Lara

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最終章 白神編 薄氷の上

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ああ、やってしまった。

目の前で倒れ伏す男どもを暗い瞳で見下ろす。

周囲には何百もの男たちが血塗れになって倒れていた。

雨の降る中、コーヒーの暖かさはとうに消え去っていた。

発端は俺がそこらをふらついていたらどっかの族とかち合ったことだ。まだそこは【crow】の縄張りだったはずだ。だが、ここまで大人数で入り込んでいるということは暗黙のルールも無しに奇襲でカチコミをしようとしていたのだろう。

こいつらにとって予想外だったのだろう。俺が今荒れていることは。

気配を察知して迂回することも、見逃すこともしただろう。

…………以前、なら。

今は荒れていて、気配を感じる精神の余裕もなかった。そして、虫の居所が悪かった俺は喧嘩を売られてそれを倍額で買ってしまう。

覚えているのは以前より強くなった興奮と狭くなった視野の中で飛び散り滑る血のみ。

雨が俺に付いた血を流し落とすがその量が多いため、パーカーに深く染みこんでいた。

初めは数十人だけだった。だが、相手しているのはBloodsadyだと気づいたやつが他の今回同盟を組んでいた族のやつらに応援を呼んだのだ。あっという間に増えて俺は広く空けた場所にでてやりあった。

殴って、蹴って、引っ掻いて、やつらが落としたバールを拾って振り下ろして…………血の匂いが充満する頃には俺は既に正気を失って闘争と課せられた役目に従って、やつらを執拗に血の海に沈めた。

幸い、死人はいなさそうだ。血が出ているだけの見掛け倒し、悪くて骨折しているぐらいだろう。気づかぬうちに力をセーブしていたようだ。今の俺の身体じゃあ一捻りで花を咲かすことができるだろう。

手に持っていた―――やつらが取り出したものだろう―――ナイフをそこらに捨て置く。すると後ろから殴りかかってきたやつが一人いたので振り向かずに裏拳で潰した。

蛙の鳴くような潰れた声を出してまた一人、地に伏した。

まだ血が…力が高ぶっているのを感じる。普段は冷気を漂わせ、冷たいが、役目となるとその様子を一変させてどこまでも熱く滾るのだ。0か100でしかないのか、俺にとっては少し不便であった。

明日にでもこれに関して噂が広まるだろう。血狂いがやらかした、と…………

前にも偶に、やらかして血が多く流れる争いになったこともあった。が、今回のは範囲が違う。いい感じに見逃していたのに今じゃあ全て、逃げようとする者も逃さずに叩き潰したのだ。

いずれ、縄張りを歩いている誰かがこれを見つけるだろう。あまりにもこれは惨すぎる。そして、聴きだすのだ、誰がこれをやったのか、と。

雨が弱まる

しばらく考えていたからか滾る熱も収まってきた。空を見上げて想う。俺が解放されるのは何時だろうか。


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