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第一章 乙女ゲームに転生した転性者は純潔を守るためバッドエンドを目指す
49.初夜イベント1
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アンジェリカはブレイデンの使っている部屋にやって来た。
思い切ってノックをする。
ガタンッ!
部屋の中で、何かが倒れる音が聞こえた。
アンジェリカ
「大丈夫か? まだ酔ってるの?」
ブレイデン
「大丈夫です」
バタバタと駆け寄る音がして扉が開いた。
ブレイデンはスタンドカラーの黒いシルクのパジャマに、同じく黒いシルクサテンのナイトガウンを羽織った姿で現れた。
濡れたままの黒髪に湯上りの湯気が上がり、上気して薔薇色に色付く首筋。いつものカッチリした服では分からなかったが、柔らかい素材のパジャマだと、布越しでもブレイデン君の逞しい胸の厚みが伝わってくる。
ブレイデン君って、やっぱり俺の理想の姿そのものだな。
そう思ったら、何だか恥ずかしくなって、俺は床に視線を移した。
すると暖かい手が、俺の背中に回され、部屋の中へと誘導される。
ブレイデン
「どうぞ」
アンジェリカ
「うん」
扉が閉められ、カチャッと鍵をかけた音がした。
ブレイデン君がゴクリと唾を飲む。
子猫にでも触るかのように、そっと俺の肩に触れると、そのまま髪をゆっくりと撫でた。
俺が、何て言ってブレイデン君に話を切り出していいか迷っていると、髪を撫でていたブレイデン君の指が、俺の眉毛をなぞった。
俺はビクッとしてブレイデン君の顔を見上げる。
ブレイデン君のもう一つの手が俺の後頭部に添えられ、長い睫毛から宝石のような紫色の瞳が覗く。
え!? 何だろ? まさか、キスするとかじゃないよね? キスはない! ない! い、いや、でも...そ、そういえば...酔っていたとはいえ、ブレイデン君と式でキスしたんだった!
あの唇と...
形の良い唇がキュッと結ばれている。ブレイデン君の表情は、いつもの笑顔ではない。真剣な表情である。
がっしりした腕や、ゴツゴツした手とは違う、思いのほか、柔らかい唇の感触を思い出す。
ドッと音が聞こえるほどに俺の胸が脈打つ。自分の耳がカッと熱くなるのを感じた。
ぎゃ~! 落ち着け俺! この状況で、あの時の事を思い出してはいけない!
アンジェリカが身を硬くしていると、ブレイデン君の指が俺の眉間をグリグリした。
ブレイデン
「シワになりますよ?」
アンジェリカ
「あ、そ、そう? 気を付けるよ」
ブレイデンが、フッと笑い出す。
アンジェリカ
「何で笑った?」
ブレイデン
「あんまり、緊張してるから、可笑しくて」
楽しそうに笑うブレイデンを、アンジェリカは何だか恨めしく思った。
何だよ! せっかく俺がブレイデン君のためにいっぱい考えてるのにさ!
膨れっ面になったアンジェリカの顔を見て、ブレイデンは余計に笑った。
ブレイデン
「まぁ、まぁ、そんなに機嫌を悪くなさらないで、お座り下さい」
ブレイデンはアンジェリカの手を引いてベッドに座らせ、自身も隣に座る。
ブレイデン
「何か飲みますか?」
アンジェリカ
「いや、大丈夫。それより、大事な話があるんだ」
俺の真面目な声色に、ブレイデン君の笑顔も消える。
ブレイデン
「何でしょう?」
アンジェリカ
「デボラ様と話したんだけど...」
ブレイデン
「仲が良いのですね...妬けてしまいます」
アンジェリカ
「やっぱり、ブレイデン君はデボラ様の事が好きなんだね。そういえば、舞踏会の時もずっと好きだったって言ってたもんね?」
ブレイデン君は固まった。目が点になって、何を言われているのか分からないといった感じだ。
ブレイデン
「...いえ?」
アンジェリカ
「あぁ~、俺に気を使わなくていいって! 大丈夫なんだ!」
ブレイデン
「いえ、大丈夫とかではなく...」
アンジェリカ
「デボラ様もブレイデン君の事が好きなんだよ!」
ブレイデン
「はぁ、何故そのように思ったのですか? デボラ様がそう、仰った?」
アンジェリカ
「うん」
喜ぶと思っていたのに、何故かブレイデン君は無表情で、不快な感情を押し殺したような様子だ。
ブレイデン
「だとしても、私には関係のないことです」
アンジェリカ
「関係なくなんかないよ! 諦めなくってもいいんだ! 確かにブレイデン君はついこの間まで平民だったし、身分も男爵で、公爵令嬢のデボラ様とは身分や家格の釣り合いが取れなかったのかもしれない。でも、今は子爵だし、俺と結婚しただろ?」
ブレイデン
「はい。私はアンジェリカと結婚したので、デボラ様との結婚など、考えておりません」
やっぱり、結婚していたか...そうだろうとは思ったが、知らぬ間に結婚していたなんて自分でもビックリだ...だが、すべて丸く収まるいい方法があるのだ!
アンジェリカ
「本当は、ホワイト伯爵の爵位は、俺が継承しようと思ってたんだけど、ブレイデン君が継いだらいいよ!」
ブレイデン
「何故ですか!?」
アンジェリカ
「俺やパパンはもともと、伯爵なんて器じゃないし、その所為で領民は貧乏で苦しんでたんだ。ブレイデン君のお陰で、ギルドアカデミーが出来て、街に人が集まるようになって、大きなマーケットも出来た。最近は少しずつ税収も増えてきていて、ホワイト領が豊かになってる。全部、全部、ブレイデン君のお陰だ!」
ブレイデン
「それは、アンジェリカが提案を受け入れてくれて、協力してくれたからです。私だけの手柄ではありません」
アンジェリカ
「でも、とっても感謝してるんだ。俺とパパンだけだったら、今頃は詐欺師に騙されて、借金まみれだったと思う。だから...伯爵の爵位をブレイデン君に譲って...その...離縁するから...」
ブレイデン
「離縁!? アンジェリカは私と離縁したいのですか?」
ブレイデン君に勢いよく掴まれた腕が少し痛い。
アンジェリカ
「だから! そしたらデボラ様と結婚出来るだろ!? 手柄をたてて、領地持ちの伯爵になったら、公爵家のお姫様にだってプロポーズ出来るはずだ!」
ブレイデン
「それで!? 貴女は他の男と結婚するのですか!?」
アンジェリカ
「痛いから離せよ。他の男と結婚なんかするわけないだろ! ブレイデン君以外の男となんて、考えただけでもゲロ吐きそうだよ」
ブレイデンはアンジェリカを掴んでいた手を緩め、アンジェリカを抱きしめた。
ブレイデン
「では、一体、どうするつもりなのです?」
俺は溜息を吐きながらも、ブレイデン君の肩に顎をのせて喋った。
アンジェリカ
「ブレイデン君さえ良ければ、ホワイト領の端っこにでも家を建てて住まわせてくれると嬉しいな。ほら、俺は生粋のホワイトっ子だからさ! 他所の領に移り住むのは正直しんどいし、パパンもママンも結構いい歳だからさ。それで、ギルドアカデミーで、何かしら役職を任せて貰えれば、俺がパパンやママンを養って暮らせるだろ?」
ブレイデン
「それでは、貴女にメリットがほとんどないじゃないですか! 爵位を譲るということは、身分も財産も家臣も全部、失う事になるのですよ!? どうして、そんな事を望むのですか? 何が目的なんです?」
アンジェリカ
「何が? って、皆が幸せになるだろ? ブレイデン君も好きな人と結婚出来るし、デボラ様も幸せになる。ホワイト領の領民も幸せになるし、俺も、俺の家族もささやかに暮らせる」
ブレイデン
「つまり...全財産や権利を失って、死ぬまで結婚しないで1人で暮らしてもいいと? 私のために?」
アンジェリカ
「うん。結婚しなくても、俺は領民と仲良しだし、ブレイデン君もいるから、老後も寂しくないだろ?」
俺を抱きしめるブレイデン君の腕の力が強くなる。温かく湿ったものが、俺の肩を濡らした。
アンジェリカ
「何も泣くこたないだろ?」
ブレイデン
「そんなに、私の事を想って下さっているのですね!」
アンジェリカ
「うん。まぁ、そうだね」
ブレイデン
「でも、何故、デボラ様?」
アンジェリカ
「何故って、ブレイデン君が、デボラ様の事好きなんだろ!? デボラ様だって、ブレイデン君の事が本当に大好きなんだ! こんな事を言ったら、頭おかしいって思われるかもしれないけど、前世からブレイデン君の事が好きなんだよ! その...前世ではこの世界の事が分かる機械みたいなのがあって...えぇ~っと...」
ブレイデン
「この世界が乙女ゲーム『天使な乙女』の世界であると知っていた?」
アンジェリカ
「ふぁ!?」
アンジェリカとブレイデンは腕を離して、顔を見合わせた。
そう、前世でプレイした、この世界と同じ世界が登場する乙女ゲームの名称が『天使な乙女』というタイトルである。
アンジェリカ
「な、な、何故、そのゲームの名前を!?」
ブレイデン
「私も転生者だからです」
アンジェリカ
「ブレイデン君も!?」
ブレイデン
「そうです。デボラ様もですよね? ということは、アンジェリカも転生者なのですか?」
アンジェリカ
「う、うん。俺もデボラ様も転生者なんだ」
ブレイデン
「道理で...2人ともゲームと違うと思っていました」
アンジェリカ
「はは...」
ブレイデン
「それで? デボラ様の推し(好きな)キャラがブレイデン・ブラックだったと?」
アンジェリカ
「そうなんだ!」
ブレイデン
「でも、それはキャラが好きだっただけで、私の事が好きな訳ではないと思いますよ?」
アンジェリカ
「そんな事ないって!」
ブレイデン
「アンジェリカは?」
アンジェリカ
「俺?」
ブレイデン
「どのキャラが好きだったんです?」
アンジェリカ
「俺は姉貴のスチル(イベント画像)集めで手伝ってただけで、推しキャラとかいないし、好きでプレイしてた訳じゃないんだ」
ブレイデン君は太陽が輝くような眩しさで笑った。
ブレイデン
「良かった! 例え、ブレイデン推しでも、キャラに嫉妬するところでした」
アンジェリカ
「ん? デボラ様はブレイデン君推しだよ?」
ブレイデン
「だから、私はデボラ様の事は何とも思っていません! 人としては嫌いではありませんが、好きでもありません!」
アンジェリカ
「あ! 乙女ゲームしてた位だもんね? もしかして、元は女の子だった? 転生時に性別が変わったとかで、本当は好きな男キャラがいる?」
ブレイデン
「私は前世でも男ですが...当然、推しキャラはいました」
アンジェリカ
「え!? 誰? 誰?」
ブレイデン
「知りたいですか?」
アンジェリカ
「うん!」
ブレイデン君は何故か唐突にナイトガウンを脱ぎ捨てパジャマのボタンを三つ外した。
暑いのかな? 前世トークで盛り上がったもんね?
ブレイデン君は、再び俺の隣に座って、俺の両肩に手を置いた。
ブレイデン
「私の推しは、前世も今世もアンジェリカです!」
そう言って、俺の唇に口付けた。
思い切ってノックをする。
ガタンッ!
部屋の中で、何かが倒れる音が聞こえた。
アンジェリカ
「大丈夫か? まだ酔ってるの?」
ブレイデン
「大丈夫です」
バタバタと駆け寄る音がして扉が開いた。
ブレイデンはスタンドカラーの黒いシルクのパジャマに、同じく黒いシルクサテンのナイトガウンを羽織った姿で現れた。
濡れたままの黒髪に湯上りの湯気が上がり、上気して薔薇色に色付く首筋。いつものカッチリした服では分からなかったが、柔らかい素材のパジャマだと、布越しでもブレイデン君の逞しい胸の厚みが伝わってくる。
ブレイデン君って、やっぱり俺の理想の姿そのものだな。
そう思ったら、何だか恥ずかしくなって、俺は床に視線を移した。
すると暖かい手が、俺の背中に回され、部屋の中へと誘導される。
ブレイデン
「どうぞ」
アンジェリカ
「うん」
扉が閉められ、カチャッと鍵をかけた音がした。
ブレイデン君がゴクリと唾を飲む。
子猫にでも触るかのように、そっと俺の肩に触れると、そのまま髪をゆっくりと撫でた。
俺が、何て言ってブレイデン君に話を切り出していいか迷っていると、髪を撫でていたブレイデン君の指が、俺の眉毛をなぞった。
俺はビクッとしてブレイデン君の顔を見上げる。
ブレイデン君のもう一つの手が俺の後頭部に添えられ、長い睫毛から宝石のような紫色の瞳が覗く。
え!? 何だろ? まさか、キスするとかじゃないよね? キスはない! ない! い、いや、でも...そ、そういえば...酔っていたとはいえ、ブレイデン君と式でキスしたんだった!
あの唇と...
形の良い唇がキュッと結ばれている。ブレイデン君の表情は、いつもの笑顔ではない。真剣な表情である。
がっしりした腕や、ゴツゴツした手とは違う、思いのほか、柔らかい唇の感触を思い出す。
ドッと音が聞こえるほどに俺の胸が脈打つ。自分の耳がカッと熱くなるのを感じた。
ぎゃ~! 落ち着け俺! この状況で、あの時の事を思い出してはいけない!
アンジェリカが身を硬くしていると、ブレイデン君の指が俺の眉間をグリグリした。
ブレイデン
「シワになりますよ?」
アンジェリカ
「あ、そ、そう? 気を付けるよ」
ブレイデンが、フッと笑い出す。
アンジェリカ
「何で笑った?」
ブレイデン
「あんまり、緊張してるから、可笑しくて」
楽しそうに笑うブレイデンを、アンジェリカは何だか恨めしく思った。
何だよ! せっかく俺がブレイデン君のためにいっぱい考えてるのにさ!
膨れっ面になったアンジェリカの顔を見て、ブレイデンは余計に笑った。
ブレイデン
「まぁ、まぁ、そんなに機嫌を悪くなさらないで、お座り下さい」
ブレイデンはアンジェリカの手を引いてベッドに座らせ、自身も隣に座る。
ブレイデン
「何か飲みますか?」
アンジェリカ
「いや、大丈夫。それより、大事な話があるんだ」
俺の真面目な声色に、ブレイデン君の笑顔も消える。
ブレイデン
「何でしょう?」
アンジェリカ
「デボラ様と話したんだけど...」
ブレイデン
「仲が良いのですね...妬けてしまいます」
アンジェリカ
「やっぱり、ブレイデン君はデボラ様の事が好きなんだね。そういえば、舞踏会の時もずっと好きだったって言ってたもんね?」
ブレイデン君は固まった。目が点になって、何を言われているのか分からないといった感じだ。
ブレイデン
「...いえ?」
アンジェリカ
「あぁ~、俺に気を使わなくていいって! 大丈夫なんだ!」
ブレイデン
「いえ、大丈夫とかではなく...」
アンジェリカ
「デボラ様もブレイデン君の事が好きなんだよ!」
ブレイデン
「はぁ、何故そのように思ったのですか? デボラ様がそう、仰った?」
アンジェリカ
「うん」
喜ぶと思っていたのに、何故かブレイデン君は無表情で、不快な感情を押し殺したような様子だ。
ブレイデン
「だとしても、私には関係のないことです」
アンジェリカ
「関係なくなんかないよ! 諦めなくってもいいんだ! 確かにブレイデン君はついこの間まで平民だったし、身分も男爵で、公爵令嬢のデボラ様とは身分や家格の釣り合いが取れなかったのかもしれない。でも、今は子爵だし、俺と結婚しただろ?」
ブレイデン
「はい。私はアンジェリカと結婚したので、デボラ様との結婚など、考えておりません」
やっぱり、結婚していたか...そうだろうとは思ったが、知らぬ間に結婚していたなんて自分でもビックリだ...だが、すべて丸く収まるいい方法があるのだ!
アンジェリカ
「本当は、ホワイト伯爵の爵位は、俺が継承しようと思ってたんだけど、ブレイデン君が継いだらいいよ!」
ブレイデン
「何故ですか!?」
アンジェリカ
「俺やパパンはもともと、伯爵なんて器じゃないし、その所為で領民は貧乏で苦しんでたんだ。ブレイデン君のお陰で、ギルドアカデミーが出来て、街に人が集まるようになって、大きなマーケットも出来た。最近は少しずつ税収も増えてきていて、ホワイト領が豊かになってる。全部、全部、ブレイデン君のお陰だ!」
ブレイデン
「それは、アンジェリカが提案を受け入れてくれて、協力してくれたからです。私だけの手柄ではありません」
アンジェリカ
「でも、とっても感謝してるんだ。俺とパパンだけだったら、今頃は詐欺師に騙されて、借金まみれだったと思う。だから...伯爵の爵位をブレイデン君に譲って...その...離縁するから...」
ブレイデン
「離縁!? アンジェリカは私と離縁したいのですか?」
ブレイデン君に勢いよく掴まれた腕が少し痛い。
アンジェリカ
「だから! そしたらデボラ様と結婚出来るだろ!? 手柄をたてて、領地持ちの伯爵になったら、公爵家のお姫様にだってプロポーズ出来るはずだ!」
ブレイデン
「それで!? 貴女は他の男と結婚するのですか!?」
アンジェリカ
「痛いから離せよ。他の男と結婚なんかするわけないだろ! ブレイデン君以外の男となんて、考えただけでもゲロ吐きそうだよ」
ブレイデンはアンジェリカを掴んでいた手を緩め、アンジェリカを抱きしめた。
ブレイデン
「では、一体、どうするつもりなのです?」
俺は溜息を吐きながらも、ブレイデン君の肩に顎をのせて喋った。
アンジェリカ
「ブレイデン君さえ良ければ、ホワイト領の端っこにでも家を建てて住まわせてくれると嬉しいな。ほら、俺は生粋のホワイトっ子だからさ! 他所の領に移り住むのは正直しんどいし、パパンもママンも結構いい歳だからさ。それで、ギルドアカデミーで、何かしら役職を任せて貰えれば、俺がパパンやママンを養って暮らせるだろ?」
ブレイデン
「それでは、貴女にメリットがほとんどないじゃないですか! 爵位を譲るということは、身分も財産も家臣も全部、失う事になるのですよ!? どうして、そんな事を望むのですか? 何が目的なんです?」
アンジェリカ
「何が? って、皆が幸せになるだろ? ブレイデン君も好きな人と結婚出来るし、デボラ様も幸せになる。ホワイト領の領民も幸せになるし、俺も、俺の家族もささやかに暮らせる」
ブレイデン
「つまり...全財産や権利を失って、死ぬまで結婚しないで1人で暮らしてもいいと? 私のために?」
アンジェリカ
「うん。結婚しなくても、俺は領民と仲良しだし、ブレイデン君もいるから、老後も寂しくないだろ?」
俺を抱きしめるブレイデン君の腕の力が強くなる。温かく湿ったものが、俺の肩を濡らした。
アンジェリカ
「何も泣くこたないだろ?」
ブレイデン
「そんなに、私の事を想って下さっているのですね!」
アンジェリカ
「うん。まぁ、そうだね」
ブレイデン
「でも、何故、デボラ様?」
アンジェリカ
「何故って、ブレイデン君が、デボラ様の事好きなんだろ!? デボラ様だって、ブレイデン君の事が本当に大好きなんだ! こんな事を言ったら、頭おかしいって思われるかもしれないけど、前世からブレイデン君の事が好きなんだよ! その...前世ではこの世界の事が分かる機械みたいなのがあって...えぇ~っと...」
ブレイデン
「この世界が乙女ゲーム『天使な乙女』の世界であると知っていた?」
アンジェリカ
「ふぁ!?」
アンジェリカとブレイデンは腕を離して、顔を見合わせた。
そう、前世でプレイした、この世界と同じ世界が登場する乙女ゲームの名称が『天使な乙女』というタイトルである。
アンジェリカ
「な、な、何故、そのゲームの名前を!?」
ブレイデン
「私も転生者だからです」
アンジェリカ
「ブレイデン君も!?」
ブレイデン
「そうです。デボラ様もですよね? ということは、アンジェリカも転生者なのですか?」
アンジェリカ
「う、うん。俺もデボラ様も転生者なんだ」
ブレイデン
「道理で...2人ともゲームと違うと思っていました」
アンジェリカ
「はは...」
ブレイデン
「それで? デボラ様の推し(好きな)キャラがブレイデン・ブラックだったと?」
アンジェリカ
「そうなんだ!」
ブレイデン
「でも、それはキャラが好きだっただけで、私の事が好きな訳ではないと思いますよ?」
アンジェリカ
「そんな事ないって!」
ブレイデン
「アンジェリカは?」
アンジェリカ
「俺?」
ブレイデン
「どのキャラが好きだったんです?」
アンジェリカ
「俺は姉貴のスチル(イベント画像)集めで手伝ってただけで、推しキャラとかいないし、好きでプレイしてた訳じゃないんだ」
ブレイデン君は太陽が輝くような眩しさで笑った。
ブレイデン
「良かった! 例え、ブレイデン推しでも、キャラに嫉妬するところでした」
アンジェリカ
「ん? デボラ様はブレイデン君推しだよ?」
ブレイデン
「だから、私はデボラ様の事は何とも思っていません! 人としては嫌いではありませんが、好きでもありません!」
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「え!? 誰? 誰?」
ブレイデン
「知りたいですか?」
アンジェリカ
「うん!」
ブレイデン君は何故か唐突にナイトガウンを脱ぎ捨てパジャマのボタンを三つ外した。
暑いのかな? 前世トークで盛り上がったもんね?
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