22 / 30
第22話「四国山中編⑤ 援軍到着」
しおりを挟む
(前回のあらすじ)僕「みお」と琴子は四国山中で敵の車両基地を壊滅、そこを前線基地として敵本拠地への侵攻の手続きに入っていた。相手は確実に多数である以上、闇雲な突撃はできない。僕と琴子は一先ず、侵攻の体制を整備することに重点を置いた。
夜明けが来た。窓から剣山の頂上のあたりが日を浴びて輝くのが見える。
僕はクラスハのECMを一旦解除し、祖谷口の前線基地に連絡したのち、明け方まで琴子と交代でこのクラブハウスで仮眠を取っていた。
幸い応接室のみ琴子による惨劇が行われなかったので、この部屋だけ血糊で汚れていない。
真夏だというのに、朝方は肌寒さをさえ感じる。
高度があるせいだろう。
起きると、琴子がやかんでお茶を沸かしてくれていた。
「おはよう、みお。さっき本隊の車列の音が聞こえたからもうすぐ到着するわ。はい、これ。」
僕は琴子の淹れてくれたお茶を飲み干した。身体がじんわり温まる。
「琴子、こんな所にお茶の葉なんてあったのかい?」
「それはその辺に生えている笹の葉よ。笹茶美味しいでしょう?」
「へえ・・。」
僕は思わずコップの中のお茶を見つめた。いい香りがする。
麓に生えている笹と、ここらの笹は違うのだろうか?
そのとき、僕と琴子の耳に、車両の複数のエンジン音が聞こえてきた。
「さて、本隊のお出ましだ。場内はそんな広くないから考えて車両の誘導をしないとな。琴子、手伝ってくれ。」
「わかったわ。みお。」
僕はスキー場跡の入口で、やってきた車両の誘導をしようとした。しかし……。
……あれ?戦車は?
最初に現れたのは2台のオートバイ、まあそれはいい。
しかし次に現れたのは60式自走106mm無反動砲だった。
僕より背の低い通称「豆戦車」。
何と100年前と同じ設計の資源事情に優しい戦車(?)だ。
まあ一応キャタピラで動くし、無反動砲も2門積んではいるのだが……。
それが4台来た後、その後は通常の装甲車4台。
後はトラック4台。以上。
えっ?これだけ?
戦車はどこ?自走砲は?
首をきょろきょろさせる僕の前で豆戦車が止まり、搭乗員が僕に敬礼してきた。
「陸軍第十一師団、第一戦車中隊長の野村大尉であります!」
「陸軍憲兵隊の君島中尉です。え、あの・・戦車中隊ですよね?」
「いかにも我が陸軍が誇る十一師団戦車中隊であります!」
「あ、いや・・。他の戦車は・・・?」
「ガハハハ!コイツがあれば百人力ですよ!中々やるもんで!」
野村大尉は豪快に笑いながら豆戦車をバンバン叩いた。
琴子も坂の上から様子を見に来て愕然としている。
「野村く~ん。事実言っちゃった方がいいよ・・。」
後ろからトラックを降りてきた中年の小汚いおっさんが野村大尉に声をかける。
顔なじみの通信兵の井田伍長だった。
「あ、あの、すいません。野村大尉殿。事実って・・?」
野村大尉は申し訳なさそうに目を伏せた。
「あ、いや、途中戦車で突っ込んだらトンネルがあって・・。天井の高さがちょ~っと低くて通過できんかったとです。」
馬鹿な、そんな馬鹿な・・・。
僕は愕然とした。あんな重武装している連中をこの兵力でどうしろと?
「ま、とりあえずお嬢ちゃんの無人機は積んできたから、まずは敵の戦力評価しましょ。ほら、野村君中入って。」
井田は伍長なのになぜかその場を仕切り始める。
「よし!陸軍第十一師団戦車中隊、進め~っ!敵車両基地を占領する!」
野村隊長の勇ましい号令で後続車両はスキー場跡地の中に入っていく。
中の戦闘員は僕と琴子で全部殲滅済みなんだけどなあ・・。
僕は溜息をつきながらクラブハウスの中に戻っていった。
第十一師団戦車中隊の仕事はまずクラブハウスの中に一旦入ってから外に出て、吐くことだった。
中の敵戦闘員の遺体は、朝までに琴子が崖の下に放り出しているのだが、やっぱり生々しすぎたらしい。
大丈夫か、コレ。
一方、琴子の刀によって見事な血しぶきが壁に飛び散っている会議室で、井田伍長はのんびりと琴子の作ってくれた笹茶を飲んでいた。
「あれ?本隊からは井田伍長お一人?他は?そのレンジャー中隊とか、特殊作戦群とかは?」
「残念ながら俺一人。俺だけ東京から一人で無人機積んでトラック運転してきたんだよね。あとは、ほら、飛行機使えないから・・。鉄道もなんか止まっててダメなんだって。」
「マジですか・・。」
僕はまた溜息をついた。
マジでこの戦力で任務を遂行するの?
「大丈夫でしょ、琴子のお嬢ちゃんいれば何でも叩き斬るんじゃないの?」
「そんな適当なこと言わないでくださああい」
その時会議室の中に琴子が入ってきた。
「みお、戦車中隊の人たち外のツングースカとクラスハの周りで大騒ぎしてるわよ、
乗っていいかって。」
「そんな玩具を見つけたんじゃないんだから・・。ああ、でも確かにアレがあったのか・・。」
そう、ここにはツングースカがある。あの30mm機関砲ならかなりの戦力になるだろう。
「お、クラスハ有るの?俺いじっていい?」
井田伍長が、居酒屋でしか見せないような満面の笑みを浮かべて立ち上がる。
しょうがない、井田伍長にECMの操作をしてもらって、その間に僕と琴子で無人機の偵察を行うとするか・・。
僕はスキップで部屋を出ていく井田伍長の後を、琴子と溜息をつきながら外に向かった。
僕は井田伍長に東京から持ってきてもらった僕のノートPCと無人機の入ったトランクを開けると、早速操作を開始した。
小型のドローンが何十機も一斉に飛び立ち、敵本拠地に向かって飛んでいく。
「おお~っ、すごかとね~」「初めて見た・・」
おや?戦車中隊の皆さん、なぜ全員で僕たちの作業を見ているのですか?
この車両基地、誰か歩哨に出てます?
ここで襲撃されたら全員一巻の終わりのような気がするのですが?
しかしモニターから目を離すわけにもいかず、やむを得ず疑問を無視する。
ドローンの群れは北西に向かっていく。
するとすぐ眼下に厳重な木の柵と何かの畑の群れが現れた。
どういうことだ?まだ5kmも飛ばしてないぞ?
敵の本拠地はここから10km先のはずだが・・。
「昔はこんな所に畑なんかなかったい。しかもこれ普通の畑やないね。」
野村隊長があごを触りながら言う。
「確かにみお、この畑って・・。」
「ああ、間違いない。これ全部ケシ畑だ・・。」
驚くことに道路脇にある少しでも傾斜が緩い場所は全て切り開かれてケシ畑になっている。それにしても凄い数の畑だ。こんな量の畑をどうやって作ったんだ?
「こりゃあ、重機でもないと無理ばい。しかもこれベルコンまで設置されとる。」
確かにそうだ。しかしこれだけの険しい地形を造成するには莫大な資金が必要なはずだ。
セクトが本当に、そんな資金源を持っているのか?
ドローンは更に進んでいく。
「あ、君島中尉。そこお地蔵さん見えるやろう?そこのお地蔵さんの右の道たい。
そのまま行くと古いお寺と地下への入口あるから多分そこばい。大昔の新興宗教の本部だったとこやね。」
おや?僕は気になった。野村隊長やけに詳しいな?
「あの、野村隊長。失礼ですがこの場所行ったことあります?」
「行ったのは、もう10年以上前たい。廃道ツーリング行ったのなつかしかね~」
「えっ!?」「ええっ!?」
その場にいた全員が野村隊長を見る。
「隊長、それ初耳ですよ!?」
「いや、10年前も普通に統制外区域ですよね?どうやって入ったんです?」
隊員のみんなが色めき立つ。
「そりゃ、入口の封鎖線の横の山、バイクかついで上がったら入れるばい。ここ谷底に温泉あるんよ。昔はマニアが良く入りに来たばい。天然の炭酸泉ばい。あれはよかね~。」
マジか・・。
僕も琴子も隊員も呆然と野村隊長を見つめた。
当時も普通に怪異が発生していたと思うが、そんな所の廃道に入って温泉に入りにいくなんて・・。
なんて大胆な人なんだ・・。
[chapter:超巨大砲]
いや、感心するのは後にしよう。
ドローンでの偵察が先だ。ECMもいつまでも解除していられない。
野村隊長の言うとおりの方向を進むと、あちこちに人影が見えてきた。
大半がケシ畑の収穫をしているようだが、所々、作業服姿の男が銃を持って立っているのが見える。そしてさらに奥。コンクリートの壁の向こうには・・。
「うっ」僕は思わずうめいた。
どう見てもとてつもない長さの砲身が眼下に見える。
「キャタピラもついているところを見ると、旧ロシアの2S7ピオン203mm自走カノン砲だろう。
それが2門もある。
「でっかな大砲やね。君島中尉、これ射程どれくらいばい?」
「正確には忘れましたが確か20kmはあったはず・・。」
僕の言葉にその場にいた全員が凍り付いた。
「えっ、みお。そしたら私たちが今いるここって、思いっきり射程圏内なの!?」
どうしよう。ここを前線基地にするアイデアがいきなり破綻してしまった。
僕は震える手でドローンを操作する。
さらにその先で数十人の人間が隊列を組んでいる映像が表示された。
明らかに銃器を用いた訓練をしている。
中にはRPGの様な大きい物を持っている人間もいる。
この調子だとこの連中の中にスティンガーを持っている者もいるかもしれない。
「こりゃ大事ばい・・。」
とんでもない軍事的な集積に僕はめまいがした。
これでは善通寺の第十一師団総がかりでも無理だろう。
地形も向こうが圧倒的に有利だ。
この敵本拠地は谷に囲まれた丘の上にあり、どこからでも大砲の射程に入ってしまう。
上からの見晴らしも抜群だろう。
しかもそこまでの道は九十九折の狭い一本道のみである。
一度大砲に狙われると撤退すら困難であろう。
どう見ても分が悪い。
相手にここに気付かれる前に。撤退すべきか?
しかしその時だった。
「みお!今の映像!ドローンを少し戻して!」
琴子の鋭い声に僕は我に返った。
慎重にドローンの位置を変える。
そこには周囲と比べて明らかに異質な人物が映っていた。
フード姿のローブの様な物をすっぽり被った人物が、腹が大きく突き出たはげ頭の男と何か話している。
「みお、見て。こいつは普通の人間じゃない。」
琴子の言うとおり、よく見ると手が異常に長い。通常の倍はあるのではないか?
まさか、この人物は怪異か何かなのか!?
しかも相当上の階級らしい男と話をしているところを見ると知能もありそうだ。
彼らは、さっき野村隊長が話していた大きな地下の入口から中に入っていく。
「間違いない、この地下に何かがある。恐らく私たちが探している人間を容易に怪異に変える何かが。」
いよいよ本丸が見つかった。
僕たちは何とかしてこの中に入らなくてはいけない。
(続く)
夜明けが来た。窓から剣山の頂上のあたりが日を浴びて輝くのが見える。
僕はクラスハのECMを一旦解除し、祖谷口の前線基地に連絡したのち、明け方まで琴子と交代でこのクラブハウスで仮眠を取っていた。
幸い応接室のみ琴子による惨劇が行われなかったので、この部屋だけ血糊で汚れていない。
真夏だというのに、朝方は肌寒さをさえ感じる。
高度があるせいだろう。
起きると、琴子がやかんでお茶を沸かしてくれていた。
「おはよう、みお。さっき本隊の車列の音が聞こえたからもうすぐ到着するわ。はい、これ。」
僕は琴子の淹れてくれたお茶を飲み干した。身体がじんわり温まる。
「琴子、こんな所にお茶の葉なんてあったのかい?」
「それはその辺に生えている笹の葉よ。笹茶美味しいでしょう?」
「へえ・・。」
僕は思わずコップの中のお茶を見つめた。いい香りがする。
麓に生えている笹と、ここらの笹は違うのだろうか?
そのとき、僕と琴子の耳に、車両の複数のエンジン音が聞こえてきた。
「さて、本隊のお出ましだ。場内はそんな広くないから考えて車両の誘導をしないとな。琴子、手伝ってくれ。」
「わかったわ。みお。」
僕はスキー場跡の入口で、やってきた車両の誘導をしようとした。しかし……。
……あれ?戦車は?
最初に現れたのは2台のオートバイ、まあそれはいい。
しかし次に現れたのは60式自走106mm無反動砲だった。
僕より背の低い通称「豆戦車」。
何と100年前と同じ設計の資源事情に優しい戦車(?)だ。
まあ一応キャタピラで動くし、無反動砲も2門積んではいるのだが……。
それが4台来た後、その後は通常の装甲車4台。
後はトラック4台。以上。
えっ?これだけ?
戦車はどこ?自走砲は?
首をきょろきょろさせる僕の前で豆戦車が止まり、搭乗員が僕に敬礼してきた。
「陸軍第十一師団、第一戦車中隊長の野村大尉であります!」
「陸軍憲兵隊の君島中尉です。え、あの・・戦車中隊ですよね?」
「いかにも我が陸軍が誇る十一師団戦車中隊であります!」
「あ、いや・・。他の戦車は・・・?」
「ガハハハ!コイツがあれば百人力ですよ!中々やるもんで!」
野村大尉は豪快に笑いながら豆戦車をバンバン叩いた。
琴子も坂の上から様子を見に来て愕然としている。
「野村く~ん。事実言っちゃった方がいいよ・・。」
後ろからトラックを降りてきた中年の小汚いおっさんが野村大尉に声をかける。
顔なじみの通信兵の井田伍長だった。
「あ、あの、すいません。野村大尉殿。事実って・・?」
野村大尉は申し訳なさそうに目を伏せた。
「あ、いや、途中戦車で突っ込んだらトンネルがあって・・。天井の高さがちょ~っと低くて通過できんかったとです。」
馬鹿な、そんな馬鹿な・・・。
僕は愕然とした。あんな重武装している連中をこの兵力でどうしろと?
「ま、とりあえずお嬢ちゃんの無人機は積んできたから、まずは敵の戦力評価しましょ。ほら、野村君中入って。」
井田は伍長なのになぜかその場を仕切り始める。
「よし!陸軍第十一師団戦車中隊、進め~っ!敵車両基地を占領する!」
野村隊長の勇ましい号令で後続車両はスキー場跡地の中に入っていく。
中の戦闘員は僕と琴子で全部殲滅済みなんだけどなあ・・。
僕は溜息をつきながらクラブハウスの中に戻っていった。
第十一師団戦車中隊の仕事はまずクラブハウスの中に一旦入ってから外に出て、吐くことだった。
中の敵戦闘員の遺体は、朝までに琴子が崖の下に放り出しているのだが、やっぱり生々しすぎたらしい。
大丈夫か、コレ。
一方、琴子の刀によって見事な血しぶきが壁に飛び散っている会議室で、井田伍長はのんびりと琴子の作ってくれた笹茶を飲んでいた。
「あれ?本隊からは井田伍長お一人?他は?そのレンジャー中隊とか、特殊作戦群とかは?」
「残念ながら俺一人。俺だけ東京から一人で無人機積んでトラック運転してきたんだよね。あとは、ほら、飛行機使えないから・・。鉄道もなんか止まっててダメなんだって。」
「マジですか・・。」
僕はまた溜息をついた。
マジでこの戦力で任務を遂行するの?
「大丈夫でしょ、琴子のお嬢ちゃんいれば何でも叩き斬るんじゃないの?」
「そんな適当なこと言わないでくださああい」
その時会議室の中に琴子が入ってきた。
「みお、戦車中隊の人たち外のツングースカとクラスハの周りで大騒ぎしてるわよ、
乗っていいかって。」
「そんな玩具を見つけたんじゃないんだから・・。ああ、でも確かにアレがあったのか・・。」
そう、ここにはツングースカがある。あの30mm機関砲ならかなりの戦力になるだろう。
「お、クラスハ有るの?俺いじっていい?」
井田伍長が、居酒屋でしか見せないような満面の笑みを浮かべて立ち上がる。
しょうがない、井田伍長にECMの操作をしてもらって、その間に僕と琴子で無人機の偵察を行うとするか・・。
僕はスキップで部屋を出ていく井田伍長の後を、琴子と溜息をつきながら外に向かった。
僕は井田伍長に東京から持ってきてもらった僕のノートPCと無人機の入ったトランクを開けると、早速操作を開始した。
小型のドローンが何十機も一斉に飛び立ち、敵本拠地に向かって飛んでいく。
「おお~っ、すごかとね~」「初めて見た・・」
おや?戦車中隊の皆さん、なぜ全員で僕たちの作業を見ているのですか?
この車両基地、誰か歩哨に出てます?
ここで襲撃されたら全員一巻の終わりのような気がするのですが?
しかしモニターから目を離すわけにもいかず、やむを得ず疑問を無視する。
ドローンの群れは北西に向かっていく。
するとすぐ眼下に厳重な木の柵と何かの畑の群れが現れた。
どういうことだ?まだ5kmも飛ばしてないぞ?
敵の本拠地はここから10km先のはずだが・・。
「昔はこんな所に畑なんかなかったい。しかもこれ普通の畑やないね。」
野村隊長があごを触りながら言う。
「確かにみお、この畑って・・。」
「ああ、間違いない。これ全部ケシ畑だ・・。」
驚くことに道路脇にある少しでも傾斜が緩い場所は全て切り開かれてケシ畑になっている。それにしても凄い数の畑だ。こんな量の畑をどうやって作ったんだ?
「こりゃあ、重機でもないと無理ばい。しかもこれベルコンまで設置されとる。」
確かにそうだ。しかしこれだけの険しい地形を造成するには莫大な資金が必要なはずだ。
セクトが本当に、そんな資金源を持っているのか?
ドローンは更に進んでいく。
「あ、君島中尉。そこお地蔵さん見えるやろう?そこのお地蔵さんの右の道たい。
そのまま行くと古いお寺と地下への入口あるから多分そこばい。大昔の新興宗教の本部だったとこやね。」
おや?僕は気になった。野村隊長やけに詳しいな?
「あの、野村隊長。失礼ですがこの場所行ったことあります?」
「行ったのは、もう10年以上前たい。廃道ツーリング行ったのなつかしかね~」
「えっ!?」「ええっ!?」
その場にいた全員が野村隊長を見る。
「隊長、それ初耳ですよ!?」
「いや、10年前も普通に統制外区域ですよね?どうやって入ったんです?」
隊員のみんなが色めき立つ。
「そりゃ、入口の封鎖線の横の山、バイクかついで上がったら入れるばい。ここ谷底に温泉あるんよ。昔はマニアが良く入りに来たばい。天然の炭酸泉ばい。あれはよかね~。」
マジか・・。
僕も琴子も隊員も呆然と野村隊長を見つめた。
当時も普通に怪異が発生していたと思うが、そんな所の廃道に入って温泉に入りにいくなんて・・。
なんて大胆な人なんだ・・。
[chapter:超巨大砲]
いや、感心するのは後にしよう。
ドローンでの偵察が先だ。ECMもいつまでも解除していられない。
野村隊長の言うとおりの方向を進むと、あちこちに人影が見えてきた。
大半がケシ畑の収穫をしているようだが、所々、作業服姿の男が銃を持って立っているのが見える。そしてさらに奥。コンクリートの壁の向こうには・・。
「うっ」僕は思わずうめいた。
どう見てもとてつもない長さの砲身が眼下に見える。
「キャタピラもついているところを見ると、旧ロシアの2S7ピオン203mm自走カノン砲だろう。
それが2門もある。
「でっかな大砲やね。君島中尉、これ射程どれくらいばい?」
「正確には忘れましたが確か20kmはあったはず・・。」
僕の言葉にその場にいた全員が凍り付いた。
「えっ、みお。そしたら私たちが今いるここって、思いっきり射程圏内なの!?」
どうしよう。ここを前線基地にするアイデアがいきなり破綻してしまった。
僕は震える手でドローンを操作する。
さらにその先で数十人の人間が隊列を組んでいる映像が表示された。
明らかに銃器を用いた訓練をしている。
中にはRPGの様な大きい物を持っている人間もいる。
この調子だとこの連中の中にスティンガーを持っている者もいるかもしれない。
「こりゃ大事ばい・・。」
とんでもない軍事的な集積に僕はめまいがした。
これでは善通寺の第十一師団総がかりでも無理だろう。
地形も向こうが圧倒的に有利だ。
この敵本拠地は谷に囲まれた丘の上にあり、どこからでも大砲の射程に入ってしまう。
上からの見晴らしも抜群だろう。
しかもそこまでの道は九十九折の狭い一本道のみである。
一度大砲に狙われると撤退すら困難であろう。
どう見ても分が悪い。
相手にここに気付かれる前に。撤退すべきか?
しかしその時だった。
「みお!今の映像!ドローンを少し戻して!」
琴子の鋭い声に僕は我に返った。
慎重にドローンの位置を変える。
そこには周囲と比べて明らかに異質な人物が映っていた。
フード姿のローブの様な物をすっぽり被った人物が、腹が大きく突き出たはげ頭の男と何か話している。
「みお、見て。こいつは普通の人間じゃない。」
琴子の言うとおり、よく見ると手が異常に長い。通常の倍はあるのではないか?
まさか、この人物は怪異か何かなのか!?
しかも相当上の階級らしい男と話をしているところを見ると知能もありそうだ。
彼らは、さっき野村隊長が話していた大きな地下の入口から中に入っていく。
「間違いない、この地下に何かがある。恐らく私たちが探している人間を容易に怪異に変える何かが。」
いよいよ本丸が見つかった。
僕たちは何とかしてこの中に入らなくてはいけない。
(続く)
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


