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五章 血脈の奪還
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———体全身にのし掛かる修羅の如く狂気の殺気。その原因であるファシーノとヴァルネラは倒れ伏し悶え苦しむ哀れな存在を目に焼き付けて魔力を収めた
次第に体の自由が解除され倒れふし悶え苦しんでいた軍人並びにバラトロの残党が荒々しく息を大きく吸い込んだ
血の気が引き真っ白の顔は息を吸い込む事で正常な肌の色を宿していく
そして地面に片膝を付き殺気に耐えていた女王もまた深く息を吸い込んだ
体が自由になり解放されたのはいいが、なぜ解放されたのかが理解できていない軍人。あのままの状態だったら一瞬で息の根を止め、力の差を見せ付けておきながら仮面の二人は何故止めたのか‥‥‥
その答えは仮面を被る一人の女性から洩らされた
「———何故って表情ね?安心して、殺したりはしないわ‥‥ただ痛い思いをするだけだから」
悪魔の様に仮面の奥で微笑む一人の若い女性。黒いローブに包まれ危険な魅力を放ちながら悠々に歩く姿は女性の軍人すらもその魅力に惹かれてしまう美しさがあった
そしてもう一人、背が高く銀の髪をローブに包み込んでいる女性もまた妖艶な雰囲気を漂わせて軍の目に歩み出る
「ファシーノよ。あまりイラつくでない」
「———わかりました。それではどなたから相手かしら?いつでもかかってきなさいっ」
仮面の奥の瞳が鋭く月の光を反射し、獲物を見定める
ファシーノの挑発に先程地面に片膝を突き付けられプライドを傷付けられた女王はその挑発を買う
死体と血の海を歩きファシーノとヴァルネラの前へ進んでいく
ベチャベチャと死体と血を踏む気味悪い音がリズム良く響きやがて二人の前で音は止まる、
「———貴様らは悪か?それとも善か?それだけの力を保有しながら何故、表に姿を現さない。貴様らは世界中から狙われ、追われる身になるだろう。何故その様な生き方を選ぶっ!」
二人の前で立ち止まり女王は怒りに震えた声を振り絞る。二人に投げ掛けた悲痛な思いと叫び。理解できない二人の行動を前に私欲を爆発させた悲痛な訴え
そんな女王からの最後の警告を二人はただ黙って聞いていた
そしてたった一言の言葉を女王に返した
「【彼が】『主が』———望むから」
「——なっ!それだけの為に自らも地獄へと落ちて行くというのか?!実に愚かな選択だっ」
二人が放った言葉の本当の意味を知らない女王は二人の回答に驚きを通り越し、失望する
失望で顔が呆れ果てる女王に二人は気にする仕草を一切取らない。そんな二人は自分自信について付け加える
「私は当の昔に死んでいるわ。今ある生は彼がくれた物。彼が育む道は私の道。その道が例え地獄の入り口だろうとね」
「それは我も同じ事。主に出会わなければいつまで経っても“あの場所”から出られなかったからな」
二人の言葉を黙って聞いていた女王。嘘偽りの無い二人の口調。ある一人の存在への絶対的なまでの信用と忠誠心。仮面の二人は既に運命の選択を決めていたと思わせるのに十分な想いが見受けられる
(一体あの少年の何処にそんな惹きつける力があるのか‥‥)
知りたい‥‥この者達を従える少年とは一体どの様な素顔なのか‥‥どのような人物なのか‥‥‥
女王はその存在を考えながら、自信が持てる”全ての魔力”を解放する———
女王の周囲の空気が吹き荒れ渦になり、大地が脈動し地震が起こる
草木が大きく揺れ、血の海が波紋を起こす
周囲の空気が次第に、ある色が付き魔力に変化する
そして金のような輝かしき黄金の渦が巻き起こり、女王を包み込む。空気が風になり、風が渦を巻き起こし、渦が黄金の魔力に変わり嵐を生む現象
この現象を世界ではこう呼ばれている
———可視化できる魔力と
解放させた女王の魔力は神々しく神聖な色を放ち周囲が明るく照らし出させる
まるでレオンとは正反対の色彩を持つ女王は二人を睨み吠える
「———全力で行くぞっ!」
「‥‥‥私が相手するわっヴァルネラ様はそこへ」
「ああ‥‥‥見守っている」
ファシーノが前に立ちヴァルネラを退かす。そして女王とファシーノの一騎討ちが幕を開けようとしていた————
しかし、その直後
屋敷の内部から3人の人物が姿を現した
死体の山や血の海を見ても何食わぬ顔で進んでくる謎の男‥‥‥
「———ほっほっほ。これはまた派手にやってくれたわい。お嬢さん方」
白髪の老人が死体の山を見渡し、ファシーノ達に睨みつけた
戦闘を邪魔された女王は白髪の老人に睨みを利かせて詰め寄る
「———一体何者だ貴様ら!?」
「ほっほっほ。わしらが何者だと?どの道お前達も地面に転がる死体と同じになるのだから教えてあげよう。我らは”バラトロ”。そしてワシはオリュンポス十二神の一人バッコスの名を与えられた者よ」
「バラトロだと?オリュンポス十二神?知らんな。聞いたこともないっ」
バッコスの聴き慣れない言葉を女王はすぐに吐き捨てた
そんな態度を見兼ねたバッコスはその細い目を大きく開く
「貴様らのような小物などに悟られるような我々ではないっ」
「なっ!妾が小物だと?!妾を誰だと思い、その無礼な発言をしておるか!!」
小物扱いを受け、誇りを貶された女王は怒りを露わにしバッコスに吠える
女王を慕う軍はバッコスを警戒し、いつでも魔法を放てる準備をする
そしてこの重圧でも月下香《トゥべローザ》にとって恐るに足らず
バッコスが表に出て来てから無言だったヴァルネラが声を出した
「ほう‥‥老人。貴様、強いな」
老人を観察するヴァルネラとヴァルネラを凝視する程に驚くバッコス
二人の視線が互いに交差しバッコスはある事を感じ取る、
(‥‥この気配は、もしやっ)
そしてバッコスはヴァルネラを観て、あることに気付いた———
「———貴様、“人ではないな?この気配は‥‥そう、まさに精霊の魔力。それもただの精霊ではない、これは精霊王クラスの魔力か」
「———老人、なかなかいい目を持っているではないか。その通り我は人ではない。しかし、残念だったな我は精霊王クラスでも無い」
「‥‥それはどう言う事だ」
「それは想像に任せよう」
ヴァルネラはバッコスに向けて敢えて答えを出さずに不敵に微笑む
そしてもう一つの勢力である女王は離れていたとこで二人の会話を聞いていた
(一体どういうことだ。あの者は人ではないだと?)
闘技場での1000にも連なる魔法を掻き消した魔法なのか魔法ではないのかわからない現象を起こした人物
そしてエルフ軍内部での情報で、とある精霊が召喚されたが現在行方知らずの精霊
(今バッコスが言ったのが真実ならば‥‥もしかすると‥‥これはもう疑いようがない事実であるっ)
あれ程の魔法を一瞬で掻き消せる者はこの世に数人‥‥‥
(———まさか、まさかこの者であるのかっ?”精霊女帝ヴァルネラ”。一体如何してこのお方がそちら側についていると言うのだ?あのエルフ軍総司令は水の精霊王を召喚し契約したが、さらに上位の存在も召喚しようとしていたと聞く。しかし、このお方までは微塵も現れる様子もなかったと言う。エルフ軍のトップですら召喚できないこのお方を召喚したネロとは‥‥?)
