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準備に整備に大忙し~!!
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◇❖◇
目の前で壊れたかのように嘯く彼の姿は異常だ。
風紀顧問である織川 創輝はそう、思う。
これが発覚したきっかけは創輝が彼のシャツの袖から偶々見えてしまった傷を指摘したこと。
これは創輝は知らない事だが奇しくも夏休み前に副会長である紫月 大樹も同じ行動をとってしまっていた。
状況は同じだ。傷を見られ、指摘される。ここまでは
「なんで?なんでそれを聴くのかなァ……?どうして?どーして?あははっ?」
違うのは椿の精神状況。彼は夏休み前より、ずっと追い詰められていた。それをひた隠し、日常を過ごしていた。それが良かったのかは、誰もわからないだろう。
余裕のない状況での油断。今回のこれはそれが引き起こした。
「椿?……おいっ、どうした!?」
「あははっ、みーんなどうしてそれをきいてくるの?ねぇ、ねえ?」
剥がれ落ちたそこから覗く狂気に拓哉は動揺して声を掛ける。彼は見たことがないのだろう。ここまでの狂気は。なにせ彼は逃げたのだから、この学園に。
それでも、椿は聞こえていないのだろう。創輝を見つめているが、見ていなかった。だけど創輝は椿を観察する。
歪に吊り上がる笑み、大きく広がる瞳孔、震える唇、冷たくなっていく指先。
ああ、貴方は
「貴方は…………」
「あはっ、ほうせききょーさん、どーしてかな?ぼく、わかんないんだよね?あれ?ぼく?ぼくって、じぶんのことどうよんでたっけ?あはっ?あはははっ?」
耐えられなかったのだろう。身に降りかかってしまった不幸に、理不尽に、世界に。
口調が崩れた。それは彼が演技している時と似ているが、それだけだった。
彼は自分を守っている。けれど、それは壊れているのと同義だ。いずれにしても正常ではないことは確かだ。
「ああ…………?そうだった、俺だわ。うん、俺。まだ大丈夫」
「んあ?……ああ、ホストか。あー駄目だな、これ。なあホスト、この事は誰にも言うなよ?はははっ」
ホスト…………拓哉への愛称だ。彼は拓哉に口止めをしているが彼は拓哉を一瞥さえせずただまっすぐと何も見ていなかった。
―――正気ではない。
「そう、思ったよな?」
彼は嗤う。誰も、何も見ていないくせにこちらを見てくる。
「ああ、そうだよ。そうに決まっているじゃないか。とてもではないが、正気ではいられないんだよ」
狂ったように声高く言う。その表情は創輝や大樹がやっているように張り付けたような薄っぺらい貌だった。
「…………」
創輝は無言でいるしかない。握られた手を解くこともない。その手を上から違う手で包んで冷えた指先を温めていた。せめて、少しでも和らぐようにと。
「なあ、どうしてなんだろうな。どうして、俺だったんだろう。あれ、おかしいな、こんなこと話すつもりは一切なかったはずなのに。まだ、調整できてないのかな」
話すつもりは一切なかったはずなのにと言っているが、それは正確には話していると言っていいのだろうか。誰に向けて言っているのか理解さえしていないのに。
不意に、椿は俯いた。
「あっはは、どうせなら――――れば良かったのに」
小さく呟く、だが一部分だけ聞き取れなかった。
しかし、目の前で椿を見ていた創輝だけはその動く口を見て理解してしまった。好奇心で読唇術を習得していたのも一押しした。今更ながらにそのことを悔やんでしまう。
―――死ねれば良かったのに
創輝には、そう言っているように見えた。真実はわからない。だけど創輝はこれを墓場まで持って行くことを決めた。目の前の憐れに笑う生徒の為になることが何もできない自分ができるのはそれだけだと思ったから。
目の前で壊れたかのように嘯く彼の姿は異常だ。
風紀顧問である織川 創輝はそう、思う。
これが発覚したきっかけは創輝が彼のシャツの袖から偶々見えてしまった傷を指摘したこと。
これは創輝は知らない事だが奇しくも夏休み前に副会長である紫月 大樹も同じ行動をとってしまっていた。
状況は同じだ。傷を見られ、指摘される。ここまでは
「なんで?なんでそれを聴くのかなァ……?どうして?どーして?あははっ?」
違うのは椿の精神状況。彼は夏休み前より、ずっと追い詰められていた。それをひた隠し、日常を過ごしていた。それが良かったのかは、誰もわからないだろう。
余裕のない状況での油断。今回のこれはそれが引き起こした。
「椿?……おいっ、どうした!?」
「あははっ、みーんなどうしてそれをきいてくるの?ねぇ、ねえ?」
剥がれ落ちたそこから覗く狂気に拓哉は動揺して声を掛ける。彼は見たことがないのだろう。ここまでの狂気は。なにせ彼は逃げたのだから、この学園に。
それでも、椿は聞こえていないのだろう。創輝を見つめているが、見ていなかった。だけど創輝は椿を観察する。
歪に吊り上がる笑み、大きく広がる瞳孔、震える唇、冷たくなっていく指先。
ああ、貴方は
「貴方は…………」
「あはっ、ほうせききょーさん、どーしてかな?ぼく、わかんないんだよね?あれ?ぼく?ぼくって、じぶんのことどうよんでたっけ?あはっ?あはははっ?」
耐えられなかったのだろう。身に降りかかってしまった不幸に、理不尽に、世界に。
口調が崩れた。それは彼が演技している時と似ているが、それだけだった。
彼は自分を守っている。けれど、それは壊れているのと同義だ。いずれにしても正常ではないことは確かだ。
「ああ…………?そうだった、俺だわ。うん、俺。まだ大丈夫」
「んあ?……ああ、ホストか。あー駄目だな、これ。なあホスト、この事は誰にも言うなよ?はははっ」
ホスト…………拓哉への愛称だ。彼は拓哉に口止めをしているが彼は拓哉を一瞥さえせずただまっすぐと何も見ていなかった。
―――正気ではない。
「そう、思ったよな?」
彼は嗤う。誰も、何も見ていないくせにこちらを見てくる。
「ああ、そうだよ。そうに決まっているじゃないか。とてもではないが、正気ではいられないんだよ」
狂ったように声高く言う。その表情は創輝や大樹がやっているように張り付けたような薄っぺらい貌だった。
「…………」
創輝は無言でいるしかない。握られた手を解くこともない。その手を上から違う手で包んで冷えた指先を温めていた。せめて、少しでも和らぐようにと。
「なあ、どうしてなんだろうな。どうして、俺だったんだろう。あれ、おかしいな、こんなこと話すつもりは一切なかったはずなのに。まだ、調整できてないのかな」
話すつもりは一切なかったはずなのにと言っているが、それは正確には話していると言っていいのだろうか。誰に向けて言っているのか理解さえしていないのに。
不意に、椿は俯いた。
「あっはは、どうせなら――――れば良かったのに」
小さく呟く、だが一部分だけ聞き取れなかった。
しかし、目の前で椿を見ていた創輝だけはその動く口を見て理解してしまった。好奇心で読唇術を習得していたのも一押しした。今更ながらにそのことを悔やんでしまう。
―――死ねれば良かったのに
創輝には、そう言っているように見えた。真実はわからない。だけど創輝はこれを墓場まで持って行くことを決めた。目の前の憐れに笑う生徒の為になることが何もできない自分ができるのはそれだけだと思ったから。
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