【完結】Twitterのフォロワーのウェブ小説を読もうとしたら異世界転移しちゃいました

狸田 真 (たぬきだ まこと)

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2.パロディでも勘違いコメディは健在

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御山恭輔
「助かりました」

 改めて少女を見る。艶のある茶色の髪、雪のように白い肌。ふさふさの睫毛の下には、吸い込まれそうな黒い瞳。上品なワンピースから見える脚はスラッと長く、女性にしては長身だ。高校生くらいだろうか? まだ完全には大人になりきらないあどけなさと、女の色香が混在している。

少女
「別に、猪が食べたかっただけ」

九条伊吹
「助けてくれて有難う! 俺、何も出来なくて、役立たずで御免なさい」

少女
「子供じゃ、化け物の相手は無理」

 172cmある少女と並ぶと、165cmしかない伊吹は小さく幼く見える。

九条伊吹
「子供じゃないよ!これでも一応成人してるし...」

 少女は大きな瞳をさらに大きくして伊吹を見つめた。

御山恭輔
「僕とあまり変わらないのですね...」

 恭輔は神衣靈装をといて、元の姿に戻った。恭輔は178cmあり、細いながらもしっかりと筋肉がついている。茶色がかった黒髪で、ジーンズにジャケットを羽織る姿は、伊吹よりもずっと大人に見えた。

九条伊吹
「えぇ!? ずっと年上かと思った!?」

 恭輔はふっっと表情を和らげた。

御山恭輔
「いっ!」

 安心すると、忘れていた腕の痛みが感じられた。

九条伊吹
「大変だ! 治さないと! 腕をみせて!」

 医術の心得があるのだろうか?

 恭輔が伊吹に腕を預けると伊吹の身体が光り出し、恭輔の腕も光に包まれた。

 光が収まると、腕の傷は跡形もなく消えていた。

 治癒の能力!

 恭輔はグーパーして、手の動作を確かめた。

恭輔
「有難うございます。治っています」

少女
「お前も化け物か」

九条伊吹
「ち、違います! あれ? 違わない? でも、俺は一応人間で、九条伊吹といいます」

御山恭輔
「御山恭輔です」

少女
「アリア」

九条伊吹
「アリア?」

御山恭輔
「アリアさんというのですね」

九条伊吹
「あ、名前か! アリアは、ここら辺に住んでいるの?」

 アリアは首を横に振った。

御山恭輔
「では、アリアさんも小説を読んだのですね?」

 アリアは首を縦に振る。

九条伊吹
「じゃあ、2人もこれを読んだ?」

 伊吹は懐から手紙を出した。小説のように厚みのあるものではなく、ペラッとした1枚の紙だった。

『作:辻褄つじつま 詩集「死相」より
“メメントモリ”

「嗚呼、私はなんて事を…」と
隣の少女が泣き叫ぶ。
よく、この国の罪人は一言で
メメントモリと言ってる。
あえて言うと罪人の子供には
メメントモリと名付けられる。
そう、私の親が殺人を犯し
メメントモリという名を付けられた。
メメントモリの名を持つ子供には
仕打ちを受ける決まりとなっている。
罪人の生まれ変わりかもしれないから
という理由で…』

御山恭輔
「いえ、初めて見ました」

九条伊吹
「小説の世界にご招待! と書かれた手紙に添えられてたんだ。何だか素敵な詩だなって思って。まるで俺のことみたいで...俺も、罪人だから...」

御山恭輔
「何か罪を犯したのですか?」

九条伊吹
「見たでしょう!? お、俺の、この力の所為で、皆を不幸にして...俺の所為で、いっぱい人が死んで...だから、俺は、生きていちゃいけないんだ! 死んだ方がいいんだ!」

 伊吹は真っ赤になって涙を流した。

 先程、見せた力は治癒の力だった。人を傷付ける要素など何処にあるというのか? 錯乱している伊吹の言うことはめちゃくちゃで、ほとんど意味が分からないが、過去に何か不幸な事件があって、それを自分の所為だと思っていることは容易く想像出来た。

 アリアは大きく溜息をつく。

アリア
「お前、死んでどうする? それで罪が消える? 死んだら楽になる?」

九条伊吹
「違う! 罪は消えないし、楽になりたいわけじゃない! これ以上、生きている人の迷惑になりたくないんだ!」

アリア
「では、お前が死なせてしまったという人と、お前は同じ場所に行くのか?」

九条伊吹
「え...? 」

アリア
「死者がお前を地獄で待っていてもおかしくはないだろう?」

九条伊吹
「そ、そんな...そんなこと、考えたことなかった」

 伊吹は硬直した。

アリア
「そんなことはどうでもいい、迷惑をかけたくないなら、早くして」

 アリアはナイフで猪の肉を手早く解体すると、持てる分だけ葉と蔓で包んだ。慌てて恭輔と伊吹も、無言のまま肉の解体を手伝う。

 作業が終わると、アリアは手招きして森の中を歩き出した。慌てて二人も後を追う。

 しばらく、歩くとテントが見えて来た。ドーム型で、5、6人は寝られそうな大きめのテントだ。森の草木のような深い緑の色をしている。

 テントに入るととても暖かい。薄い生地だが、特殊な素材で出来ているようだ。テントには「嗅ぎタバコ野郎のテント」とブランド名らしきロゴが記載されている。さっきまで、興奮状態にあったので忘れていたが、この森はとても寒く、身体が冷え切っていたようだ。腰を下ろすと、安心感からか、どっと疲れが感じられた。

 寝る場所を確保することは出来たが、状況は非常に厳しい。食糧は猪の肉は手に入れたが、水もない。このままでは早々に餓死してしまう。さて、どうしたものか...

九条伊吹
「喉が渇いたな。俺、水を探してくる!」

御山恭輔
「1人では危ないです。一緒に行きましょう」

 恭輔はアリアの方を向き直った。

恭輔
「アリアさんも一緒に行きませんか?」

 若い女の子がテントに1人でいるのは危ない。また、いつ、先程のような魔獣が現れるのか分かったものではないからだ。今は一緒に行動する方が安全である。

 伊吹も恭輔の言葉に安心した。恭輔やアリアがいれば心強い。

アリア
「行かない」

九条伊吹
「そ、そうだよね! 2人は猪と戦ったから疲れてるでしょう? 俺が1人で水を探してくるから、2人は休んでいて!」

 伊吹は赤面して、勢いよく立ち上がった。すぐに人に頼ろうとしてしまう。そんな自分が恥ずかしかった。

アリア
「必要ない。すぐに雨が降る」

 アリアの言葉通り、間も無く雨は降り出した。3人はテントの一部を利用して雨を溜め、水を得ることに成功したのである。その日は、体力温存のため、テントで休むことにした。

_______

 日が落ち、明かりもなく、テントは暗闇に包まれていた。

 ギシッ

 アリアは人の動く気配を近くに感じて目が覚めた。目をこらすと、五寸釘を手にした恭輔が、アリアの衣服に手をかけている。

アリア
「!?」

御山恭輔
「動かないで下さい。死にたくないなら」

 静かに話す恭輔からは、微かな殺気が感じられる。アリアは武術に心得があるし、並大抵の男には負けない自信があった。だが、目の前にいる男は、強力な魔獣さえ倒すことが出来る、化け物じみた戦士である。アリアは即座に抵抗することを諦め、身を固くして、恭輔の隙を伺うことにした。

 ワンピースの裾が少しずつめくられて、アリアの黒いタイツを履いた脚があらわになる。恭輔の鋭い視線が、アリアの脚の上を這い上がってくる。

 獲物を捉えた恭輔の瞳がキラリと光った。

 恭輔の五寸釘を握る手が、閃光のように駆け抜け、対象物を突き刺した。

 だが、アリアは痛みを感じなかった。恐る恐る、五寸釘の先に目をやると、大きな蜘蛛が突き刺さっている。

御山恭輔
「危ない所でしたね」

 スカートの裾を掴んだまま、恭輔が笑顔で話す。

 アリアは、何とも言えない感情から白い肌を赤くした。

 その瞬間を、騒ぎで目を覚ました伊吹がタイミング悪く目撃する。伊吹には、恭輔が蜘蛛を突き付けて、アリアのスカートをめくっているようにしか見えなかったのである。

九条伊吹
「な、何をしてるんだ!? そ、その手を離せ!! 良い人だと思ったのに! どすけべの変態だったなんて!? アリアを離せぇえ~~!!」

 伊吹は涙目になりながら、恭輔に掴みかかった。もちろん伊吹は、自分が恭輔に勝てるなど、これっぽっちも思っていなかった。

 怖い! でも、俺が戦わなかったら、アリアさんが酷い目にあってしまう! 少しの隙でも作ることが出来れば、アリアは逃げられるはずだ! それで俺が死んでも構わない! 例え、地獄で、俺を呪う死者が待っていても!

九条伊吹
「逃げて! 俺が押さえている間に!!」

 伊吹の腕力などで、体格も鍛え方も違う恭輔の事を押さえられるはずもなかったが、予想外の展開に恭輔は固まっていた。流石にスカートからは手を放したが、それ以上は動くことが出来なかった。

 どうしてこうなった? 僕はアリアさんを蜘蛛から助けただけだ。何故、女性の寝込みを襲った変態になってしまった!?

御山恭輔
「...」

 アリアも黙ったまま動かない。

アリア
「...」

九条伊吹
「アリア、何してるの!? 早く逃げて!! ぐぬぬぬぬ...」

 懸命に恭輔を押して、真っ赤な顔になる伊吹を、2人はしばらく見守ったのであった。

 そうして、夜は平和に更けていった。
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