71 / 141
五章 血脈の奪還
遮る者
しおりを挟む
「———馬鹿者っ!なぜこのタイミングで来たっ!リコリス!」
突然現れた娘に向かって噛みつく様に怒鳴る女王
それもそのはずこのような地獄の入り口にまだ二十歳にも満たない少女が来るなど許していい筈がなかった。女王は娘の命が第一に優先すべき事
どれほど重要な任務や会議でさえも娘の頼み、娘の危機に至っては娘を優先する。そんな女王でも臆してしまう敵がいる状況でリコリスを守れると思ってはいなかった
愛する娘の為に心を鬼にして一喝する女王だったが、時既に遅し。この地獄の入り口へ来てしまっては逃げ去る事も、生きる事も危ういと女王は感じていた
目の前のバッコスと名乗る老人が女王並びに娘のリコリスを見逃す筈がなく、必ずリコリスも襲いにかかると女王は断言していた。そして死体の山を見据え後ずさるリコリスを女王は側に来いと声を張り上げる‥‥‥‥
「リコリス!妾の側から決して離れるなっ!いいかっ!?」
「——わかりましたっ!」
「ほっほっほ、親子とは実に良いものだ。親子共々冥土に送ろう」
バッコスが放つ殺気で空気が張り詰める。いつ動くか分からない緊張感の中ファシーノはバッコスに向けて怒気を含んだ声を浴びせる
「———彼はどこに居るの?」
「彼?ああ、あの少年のことか。そうだな、少年なら先に冥土へと送り届けた。貴様らも共に送り届けるとついでに伝えておいた。ほっほっほ悲しいか?お嬢さん」
「‥‥そうね」
バッコスに突き付けられた言葉をファシーノは瞼を下ろし首を垂れながら聞いていた
その姿を見ていたバッコスは悲しみの仕草だと捉えては、至福を感じ喜んでいた
しかし、それはバッコスの勘違いであった。ファシーノは悲しんでなどいなかった。ファシーノの仕草はレオンの魔力を感じ取るためであった。
そしてレオンの魔力の燈が微かに感じ取れ、完全に消えていない事がわかると顔を上げ、仮面の奥でバッコスを見つめ微笑み笑った
「なんだその顔は?」
舞宴会用の仮面を身に付け微笑むファシーノに苛立ちを覚え、その気に食わない態度に殺気を増す老人。
そんな老人を鼻で笑い下に見るファシーノは目の前の哀れな存在に語りかける
「愚かな人‥‥貴方は彼の本当の姿を知らないから言えるのよ?ほんと哀れな人‥‥」
「小娘がっ!」
二人は虎視淡々と睨み合い、今にでも戦闘が起こりそうなそんな矢先、屋敷の屋上からファシーノ達に向かって人影が飛び降りてくる
何かを背負っている様に見え、ファシーノ達の前で優雅に着地した
その人影は黒いローブを羽織り仮面を身に付けているある少女だった
「———ファシーノ様、エリーさんを確保しました」
「よくやったわ、デリカート」
エリーを背中に背負い飛び降りた人影はデリカートだった
標的を確保した事を伝えるとファシーノの後ろへと下がるデリカート
その一部始終を見ていたある男はデリカートに向けて叫んだ
「そ、その女は俺のだぞ!?なぜ貴様が背負っている?!今直ぐ寄越せ!」
「あなたの様な下衆に渡すと?あまり苛つかせないでほしいわ」
マイアーレは背中に背負われる人物がエリーだと分かるとすぐに強奪しようとした。しかしファシーノに拒否された事でマイアーレは苦虫を噛み潰した様な顔をする
そして白髪のバッコスに泣きついた
「——バ、バッコス様っ!どうか、何卒お願いします!」
「——まあ、良い。どの道全員屠るのだから‥‥」
言い終えるなりバッコスは杖の鞘から刀をゆっくりと引き抜く。その刀に月明かりが照らされ一線の輝きが周囲に放たれる。バッコスは刀を握る腕をダラリと下げる。全く隙が無く、いつ斬りかかりに来るかを警戒する
しかし斬りかかりに来ると思っていた全員が謎の圧を体全体で体感していた
「なんて殺気を放つ‥‥貴様っ」
バッコスの殺気は先程よりも鋭さを格段に上げまるで別の物であるかのようだった。女王はバッコスの圧が猛者の殺気だと認識する。全身が凍りつくように女王の周りに展開している軍は肩を震わせていた
もう一つの勢力である月下香《トゥべローザ》。彼女らはただじっと待っていた。そよ風の音を聴くように静かにその時を待つ。
何かを求めている様に、待ち望む存在を———
暗い空では雲が張り詰め、大地を照らしていた三日月が姿を消していた
それも次第に風と共に雲が避け、青々しい月光が再度大地を照らし出す
バッコスは力強く刀を握ると両足に力を込め、全員を一度に視る
そして最後の言葉を掛ける
「———さて、話はここまで。貴様ら覚悟しっ————」
————おい、爺さん。まだ勝負は終わってないぞ
しかしその言葉は何者かにより途中で遮られたのだった