最悪のシナリオが女王の脳裏を過ぎる
そしてその考えが一瞬で頭から離れさる声が聞こえて来た
その声は女王が愛してやまない人物‥‥‥
「———お母様っ!助太刀に参りましたっ!」
その時、女王の娘リコリスが現れたのだ。しかし、リコリスは屋敷の門前で立ち止まる
リコリスは急いで駆け付けたがこの惨状に目を見開いた
辺り一面死体の山と血の海が広がる地獄の様な光景
地面に転がる人だった者の亡骸。芝生が血に染まり、人の生の匂いが嗅覚を犯す死の世界
リコリスは一瞬で後悔を心に刻み込んだ
次第に体の自由が解除され倒れふし悶え苦しんでいた軍人並びにバラトロの残党が荒々しく息を大きく吸い込んだ
血の気が引き真っ白の顔は息を吸い込む事で正常な肌の色を宿していく
そして地面に片膝を付き殺気に耐えていた女王もまた深く息を吸い込んだ
体が自由になり解放されたのはいいが、なぜ解放されたのかが理解できていない軍人。あのままの状態だったら一瞬で息の根を止め、力の差を見せ付けておきながら仮面の二人は何故止めたのか‥‥‥
その答えは仮面を被る一人の女性から洩らされた
「———何故って表情ね?安心して、殺したりはしないわ‥‥ただ痛い思いをするだけだから」
悪魔の様に仮面の奥で微笑む一人の若い女性。黒いローブに包まれ危険な魅力を放ちながら悠々に歩く姿は女性の軍人すらもその魅力に惹かれてしまう美しさがあった
そしてもう一人、背が高く銀の髪をローブに包み込んでいる女性もまた妖艶な雰囲気を漂わせて軍の目に歩み出る
「ファシーノよ。あまりイラつくでない」
「———わかりました。それではどなたから相手かしら?いつでもかかってきなさいっ」
仮面の奥の瞳が鋭く月の光を反射し、獲物を見定める
ファシーノの挑発に先程地面に片膝を突き付けられプライドを傷付けられた女王はその挑発を買う
死体と血の海を歩きファシーノとヴァルネラの前へ進んでいく
ベチャベチャと死体と血を踏む気味悪い音がリズム良く響きやがて二人の前で音は止まる、
「———貴様らは悪か?それとも善か?それだけの力を保有しながら何故、表に姿を現さない。貴様らは世界中から狙われ、追われる身になるだろう。何故その様な生き方を選ぶっ!」
二人の前で立ち止まり女王は怒りに震えた声を振り絞る。二人に投げ掛けた悲痛な思いと叫び。理解できない二人の行動を前に私欲を爆発させた悲痛な訴え
そんな女王からの最後の警告を二人はただ黙って聞いていた
そしてたった一言の言葉を女王に返した
「【彼が】『主が』———望むから」
「——なっ!それだけの為に自らも地獄へと落ちて行くというのか?!実に愚かな選択だっ」
二人が放った言葉の本当の意味を知らない女王は二人の回答に驚きを通り越し、失望する
失望で顔が呆れ果てる女王に二人は気にする仕草を一切取らない。そんな二人は自分自信について付け加える
「私は当の昔に死んでいるわ。今ある生は彼がくれた物。彼が育む道は私の道。その道が例え地獄の入り口だろうとね」
「それは我も同じ事。主に出会わなければいつまで経っても“あの場所”から出られなかったからな」
二人の言葉を黙って聞いていた女王。嘘偽りの無い二人の口調。ある一人の存在への絶対的なまでの信用と忠誠心。仮面の二人は既に運命の選択を決めていたと思わせるのに十分な想いが見受けられる
(一体あの少年の何処にそんな惹きつける力があるのか‥‥)
知りたい‥‥この者達を従える少年とは一体どの様な素顔なのか‥‥どのような人物なのか‥‥‥
女王はその存在を考えながら、自信が持てる”全ての魔力”を解放する———
女王の周囲の空気が吹き荒れ渦になり、大地が脈動し地震が起こる
草木が大きく揺れ、血の海が波紋を起こす
周囲の空気が次第に、ある色が付き魔力に変化する
そして金のような輝かしき黄金の渦が巻き起こり、女王を包み込む。空気が風になり、風が渦を巻き起こし、渦が黄金の魔力に変わり嵐を生む現象
この現象を世界ではこう呼ばれている
———可視化できる魔力と
解放させた女王の魔力は神々しく神聖な色を放ち周囲が明るく照らし出させる
まるでレオンとは正反対の色彩を持つ女王は二人を睨み吠える
「———全力で行くぞっ!」
「‥‥‥私が相手するわっヴァルネラ様はそこへ」
「ああ‥‥‥見守っている」
ファシーノが前に立ちヴァルネラを退かす。そして女王とファシーノの一騎討ちが幕を開けようとしていた————
しかし、その直後
屋敷の内部から3人の人物が姿を現した
死体の山や血の海を見ても何食わぬ顔で進んでくる謎の男‥‥‥
「———ほっほっほ。これはまた派手にやってくれたわい。お嬢さん方」
白髪の老人が死体の山を見渡し、ファシーノ達に睨みつけた
戦闘を邪魔された女王は白髪の老人に睨みを利かせて詰め寄る
「———一体何者だ貴様ら!?」
「ほっほっほ。わしらが何者だと?どの道お前達も地面に転がる死体と同じになるのだから教えてあげよう。我らは”バラトロ”。そしてワシはオリュンポス十二神の一人バッコスの名を与えられた者よ」
「バラトロだと?オリュンポス十二神?知らんな。聞いたこともないっ」
バッコスの聴き慣れない言葉を女王はすぐに吐き捨てた
そんな態度を見兼ねたバッコスはその細い目を大きく開く
「貴様らのような小物などに悟られるような我々ではないっ」
「なっ!妾が小物だと?!妾を誰だと思い、その無礼な発言をしておるか!!」
小物扱いを受け、誇りを貶された女王は怒りを露わにしバッコスに吠える
女王を慕う軍はバッコスを警戒し、いつでも魔法を放てる準備をする
そしてこの重圧でも月下香《トゥべローザ》にとって恐るに足らず
バッコスが表に出て来てから無言だったヴァルネラが声を出した
「ほう‥‥老人。貴様、強いな」
老人を観察するヴァルネラとヴァルネラを凝視する程に驚くバッコス
二人の視線が互いに交差しバッコスはある事を感じ取る、
(‥‥この気配は、もしやっ)
そしてバッコスはヴァルネラを観て、あることに気付いた———
「———貴様、“人ではないな?この気配は‥‥そう、まさに精霊の魔力。それもただの精霊ではない、これは精霊王クラスの魔力か」
「———老人、なかなかいい目を持っているではないか。その通り我は人ではない。しかし、残念だったな我は精霊王クラスでも無い」
「‥‥それはどう言う事だ」
「それは想像に任せよう」
ヴァルネラはバッコスに向けて敢えて答えを出さずに不敵に微笑む
そしてもう一つの勢力である女王は離れていたとこで二人の会話を聞いていた
(一体どういうことだ。あの者は人ではないだと?)
闘技場での1000にも連なる魔法を掻き消した魔法なのか魔法ではないのかわからない現象を起こした人物
そしてエルフ軍内部での情報で、とある精霊が召喚されたが現在行方知らずの精霊
(今バッコスが言ったのが真実ならば‥‥もしかすると‥‥これはもう疑いようがない事実であるっ)
あれ程の魔法を一瞬で掻き消せる者はこの世に数人‥‥‥
(———まさか、まさかこの者であるのかっ?”精霊女帝ヴァルネラ”。一体如何してこのお方がそちら側についていると言うのだ?あのエルフ軍総司令は水の精霊王を召喚し契約したが、さらに上位の存在も召喚しようとしていたと聞く。しかし、このお方までは微塵も現れる様子もなかったと言う。エルフ軍のトップですら召喚できないこのお方を召喚したネロとは‥‥?)
最悪のシナリオが女王の脳裏を過ぎる
そしてその考えが一瞬で頭から離れさる声が聞こえて来た
その声は女王が愛してやまない人物‥‥‥
「———お母様っ!助太刀に参りましたっ!」
その時、女王の娘リコリスが現れたのだ。しかし、リコリスは屋敷の門前で立ち止まる
リコリスは急いで駆け付けたがこの惨状に目を見開いた
辺り一面死体の山と血の海が広がる地獄の様な光景
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