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第二幕 幼少期

74.お見合いは突然に ❤︎

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 その時、ちょうど、訓練を終えて、報告のためにグリエルモを探しに来た竜騎士長ディアナ・モルナールが通りかかる。

マリッサ
「ちょうど良かった!ジュゼッペがトニー様のご命令で、結婚相手を探しているのです。ディアナ様のお嬢様を紹介して下さいませ!」

ジュゼッペ
「ちょっと! マリッサ様! 私は...」

ディアナ
「本当ですか!? あぁ、良かった! 有難うございます! 実は私も、娘が結婚出来ないのではないかと悩んでいたところなのです! ジュゼッペ様! 本当に有難うございます!」

ジュゼッペ
「い、いえ、まだ、決めたわけでは.....」

ディアナ
「お会いになって下さるだけでも、結構です!ジュゼッペ様がお見合いして下さったら、これを機に、他の方々も会って下さるようになるかもしれません。」

 竜騎士長のディアナが何度も頭を下げてお礼をいうので、もはや、ジュゼッペは断れなくなってしまった。

ジュゼッペ
「お、お会いするだけなら......」

ディアナ
「有難うございます! すぐにでもお見合いの日取りを決めましょう! お気持ちが変わらないうちに!」

 そこに、ディアナを探しに来たグリエルモが通りかかる。

グリエルモ
「なんだ! そういう事ならば、今日の晩餐に招待しよう! ディアナ! すぐに娘を連れて来てくれ!」

 アントニオに家を出て欲しくないグリエルモもまた、ジュゼッペを結婚させることに必死だ。

ディアナ
「かしこまりました! すぐに準備して参ります!」

マリッサ
「場所は4階のプライベートダイニングで宜しいですか?」

グリエルモ
「そうしてくれ!」

 不味いことになった、パブリックダイニングではなく、プライベートダイニングで一緒に食事をするということは、領主であるグリエルモが主催の晩餐会ということになる。つまり、領主が仲人のお見合いという事である。

 領主が推奨するお見合いを断るには、最もな理由が必要となる。金遣いが荒いとか、男癖が悪いとか、社交的でないとか、身体が弱いとか、最もな理由が。

 ブレンダとのお見合いが、急遽開かれることになった事を報告すると、トニー様は大層お喜びになった。

 昼間に見ていた釣書の中にはなかった、竜騎士長の娘がお見合いのために来てくれるというのだ。しかも、大変働き者で、妹思いで、自分を犠牲にして家を守っていたという、素晴らしい女性だ。

 話を聞いただけで、アントニオはブレンダの事をとても気に入ったのであった。

 それだけ、素晴らしい女性だ。逆にブレンダ嬢がジュゼッペを気に入ってくれるか不安だ。もしかしたら、ジュゼッペを気に入らなくても、リュシアンなら気にいられるかもしれない....?

アントニオ
「リュシアンも晩餐に出席して下さいね!」

 アントニオは、リュシアンも出席させるという自分の素晴らしい思い付きに、「そうだ!そうだ!それがいい!」と満足気に頷いた。

 アントニオは気が付かなかったが、リュシアンは、ブレンダの事を知っていたので、嫌そうな顔をした。

 だが、この提案は、ジュゼッペにとっては好都合だった。

 リュシアンがいれば、ブレンダ嬢はリュシアンを選ぶのではないだろうか?

ジュゼッペ
「流石トニー様です! リュシアンにも出席してもらいましょう!」

 そして、ジュゼッペは、自分は出来るだけ地味にしていようと思った。

 それなのに、トニー様がジュゼッペの部屋に来て衣装を、あーでもないこーでもないと選び始めた。ルド様とリン様も一緒になって、1番カッコイイ、華やかな衣装を選ぼうとしている。

アントニオ
「リュシアンは、軍服の正装を着て来て下さい。あれが一番カッコイイので!ちゃんとシャワーを浴びて来て下さいね!急いで!ジュゼッペも!服は私達で選んでおきます。」

ジュゼッペ
「いえ、そこまでして頂くわけには!」

アントニオ
「時間がないんだから急いで!」

 凄い剣幕でまくしたてられ、仕方なくシャワーを浴びて来ると、戻って着たら、ジュゼッペの持っている服の中で1番上等な、グレーに銀糸の刺繍のついたジュストコールと、パンツ、そして小さな宝石が縫い付けてある燻(くす)んだ紫のジレが選ばれて用意されていた。

ジュゼッペ
「トニー様は?」

バルド
「あいつも準備するといって、シャワーを浴びている。」

 急いでジュゼッペが着替えてアントニオの部屋に移動すると、アントニオはろくに頭も拭かず、バスローブ姿で衣装を部屋中に広げて、うぅ~んとえぇ~っとと唸っていた。

 ジュゼッペは慌ててアントニオを椅子に座らせ、タオルとドライヤーで頭を乾かす。

バルド
「お前がお洒落する必要はないのでは?」

アントニオ
「俺がダサくて、ジュゼッペが振られたら可哀想だろ? ダサい主人に仕える執事のところには、恥ずかしくて嫁に行けないって言われたら!」

リン
「そうだ! ルド! お前は女性の恐ろしさを知らない!」

アントニオ
「ルド! リン! 暇なら、オルソの丘から、いっぱいお花を取って来て! めっちゃ可愛いやつ!」

バルド
「わかった!」

リン
「めっちゃ可愛いやつだな!」

 アントニオは淡い黄色のフリルブラウスに深いブルーのジレとパンツを着て、胸にバルドにもらったカーバンクルのブローチを飾った。

 アントニオが着替えている時間で、バルドとリンはあっという間に大量の花を持ち帰った。それをマリッサにダイニングに飾ってもらうと、素敵なお見合い会場が出来上がった。

 バルドは水色のブラウスとベージュのジレとパンツに着替え、リンは淡いピンクのブラウスに、パステルオレンジのベストと、パステルイエローのパンツに着替えた。例の龍人の職人が作ったものらしい。

 ラフなのに何故かお洒落だ。

アントニオ
「え!? 2人も出席するの?? なんか....ルドとリン、格好良過ぎじゃない? ブレンダ嬢が、ジュゼッペやリュシアンが目に入らなかったらどうするのさ!?」

バルド
「こんな、面白そうなことに参加しないという選択肢はないだろ?」

リン
「俺達に目がいって断られるなら、その女性は元からジュゼッペとリュシアンの結婚に向かないから大丈夫だ。そういう、お前も気合い入れ過ぎだろ?」

アントニオ
「俺は、カッコイイ上司じゃなきゃいけないからいいの!」

 ジュゼッペとリュシアンが、バルドとリンのお洒落な衣装に大賛成したので、服はこの衣装でいいことになった。バルドとリンの髪の色は一般的な金髪にして、瞳の色はリンの青緑に揃えた。

 ルド様やリン様に目が行けば、向こうから結婚を断ってくれるかもしれないと、ジュゼッペとリュシアンは考えていた。
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