35 / 36
騎士団へ行こう!2
しおりを挟む
中に入ると、そこは想像していたよりも穏やかな場所だった。
ある男たちは中庭で集まりボール遊びをしており、またある男はベンチに座ってのんびりとサンドイッチを食べている。
騎士たちの表情も穏やかで、本当にここが騎士団なのかと思ってしまうほどであった。
「外から建物を見たことはあったのですが、中はこんな風になっていたんですね」
「意外と普通でしょう」
廉は薬草の買い出しの際に、時々この街まで足を運ぶことがあった。騎士団は大きく、嫌でも目に付くため、街へ来るたび目にしていた。
しかしまさか、自分がその中へ立ち入ることになるとは思ってもいなかった。
「僕、騎士団の中ってもっとピリピリした雰囲気なのかと思っていました」
「ずっと気を張っていたら疲れてしまいますから。この中にいる時間だけは、ただの人間に戻れるって人も多いんじゃないでしょうか」
「それもそうですね」
アッシュに案内され少し進むと、ふと、知らない男がアッシュに話しかけてきた。
背丈は190cmはありそうな大柄な男で、廉は思わずびっくりしてしまう。
「あぁ、クラウス。どうかしましたか?」
クラウスと呼ばれた男は、廉に軽く会釈をすると、アッシュに耳打ちをした。
「ああ…そうでしたね…。…廉さんごめんなさい、少しだけ用事を済ませてきます。物置部屋までは、こちらのクラウスが案内してくれますので」
「えっ…あ、はい…」
急な出来事に廉はおどおどするが、アッシュは急いで別方向へと走って行ってしまう。
置いてけぼりにされた廉は、おそるおそるクラウスに「よろしくお願いします」と声をかけると、意外にもクラウスからは笑顔と元気な挨拶が返ってきた。
「おう、こちらこそよろしく頼む。俺はクラウスだ。いつもアッシュが世話になってるな。あいつ、お前の話ばかりしてくるんだ」
「そ…そうなんですか…」
「”廉”なんて変わった名前だからよ。どんなやつとつるんでんのか心配だったんだが…いい奴そうで安心した」
クラウスはそう言うと、廉の背中をぽんぽんと叩いた。廉がぎこちなく笑うと、それを見たクラウスはさらに笑った。
「で、物置部屋だったよな。案内してやるから、一緒に行こうぜ」
騎士団の中は想像通りの大きさで、また、人の数にも圧倒されてしまう。
そしてすれ違う人はみな男性ばかりで、容姿も整っていた。
廉はなんだか恥ずかしくなり俯き加減に歩いていると、クラウスが話しかけてきた。
「そういえば、お前が薬を作ってくれたんだったな」
急な問いかけの意味が分からず廉が返答に困っていると、クラウスは続けた。
「ほら、睡眠薬。少し前、アッシュがお前のところに睡眠薬を貰いに行っただろう。あれ、俺も貰ったんだ」
「ああ!あの時の!」
廉の記憶が徐々に呼び起こされる。
「そういえば、アッシュさんがクラウスって名前を呼んでたような…」
「それ、俺だな。あの時は本当に助かった。ありがとうな」
初めはあまりの大きさに圧倒されてしまったが、意外と優しい人なのかも、と廉はついつい魅了されてしまう。
それと同時に、廉の薬が本当に誰かの役に立っていることを改めて実感したのであった。
ある男たちは中庭で集まりボール遊びをしており、またある男はベンチに座ってのんびりとサンドイッチを食べている。
騎士たちの表情も穏やかで、本当にここが騎士団なのかと思ってしまうほどであった。
「外から建物を見たことはあったのですが、中はこんな風になっていたんですね」
「意外と普通でしょう」
廉は薬草の買い出しの際に、時々この街まで足を運ぶことがあった。騎士団は大きく、嫌でも目に付くため、街へ来るたび目にしていた。
しかしまさか、自分がその中へ立ち入ることになるとは思ってもいなかった。
「僕、騎士団の中ってもっとピリピリした雰囲気なのかと思っていました」
「ずっと気を張っていたら疲れてしまいますから。この中にいる時間だけは、ただの人間に戻れるって人も多いんじゃないでしょうか」
「それもそうですね」
アッシュに案内され少し進むと、ふと、知らない男がアッシュに話しかけてきた。
背丈は190cmはありそうな大柄な男で、廉は思わずびっくりしてしまう。
「あぁ、クラウス。どうかしましたか?」
クラウスと呼ばれた男は、廉に軽く会釈をすると、アッシュに耳打ちをした。
「ああ…そうでしたね…。…廉さんごめんなさい、少しだけ用事を済ませてきます。物置部屋までは、こちらのクラウスが案内してくれますので」
「えっ…あ、はい…」
急な出来事に廉はおどおどするが、アッシュは急いで別方向へと走って行ってしまう。
置いてけぼりにされた廉は、おそるおそるクラウスに「よろしくお願いします」と声をかけると、意外にもクラウスからは笑顔と元気な挨拶が返ってきた。
「おう、こちらこそよろしく頼む。俺はクラウスだ。いつもアッシュが世話になってるな。あいつ、お前の話ばかりしてくるんだ」
「そ…そうなんですか…」
「”廉”なんて変わった名前だからよ。どんなやつとつるんでんのか心配だったんだが…いい奴そうで安心した」
クラウスはそう言うと、廉の背中をぽんぽんと叩いた。廉がぎこちなく笑うと、それを見たクラウスはさらに笑った。
「で、物置部屋だったよな。案内してやるから、一緒に行こうぜ」
騎士団の中は想像通りの大きさで、また、人の数にも圧倒されてしまう。
そしてすれ違う人はみな男性ばかりで、容姿も整っていた。
廉はなんだか恥ずかしくなり俯き加減に歩いていると、クラウスが話しかけてきた。
「そういえば、お前が薬を作ってくれたんだったな」
急な問いかけの意味が分からず廉が返答に困っていると、クラウスは続けた。
「ほら、睡眠薬。少し前、アッシュがお前のところに睡眠薬を貰いに行っただろう。あれ、俺も貰ったんだ」
「ああ!あの時の!」
廉の記憶が徐々に呼び起こされる。
「そういえば、アッシュさんがクラウスって名前を呼んでたような…」
「それ、俺だな。あの時は本当に助かった。ありがとうな」
初めはあまりの大きさに圧倒されてしまったが、意外と優しい人なのかも、と廉はついつい魅了されてしまう。
それと同時に、廉の薬が本当に誰かの役に立っていることを改めて実感したのであった。
253
あなたにおすすめの小説
炊き出しをしていただけなのに、大公閣下に溺愛されています
ぽんちゃん
BL
希望したのは、医療班だった。
それなのに、配属されたのはなぜか“炊事班”。
「役立たずの掃き溜め」と呼ばれるその場所で、僕は黙々と鍋をかき混ぜる。
誰にも褒められなくても、誰かが「おいしい」と笑ってくれるなら、それだけでいいと思っていた。
……けれど、婚約者に裏切られていた。
軍から逃げ出した先で、炊き出しをすることに。
そんな僕を追いかけてきたのは、王国軍の最高司令官――
“雲の上の存在”カイゼル・ルクスフォルト大公閣下だった。
「君の料理が、兵の士気を支えていた」
「君を愛している」
まさか、ただの炊事兵だった僕に、こんな言葉を向けてくるなんて……!?
さらに、裏切ったはずの元婚約者まで現れて――!?
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
コンビニごと異世界転生したフリーター、魔法学園で今日もみんなに愛されます
ひと息
BL
コンビニで働く渚は、ある日バイト中に奇妙なめまいに襲われる。
睡眠不足か?そう思い仕事を続けていると、さらに奇妙なことに、品出しを終えたはずの唐揚げ弁当が増えているのである。
驚いた渚は慌ててコンビニの外へ駆け出すと、そこはなんと異世界の魔法学園だった!
そしてコンビニごと異世界へ転生してしまった渚は、知らぬ間に魔法学園のコンビニ店員として働くことになってしまい・・・
フリーター男子は今日もイケメンたちに甘やかされ、異世界でもバイト三昧の日々です!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる