異世界転生してひっそり薬草売りをしていたのに、チート能力のせいでみんなから溺愛されてます

ひと息

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クラウスとノア

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ほどなくして、二人はアッシュたちが暮らす階層へとたどり着いた。
物置部屋へと向かおうと歩いていると、不意に二人を呼び止める声がした。

「クラウスー!と…廉さん?」
振り向くと、そこにはノアが立っていた。

「ノアさん!」
「あー!やっぱり廉さんだ!どうしてここに?」
ノアがぱたぱたと走ってやってくる。その頭には、尻尾が生えていた。
「えっ!?…ノアさん、尻尾…!」
慌てる廉の様子に、ノアは笑う。
「あはは、焦ってるー。僕、もう魔族を隠さず騎士団で働くことにしたんです」
「そうだったんですか…?」
クラウスもうんうんと頷く。どうやら、魔族であることを隠していないのは本当らしい。
「まぁ、魔族が働くことをよく思ってない人もいるけど…そこは僕の働きぶりを見てもらって、みんなに認めてもらえるように頑張りたいなって」
ノアが話すと、クラウスは尋ねた。
「尻尾とか隠してない方が楽なんだっけか?」
「うん。隠すための余計な魔力を使わずに済むし、その分の魔力を他の仕事に活かせるから、今はすごく快適なんだ」
ノアはツノをさすりながら、廉に向かって笑顔を見せる。
「夢幻の蜜はまた廉さんに作ってもらう機会があると思うから、その時はよろしくお願いしますね」


「ところで…なんで廉さん、ここにいるの?」
ノアは、物置部屋に向かう二人の後ろをちょこちょことついて回る。
「なんでお前までついて来てんだ…。ノア、お前今日仕事は?」
「休み。ねぇ、どこ行くの?」
「物置部屋だよ」
クラウスが立ち止まる。そこは物置部屋の前だった。


物置部屋を開けると、そこは想像していたよりも掃除の行き届いたこぢんまりとした部屋だった。
アッシュの話によれば埃まみれの部屋だったとのことだったが、どうやらアッシュとノアの掃除は想像以上に本格的に行われていたらしい。
「お、なんだ。片付いてるじゃねぇか」
クラウスもその綺麗さに驚いたようで、キョロキョロと部屋を見て回る。
「僕とアッシュで頑張って片づけたからね。で、なんでここに来たの?」
ノアがちょこん、と床に座る。クラウスはそれを気にもせず、物置部屋にあるガラクタを逐一手に取っては少し触ってみたりした。
「アッシュさんから、ここにある植木鉢を持って帰ってもいいと言われまして…」
廉がそういうと、クラウスが手元にあった植木鉢を廉に渡した。
「植木鉢か。この辺に大量にあるぞ。ほら、これとか…。なんだこれ、趣味悪ぃな」
「えー!かわいいじゃん。クラウスの趣味が悪いんじゃないの?廉さん、見て、ほら」
ノアが薄いピンク色の植木鉢を差し出す。たしかにその植木鉢は可愛らしく、どちらかというと女性に受けそうな見た目をしていた。
「いろんな種類があるんですね…どれにしようか迷っちゃうなぁ」

三人はしばらく植木鉢を探し周り、見つけるたびに廉にこれはどうかと聞いて回った。
すると、不意にクラウスが口を開いた。
「そういや、お前はアッシュの事はどう思ってるんだ?」
唐突な質問に、廉は目を丸くしてしまう。
「え?アッシュさん?」
「おう。好きか?」
クラウスの顔は真剣で、冗談を言っているようには感じられない。
隣にいるノアもそれを茶化す様子はなく、どうやら二人とも真剣に答えを聞きたがっているようだった。
廉はそんな二人の様子を見て、少し照れて俯きながら答えた。
「すごく素敵な方で、よくしてもらってて…。騎士団相手に恐れ多いけど、大切な友達だって思ってます…って、え、なんですか…」
廉が顔をパッと上げると、何とも言えない顔をするクラウスと、あからさまにつまらなそうな顔をするノアの姿。
「…変なこと言いましたか…?」
「…別に…」
ノアは不貞腐れた顔で答えると、クラウスも苦笑いして廉を見た。
「まあ、これからも仲良くしてやってくれや」
「……?こちらこそ…」

アッシュがやっと戻ってきたのは、その少しあとだった。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

イカ
2025.06.03 イカ

一気読みしました!とても面白かったです!!
今後の展開が気になります……!更新楽しみにお待ちしております🙇‍♀️

解除
響楽堂
2025.01.27 響楽堂

たいした事では無いのですが。

異世界の人々が廉の名を『廉』と呼ぶ事にちょっと違和感が。
異世界にも漢字が有るのかなーと。
もしも漢字の概念が無いとしたら、耳コピした『レン』呼びになるんじゃないかなーと。

ちょっと思ったのですスミマセン。

解除

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