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4.やっぱりここでも勘違いコメディ
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木のぼりが得意な煌と、鼻の効くROM-tのお陰で、森を抜けて街を見つけることは簡単に出来た。
だが、問題は城壁の関所にあった。
憲兵1
「身分証明書が無いと城壁内の街には入れない決まりだ」
関所の列に並んでようやく、順番がまわって来たというのに、冷たくあしらわれてしまう。
時田翔
「そ、そんな! そこを何とか!」
憲兵1
「悪いな。ここは他の緩い領とは、勝手が違うんだ。何せ国境線を守る辺境伯領だ。山を超えたらすぐに魔族領なんだぞ? 身元の分からない奴を城下町に入れることは出来ない。商売がしたいなら、城壁外の街でするんだな」
なんてことだ! 普通、ファンタジー小説なら、ギルドに登録するとか、騎士と仲良くなるとかして、関所は通過出来るものだろう? なんで、そんな所をリアルな設定にしているんだ!? 不味いぞ! 何とかしなくては! ここで、追い返されてしまったら、絶対絶命だ!
すでに日は傾きはじめ、風が大分冷たくなっている。
時田翔
「じ、実は、アントニオ ・ジーンシャン様にお話しないといけないことがございまして! 何とか、取り次いで頂けないでしょうか?」
憲兵1
「トニー様に?」
時田翔
「はい! 地球から来た者だと言って頂ければ、きっと分かって下さるはずです!」
憲兵は少し沈黙し、後ろを振り返ると、仲間の憲兵に意見を求めた。
憲兵1
「どう思う?」
憲兵2
「あのなぁ~、勇者様や聖女様に会いたくて、嘘を吐く奴なんていっぱいいるだろ? いちいち真に受けてどうする?」
憲兵1
「そうだよな。じゃあ、そういう訳だから、帰ってくれるかな?」
時田翔
「ま、待って下さい! 私達は今、無一文でして、アントニオ様にお会い出来ないと、宿にも泊まれないのです! このままだと、死んでしまいます!」
翔は土下座して、地面に擦り付けんばかりに頭を下げた。
憲兵1
「うぅ~ん、そう言われてもなぁ~?」
若い憲兵達が困っていると、奥から年配の憲兵が顔を出した。
年配の憲兵
「どうしたんだお前ら! さっさと仕事をしろ! 条件を満たしていない奴を城下町に入れられる訳がないだろう! さっさと叩き出して、次の人の手続きをしろ!」
もう駄目なのか!
翔の脳裏に、家で待っているだろう奥さんの姿が浮かんだ。小説を読んで面白いと言ってくれて、表紙の絵まで描いてくれた優しい女だ。
何としてでも生きて帰るんだ!
翔は今度こそ頭を地面に擦り付けて、声を絞り出した。
時田翔
「お願いします! お願いします! どうか!」
だが、無情にも憲兵は冷たい声で否定した。
年配の憲兵
「警備兵!」
その声に、憲兵2人が飛んできて翔の腕を掴み、無理矢理立たせると、関所の外へ押し出そうとした。
時田翔
「どうか! お慈悲を!」
その時、煌のキャットアイズが煌いた。
柔よく剛を制す! 肯綮に中れ!
華麗に憲兵の前に踊り出す。
煌
「まぁ~う!」
一声鳴いたと思ったら、ヒラリと跳んで、翔を捕まえている憲兵の肩の上へと着地した。ザラリとした舌で、憲兵の耳を舐める。
憲兵が堪らず、翔を離して耳を押さえると、煌はもう1人の憲兵へと飛び移り、柔らかい尻尾で憲兵の顎の下をくすぐってから、首筋を甘噛みした。
噛まれた憲兵もゾクリと身を震わせ、翔から手を離すと、首の後ろを押さえながら、前屈みにしゃがみ込む
煌は地面に着地すると年配の憲兵の足に頭突きして身体を擦りつけた。
年配の憲兵
「む!?」
年配の憲兵が煌を捕まえようとした瞬間にその手からスルリと抜け出した。
警備兵達は慌てて追いかけて、捕まえようとするが、煌は液体のように身体をくねらせてすり抜けてしまう。
憲兵の1人が煌に向けて手をかざした。
煌の髭がピクピクと動き、異変を察知する。煌は危険を感じて踵を返した。
途端に地面が凍り付き、霜柱が立った。
魔法だ!?
そう、ここは魔法の溢れるファンタジーの世界である。
憲兵達は、再び魔法で煌を捕らえようと手をかざした。
腹を括るしかあるまい。こんなことはしたくなかったが、最終手段を用いよう。
煌は年配の憲兵を睨みつけると、目にも留まらぬ速さで突進し!
コテンッ!
直前で、転がって腹を見せた。
煌
「うみゃぁ~ん!」
お腹側のフワフワの柔らかい毛が、あらわになる。くねん、と頭を傾げて、顎の下を突き出すと、小さな牙の間から赤い舌をチロッと出した。
「「「!?」」」
何て可愛いんだ! あざとい! あざと過ぎるぞ!
年配の憲兵は身悶えしたが、すんでのところで踏みとどまった。
勤務中だ!!
畳み掛けるようにして、煌がウネウネすると、警備兵達は悶絶した。
あと一押しだな。
煌はROM-tにアイコンタクトを送った!
点睛開眼! 仕上げだ!
駆け寄って来たROM-tと一緒に必殺技を決める。
シンクロナイズド腹見せぇ~!!
ゴロン!
ゴロン!
フサァ~と風に腹毛がさんざめいた。
年配の憲兵
「ウォッホン!」
年配の憲兵は、徐に咳払いした。
年齢の憲兵
「見たところ髪も茶色で魔力も低そうだし、身分証明書も持っていない所を見ると、遠路遥々、南の国から来たんだろ? ここは寒い北国だし、寒さに強いワンちゃんはいいとしても、猫ちゃん連れで野宿は可愛いそうじゃないか! 街は駄目でも、留置所に泊めてやりなさい」
憲兵1
「そうですね! ジーンシャンは王国の北の端ですし、今は初夏といえど、夜は大変な寒さです。薄着で宿のない人間を見捨てることは、人を見殺しにすることと同じでしょう!」
憲兵2
「ここは勇者様と聖女様の治める領地だ! 人助けはジーンシャンの誇りだよ!はっはっはっ!」
時田翔
「有難うございます!」
年配の憲兵
「いやいや、猫好きと犬好きに悪人はおらんからな!」
煌とROM-tはハイタッチして勝利を喜んだ。
そうして案内された部屋は、暖かくて綺麗な空間だった。広くはないが、ベッドとトイレ、暖房器具にシャワールームまで付いている。
時田翔
「綺麗な部屋なのですね。有難うございます」
年配の憲兵
「留置所は罪人とは決まっていない容疑者も入るからね。無実の人のことも考えて作られておるんですよ」
憲兵1
「君は罪人ではないから鍵は開けておくけど、だからといって自由に歩き回らないでくれよ。城壁内の街に逃げても、君のような特徴的な外国人は目立つし、探索魔法が得意な魔導騎士だっているんだからな!」
若い憲兵は一見冷たそうな態度だが、暖房器具の温度調整をしてくれ、布団などの寝具も用意してくれた。もしかしたら、結構、優しい人なのかもしれない。
そう思っていたら、次から次へと、憲兵達が入れ替わり立ち替わりやってきた。
憲兵3
「珍しい南国からの旅行者がいるらしいな?」
憲兵2
「うちのカミさんが作った惣菜パンがあるんだ。お前さん食べるか?」
憲兵3
「特産品のお菓子はどうだ? 口に合うか?」
憲兵4
「猫ちゃんとワンちゃんに餌をあげてもいい?」
憲兵3
「ここは寒いだろ? 手袋とマフラーを貸してあげるよ」
憲兵4
「温かいお茶が欲しいだろ? それとも酒の方がいいか?」
皆が色々な差し入れを持ってきてくれるので、翔、煌、ROM-tの3名は、すっかりお腹がいっぱいになって、寛いだ。北国の人情みたいなものを感じて、なんだか心までが暖かくなる。
時田翔
「有難うございます」
至れり尽くせりだったが、トイレに入った時に問題が起きた。ボタンらしきものはついているのだが、押しても水が流れない。
どうやって流すんだ? そもそも、水が流れるわけじゃなかったのか? する前に、ちゃんと説明を聞けば良かった。
後悔しても遅い、翔は部屋に来ていた憲兵に、恥を忍んで尋ねた。
時田翔
「申し訳ありません。トイレの使い方が分からなくて、どうやって処理をすれば良いでしょうか?」
憲兵4
「あぁ、それならここだよ」
