3 / 6
3.ウェブ小説家の異世界転移
しおりを挟む
ウェブ小説作家、時田翔は我が目を疑った。
時田翔
「ここは何処だ?」
自宅でくつろいでいたはずだ。妻が食事を作っている間に、Twitterで相互フォローをしている狸田真の小説でも読もうかと、サイトにアクセスしたところであった。
視界は見渡す限り、針葉樹林の森が広がっている。夜だったはずなのに、今は太陽が高い位置に登っている。それなのに、とても肌寒い。
夢の中か? 疲れていて、眠ってしまったとか...? だが、寒さや物体の質感はリアルだし、意識もはっきりしている。
少し離れた場所に、何やら黒い物体が落ちているのが見えた。微かに動いている。
時田翔
「な、何だ?」
そっと近付く。
毛玉?
黒いふさふさの毛玉がもそもそと動いて、顔を持ち上げた。
猫だ!
その愛くるしい黒猫の姿に、翔は安心して近付き、手を伸ばした。
シャー!!!
黒猫は牙を見せて威嚇してきた。慌てて、翔は手を引っ込める。
黒猫
「触らないで頂けますか? セクハラなんで」
猫が喋った!?
黒猫の尻尾がゆらゆらと揺れる。
尻尾が分かれている!? 妖怪の猫又!? いや、もしかして...
時田翔
「ここは狸田真の小説の世界? だとすると、この猫は魔獣!?」
翔は慌てて間合いをとる。
黒猫
「いえ; 魔獣ではありません。おいらは葛城煌と申します。貴方も狸田さんのフォロワーさん?」
時田翔
「え!? 貴方も!? 私もです! 狸田さんのコラボ企画に参加申し込みを致しました。まさか、こんな事になるとは思っておらず...あ、申し遅れました、私は時田翔と申します。ウェブではミステリーホラーやファンタジーなどの小説を書いております。」
葛城煌
「あ、これはご丁寧に有難うございます。私は歴史ファンタジーなどの小説を書いております」
時田翔
「何故、猫の姿に?」
葛城煌
「あ、はい、それは...」
ガサガサ...
茂みから黒い影が現れた。
翔は震え上がった。
ここが本当に狸田真の小説の世界ならば、この森には恐ろしい魔獣が現れる!
煌も同じことを思ったらしく、翔に駆け寄って、翔の胸にしがみ付いた。
ガササッ
黒い影は、軽やかな足取りで地面を駆け、翔と煌をめがけて飛びかかってきた。
時田翔
「ぎゃぁああああ~~!!!」
葛城煌
「曇りなき 心の月を 先だてて 浮世の闇を 照してぞ行く(伊達政宗の辞世の句)」
翔は尻餅をついて倒れたが、煌の小さな体が潰れないように、魔獣の牙の餌食にならないように、腕に力を込めてガードした。
ベロン! ベロン!
熱くて湿った舌の感触が、翔の腕を舐めまわした。
!?
片目を開けて確認すると、トライカラーのボーダーコリーのような中型犬が、自分の上にのしかかっている。つぶらな瞳で自分達を見つめてくる。
時田翔
「い、犬!?」
葛城煌
「ビ、ビックリした」
犬
「仲間がいたぁ~!」
時田翔&葛城煌
「「犬が喋った!?」」
犬
「そんなこと言ったら、そちらの方も猫じゃないですか!」
葛城煌
「まぁ、そうですけど」
犬
「私はROM-tと申します。お話は聞いていました! 私も狸田さんのフォロワーなんです! あのタヌキ野郎が、コラボ企画なんかするから、大変な目に!!」
時田翔
「貴方も狸田さんの被害者でしたか!」
ROM-t
「お仲間がいて本当に良かった! 心細かったんです! どうやって帰ったらいいのやら、不安で、不安で!」
葛城煌
「でしたら、一緒に行動しましょう! 元の世界に戻る方法を考えないと」
時田翔
「大抵の異世界ファンタジーの場合は、魔王を倒すと元の世界に戻れますよね?」
葛城煌
「恋愛小説の場合はヒーローとカップルになれると帰れるものもありますよね? 乙女ゲームみたいな設定の小説だったらですけど」
ROM-t
「狸田さんの小説の場合は、魔王が魔王ではなくて、引き篭もりの文化人のようですし、主人公の友人でもあるようですよ。魔王を倒す線はないかと思います」
葛城煌
「ロムティさんは、小説を読まれたのですか?」
ROM-t
「はい。以前、狸田さんの小説をTwitterの朗読会で朗読したことがありまして、冒頭の部分は読んでいます」
時田翔
「私も全部ではありませんが読んでいます」
葛城煌
「私は読もうとしたら、この世界に落ちてしまったので、作品紹介だけしか読めていません。でも、小説のタイトルからして主人公は地球からの転生者ですよね? 主人公に会って、相談出来れば、助けてもらえるのでは?」
ROM-t
「そうだ! きっとそうですね!」
時田翔
「確か、主人公はジーンシャン辺境伯の子息で、アントニオ ・ジーンシャンという名前だったはずです! 穏やかな性格のようでしたし、助けてくれる可能性は非常に高いです!」
葛城煌
「では、主人公のいる場所を目指しましょう!」
時田翔
「ここは何処だ?」
自宅でくつろいでいたはずだ。妻が食事を作っている間に、Twitterで相互フォローをしている狸田真の小説でも読もうかと、サイトにアクセスしたところであった。
視界は見渡す限り、針葉樹林の森が広がっている。夜だったはずなのに、今は太陽が高い位置に登っている。それなのに、とても肌寒い。
夢の中か? 疲れていて、眠ってしまったとか...? だが、寒さや物体の質感はリアルだし、意識もはっきりしている。
少し離れた場所に、何やら黒い物体が落ちているのが見えた。微かに動いている。
時田翔
「な、何だ?」
そっと近付く。
毛玉?
黒いふさふさの毛玉がもそもそと動いて、顔を持ち上げた。
猫だ!
その愛くるしい黒猫の姿に、翔は安心して近付き、手を伸ばした。
シャー!!!
黒猫は牙を見せて威嚇してきた。慌てて、翔は手を引っ込める。
黒猫
「触らないで頂けますか? セクハラなんで」
猫が喋った!?
黒猫の尻尾がゆらゆらと揺れる。
尻尾が分かれている!? 妖怪の猫又!? いや、もしかして...
時田翔
「ここは狸田真の小説の世界? だとすると、この猫は魔獣!?」
翔は慌てて間合いをとる。
黒猫
「いえ; 魔獣ではありません。おいらは葛城煌と申します。貴方も狸田さんのフォロワーさん?」
時田翔
「え!? 貴方も!? 私もです! 狸田さんのコラボ企画に参加申し込みを致しました。まさか、こんな事になるとは思っておらず...あ、申し遅れました、私は時田翔と申します。ウェブではミステリーホラーやファンタジーなどの小説を書いております。」
葛城煌
「あ、これはご丁寧に有難うございます。私は歴史ファンタジーなどの小説を書いております」
時田翔
「何故、猫の姿に?」
葛城煌
「あ、はい、それは...」
ガサガサ...
茂みから黒い影が現れた。
翔は震え上がった。
ここが本当に狸田真の小説の世界ならば、この森には恐ろしい魔獣が現れる!
煌も同じことを思ったらしく、翔に駆け寄って、翔の胸にしがみ付いた。
ガササッ
黒い影は、軽やかな足取りで地面を駆け、翔と煌をめがけて飛びかかってきた。
時田翔
「ぎゃぁああああ~~!!!」
葛城煌
「曇りなき 心の月を 先だてて 浮世の闇を 照してぞ行く(伊達政宗の辞世の句)」
翔は尻餅をついて倒れたが、煌の小さな体が潰れないように、魔獣の牙の餌食にならないように、腕に力を込めてガードした。
ベロン! ベロン!
熱くて湿った舌の感触が、翔の腕を舐めまわした。
!?
片目を開けて確認すると、トライカラーのボーダーコリーのような中型犬が、自分の上にのしかかっている。つぶらな瞳で自分達を見つめてくる。
時田翔
「い、犬!?」
葛城煌
「ビ、ビックリした」
犬
「仲間がいたぁ~!」
時田翔&葛城煌
「「犬が喋った!?」」
犬
「そんなこと言ったら、そちらの方も猫じゃないですか!」
葛城煌
「まぁ、そうですけど」
犬
「私はROM-tと申します。お話は聞いていました! 私も狸田さんのフォロワーなんです! あのタヌキ野郎が、コラボ企画なんかするから、大変な目に!!」
時田翔
「貴方も狸田さんの被害者でしたか!」
ROM-t
「お仲間がいて本当に良かった! 心細かったんです! どうやって帰ったらいいのやら、不安で、不安で!」
葛城煌
「でしたら、一緒に行動しましょう! 元の世界に戻る方法を考えないと」
時田翔
「大抵の異世界ファンタジーの場合は、魔王を倒すと元の世界に戻れますよね?」
葛城煌
「恋愛小説の場合はヒーローとカップルになれると帰れるものもありますよね? 乙女ゲームみたいな設定の小説だったらですけど」
ROM-t
「狸田さんの小説の場合は、魔王が魔王ではなくて、引き篭もりの文化人のようですし、主人公の友人でもあるようですよ。魔王を倒す線はないかと思います」
葛城煌
「ロムティさんは、小説を読まれたのですか?」
ROM-t
「はい。以前、狸田さんの小説をTwitterの朗読会で朗読したことがありまして、冒頭の部分は読んでいます」
時田翔
「私も全部ではありませんが読んでいます」
葛城煌
「私は読もうとしたら、この世界に落ちてしまったので、作品紹介だけしか読めていません。でも、小説のタイトルからして主人公は地球からの転生者ですよね? 主人公に会って、相談出来れば、助けてもらえるのでは?」
ROM-t
「そうだ! きっとそうですね!」
時田翔
「確か、主人公はジーンシャン辺境伯の子息で、アントニオ ・ジーンシャンという名前だったはずです! 穏やかな性格のようでしたし、助けてくれる可能性は非常に高いです!」
葛城煌
「では、主人公のいる場所を目指しましょう!」
0
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】領主になったので女を殴って何が悪いってやつには出て行ってもらいます
富士とまと
ファンタジー
男尊女子が激しい国で、嫌がらせで辺境の村の領主魔法爵エリザ。虐げられる女性のために立ち上がり、村を発展させ改革し、独立しちゃおうかな。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる