Lara

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最終章 白神編 薄氷の上

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会うことすら珍しい神出鬼没な彼がいたのは誰もいない参道の光が欠片も入らないうらぶれた路地裏だった。

彼は土砂降りの雨に打たれ、壁にもたれかかってフードの影から虚空に荒んだ目をむけていた。

その姿は夏休みの時とは大違いで、とても、危うい。どこか欠けていて、今にも消えてしまいそうな失ってしまいそうな儚さだった。

今も目の前でタオルに包まって呆然と意識を飛ばしている。
ここには俺らのように傘も差さずにやってくるやつが多いため、着替えも前々に置いてある。なのでBloodsadyにも着替えてもらおうと替えの服を取り出すも、彼は断固として着替えようとせずにただ前を見つめていた。
今も俺達を見ているが、俺達を見ていない。何も見ていない。それがとても悲しく、寂しく感じてしまう。

「で、どうしたんだ?」

ずっと黙っているが埒が明かないので聞く。するとBloodsadyは目を彷徨わせて口を開くも、すぐに閉じてを繰り返していた。それすらも諦めて再び黙り込むようになると

コトン

「ホットコーヒーっす、温まるっすよ」

まくりがBloodsadyの目の前にホットコーヒーが入ったカップを置いた。

どうやらマスターが気を利かせてくれたらしい。持ってきたのはまくりだが、こいつのことだからマスターに持って行けと言われたのだろう。
Bloodsadyは置かれたホットコーヒーをじっと見て、ゆるゆると手を動かした。

感じない寒い…………」

何か、口を動かしていたが俺には聞こえなかった。だが傍にいたまくりには聞こえたらしい。びくり、と頭を動かした。後できこうと思いつつ、今は目の前の彼だ。

「言うのも辛いなら言わなくていいよ。とりあえず体あっためようか」
「…………いらない、無駄」

現代では滅多に見ない暖炉の傍にBloodsadyを誘導しようとしたがバッサリと切り捨てられてしまう。無駄…とはなんでだろう。

久しぶりに会って様子も変わったが口調も変わったようだ。
聞き取りづらかった抑揚のきいた声は暗く、絶望を見て来たかのようにひび割れている。変わってしまったのか、それとも取り繕っていたものが保てなくなったのか…………どちらにせよ、しばらく会わない間に彼に何かあったのだろう。

幽鬼のように生気の抜けた表情で力なくコーヒーを啜る。その様子が痛々しくて一緒に持ってきてもらった、カフェラッテを飲んだ。能天気で評のあるまくりも気まずいらしい。目をどことなく逸らしてそわそわしていた。

「…………ありがとう」

突如、そう言って立ち、呆気にとられる俺達を置いて出ていった。

次の日、あのBloodsady血狂いが本当に血に狂ったという報も置いていって。
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