憲兵がトイレについているボタンのようなものに手をかざすと、水が流れてトイレは綺麗になった。
時田翔
「有難うございます。やはり、こちらだったのですね! 押しても流れず、困っていたのです。そうか、手をかざせばいいのですね!意外とハイテクなのですね!」
憲兵は目を丸くして翔を凝視した後、大きな声で叫び始めた。
憲兵4
「魔力無しだったのか!?」
どうした、どうしたと、他の憲兵達も集まってくる。
憲兵4
「あの外国人、魔力が無いらしい」
憲兵3
「え!? 大変じゃないか!?」
魔力無しは生活に必要な魔法や魔道具が使えないため、この国では身体障害者として認識されるのである。
憲兵1
「可哀想に、だから動物連れで漂流していたのか! 身分証もないし、無一文だし、おかしいと思ったんだ! 」
憲兵2
「そうそう、観光客でもなければ、商人でもないし! 無国籍民だったのか!」
年配の憲兵は涙を流し始めた。
年配の憲兵
「今まで、さぞや辛い暮らしをして来た事だろう。こんなに痩せ細って!」
時田翔
「あ、私は、そういう遺伝で...」
年配の憲兵
「大丈夫だよ、分かっている! ご両親も焦茶の髪だったのだろう? 生まれながらにして、魔力無しの焦茶では、生活に不自由するだけではなく、差別や偏見の目にも晒されて来たんだろう。」
憲兵1
「そうそう! 俺達のトニー様も苦労なさっていらしたからな」
憲兵2
「おい! 誰か、明日、戸籍申請を手伝ってやれ!」
憲兵3
「安心しな! 勇者様や聖女様でなくても、人助けが好きなお節介野郎はジーンシャン領にはいっぱいいるんだ!」
憲兵4
「ここは魔素が濃い土地だけど、気分が悪くなったりしていないか? 魔力無しだと、魔素に弱いんだろ?」
時田翔
「大丈夫です! あ、有難うございます! 皆さん!」
こうして、転移者3名は、憲兵達の助けを得られることとなった。
だが、問題は城壁の関所にあった。
憲兵1
「身分証明書が無いと城壁内の街には入れない決まりだ」
関所の列に並んでようやく、順番がまわって来たというのに、冷たくあしらわれてしまう。
時田翔
「そ、そんな! そこを何とか!」
憲兵1
「悪いな。ここは他の緩い領とは、勝手が違うんだ。何せ国境線を守る辺境伯領だ。山を超えたらすぐに魔族領なんだぞ? 身元の分からない奴を城下町に入れることは出来ない。商売がしたいなら、城壁外の街でするんだな」
なんてことだ! 普通、ファンタジー小説なら、ギルドに登録するとか、騎士と仲良くなるとかして、関所は通過出来るものだろう? なんで、そんな所をリアルな設定にしているんだ!? 不味いぞ! 何とかしなくては! ここで、追い返されてしまったら、絶対絶命だ!
すでに日は傾きはじめ、風が大分冷たくなっている。
時田翔
「じ、実は、アントニオ ・ジーンシャン様にお話しないといけないことがございまして! 何とか、取り次いで頂けないでしょうか?」
憲兵1
「トニー様に?」
時田翔
「はい! 地球から来た者だと言って頂ければ、きっと分かって下さるはずです!」
憲兵は少し沈黙し、後ろを振り返ると、仲間の憲兵に意見を求めた。
憲兵1
「どう思う?」
憲兵2
「あのなぁ~、勇者様や聖女様に会いたくて、嘘を吐く奴なんていっぱいいるだろ? いちいち真に受けてどうする?」
憲兵1
「そうだよな。じゃあ、そういう訳だから、帰ってくれるかな?」
時田翔
「ま、待って下さい! 私達は今、無一文でして、アントニオ様にお会い出来ないと、宿にも泊まれないのです! このままだと、死んでしまいます!」
翔は土下座して、地面に擦り付けんばかりに頭を下げた。
憲兵1
「うぅ~ん、そう言われてもなぁ~?」
若い憲兵達が困っていると、奥から年配の憲兵が顔を出した。
年配の憲兵
「どうしたんだお前ら! さっさと仕事をしろ! 条件を満たしていない奴を城下町に入れられる訳がないだろう! さっさと叩き出して、次の人の手続きをしろ!」
もう駄目なのか!
翔の脳裏に、家で待っているだろう奥さんの姿が浮かんだ。小説を読んで面白いと言ってくれて、表紙の絵まで描いてくれた優しい女だ。
何としてでも生きて帰るんだ!
翔は今度こそ頭を地面に擦り付けて、声を絞り出した。
時田翔
「お願いします! お願いします! どうか!」
だが、無情にも憲兵は冷たい声で否定した。
年配の憲兵
「警備兵!」
その声に、憲兵2人が飛んできて翔の腕を掴み、無理矢理立たせると、関所の外へ押し出そうとした。
時田翔
「どうか! お慈悲を!」
その時、煌のキャットアイズが煌いた。
柔よく剛を制す! 肯綮に中れ!
華麗に憲兵の前に踊り出す。
煌
「まぁ~う!」
一声鳴いたと思ったら、ヒラリと跳んで、翔を捕まえている憲兵の肩の上へと着地した。ザラリとした舌で、憲兵の耳を舐める。
憲兵が堪らず、翔を離して耳を押さえると、煌はもう1人の憲兵へと飛び移り、柔らかい尻尾で憲兵の顎の下をくすぐってから、首筋を甘噛みした。
噛まれた憲兵もゾクリと身を震わせ、翔から手を離すと、首の後ろを押さえながら、前屈みにしゃがみ込む
煌は地面に着地すると年配の憲兵の足に頭突きして身体を擦りつけた。
年配の憲兵
「む!?」
年配の憲兵が煌を捕まえようとした瞬間にその手からスルリと抜け出した。
警備兵達は慌てて追いかけて、捕まえようとするが、煌は液体のように身体をくねらせてすり抜けてしまう。
憲兵の1人が煌に向けて手をかざした。
煌の髭がピクピクと動き、異変を察知する。煌は危険を感じて踵を返した。
途端に地面が凍り付き、霜柱が立った。
魔法だ!?
そう、ここは魔法の溢れるファンタジーの世界である。
憲兵達は、再び魔法で煌を捕らえようと手をかざした。
腹を括るしかあるまい。こんなことはしたくなかったが、最終手段を用いよう。
煌は年配の憲兵を睨みつけると、目にも留まらぬ速さで突進し!
コテンッ!
直前で、転がって腹を見せた。
煌
「うみゃぁ~ん!」
お腹側のフワフワの柔らかい毛が、あらわになる。くねん、と頭を傾げて、顎の下を突き出すと、小さな牙の間から赤い舌をチロッと出した。
「「「!?」」」
何て可愛いんだ! あざとい! あざと過ぎるぞ!
年配の憲兵は身悶えしたが、すんでのところで踏みとどまった。
勤務中だ!!
畳み掛けるようにして、煌がウネウネすると、警備兵達は悶絶した。
あと一押しだな。
煌はROM-tにアイコンタクトを送った!
点睛開眼! 仕上げだ!
駆け寄って来たROM-tと一緒に必殺技を決める。
シンクロナイズド腹見せぇ~!!
ゴロン!
ゴロン!
フサァ~と風に腹毛がさんざめいた。
年配の憲兵
「ウォッホン!」
年配の憲兵は、徐に咳払いした。
年齢の憲兵
「見たところ髪も茶色で魔力も低そうだし、身分証明書も持っていない所を見ると、遠路遥々、南の国から来たんだろ? ここは寒い北国だし、寒さに強いワンちゃんはいいとしても、猫ちゃん連れで野宿は可愛いそうじゃないか! 街は駄目でも、留置所に泊めてやりなさい」
憲兵1
「そうですね! ジーンシャンは王国の北の端ですし、今は初夏といえど、夜は大変な寒さです。薄着で宿のない人間を見捨てることは、人を見殺しにすることと同じでしょう!」
憲兵2
「ここは勇者様と聖女様の治める領地だ! 人助けはジーンシャンの誇りだよ!はっはっはっ!」
時田翔
「有難うございます!」
年配の憲兵
「いやいや、猫好きと犬好きに悪人はおらんからな!」
煌とROM-tはハイタッチして勝利を喜んだ。
そうして案内された部屋は、暖かくて綺麗な空間だった。広くはないが、ベッドとトイレ、暖房器具にシャワールームまで付いている。
時田翔
「綺麗な部屋なのですね。有難うございます」
年配の憲兵
「留置所は罪人とは決まっていない容疑者も入るからね。無実の人のことも考えて作られておるんですよ」
憲兵1
「君は罪人ではないから鍵は開けておくけど、だからといって自由に歩き回らないでくれよ。城壁内の街に逃げても、君のような特徴的な外国人は目立つし、探索魔法が得意な魔導騎士だっているんだからな!」
若い憲兵は一見冷たそうな態度だが、暖房器具の温度調整をしてくれ、布団などの寝具も用意してくれた。もしかしたら、結構、優しい人なのかもしれない。
そう思っていたら、次から次へと、憲兵達が入れ替わり立ち替わりやってきた。
憲兵3
「珍しい南国からの旅行者がいるらしいな?」
憲兵2
「うちのカミさんが作った惣菜パンがあるんだ。お前さん食べるか?」
憲兵3
「特産品のお菓子はどうだ? 口に合うか?」
憲兵4
「猫ちゃんとワンちゃんに餌をあげてもいい?」
憲兵3
「ここは寒いだろ? 手袋とマフラーを貸してあげるよ」
憲兵4
「温かいお茶が欲しいだろ? それとも酒の方がいいか?」
皆が色々な差し入れを持ってきてくれるので、翔、煌、ROM-tの3名は、すっかりお腹がいっぱいになって、寛いだ。北国の人情みたいなものを感じて、なんだか心までが暖かくなる。
時田翔
「有難うございます」
至れり尽くせりだったが、トイレに入った時に問題が起きた。ボタンらしきものはついているのだが、押しても水が流れない。
どうやって流すんだ? そもそも、水が流れるわけじゃなかったのか? する前に、ちゃんと説明を聞けば良かった。
後悔しても遅い、翔は部屋に来ていた憲兵に、恥を忍んで尋ねた。
時田翔
「申し訳ありません。トイレの使い方が分からなくて、どうやって処理をすれば良いでしょうか?」
憲兵4
「あぁ、それならここだよ」
憲兵がトイレについているボタンのようなものに手をかざすと、水が流れてトイレは綺麗になった。
時田翔
「有難うございます。やはり、こちらだったのですね! 押しても流れず、困っていたのです。そうか、手をかざせばいいのですね!意外とハイテクなのですね!」
憲兵は目を丸くして翔を凝視した後、大きな声で叫び始めた。
憲兵4
「魔力無しだったのか!?」
どうした、どうしたと、他の憲兵達も集まってくる。
憲兵4
「あの外国人、魔力が無いらしい」
憲兵3
「え!? 大変じゃないか!?」
魔力無しは生活に必要な魔法や魔道具が使えないため、この国では身体障害者として認識されるのである。
憲兵1
「可哀想に、だから動物連れで漂流していたのか! 身分証もないし、無一文だし、おかしいと思ったんだ! 」
憲兵2
「そうそう、観光客でもなければ、商人でもないし! 無国籍民だったのか!」
年配の憲兵は涙を流し始めた。
年配の憲兵
「今まで、さぞや辛い暮らしをして来た事だろう。こんなに痩せ細って!」
時田翔
「あ、私は、そういう遺伝で...」
年配の憲兵
「大丈夫だよ、分かっている! ご両親も焦茶の髪だったのだろう? 生まれながらにして、魔力無しの焦茶では、生活に不自由するだけではなく、差別や偏見の目にも晒されて来たんだろう。」
憲兵1
「そうそう! 俺達のトニー様も苦労なさっていらしたからな」
憲兵2
「おい! 誰か、明日、戸籍申請を手伝ってやれ!」
憲兵3
「安心しな! 勇者様や聖女様でなくても、人助けが好きなお節介野郎はジーンシャン領にはいっぱいいるんだ!」
憲兵4
「ここは魔素が濃い土地だけど、気分が悪くなったりしていないか? 魔力無しだと、魔素に弱いんだろ?」
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