこは?」

 本来なら個人情報ですがと前置きしながらも校長がクラウディアの家を教えてくれた。
 俺は校長の書いた住所と地図を手にして学校から出る。
 地図上でクラウディアの家は結構離れている。こりゃ皇都の外だ。ジブリルにでも送ってもらおう。走って行ってもいいが汗だくになる気がする。
 行先を大使館に変更して、街並みを見ながら進む。
 全く、いろいろなものがある。前のドラフト何て都市よりもっと多くの店が、数限りない商品が並んでいる。
 ま、冒険はクラウディアを連れての方がいいな。そう決めて大使館まで歩いた。
 入口でジブリルの名を呼んで呼び出す。

「この家まで俺を乗せて飛べるか?」

 地図を広げながらジブリルに確認する。

「はい、これくらいなら私でも大丈夫です。クラウディアさんに会いに行くのですね? お菓子を持っていきましょう。カテイナ様も何かお土産を用意されますか?」
「俺が行くだけで十分な褒美だと思うけどなぁ」
「女性は贈り物が好きなのですよ、カテイナ様」
「ん~、そうか」
 
 何がいいかな? ジブリルは「花などはいかがです?」と聞いてくるが俺の贈り物だ。普通の花ではつまらない。何かいいものは無いかな? みんながアッと言うような。俺らしい素晴らしい贈り物が――。

「では、直筆のお手紙などはいかがでしょう?」

 あ~、なるほど、それなら記念になるし、額縁に入れて飾れるし、クラウディアも鼻が高いだろう。あとはそうだ。肩たたき券でもつけてやるか。泣いて喜ぶに違いない。

「ジブリル、じゃあ手紙を書くから、紙とペンを貸せ」
「仰せのままに」

 俺は案内された大使館の部屋で直筆の手紙を自信満々に書く。俺の名前は大きく。クラウディアの名前は小さく。俺が情け深くも肩たたき券もつけることを赤字でさらに大きく丸で囲って書き加える。
 
「会心の出来だ」

 そう言ってジブリルに手渡す。ジブリルも大きく目を見開いて見入っている。完璧だな。

「私もお手紙書きますね。それが終わったらクラウディアさんの家に行きましょう」

 ジブリルに鷹揚に頷いて大使館の一室でくつろぐ。
 しばらくしてジブリルがかきあげた手紙と一緒にクラウディアの家に向かう。
 俺はジブリルに飛び乗る。肩車みたいな形だ。

「……成長されましたね」
「ふふん、そうだろう?」
「背中じゃだめでしょうか?」
「どうした?」
「いえ、あの、……流石にバランスが取れません」

 全く昔から変わらないな。ジブリルはフランシスカほどの力がない。仕方なしに俺はジブリルの背中に移動する。思い返せば、俺が二歳のときに乳母をやめたのは俺の力に耐えられなくなったからだったな。そのあと世話係がフランシスカに代わったんだ。
 ジブリルが翼を広げてふわりと空に浮かぶ。
 心地よい風の切り方、人間でも出せる速度だ。俺にはもっと速くてもいいのだが、ジブリルには厳しいだろう。
 眼下の街並みを見る。多くの人が見上げている。個々の顔がわかるような高さ。高度についてもあまり高くは飛べないだろうなあ。ジブリルの能力は十分ではあるが俺を満足させるほどの力がない。

「あとどのくらいだ?」
「そうですね、あと四時間ぐらいでしょうか。お暇ですか?」
「ん~、まあな。だけどまあいいや。のんびり飛ぶのもいいもんだ」
「はは、のんびりですか」
「ああ、そうだ。俺も成長しただろう?」

 今は郊外の景色が広がっている。飛ぶ先を見ても建物は見当たらない。どうもクラウディアの実家は変なところにあるな。

「そういえばクラウディアの家はなんでこんなに遠いんだ?」
「それは、国境近くの貴族だからでしょう。防衛拠点としてニアフロント家はオリギナの中では有名ですよ」
「国境? この国は島じゃなかったか? と言うかあいつ貴族だったのか? ニアフロントなんて初めて聞いたぞ」
「海を挟んで真向いがクリミナ王国です。クラウディアさんの家は港町から近い山の中腹ですね。港から攻め込まれたときに防衛拠点にするためでしょうね」
「防衛拠点……ドラフトみたいなもんか?」
「ああ、ドラフトとは違いますよ。なんといっても家ですから。お城みたいなイメージでしょうかね」

 へぇ、ジブリルもドラフトを知っていたのか。流石に先に生まれているだけのことはある。知識の幅が広い。こういうところは素直に尊敬できる。
 それにしても城か、……もしかして、俺の家の様に鬼ババアがいるのか? 流石に大魔王みたいなやつじゃないにしても、クラウディアの尻を容赦なく引っぱたくような奴……。少なくとも俺の城にはいたし、ジオール城にもいた。少しは警戒したほうがいいかもしれない。
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