虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

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学園都市編 青年期 一章 学園

合格発表

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「———もう、朝か‥‥」

長い夜が明け、朝日が窓から差し掛かる。うつ伏せの体を起こしてベッドから立ち上がり、窓を開ける。鳥の囀り、魔車の走行音、人々の声が聞こえてくる。

風が窓から部屋に入り、春の涼しさを肌で感じていた

「———ん、おはよう‥‥眩しいわ‥‥」

この部屋にはベッドが一つしか置かれていない。その同じベッドから眠そうな声を掛けてくる黒髪の女性。ネグリジェ姿の彼女は無防備にその身体を際立たせ、重そうな身体を起こした

「おはよう“ファシーノ”。もう9時だ、準備して学園に行くぞ。今日は合格発表だからな」

「ええ、そうだったわね。不合格なんて想像できないけど、一応確認には行かなきゃね」

そういうファシーノは部屋に配置されているクローゼットを開き、衣服を取り出す。ネグリジェを脱いだかのような音が後方から聞こえてくるが俺は窓の外を向いていた。

ここは宿屋であり一番上の階を借りている。そのため外の景色は頗る良い
そして女性の着替えや身支度を見ないのが俺のルールだ。

昔、母さんに‥‥『女性の着替えや身支度は見てはいけません!女性は綺麗な姿を男性に披露して驚いてほしいの!付け加え男性の方は身支度を見たら驚きが半減しちゃうでしょう?それに女性が見てもいいって言ってもね、あえて見ないのが男の格が上がるの!』

なんて言われたことがあったな、それも10年前か‥‥父さんからは何を教えられたっけ?? 

考えるのをやめよう‥‥


「———よし、いいわ。それじゃ行きましょ?」

外を眺めていたら着替えを終えたファシーノが声を掛けてきた。俺は振り返りファシーノを見た。

「うん、今日も綺麗だよファシーノ」

「ふふ、ありがとう」

今日の服装はヒラヒラのスカートではなくピシッとしたフォーマルな紅スカートを履いている。上着は白を基準に胸から下げるネックレスがまた良い。妖艶な魅力を全開に醸し出している。大人顔負けの服装は本当に18歳なのかと疑いたくなるレベルだ。

ファシーノに魅了されながら自身も着替え部屋を出る。宿の一階に降りて受付に鍵を渡した俺達は徒歩で学園地区に向かっていた。いつものようにファシーノは俺の腕に抱きつきながら歩き周りの視線を集めるが、俺自身も少しは慣れてきた。恥ずかしいという感情が薄れてきた。慣れというのは怖いな‥‥

魔車が沢山通る大通りを歩き、学園地区の正門にたどり着いた俺達は合格者が記されている掲示板を探す。学園地区と言うだけあって敷地が広すぎてどこにあるのか分からない。

ファシーノと一緒に学園地区内を歩き続けていたところ、人が大勢いるエリアにたどり着いた。人が大勢ということは何らかの重要なところである。と言うことは当たりなのかもしれない。

種族の違う大勢の人が密集している場所まで辿り着くと皆が首を上に向けている。そこに何があるのかと思えば合格者が記載されている掲示板だった。

ある者は喜び、ある者は泣き崩れ、これが現実なのだと言われているかのようだ。喜ぶ者は合格し友達同士で抱き合っている。

微笑ましい光景だが一方で不合格。掲示板に番号が記載されていない不合格者は膝から崩れ落ちている。不合格者もまた血が滲むほどに毎日努力をしてきたのだろう。

しかし届かなかった

同情はできても理解をしてやれない‥‥彼らもまた来年挑戦してくるのだろう。
学園は18歳から入学できるだけであって、年齢制限はなく何回でも挑戦できる。

不合格者はこの悔しさをバネにさらに成長して来年返り咲いてくるのだろう‥‥

それにしてもこの掲示板は‥‥‥

「なるほど、魔法で浮かせているのか。それにしてもよくできている。巨大で透明な薄い板に番号がぎっしりと刻まれている。ほう、どれどれ‥‥あ、あったぞファシーノ」

俺は魔法で浮いている掲示板に指を指し、隣のファシーノに伝えた。ファシーノもじっくりとその黒い瞳で見つめ俺の番号も探してくれていた。

「あら、そう?‥‥貴方のも書かれているわよ?良かったわね、不合格にならなくて。魔力測定と言い、公爵家と言い、問題ばかり起こしてまったく‥‥」

「は、ははは‥‥まあ、二人で合格を確認できたことだし早速手続きへと向かおう」

「ええ、そうしましょ」

と言うことで合格した者は手続きをしなくてはならない。手続きは学園内に事務があるのでそこで手続きをするのだが、学費やら宿泊施設やらが心配だ。まあ、受付する時に説明されるだろうな‥‥


◊◊◊


「———と言うことですので説明は以上になります。改めて合格おめでとうございますお二人とも、ふふ」

学園地区にある事務にて受付を済ませ、受付嬢の満面の笑みで見送られた俺達。
受付嬢の説明によると、合格した者はまず入学式までに荷物を指定された寮に運ぶ事。

この学園は全寮制であり、男女と学年で別れている。今年の新一年生が何人いるのか分からないが相当数がいるため男子寮でも規模が桁違いなのだと推測できる。一度見てみたいが楽しみにしておこう。

そしてもう一つは学生服の支給である。学生服は今現在準備ができないので追って連絡すると、準備ができ次第に宿泊している宿宛に届けられるらしい。どんな制服のデザインが来るのかこれも楽しみだ。

あと気になっていた学費はなんと無償らしい。いやーさすがは世界一の学園。金よりも実力を見るのか。いや金は貴族からかき集めているのか‥‥この前のレオナルドの不正のように‥‥まあいい、無償なだけありがたい。親のいない俺が払えるわけない。

組織の金を使うという方法もあるが‥‥なんだか申し訳ない。いや、俺の組織だから申し訳なくはなくないか?あ、もうわけわからん。

そういえば俺の配下達の給料はどの程度のものだ?流石にただな訳がないだろうが‥‥エルディートが金銭面を担っているからな後で聞いてみよう

とまあ、入学式まで日数があるので一度本部に帰ろうか!お土産を持って!

「ファシーノ、一度本部に戻るぞ。皆んなにお土産を買って行こうか」

「ええ、貴方との二人っきりの旅行がもう終わってしまうのね。寂しいわ」

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