虚無の統括者 〜両親を殺された俺は復讐の為、最強の配下と組織の主になる〜

サメ狐

文字の大きさ
127 / 141
学園都市編 青年期 一章 学園

学園序列2位のヴァレンチーナ

しおりを挟む
———私は幼少の頃から王族という立場が嫌いだった

毎日が退屈で仕方なかった。友達と呼べる存在は兄弟ぐらいしか周りにはいなくて、舞踏会に出席すれば権力や地位に目が眩む貴族が話しかけてくる始末。

そして私の容姿だけを見て寄ってくる者達は大概無視し拒絶していった。

「———なぜいう事を聞かぬっ!ヴァレンチーナ‥‥!」

そんな私の王族らしからぬ態度にお父様は激怒し、より一層王族としての稽古や勉学の時間が増え、私の自由が消えていった‥‥

けれど、私にはあるひとつの夢がありました。それは魔法剣士になり国民を守るというもの。ある日、国で行われた武闘大会に出席した時、目の前で繰り広げられた戦いに心奪われました。
私も同じく魔法を扱い、剣術を磨き、彼らのようなカッコイイ魔法剣士になりたい‥‥そう思っていました‥‥


しかし、現実は甘くありませんでした。

魔法剣士になりたいとお父様に言い出せば怒鳴られ、王族に必要な立ち振る舞いや知識を散々叩き込まれました。王城の中でただ只管に王の資質とやらを磨いているのが我慢なならず、まるで檻の中の鳥のようで何処にも自由はなく、差し伸べられた道を歩つまらない人生そのものだった‥‥


———それから数年過ぎた頃。13歳の誕生日を迎え、全階級制定協会の神殿で魔力測定を行う事になった。私は‥‥‥これが最後のチャンスだと思いました。

ここで結果を、魔法の才能を示す事で、夢である魔法剣士への道が開かれる‥‥

そして恐る恐る水晶に手を翳して、私は神に祈った———

『どうか、どうか自由への道を———』


◊◊◊


「———随分と懐かしい記憶‥‥‥あれから6年が過ぎたのね」

目の前で戦闘が行われているにも関わらず、昔の記憶が蘇ってしまうなんて‥‥
あれからどうなったかは今の自分自身を見れば明らか‥‥

魔力測定では7000代を出して周りの大人を全員震撼させたのを今でも鮮明に覚えています。王族だからと生まれながらに特別魔力が高いというのはなく、王族でも各々の魔力量にはばらつきが生じます。一般人よりも多少多い程度と教わっていました。

しかし、私の魔力量は13歳にして7000代の域に到達し、軍で示されるこの数値はAランクもしくはSランクの実力に相当する魔力量。13歳にして新たな可能性、新たな才能が目覚め、頑なに拒否したあのお父様も私の夢である魔法剣士の道をお許しになられた。

それから学園に入学する5年間は毎日魔法を勉強し、毎日剣を振り続けました。あらゆる魔法を試行錯誤しては失敗を繰り返しながら学び、有名な教師に剣術を教わり女の掌ではなくなっても夢の為に努力し続けてきました。


そう———人族歴代最強と称されるパエーゼ=プレチーゾ様に一歩でも近づくため‥‥あの日、彼女の魔法や剣術を見た瞬間から私の人生が大きく変わった。

その後、学園に入学した私は序列システムを大いに活用しようと考えました。
Sクラスで入学した当時は私よりも順位の高い同級生や先輩達に決闘を申し込む毎日。そして2年に進級する頃には序列2位の位置まで辿り着くことに叶いました。それでも私の実力はこんなものではない、更なら境地へと踏み込む為に努力を惜しまない‥‥

———そして今日は新入生の入学式とその後に行われるオリエンテーションがあリます。オリエンテーションでは新入生Aクラスに簡易な模擬試合を魅せる役割を私は請け負うことになってしまい‥‥
つい先程まで新入生に試合を魅せ、上級魔法をただ斬るだけの披露でしたけど大いに喜んでもらえたようで安心しました。

魅せ試合が終了して新入生同士の模擬試合が始まったのですが、SクラスならともかくAクラスの模擬試合を見せられるとなると退屈だと、思っていました。

しかし‥‥‥一人、いいえ二人の魔力に少し違和感があります。一人は観客席から、そしてもう一人は模擬試合の中央に立って対峙している新入生の男子です

一方のレオナルド=ダッチは公爵家の長男で色々と有名で舞踏会でよく見かけます。魔力測定でも評判が良く、解放を覚えたてとかどうとか‥‥一見すれば確実にダッチ家が有利と誰もが思うでしょう。


しかし、あの“レオン”という新入生には何かがあります‥‥‥

不気味というよりおかしいのです。誰もが持っているはずの“魔力”をあまり感じないのです。

ある一定のレベルにまで達すると自分自身以外の魔力も鋭く感じられるようになります。ある一定のレベルとは定かではありませんが、Sランク以上の実力に達すると感じられようになると言います。また圧倒的‥‥暴力的な魔力は誰でも感じられます‥‥‥

それを踏まえて新入生レオンの魔力があまり感じられないのが異常です。本当微々たる魔力なのでしょうか?それならばダッチ家に勝てるはずがありません。

なのに、なぜ彼はあれ程にまで余裕の笑みを浮かべているのでしょう‥‥

私は“その時”がくるまで彼について理解できませんでした。彼の不気味さと余裕ぶりは一体何処からくるものなのか‥‥この目で確かめれば何かが分かる。そう思っていました

しかし、私の目の前で見せられた彼の実力は想像異常でした‥‥‥

ダッチ家に伝わる最上級魔法を意図も簡単に粉砕し、何もなかったかのように静寂が訪れる練習場。響き渡る勝利宣言と新入生達の動揺の声が訪れると我に返る私。

———唖然としてしまいました

次々に落ちてくる真っ赤な隕石を斬撃だけで全て粉砕、いえ粉々にしたのですから‥‥おそらく剣技だけで言えば私と同等かそれ以上の実力。
彼は斬撃と言っていますが、あれは斬撃と風魔法を組み合わせた代物。簡単で誰でも扱うことのできる斬撃と風魔法の融合は威力が乏しいと常識です。

しかし、彼が使った代物はそれ以上の威力っ‥‥最上級魔法の降り注ぐ隕石を粉々にしたあの斬撃は一体‥‥

剣術なのか魔法なのかも怪しい代物を扱う彼は本当にAクラス? 

実力は確実にSクラスのもの。それより彼から魔力があまり感じられないのにどうしてあれ程高威力の魔法を扱えるのでしょう?

魔力があまり感じられないなんて人生で”2度目”の出来事です


———あれは2年前の最大の事件
“晦冥の厄災”と後に言われた世界を巻き込んだ戦い

あの時、空を見上げ目にした‥‥天にまで届き、悪しき厄災を滅ぼした黒い魔法

あの魔法こそが頂の魔法と呼ばれる全種族が求める領域。その魔法は頂の魔法なのに何も感じないという不気味な点。そして今回彼が扱った魔法

魔力のあまり感じない彼がどうして‥‥
彼は一体‥‥何者でしょうか‥‥?

‥‥‥私の考えすぎかもしれません。世界の大罪人が学生、それも新入生なんてありえない話です。

ではなぜ、どうして、『似ている』なんて感じたのでしょう‥‥

これは王族たるこの私が、彼を少し監視する必要がありますっ!

そして彼と一戦交えてみたい‥‥!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...