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五種族会談編 一章 虚の王
虚の玉座
しおりを挟む———誰もが思っている事を当ててみせよう‥‥
侵入者であるはずの少年がなぜこのお方々と共に並んでいる?!とか
あの少年は一体誰だ?!どうして五華のお方と歩いている?!とか
色々と頭の中で思考しているだろうな
さっきの門番なんて口を開けて絶句しているぞ。まあ気持ちは分かる
まあ、俺の予想は的中したわけだが‥‥‥
「———おい、あいつは誰だ?」
「なぜ、横でもなく先頭を歩いている。あの道はファシーノ様の道だぞっ?殺してやるっ」
「なんなんだあの少年は!五華と親しく話しやがってっ?!斬り刻んでやるっ」
「あの少年は侵入者じゃなくて?それにヴァルネラ様が『主』と言っていたような気がしたけど、気のせいよね?」
「それは絶対に聞き間違いだ。現トップはあのファシーノ様だぞ?我らが月下香《トゥべローザ》の統括者であるお方は一人しかいない」
「そ、そうよね。ファシーノ様が統括しているものね。それに私たち配下の道標‥‥でも、なぜあの少年はファシーノ様や他の五華と一緒に歩き、よりにもっよて先頭なのかしら?」
「あら、それは私も気になりますわね。あの少年になんの、これっぽっちもっ魅力を感じませんわっ!前を歩くなど図々しいにも程があります。すぐに始末したい程ですわっ!」
「一体何者だ」「殺してやる!」「誰か捕らえろよ!」「調子乗るな少年!」
前を歩いていると左右から嫉妬や憎悪に敵意、殺気が俺一人に注がれ、なかなか居心地が悪い。配下が俺の事を知らないのは致し方ない。このような反応をするのは自然のことだろう
どこの馬の骨だか知らない奴が、自分達の敬愛するお方と歩くなど許せるはずがない。それもついさっきまで侵入者であったはずの少年なら尚更だろう
ハァァ~‥‥‥俺は内心深いため息を吐く。この状況ではため息をはくしかできないといったほうがいいだろう
左右の配下達を見渡しても見知った人物がいない。みんな新規か俺が組織に顔を出さなかった時に来たのだろうな
俺目掛けて陰口を散々言われるが全てを無視し奥へと歩き続ける。あのファシーノ達が何も口を出さず無言でいるのは、俺が無視を決め込んでいるからだろう。
まあそんな事に構ってやれるほど暇ではない
‥‥ていうか本当に見知った人物がいないな。これだけの人数がいれば一人や二人ぐらいはいそうなのに
決して顔には出さず内心がっかりしながら歩き続ける
行き着く先は”王の間”
そして目にするのは彩飾が施され黒を基準とした一つの椅子
「———あれが貴方の椅子よ。あそこに座ってね」
「なんでそんなに楽しそうなんだ。目立つのは好みじゃないが仕方ない」
楽しそうなファシーノに促され、玉座に歩みを進める俺は数段の階段をゆっくりと登って行く
———コツン コツン
「———お待ちください!!あそこは五華のお方々が定めた誰一人として座ることを許されない虚の玉座!なぜあのような少年を?!」
俺があゆみを進めると何やら後ろで問題が生じたらしい。ファシーノに目で合図すると『そのまま行って』と目で言われたので歩みを勧めるとしよう
「———そ、そうです!先ほどまで侵入者だった奴をなぜ?!」
「一体どうしたのですか?!」
「目を覚ましてください!?は!もしや精神に干渉する魔法を使っているのか?!」
———コツン コツン
随分とこの椅子は貴重な物のようだな。それにしても後ろでは配下が続々と立ち上がり抗議している。大変だろうがここはファシーノを信じよう‥‥‥
「———黙りなさい。この虚の玉座は昔も今も変わらない。あるお方のみが座ることのできる玉座。これは私たちのものではないわ!」
ファシーノが後ろで配下に怒声を浴びせ、その殺気に次々と怯んで行く配下諸君
「分を弁えろ配下共。誰がいつ、立っていいと言った?」
「そうですよぉ!さっきから陰口ばっかでだめですよ!」
「機嫌が良いうちに元の位置に戻ることをお勧めするわ」
ヴァルネラもデリカートもエルディートも殺気がすごいな。よくもまあここまで鍛えたな‥‥俺でも怖いよ。俺でこれなら配下達は失神するんじゃないか?
———コツン コツン
「ああ、ヴィオラ。説明していなかったわね。彼が例の人物よ」
「———そうですか。まさかあの時の少年だったとは‥‥」
「———あの時?」
「はい、冒険者ギルドで‥‥‥」
ファシーノがヴィオラと言う女性に話しかけ、何やら小声で会話をしている
聞いているうちにやはり冒険者ギルドでのヴィオラさんだったと分かった
なぜファシーノ達が五華と言われているかだんだん分かってきたぞ。
そしてヴィオラさんはまだ新しいメンバーだろう。それでも幹部のファシーノ達と共に歩いている事から相当の実力を買われたのだな。
———コツン コツン
「なぜあの少年なのですか?!あの少年は一体誰なのですか!?説明してください!」
ファシーノ達に殺気を放たれてもまだ5人の配下が立ち上がり異を唱えている。きっと彼らはとても優秀なのだろう。優秀だからこそ俺の存在が怪しくて仕方ないのかもしれない
そんな中ファシーノは諭すように彼らに優しく語りかけていた
「———なぜ今日の会議で組織総員が集まったか分かるかしら?」
「わ、私には分かりかねます‥‥」
「そうよね。わからないわよね。なら教えてあげるわ———」
———コツン コツン———
———ドスッ
俺は虚の玉座に腰を下ろす。数段分の高さがファシーノ達とあり、全域を見下ろせる。そして目の前で5人がこちらに振り向き、面白い事をしようとする
抗議をしていた配下ですらも心奪われるその光景
魔法で作り出された光が俺と5人を上部から照らし出す。まるで神の前にひれ伏す従者のように膝を曲げ跪く妖艶な5人の姿
———跪く五華を見るのは初めてである配下達は唾を呑み込み、息を殺し、目を見開き、顔をあげ、ただ漠然とその光景を見入る
全ての視線が一箇所に集められる。この光景を目撃した者は一斉に、胸の奥に封印していた蓋を開きかける
———我ら配下を統べる存在が五華ならば、その五華を統べる存在もいるのではないか、と
ならば一体誰がその者なのか?どこにいるのか?いつ現れるのか?
これまで疑問に思い、胸の奥で仕舞い込んでいた謎が今、目の前で蓋を開き解決されようとしていた
そして意を唱えていた優秀な配下も認めざる得ない状況に心折れ、立ち上がっていた足を深く曲げ、跪く———
最後に5人の麗しい口から発せられる言葉
それはここにいる傘下や配下にその存在を認めさせるのに充分過ぎるほどの威力を出した‥‥
「「「———我ら五華、御身をお待ちしておりました。只今より月下香総会議を始めさせて頂きます。我らの統括者にして、敬愛し忠誠を誓うただ一人の主」」」
「「「———”ネロ様”———」」」
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