虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

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四章 月下香

試合終了

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———そんな彼は闘技場の端まで飛んでいき壁に減り込んでピクリとも動かない

「———な、なんて威力だ‥‥!化け物め!」

俺の攻撃を見ていた他の選手は信じられないと言った表情をしているがここは戦場。いくら大会だからと言って油断をしていれば足元をすくわれる

(一瞬の隙が命を奪う戦いでそんな間抜けな顔では先が知れるだろうに‥‥)

その勢いのまま二人目、三人目と次々に一撃で仕留めて行った

———ドゴォォンッッ!


———バゴぉぉぉンッ!


闘技場中に次々と響き渡る鈍い音。それについで選手達の悲痛な叫びが響く

「おおぉぉ!!あのチビとんでもねーな!?」

「あいつなんて奴だ!去年はいたか?!」

「行けぇぇ!もっとやっちまえぇぇ!」

俺の戦闘を見ている観客達は最初驚いてはいたが、一撃で仕留めていく光景を前に熱が入り歓声を上げる。歓声の中には特別三人の視線が俺に注がれている

そう連れの3人は観客席から俺の戦闘を見ている。歓声の中聞こえるはずもないと思うが魔法で聴力を上げ耳を傾けているのだ

「———暴れているわね‥‥」

「———なんだか少し怖いくらいです‥‥」

「———はっはっは!なんて殺気だ!この我でも臆したぞ!」

ファシーノは俺の猛攻に呆れている様だ。

デリカートの方は少し怖がらせてしまった。後で謝ろう。 

ヴァルネラの方は流石というべきか選手個人に向けた殺気に一人気づいている

三人がしっかりと見ている事がわかり少し嬉しく思いながら次々と倒していく

三百人の1/10ほどは倒しただろうか‥‥

誰も俺の進撃を止められずにいた

一瞬で間合いを詰め、一撃で暑い胸当てを貫き、ひと蹴りで骨を砕く

同じことを淡々と繰り返しているうちに作業になってきた

———ドゴォォン! 

戦場の様な騒音の広間。一人の男を殴り飛ばすと砂埃の先から一人の女性が姿を現した。まるで悪魔の如き美しさを持つ女性

(彼女は‥‥そうか)

———娼婦街の花魁にして黒豹族のエリーが俺の前に立ちはだかる

「「‥‥」」

互いに目を交し合い、以心伝心で伝え合う 

言葉は不要

エリーは目の前に現れた謎の存在に心が踊るのを感じていた

自分の意思とは無関係に、まぶたが大きく開いていく

仮面下の黒い瞳に見つめられると昨夜の記憶が蘇ってくる

エリーはしだいに頬が火照り、胸が弾む感覚を味わう———


(———昨夜の少年‥‥よね。まさか出場していたなんて‥‥)


お互いに戦う意志がないこと察したエリーは彼に声を掛けようと歩き出した瞬間

「————試合終了ぉぉぉ!!」

闘技場中に試合終了の知らせが轟いた

「‥‥え?」

エリーは思いもよらない知らせに呆気に取られてしまう

(六人が決まるなんて早すぎる‥‥どうして)

エリーは辺りをゆっくり見渡すと一人の女性が中央に堂々と降臨していた

その女性の足元には沢山の人が倒れ伏していた。ざっと見ただけで数十人、いや百人規模。

まさに息が凍るような恐ろしい光景

観客席もまた先ほどの騒ぎが嘘のように言葉を失い静寂が訪れる

この獣武祭において女性の出場者は二人

そのうちの一人がエリー

そして二人目がリコリス・ヴォルペ

リコリスは目を細め、感情のない声でエリーに話しかけた

「———これは、エリーさん。そんな所でなにを呆けているのです」

「リコリス様‥‥」

エリーの身体は臆するが追い詰められた動物のように目を光らせた

二人の視線が激しくぶつかり合う

一発触発の危機を秘めて火花を散らす二人の眼

二人を中心に空気が張り詰める

しばしの沈黙の後、実況者がすかさず話しを始める

「———えぇ、それでは予選を勝ち抜いた六名の選手おめでとうございます!!実に素晴らしい戦いぶりでした!予選を勝ち抜いた六名は追って連絡をします。なお続いての試合はトーナメント戦です。次に負傷者の手当てを担当の者は早急に運んでください。以上、予選を終了します。六名の選手は闘技場から観客席または医務室へと退場願います」

実況者が言い終えると出入り口から担架を持つ医療担当が次々と来る

横目に観客席を見ると三人が俺の帰りを今か今かと心干しそうにしている

「まあ、次の試合まで進めたし戻るか‥‥」
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