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第二幕 幼少期
75.竜騎士長の娘 ❤︎
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ディアナに城に連れて来られた娘は、限られた人間しか入ることが許されない4階に通され、見事な絵画の掛かる廊下を歩いていた。フカフカの絨毯の毛が自分の体重で潰れたら嫌だなと思いながら、そっと歩いく。
お城に来た事はあったが、領主様のプライベートなフロアに来るのは初めてだった。
プライベートダイニングに通されると、そこは更に別世界だった。ブルーに金の獅子が描かれた絨毯が敷かれ、真っ白なテーブルクロスに、ブルーのランチョンマット、金縁のある白いお皿、青いナプキン。シャンデリアと卓上のグラスがキラキラ輝いてる。
大きな窓の外には城下町の夜景が広がっている。背の高い建物が殆どないジーンシャン領では、夜景を一望出来る場所は丘の上にある城のみである。
見るからに高価な花が生けられ、ウットリするような良い香りが漂う。
でも、そんなことよりも、もっとびっくりしたのは、イケメンの博物館なのかと思うほどの美形が揃っていることである。
ジュゼッペ様だけでなく、何故かリュシアン様もいらっしゃるし、見知らぬ背の高い男性2人は、もはや人間離れした美しさである。久しぶりにお会いする領主様も芸術品のように美しい。
聖女様も少し膨よかになられたが、歳をとられた今でも、とても綺麗な方だ。
クラウディオ様やシンシア様、マリッサ様も上等な服を着ていらっしゃる。そりゃそうだ。領主様主催の晩餐会なのだから!
そして、この焦茶の男の子が、噂のトニー様に違いない。こんなに暗い髪の色の人間に会うのは、初めてだ。とてもお洒落で、大人びている。
トニー様はニコニコしながら、私の頭の天辺からつま先までを、興味深そうに観察してくる。正直落ち着かない。
ディアナの娘は、あまりにもアントニオが見てくるので、自分のみすぼらしいドレスが気になった。
突然母に、『晩餐会に一緒に来なさい』と言われたが、あまりに急ではないかね? 母よ! 何が一体どうしてこうなったんだ? うっかり、着替えもせずに来てしまった。汚れてもいいようにと買った茶色の安い普段着用のドレスのままで....でも、まぁ、いっか、着て来てしまったものはしょうがない。
母ディアナもお洒落には疎く、10年以上前に買った、古いデザインのドレスを着ている。しかし、いつもパンツスタイルの母がドレスを着ているのだ。これで、目一杯のお洒落なのだろう。
まぁ、多少着飾ったところで、どうせ断られるだろう、何せ相手は、あのジュゼッペ様だ。
ディアナの娘はそんな事を考えていたが、アントニオは、ご令嬢のドレスを見て喜んでいた。
茶色のドレスだ!
貴族のお嬢様は大抵、ピンクや水色、赤や黄色など華やかなドレスを着たがるものだ。茶色のドレスを持っていて、晩餐会に来てくる者はあまりいない。
だから、城の晩餐会にわざわざ茶色のドレスを着て来てくれたという事は、アントニオの焦茶の髪を嫌っていないし、好ましく思っているという意思表示に違いない!
しかも、なんて立派な体格! 筋肉質で背が高い! ぺったんこの靴を履いているのに、ジュゼッペと同じくらいの身長がある。とても良い声が出そうだ!
アントニオの好みは、質の良い筋肉としっかりした骨格を持つ美声の持ち主である。
あれ? でも、ブレンダは小柄だと聞いていたけど?
クラウディオ
「本日は、グリエルモ様主催の晩餐会にお招き頂きまして誠に有難うございます。息子のために、このような機会を与えて下さいまして、心より御礼申し上げます。」
グリエルモ
「クラウディオ、皆の紹介をしてくれ。」
クラウディオ
「かしこまりました。
こちらにおわすお方が、言わずと知れたジーンシャン辺境伯グリエルモ様でございます。並びに、お妃様のメアリー様、御子息のアントニオ様、そして、アントニオ様のご友人であらせられるリン様、ルド様でございます。
私がジーンシャン家筆頭執事のクラウディオ・サクラーティ、妻のシンシア、息子のジュゼッペでございます。ジュゼッペは29歳。アントニオ様の執事をさせて頂いております。
また、モルナール家より、竜騎士長のディアナ・モルナール様、御息女のアウロラ嬢でございます。
そして、リュシアン・フルードラン。リュシアンは竜騎士の将校として魔導騎士団に勤務すると同時に、アントニオ様の護衛役も務めております。27歳です。
本日は、紹介役として侍女頭のマリッサ・バトラーにも同席して頂いております。
ディアナ様、アウロラ嬢のご紹介をお願い致します。」
ディアナ
「本日はこのような素晴らしい会にお招き頂き有難うございます。ディアナ・モルナールと申します。
実は、ブレンダは体調不良にり、この場に来ることが出来ませんでした。大変申し訳ありません。
こちらのアウロラは、20歳でございます。領内の武官学校を卒業した後、アウロラはモルナール家の管理をしております。この子も独身ですので、姉の代わりに連れて参りました。
本日、来られなかったブレンダは27歳で、領内の文官学校を卒業しました後は、マリッサ様のもと、侍女として働かせて頂いております。
穏やかで面倒見のいい性格をしております。
その、大変、申し上げ難いのですが、もしも宜しければ、もう一度、ブレンダにチャンスを頂けないのでしょうか?後日、我が家にサクラーティの皆様をご招待させて頂きたく存じます!」
グリエルモ
「ご体調が優れないのだったら、仕方がない。後日、私もモルナール家に伺おう。サクラーティ家の皆もそれでいいかい?」
クラウディオ
「もちろんでございます。伺わせて頂きます。」
ジュゼッペはちっとも良くないと思った。
今日なら、リュシアンやトニー様のご友人がいるから、ブレンダはイケメンに目がいって、自分を選ぶ可能性は低い。お見合いの話を断らなくても、済んだだろう。だが、後日、自宅に伺う時は自分だけになる。そうすると、ブレンダは自分を選ぶしかないのだ。
リュシアンの方を見ると、リュシアンは余裕で澄ました顔をしている。
アウロラ
「母様やめて下さい。ブー子姉様は極度の人見知りなんですから。今日だって『領主様主催の』と聞いただけで、お腹が痛くなったのですよ?ブー子姉様には、社交界の中で暮らすジュゼッペ様の妻なんて無理です。」
ディアナ
「なんて事をいうのです! せっかくのお見合い話なのに! これが最後のチャンスなのです! 可能性がゼロじゃない限り悪あがきくらいさせて!それに、ブレンダをブー子というのもやめなさい!」
アウロラ
「はいはい、わかりましたよ。でもね、せっかくのお見合いに来ないのは姉様ですよ。」
アントニオ
「あの、アウロラ嬢も独身で恋人がいらっしゃらないのですか?」
ディアナ
「はい。残念ながら。」
アントニオ
「実は、独身で結婚相手が見つからないのはジュゼッペだけではなく、リュシアンもなのです。」
ディアナ
「え!? リュシアンが?」
アントニオ
「そうです。もし、お嬢様が宜しければ、リュシアンとの結婚も考えて頂けないでしょうか?」
ディアナ
「もちろんでございます! アウロラ!」
アウロラ
「え? リュシアン様でも良いのですか!? それなら結婚しても、姉様は今迄とあまり変わらない生活が出来ますよね?」
ディアナ
「?......お前の結婚に、何故、ブレンダが関係するのです?」
アウロラ
「私は結婚しませんよ。ブレンダ姉様がリュシアン様と結婚したらどうか、という話です。」
ジュゼッペ
「いいと思います! ディアナ様も竜騎士、リュシアンも竜騎士なのですから、結婚しても、ブレンダは何も変わらず生活が出来ますよ! なんなら、リュシアンが婿養子に入ればいい!」
リュシアン
「.......は?」
リュシアンは、自分は、もう、絶対にブー子を押し付けられないと思って油断していたので、咄嗟に否定の言葉が出て来なかった。
ディアナ
「婿養子!? つまり、ブレンダは、今のまま家にいてよくて、今まで通りの生活が出来て、アウロラが今後、もし、嫁に行っても、私は1人にならずに済むのですか?」
ディアナは、夢のような話に目を輝かせた。
グリエルモ
「では、決まりだな。」
グリエルモとメアリーはニコニコしながら、トニーのために結婚してくれるね? オーラをリュシアンに向けて放っている。
アントニオ
「え!? まだ、会っていないのに、決まりなのですか?」
アントニオの援軍にリュシアンの顔が輝く。
流石トニー様! そもそも、私は課題を免除されたはずです! デブと無理矢理結婚させないで欲しい!
ディアナ
「会ったことがないわけではありませんよ。ブレンダは私に会いに来る事がありますので、リュシアンには何度も会っています。」
アントニオ
「では、リュシアンに対しては人見知りも大丈夫なんですね!」
リン
「よかったな! リュシアンは性格の善い女性を希望していただろ? しかも、人見知りなら、浮気もされ難いじゃないか!」
アントニオ
「条件としては、リュシアンの希望も叶いますし、ブレンダ嬢やディアナ様の悩みも解決しますね! どうですか? リュシアン?」
リュシアンは、ブレンダと同じ歳なので、ブレンダの事を年増だとは思っていないが、太っている女は嫌だった。
しかし、この状況で、デブだから無理ですとは、言い出しにくい。だが、言わなければ、生涯の伴侶が決まってしまう! 今まで掻いたことのないような冷や汗が流れる。
リュシアン
「あ.....の......、膨よかな方は苦手で....」
ディアナはガッカリした。
そりゃそうだ。領内の独身男性人気ナンバーワンが、問題だらけのブー子と結婚してくれるはずがない。
アントニオ
「あぁ、なるほど! 大丈夫ですよ! ブレンダ嬢には、母上と一緒にダイエットしてもらいましょう!」
アウロラ
「姉様は、私の食事に付き合って太ったみたいですので、食事を管理すれば、痩せるのはそれほど、難しくないと思います!」
アントニオ
「他には? 何か、結婚するにあたって問題がありますか? それとも、条件には問題が無いけれど、好きになれそうにはないですか?」
リュシアン
「あ、いえ.......」
ジュゼッペ
「ブレンダは確かに、痩せていた頃は可愛いかった。」
リュシアンは考えた。見た目の問題がなければ、確かにブレンダ嬢には理想的な条件が揃っている。
ブレンダ嬢は優しくて、貞淑な女性だ。身分も年齢も釣り合うし、他領出身のリュシアンにとって、竜騎士長の後ろ盾が出来る事は心強い。ディアナは、穏やかな上司で、リュシアンとの関係も良好だ。リュシアンはジュゼッペのように、社交の場に頻繁に顔を出すことはないし、むしろ、家を守ってもらっていた方が良い。モルナール家は城下町の一等地に屋敷があり、婿養子として家に入り、その家を相続出来るということも非常に魅力的である。
リュシアン
「宜しくお願い致します。」
ディアナ
「リュシアン! 有難う!」
ディアナが泣いて喜ぶので、リュシアンは、まぁ、この人が義母(はは)になるのは、いいかもしれないと思うのであった。
こうして、リュシアンとブレンダの婚約が決まった。正式な婚約は、後日、モルナール家に訪れ、リュシアンがプロポーズし、ブレンダが同意することで成立する。
お城に来た事はあったが、領主様のプライベートなフロアに来るのは初めてだった。
プライベートダイニングに通されると、そこは更に別世界だった。ブルーに金の獅子が描かれた絨毯が敷かれ、真っ白なテーブルクロスに、ブルーのランチョンマット、金縁のある白いお皿、青いナプキン。シャンデリアと卓上のグラスがキラキラ輝いてる。
大きな窓の外には城下町の夜景が広がっている。背の高い建物が殆どないジーンシャン領では、夜景を一望出来る場所は丘の上にある城のみである。
見るからに高価な花が生けられ、ウットリするような良い香りが漂う。
でも、そんなことよりも、もっとびっくりしたのは、イケメンの博物館なのかと思うほどの美形が揃っていることである。
ジュゼッペ様だけでなく、何故かリュシアン様もいらっしゃるし、見知らぬ背の高い男性2人は、もはや人間離れした美しさである。久しぶりにお会いする領主様も芸術品のように美しい。
聖女様も少し膨よかになられたが、歳をとられた今でも、とても綺麗な方だ。
クラウディオ様やシンシア様、マリッサ様も上等な服を着ていらっしゃる。そりゃそうだ。領主様主催の晩餐会なのだから!
そして、この焦茶の男の子が、噂のトニー様に違いない。こんなに暗い髪の色の人間に会うのは、初めてだ。とてもお洒落で、大人びている。
トニー様はニコニコしながら、私の頭の天辺からつま先までを、興味深そうに観察してくる。正直落ち着かない。
ディアナの娘は、あまりにもアントニオが見てくるので、自分のみすぼらしいドレスが気になった。
突然母に、『晩餐会に一緒に来なさい』と言われたが、あまりに急ではないかね? 母よ! 何が一体どうしてこうなったんだ? うっかり、着替えもせずに来てしまった。汚れてもいいようにと買った茶色の安い普段着用のドレスのままで....でも、まぁ、いっか、着て来てしまったものはしょうがない。
母ディアナもお洒落には疎く、10年以上前に買った、古いデザインのドレスを着ている。しかし、いつもパンツスタイルの母がドレスを着ているのだ。これで、目一杯のお洒落なのだろう。
まぁ、多少着飾ったところで、どうせ断られるだろう、何せ相手は、あのジュゼッペ様だ。
ディアナの娘はそんな事を考えていたが、アントニオは、ご令嬢のドレスを見て喜んでいた。
茶色のドレスだ!
貴族のお嬢様は大抵、ピンクや水色、赤や黄色など華やかなドレスを着たがるものだ。茶色のドレスを持っていて、晩餐会に来てくる者はあまりいない。
だから、城の晩餐会にわざわざ茶色のドレスを着て来てくれたという事は、アントニオの焦茶の髪を嫌っていないし、好ましく思っているという意思表示に違いない!
しかも、なんて立派な体格! 筋肉質で背が高い! ぺったんこの靴を履いているのに、ジュゼッペと同じくらいの身長がある。とても良い声が出そうだ!
アントニオの好みは、質の良い筋肉としっかりした骨格を持つ美声の持ち主である。
あれ? でも、ブレンダは小柄だと聞いていたけど?
クラウディオ
「本日は、グリエルモ様主催の晩餐会にお招き頂きまして誠に有難うございます。息子のために、このような機会を与えて下さいまして、心より御礼申し上げます。」
グリエルモ
「クラウディオ、皆の紹介をしてくれ。」
クラウディオ
「かしこまりました。
こちらにおわすお方が、言わずと知れたジーンシャン辺境伯グリエルモ様でございます。並びに、お妃様のメアリー様、御子息のアントニオ様、そして、アントニオ様のご友人であらせられるリン様、ルド様でございます。
私がジーンシャン家筆頭執事のクラウディオ・サクラーティ、妻のシンシア、息子のジュゼッペでございます。ジュゼッペは29歳。アントニオ様の執事をさせて頂いております。
また、モルナール家より、竜騎士長のディアナ・モルナール様、御息女のアウロラ嬢でございます。
そして、リュシアン・フルードラン。リュシアンは竜騎士の将校として魔導騎士団に勤務すると同時に、アントニオ様の護衛役も務めております。27歳です。
本日は、紹介役として侍女頭のマリッサ・バトラーにも同席して頂いております。
ディアナ様、アウロラ嬢のご紹介をお願い致します。」
ディアナ
「本日はこのような素晴らしい会にお招き頂き有難うございます。ディアナ・モルナールと申します。
実は、ブレンダは体調不良にり、この場に来ることが出来ませんでした。大変申し訳ありません。
こちらのアウロラは、20歳でございます。領内の武官学校を卒業した後、アウロラはモルナール家の管理をしております。この子も独身ですので、姉の代わりに連れて参りました。
本日、来られなかったブレンダは27歳で、領内の文官学校を卒業しました後は、マリッサ様のもと、侍女として働かせて頂いております。
穏やかで面倒見のいい性格をしております。
その、大変、申し上げ難いのですが、もしも宜しければ、もう一度、ブレンダにチャンスを頂けないのでしょうか?後日、我が家にサクラーティの皆様をご招待させて頂きたく存じます!」
グリエルモ
「ご体調が優れないのだったら、仕方がない。後日、私もモルナール家に伺おう。サクラーティ家の皆もそれでいいかい?」
クラウディオ
「もちろんでございます。伺わせて頂きます。」
ジュゼッペはちっとも良くないと思った。
今日なら、リュシアンやトニー様のご友人がいるから、ブレンダはイケメンに目がいって、自分を選ぶ可能性は低い。お見合いの話を断らなくても、済んだだろう。だが、後日、自宅に伺う時は自分だけになる。そうすると、ブレンダは自分を選ぶしかないのだ。
リュシアンの方を見ると、リュシアンは余裕で澄ました顔をしている。
アウロラ
「母様やめて下さい。ブー子姉様は極度の人見知りなんですから。今日だって『領主様主催の』と聞いただけで、お腹が痛くなったのですよ?ブー子姉様には、社交界の中で暮らすジュゼッペ様の妻なんて無理です。」
ディアナ
「なんて事をいうのです! せっかくのお見合い話なのに! これが最後のチャンスなのです! 可能性がゼロじゃない限り悪あがきくらいさせて!それに、ブレンダをブー子というのもやめなさい!」
アウロラ
「はいはい、わかりましたよ。でもね、せっかくのお見合いに来ないのは姉様ですよ。」
アントニオ
「あの、アウロラ嬢も独身で恋人がいらっしゃらないのですか?」
ディアナ
「はい。残念ながら。」
アントニオ
「実は、独身で結婚相手が見つからないのはジュゼッペだけではなく、リュシアンもなのです。」
ディアナ
「え!? リュシアンが?」
アントニオ
「そうです。もし、お嬢様が宜しければ、リュシアンとの結婚も考えて頂けないでしょうか?」
ディアナ
「もちろんでございます! アウロラ!」
アウロラ
「え? リュシアン様でも良いのですか!? それなら結婚しても、姉様は今迄とあまり変わらない生活が出来ますよね?」
ディアナ
「?......お前の結婚に、何故、ブレンダが関係するのです?」
アウロラ
「私は結婚しませんよ。ブレンダ姉様がリュシアン様と結婚したらどうか、という話です。」
ジュゼッペ
「いいと思います! ディアナ様も竜騎士、リュシアンも竜騎士なのですから、結婚しても、ブレンダは何も変わらず生活が出来ますよ! なんなら、リュシアンが婿養子に入ればいい!」
リュシアン
「.......は?」
リュシアンは、自分は、もう、絶対にブー子を押し付けられないと思って油断していたので、咄嗟に否定の言葉が出て来なかった。
ディアナ
「婿養子!? つまり、ブレンダは、今のまま家にいてよくて、今まで通りの生活が出来て、アウロラが今後、もし、嫁に行っても、私は1人にならずに済むのですか?」
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「では、決まりだな。」
グリエルモとメアリーはニコニコしながら、トニーのために結婚してくれるね? オーラをリュシアンに向けて放っている。
アントニオ
「え!? まだ、会っていないのに、決まりなのですか?」
アントニオの援軍にリュシアンの顔が輝く。
流石トニー様! そもそも、私は課題を免除されたはずです! デブと無理矢理結婚させないで欲しい!
ディアナ
「会ったことがないわけではありませんよ。ブレンダは私に会いに来る事がありますので、リュシアンには何度も会っています。」
アントニオ
「では、リュシアンに対しては人見知りも大丈夫なんですね!」
リン
「よかったな! リュシアンは性格の善い女性を希望していただろ? しかも、人見知りなら、浮気もされ難いじゃないか!」
アントニオ
「条件としては、リュシアンの希望も叶いますし、ブレンダ嬢やディアナ様の悩みも解決しますね! どうですか? リュシアン?」
リュシアンは、ブレンダと同じ歳なので、ブレンダの事を年増だとは思っていないが、太っている女は嫌だった。
しかし、この状況で、デブだから無理ですとは、言い出しにくい。だが、言わなければ、生涯の伴侶が決まってしまう! 今まで掻いたことのないような冷や汗が流れる。
リュシアン
「あ.....の......、膨よかな方は苦手で....」
ディアナはガッカリした。
そりゃそうだ。領内の独身男性人気ナンバーワンが、問題だらけのブー子と結婚してくれるはずがない。
アントニオ
「あぁ、なるほど! 大丈夫ですよ! ブレンダ嬢には、母上と一緒にダイエットしてもらいましょう!」
アウロラ
「姉様は、私の食事に付き合って太ったみたいですので、食事を管理すれば、痩せるのはそれほど、難しくないと思います!」
アントニオ
「他には? 何か、結婚するにあたって問題がありますか? それとも、条件には問題が無いけれど、好きになれそうにはないですか?」
リュシアン
「あ、いえ.......」
ジュゼッペ
「ブレンダは確かに、痩せていた頃は可愛いかった。」
リュシアンは考えた。見た目の問題がなければ、確かにブレンダ嬢には理想的な条件が揃っている。
ブレンダ嬢は優しくて、貞淑な女性だ。身分も年齢も釣り合うし、他領出身のリュシアンにとって、竜騎士長の後ろ盾が出来る事は心強い。ディアナは、穏やかな上司で、リュシアンとの関係も良好だ。リュシアンはジュゼッペのように、社交の場に頻繁に顔を出すことはないし、むしろ、家を守ってもらっていた方が良い。モルナール家は城下町の一等地に屋敷があり、婿養子として家に入り、その家を相続出来るということも非常に魅力的である。
リュシアン
「宜しくお願い致します。」
ディアナ
「リュシアン! 有難う!」
ディアナが泣いて喜ぶので、リュシアンは、まぁ、この人が義母(はは)になるのは、いいかもしれないと思うのであった。
こうして、リュシアンとブレンダの婚約が決まった。正式な婚約は、後日、モルナール家に訪れ、リュシアンがプロポーズし、ブレンダが同意することで成立する。
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