キラワレモノノ学園

Lara

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九月四日 6

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「まぁ、だからと言って全員が全員そうではないが。しかし中にはいるのが実情だ」
「そうですね、煉はここに入ってきてすぐに親衛隊に入っちゃったしすぐに総隊長に挙げられちゃったから今はまだ明るい部分しか見えてないと思う。ねぇ煉、君はたとえ不本意で隊長格になったとはいえ」

恋心はカチリと箸を置き真っ直ぐに鶴白を見つめた。

「祭り上げた彼ら親衛隊員は煉を悪しからぬ感情を抱いているんだ。だからこそ、綺麗な部分しか見せたくない。そういうことなんだよ」

鶴白は目を見開いた。何とも言えない微妙な表情で恋心に目を合わせた。

新しく聞かされた学園の実情、今まで守られていたということ。
自らの欲を満たすために入った学園であり、喜んで観察や想像妄想に勤しんでいたことだろう。だが見ていたのは薄っぺらい取り繕われた表の面。そのすぐ裏ではただならぬ事情がある。それを大切にしている部下が懸命に隠していた。

それを今更だが知って複雑なのだろう。守っているつもりで守られていた。

「しかし、そのままでいいと思うぞ」
「えっ?」
「守られていたことを微妙に感じていたとしても、だ。あいつらだって可愛らしい姿をしていたりするが立派な男だ。お互いがお互いを守っていればいい話だろう?」
「……そう、だね。そうだよね!うんうん、というか会長様ってなんか俺の心の中読んでたりしません?」
「してないが?お前の顔によく出てるだけだ」
「え、ええ~」

確かににこやかに笑ったままだったが……

「渡辺を見分けられるんだ、そんな些細な表情の変化もわかるに決まっているだろう」
「あっ、そういえばそうでしたね。ぐふふ……気になって気になってずっと見つめてたから見分けられるなんて、いいよな」

後半は小声だったから聞こえなかったが口の動きでわかってるぞ腐男子。隣にいた恋心は聞こえていたらしく、額に青筋を浮かべて拳を握りしめている。笑顔だが、余計に恐ろしい表情になってるぞお前。

「鶴白」
「うえへへへ……やっぱりって、ふぇっ?会長様?どうしたんですか?」
「俺で妄想するな」
「え?っあー」
「するな、後少し隣見てみろ」
「……?…………ひぇ」

恐る恐る隣を見た鶴白は真っ青になった。自業自得だ。腐男子というのは皆こうなのか、少し思うところがある。

「畏れ多くも天川様を対象に妄想するなんて万死に値する。今すぐ誰もいない所で人に迷惑を掛けないように死になよ」
「ご、ごごごめんって!もうやんないから!やんないから!……多分」
「最後の言葉で既に信用無いからっ!さぁ、表出ようか、制裁してあげる」

にっこりと恐ろしい笑顔で寒気のする言葉を吐き出していく恋心。

「せ、制裁は禁止してるはずだよ!だから大丈夫なんだ!」
「うふふふふふ……ああ、言葉が違ったね、ちょっと間違えちゃった。……遊んで制裁してあげる、これでどう?」
副音声ルビがっ!変わってないッ!」

こいつら何時見ても面白いな。突発的にコントを始めるから生徒会親衛隊の風物詩になるのも頷けるだろう。

「……ん?」

何だか下の一般フロアが騒がしいと思ったが……

「ふむ……」

ここで下に降りるのは愚策、高みの見物と行こうか。そのうち直ぐに通報を受けた風紀が来るだろうからな。

馬鹿だ馬鹿だと思いつつ眺めているとそれに気づいた鶴白がどうしたのかと聞いてきたので顎を使って窓の外を示した。

「うっわぁ……」
「どれどれ……これは」

そこにあったのは案の定騒いでいる毬藻転校生とそれに対峙している化粧の濃い生徒だった。何があったのか、キャンキャンとこっちまで声が聞こえてくる。お前らは普通に飯も食えんのか。

「あれは……親衛隊らしいな。他のやつに近づくのは止めろと騒いでいる」
「少なくとも公式の生徒会親衛隊の子ではありませんね生徒会親衛隊にも過激な子はいますがあんな馬鹿みたいにこんな場所で警告などするわけがない」

それは暗にやるのだったら陰湿にってところだろう。まあ、俺達生徒会の代は親衛隊を放置する傾向にある。親衛隊を結成するのにもどうしてもと懇願されたりそっちの方が面倒が少なくて済むからだろう。

人も増えれば増える程混沌と化す。それは何らかの情をもって入ってきたのならなおさらだろう。尊敬、畏敬、恋情……中には鶴白のように襲われないために元入ってきたやつらもいるだろうがな。しかしこの組織は組織という程規律は定まっていない。

鶴白と恋心が隊長をしている俺と恋心の隊はまだ大丈夫だろう、まだ。しかし、他の隊となるとそれこそ隊長からして過激派である隊も有る。

そこでは他人を妬み貶めと泥沼だ。弱いやつは蹴落とされ、狡猾なやつらが生き残る。だからあんな馬鹿みたいな姿をここで晒すわけがない。

「あいつは潰されるな」
「う~ん……そう、だね」
「自業自得ですよ、自ら餌にかかりに行ったんですから」

虎視眈々と他人の弱点が現れるのを狙い、爪を隠している猛獣たちの目の前に鴨が葱を背負って来るようなもの。

何故そう言ったのか、それは今の言い合いを転校生があることないこと腰巾着共に言いふらしてそれにキレたやつらが普段は嫌っている自分の親衛隊に命令して相手を潰そうとするからだろう。大体普段から顔で持てはやされているやつらは自然と傲慢にもなっていく。だから通常冷たい目で見ているやつらを自分の下だと思い、命令していく。

それにそいつらの親衛隊だけではない。それ親衛隊ふんしたどっかの野郎がストレス発散と嬉々として潰しに行くだろう。

さて、あいつは何日持つだろうか。今まで目立たないようにしたのだろうが我慢の限界が来て出てきてしまったようだな。しかし何とも思わない。何故なら恋心の言った通り自業自得なのだから。恨むのならここの恐ろしさをわかっていなかった自分を恨むことだ。
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