突然現れた娘に向かって噛みつく様に怒鳴る女王
それもそのはずこのような地獄の入り口にまだ二十歳にも満たない少女が来るなど許していい筈がなかった。女王は娘の命が第一に優先すべき事
どれほど重要な任務や会議でさえも娘の頼み、娘の危機に至っては娘を優先する。そんな女王でも臆してしまう敵がいる状況でリコリスを守れると思ってはいなかった
愛する娘の為に心を鬼にして一喝する女王だったが、時既に遅し。この地獄の入り口へ来てしまっては逃げ去る事も、生きる事も危ういと女王は感じていた
目の前のバッコスと名乗る老人が女王並びに娘のリコリスを見逃す筈がなく、必ずリコリスも襲いにかかると女王は断言していた。そして死体の山を見据え後ずさるリコリスを女王は側に来いと声を張り上げる‥‥‥‥
「リコリス!妾の側から決して離れるなっ!いいかっ!?」
「——わかりましたっ!」
「ほっほっほ、親子とは実に良いものだ。親子共々冥土に送ろう」
バッコスが放つ殺気で空気が張り詰める。いつ動くか分からない緊張感の中ファシーノはバッコスに向けて怒気を含んだ声を浴びせる
「———彼はどこに居るの?」
「彼?ああ、あの少年のことか。そうだな、少年なら先に冥土へと送り届けた。貴様らも共に送り届けるとついでに伝えておいた。ほっほっほ悲しいか?お嬢さん」
「‥‥そうね」
バッコスに突き付けられた言葉をファシーノは瞼を下ろし首を垂れながら聞いていた
その姿を見ていたバッコスは悲しみの仕草だと捉えては、至福を感じ喜んでいた
しかし、それはバッコスの勘違いであった。ファシーノは悲しんでなどいなかった。ファシーノの仕草はレオンの魔力を感じ取るためであった。
そしてレオンの魔力の燈が微かに感じ取れ、完全に消えていない事がわかると顔を上げ、仮面の奥でバッコスを見つめ微笑み笑った
「なんだその顔は?」
舞宴会用の仮面を身に付け微笑むファシーノに苛立ちを覚え、その気に食わない態度に殺気を増す老人。
そんな老人を鼻で笑い下に見るファシーノは目の前の哀れな存在に語りかける
「愚かな人‥‥貴方は彼の本当の姿を知らないから言えるのよ?ほんと哀れな人‥‥」
「小娘がっ!」
二人は虎視淡々と睨み合い、今にでも戦闘が起こりそうなそんな矢先、屋敷の屋上からファシーノ達に向かって人影が飛び降りてくる
何かを背負っている様に見え、ファシーノ達の前で優雅に着地した
その人影は黒いローブを羽織り仮面を身に付けているある少女だった
「———ファシーノ様、エリーさんを確保しました」
「よくやったわ、デリカート」
エリーを背中に背負い飛び降りた人影はデリカートだった
標的を確保した事を伝えるとファシーノの後ろへと下がるデリカート
その一部始終を見ていたある男はデリカートに向けて叫んだ
「そ、その女は俺のだぞ!?なぜ貴様が背負っている?!今直ぐ寄越せ!」
「あなたの様な下衆に渡すと?あまり苛つかせないでほしいわ」
マイアーレは背中に背負われる人物がエリーだと分かるとすぐに強奪しようとした。しかしファシーノに拒否された事でマイアーレは苦虫を噛み潰した様な顔をする
そして白髪のバッコスに泣きついた
「——バ、バッコス様っ!どうか、何卒お願いします!」
「——まあ、良い。どの道全員屠るのだから‥‥」
言い終えるなりバッコスは杖の鞘から刀をゆっくりと引き抜く。その刀に月明かりが照らされ一線の輝きが周囲に放たれる。バッコスは刀を握る腕をダラリと下げる。全く隙が無く、いつ斬りかかりに来るかを警戒する
しかし斬りかかりに来ると思っていた全員が謎の圧を体全体で体感していた
「なんて殺気を放つ‥‥貴様っ」
バッコスの殺気は先程よりも鋭さを格段に上げまるで別の物であるかのようだった。女王はバッコスの圧が猛者の殺気だと認識する。全身が凍りつくように女王の周りに展開している軍は肩を震わせていた
もう一つの勢力である月下香《トゥべローザ》。彼女らはただじっと待っていた。そよ風の音を聴くように静かにその時を待つ。
何かを求めている様に、待ち望む存在を———
暗い空では雲が張り詰め、大地を照らしていた三日月が姿を消していた
それも次第に風と共に雲が避け、青々しい月光が再度大地を照らし出す
バッコスは力強く刀を握ると両足に力を込め、全員を一度に視る
そして最後の言葉を掛ける
「———さて、話はここまで。貴様ら覚悟しっ————」
————おい、爺さん。まだ勝負は終わってないぞ
しかしその言葉は何者かにより途中で遮られたのだった
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる