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15.懐中時計の秘密
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ある日の訓練場。
俺が帰り支度をしていたら、訓練をしにやってきたフィンが、懐中時計をポケットから取り出してじっと見ていた。
あの懐中時計。
フィンがいつもポケットに入れて、休憩中とかよく眺めてるやつだ。
時間なんか見てるようには見えないし、いつも蓋の内側をじーっと見てるんだよな。
(あれ、中に何かあるんじゃ……?)
気になった俺は、つい聞いてみた。
「お前、その懐中時計、やたら見てるよな。
時間確認してるって感じでもないけど、何か理由あんのか?」
「あるよ。大切なものが入ってるんだ」
フィンはにっこり笑って、指先で蓋を撫でた。
なんか、すごく大事そうにしてる。
「へぇ。何が入ってるんだ?」
「ふふふ、秘密。……でも、いつか教える日が来るかもしれないね」
その笑い方が、妙に意味深でムカつく。
気になるだろうが。
「もったいぶるなよ」
「じゃあ……私と一緒にベッドで朝を迎えてくれたら、見せてあげる」
「はあああ!? なんで俺が!? 一緒に寝るってこと!?」
「そう。可愛い寝顔を眺めたあとに、教えてあげるよ」
「ちょ、やめろっ! 俺はお前と寝ないからな!」
「えぇ? そんなに拒絶しないでよ、傷つくなぁ」
フィンは笑いながら俺の顎を軽く持ち上げてきた。
ちょ、近い! 顔、近い! 距離感どうなってんだこいつ!?
「……そんな真っ赤になって。やっぱり可愛いね、エリゼオは」
「誰が可愛いだ!!」
「いっそ、鍵かけて閉じ込めておきたいな」
「おい!? 今さらっと怖い発言したよな!?!?」
俺が必死に突っ込むと、フィンは「冗談だよ」と笑いながら時計をしまった。
ほんと、お前の冗談は心臓に悪いから、止めてほしい。
でも、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけどさ。
そんなのも悪くないって思っちゃうんだ。
それから数日後。
俺は、フィンとサーラが楽しそうに話しているのを見かけた。
そのとき、フィンがいつも大切にしている懐中時計を取り出していた。
遠くから俺が見つめていると、フィンがサーラにその時計の中身を見せて、二人で笑っていた。
なんだよ。俺には見せなかったくせに。
そうか。
二人は秘密を共有する仲になったんだな。
もう、二人は俺から遠く離れて行ってしまった気がした。
サーラを守る役目が、義兄である俺じゃなくてフィンに変わる。
そんな日がもうすぐ来るかもしれないな。
俺、そしたらどうしよう。
思いついたのは一つだけだった。
「フィンとサーラ、二人を助ける」
それだけだ。
二人とも大切だから。
俺の手なんか要らないかもしれないけど、俺なりにできることを見つけたい。
そう思いながら、俺は二人の笑顔を遠くから見ていたんだ。
それからも何度か、フィンとサーラが話しているのを見かけた。
……しかも、結構いい雰囲気で笑ってる。
気になった俺は、帰りの馬車でつい口を開いた。
「なあ、最近推しの騎士と仲良く話してるよな? 何話してるんだ?」
すると、サーラはガタッと立ち上がった。
「まぁっ! そんな、恐れ多いことをっ! わたくしが推しの方とお話だなんてっ!」
目を丸くして手を振るサーラ。顔が真っ赤だ。
「だってこの前、めっちゃ笑ってたじゃん」
「そ、そんなこと、あるわけないですわ!」
「……なんでだよ?」
あんなに楽しそうに話してたのに。何で隠すんだろ。
照れ隠しってやつか?
「お兄さま、わたくし推しの前では呼吸もままならないんですのよ!?
話すなんて、無理ですわ!!」
あまりに全力の否定に、俺はちょっと笑ってしまった。
(……いや、でも、自然に話してたよな?)
フィンからは懐中時計の中身を秘密にされ、
サーラからは二人の関係を秘密にされた。
二人に仲間はずれにされたみたいで、なんとなくモヤッとした気持ちが胸に残った。
いけない!
まだきっと、周りに話すわけにはいかない理由が、あるんだよ。
俺は、何があっても二人の味方でいるんだ。
俺はサーラの義兄であり、フィンの……親友なんだからな!
そう、親友だ。
俺が望んだのはそれだけだ。
フィンの好きな人はサーラだ。
俺じゃない。
分かってたことだろ。
……分かってたはずなのにな。
俺が帰り支度をしていたら、訓練をしにやってきたフィンが、懐中時計をポケットから取り出してじっと見ていた。
あの懐中時計。
フィンがいつもポケットに入れて、休憩中とかよく眺めてるやつだ。
時間なんか見てるようには見えないし、いつも蓋の内側をじーっと見てるんだよな。
(あれ、中に何かあるんじゃ……?)
気になった俺は、つい聞いてみた。
「お前、その懐中時計、やたら見てるよな。
時間確認してるって感じでもないけど、何か理由あんのか?」
「あるよ。大切なものが入ってるんだ」
フィンはにっこり笑って、指先で蓋を撫でた。
なんか、すごく大事そうにしてる。
「へぇ。何が入ってるんだ?」
「ふふふ、秘密。……でも、いつか教える日が来るかもしれないね」
その笑い方が、妙に意味深でムカつく。
気になるだろうが。
「もったいぶるなよ」
「じゃあ……私と一緒にベッドで朝を迎えてくれたら、見せてあげる」
「はあああ!? なんで俺が!? 一緒に寝るってこと!?」
「そう。可愛い寝顔を眺めたあとに、教えてあげるよ」
「ちょ、やめろっ! 俺はお前と寝ないからな!」
「えぇ? そんなに拒絶しないでよ、傷つくなぁ」
フィンは笑いながら俺の顎を軽く持ち上げてきた。
ちょ、近い! 顔、近い! 距離感どうなってんだこいつ!?
「……そんな真っ赤になって。やっぱり可愛いね、エリゼオは」
「誰が可愛いだ!!」
「いっそ、鍵かけて閉じ込めておきたいな」
「おい!? 今さらっと怖い発言したよな!?!?」
俺が必死に突っ込むと、フィンは「冗談だよ」と笑いながら時計をしまった。
ほんと、お前の冗談は心臓に悪いから、止めてほしい。
でも、ちょっとだけ。ほんのちょっとだけどさ。
そんなのも悪くないって思っちゃうんだ。
それから数日後。
俺は、フィンとサーラが楽しそうに話しているのを見かけた。
そのとき、フィンがいつも大切にしている懐中時計を取り出していた。
遠くから俺が見つめていると、フィンがサーラにその時計の中身を見せて、二人で笑っていた。
なんだよ。俺には見せなかったくせに。
そうか。
二人は秘密を共有する仲になったんだな。
もう、二人は俺から遠く離れて行ってしまった気がした。
サーラを守る役目が、義兄である俺じゃなくてフィンに変わる。
そんな日がもうすぐ来るかもしれないな。
俺、そしたらどうしよう。
思いついたのは一つだけだった。
「フィンとサーラ、二人を助ける」
それだけだ。
二人とも大切だから。
俺の手なんか要らないかもしれないけど、俺なりにできることを見つけたい。
そう思いながら、俺は二人の笑顔を遠くから見ていたんだ。
それからも何度か、フィンとサーラが話しているのを見かけた。
……しかも、結構いい雰囲気で笑ってる。
気になった俺は、帰りの馬車でつい口を開いた。
「なあ、最近推しの騎士と仲良く話してるよな? 何話してるんだ?」
すると、サーラはガタッと立ち上がった。
「まぁっ! そんな、恐れ多いことをっ! わたくしが推しの方とお話だなんてっ!」
目を丸くして手を振るサーラ。顔が真っ赤だ。
「だってこの前、めっちゃ笑ってたじゃん」
「そ、そんなこと、あるわけないですわ!」
「……なんでだよ?」
あんなに楽しそうに話してたのに。何で隠すんだろ。
照れ隠しってやつか?
「お兄さま、わたくし推しの前では呼吸もままならないんですのよ!?
話すなんて、無理ですわ!!」
あまりに全力の否定に、俺はちょっと笑ってしまった。
(……いや、でも、自然に話してたよな?)
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いけない!
まだきっと、周りに話すわけにはいかない理由が、あるんだよ。
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そう、親友だ。
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俺じゃない。
分かってたことだろ。
……分かってたはずなのにな。
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