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番外編②:近衛騎士団長は王族の青年に愛される【リナルド様のお約束】
リナルド様が殿下の一員として迎えられてから、まだ三か月しか経っていなかったが、すでに、彼は私になついておられた。
いや、なつくという表現では足りない。
正確には、私に貼りついて離れない。
朝、殿下の部屋の前で護衛をしている私のところへやって来ては挨拶をしてくる。
護衛の交代を終えて廊下を歩けば、その足に小さな腕が絡みつく。
「ガルディア、おはよう! 今日もいっしょにあそぼ!」
「……これから私は訓練がございます。遊ぶことは――」
「だいじょうぶ! 僕もいっしょに行く!」
ぱっと手を繋がれ、私はそのまま引っ張られる。
「リナルド様、本日は隣国の文化についてのお勉強がありましたでしょう? それはどうなされるのですか?」
私の言葉に、リナルド様は頬を膨らませていた。
リナルド様のあまりのかわいらしさに、私はつい頭を撫でてしまう。
「んんっ、失礼しました。それでは、私は本日訓練が終わりましたら仮眠をとり、それからは時間が空いております。少しだけ私とお話をいたしましょう。
ですから、リナルド様。お勉強を頑張ってくださいませ」
今度はリナルド様はぱっと目を輝かせて私を見つめる。
その瞳の明るさに、自然と口元が緩んだ。
「ほんとっ? じゃあ、僕とお茶会をしてほしいな。
今日はガルディアの好きなお菓子、アマレッティを調理場に頼んでおくから。
バラ園のガゼボでお茶をしよう。絶対だよ!」
そう言ってリナルド様は私に向かって両手を差し出してきた。
これは、『抱っこをして』という意味だ。
私はリナルド様の両脇を持ち、抱き上げた。
私と目線が合うと、リナルド様は私の頬にキスをしてくる。
「約束のキスだよ。いつも父上と母上がしてるんだ。
ガルディア、訓練では怪我しないように気を付けてね」
頬に触れた小さなキスの感触に、私は胸がくすぐられた。
幼き頃から自然とこのような振る舞いができるなんて、大人になったらとても令嬢に好かれることだろう。
リナルド様の成長が楽しみだ。
ふと気づくと、リナルド様は私の顔をじっと見つめておられた。
「ガルディア、照れてる。
ふふ、最近ね、ガルディアの表情がよく分かるようになったんだよ。
その顔、父上や母上にも見せてないでしょ?
僕だけなんだよね?
……これからも僕にしか見せちゃだめだよ。ガルディアは僕のものなんだから」
なんと。
リナルド様は殿下の口真似をしておられるようだ。
後で、殿下には「リナルド様の前でのご発言にはご注意ください」とお伝えせねば。
そっと心の中で決心した。
午後になり、私はリナルド様との約束を果たそうと、バラ園に向かった。
すでにバラ園にいらっしゃっていたリナルド様が、ガゼボで手を振っておられる。
その姿が本当に愛らしく、つい私も手を振り返したくなった。
慌てて、軽く頭を下げ、足早にリナルド様のもとへと歩いた。
リナルド様も私の方へと駆け寄ってこられる。
そのまま、私の脚に抱きついてきた。
「ガルディア、怪我はしてない? ちゃんと休めた?」
こんなお小さいのに、私のことをここまで心配してくださるなんて。
本当にできたお方だ。
さすがは未来の王太子だと思い、私は胸が温かくなった。
「ありがとうございます。このように、私は怪我一つしておりません。
リナルド様は、お勉強の方はいかがでしたか?」
「うん。順調だよ。
隣国ストラウスの魔道具は本当にすごいね。
一度隣国に行って、この目で見てみたいよ」
私の手を引いてガゼボに連れて行きながら、今日学んだことを私に聞かせてくださる。
とても五歳とは思えぬほど、リナルド様は聡明で、ストラウスの文化を学ぶだけではなく、我が国への転用までも考えておられるようだった。
「ストラウスはさ、魔道具で火をおこさずにお水を温めることができるんだって」
キラキラと輝く目で話すリナルド様は、本当に楽しそうだった。
「これがあったら、お風呂を用意することも簡単になるよね。
きっと、侍女たちも喜ぶと思うんだ」
下の者を慮るリナルド様のお言葉に、私は思わず口元が緩んでしまった。
「ガルディア、何で笑うの?」
「いえ。こうして民のためを思ってお話されるリナルド様は、まるで殿下にそっくりでございますね。
殿下も日々、国のために一生懸命お仕事をなさっております」
私の言葉は、何かリナルド様のプライドを傷つけたのだろうか。
リナルド様は頬を膨らませて、私を睨みつけた。
「父上は素晴らしい人だけど……。僕はいつか父上を超えるすごい人になるんだからね!
だから、ガルディア、これからも『僕を』見ててよ!
これから僕はどんどん成長して、大人になるんだからね!」
今から殿下と張り合うなんて、すごい向上心であらせる。
これは、リナルド様を見守ることが楽しみだ。
私は、リナルド様が大人になる姿を想像して、聡明で美しい青年になるだろうなと思い、目元を緩ませたのだった。
いや、なつくという表現では足りない。
正確には、私に貼りついて離れない。
朝、殿下の部屋の前で護衛をしている私のところへやって来ては挨拶をしてくる。
護衛の交代を終えて廊下を歩けば、その足に小さな腕が絡みつく。
「ガルディア、おはよう! 今日もいっしょにあそぼ!」
「……これから私は訓練がございます。遊ぶことは――」
「だいじょうぶ! 僕もいっしょに行く!」
ぱっと手を繋がれ、私はそのまま引っ張られる。
「リナルド様、本日は隣国の文化についてのお勉強がありましたでしょう? それはどうなされるのですか?」
私の言葉に、リナルド様は頬を膨らませていた。
リナルド様のあまりのかわいらしさに、私はつい頭を撫でてしまう。
「んんっ、失礼しました。それでは、私は本日訓練が終わりましたら仮眠をとり、それからは時間が空いております。少しだけ私とお話をいたしましょう。
ですから、リナルド様。お勉強を頑張ってくださいませ」
今度はリナルド様はぱっと目を輝かせて私を見つめる。
その瞳の明るさに、自然と口元が緩んだ。
「ほんとっ? じゃあ、僕とお茶会をしてほしいな。
今日はガルディアの好きなお菓子、アマレッティを調理場に頼んでおくから。
バラ園のガゼボでお茶をしよう。絶対だよ!」
そう言ってリナルド様は私に向かって両手を差し出してきた。
これは、『抱っこをして』という意味だ。
私はリナルド様の両脇を持ち、抱き上げた。
私と目線が合うと、リナルド様は私の頬にキスをしてくる。
「約束のキスだよ。いつも父上と母上がしてるんだ。
ガルディア、訓練では怪我しないように気を付けてね」
頬に触れた小さなキスの感触に、私は胸がくすぐられた。
幼き頃から自然とこのような振る舞いができるなんて、大人になったらとても令嬢に好かれることだろう。
リナルド様の成長が楽しみだ。
ふと気づくと、リナルド様は私の顔をじっと見つめておられた。
「ガルディア、照れてる。
ふふ、最近ね、ガルディアの表情がよく分かるようになったんだよ。
その顔、父上や母上にも見せてないでしょ?
僕だけなんだよね?
……これからも僕にしか見せちゃだめだよ。ガルディアは僕のものなんだから」
なんと。
リナルド様は殿下の口真似をしておられるようだ。
後で、殿下には「リナルド様の前でのご発言にはご注意ください」とお伝えせねば。
そっと心の中で決心した。
午後になり、私はリナルド様との約束を果たそうと、バラ園に向かった。
すでにバラ園にいらっしゃっていたリナルド様が、ガゼボで手を振っておられる。
その姿が本当に愛らしく、つい私も手を振り返したくなった。
慌てて、軽く頭を下げ、足早にリナルド様のもとへと歩いた。
リナルド様も私の方へと駆け寄ってこられる。
そのまま、私の脚に抱きついてきた。
「ガルディア、怪我はしてない? ちゃんと休めた?」
こんなお小さいのに、私のことをここまで心配してくださるなんて。
本当にできたお方だ。
さすがは未来の王太子だと思い、私は胸が温かくなった。
「ありがとうございます。このように、私は怪我一つしておりません。
リナルド様は、お勉強の方はいかがでしたか?」
「うん。順調だよ。
隣国ストラウスの魔道具は本当にすごいね。
一度隣国に行って、この目で見てみたいよ」
私の手を引いてガゼボに連れて行きながら、今日学んだことを私に聞かせてくださる。
とても五歳とは思えぬほど、リナルド様は聡明で、ストラウスの文化を学ぶだけではなく、我が国への転用までも考えておられるようだった。
「ストラウスはさ、魔道具で火をおこさずにお水を温めることができるんだって」
キラキラと輝く目で話すリナルド様は、本当に楽しそうだった。
「これがあったら、お風呂を用意することも簡単になるよね。
きっと、侍女たちも喜ぶと思うんだ」
下の者を慮るリナルド様のお言葉に、私は思わず口元が緩んでしまった。
「ガルディア、何で笑うの?」
「いえ。こうして民のためを思ってお話されるリナルド様は、まるで殿下にそっくりでございますね。
殿下も日々、国のために一生懸命お仕事をなさっております」
私の言葉は、何かリナルド様のプライドを傷つけたのだろうか。
リナルド様は頬を膨らませて、私を睨みつけた。
「父上は素晴らしい人だけど……。僕はいつか父上を超えるすごい人になるんだからね!
だから、ガルディア、これからも『僕を』見ててよ!
これから僕はどんどん成長して、大人になるんだからね!」
今から殿下と張り合うなんて、すごい向上心であらせる。
これは、リナルド様を見守ることが楽しみだ。
私は、リナルド様が大人になる姿を想像して、聡明で美しい青年になるだろうなと思い、目元を緩ませたのだった。
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