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憤り
しおりを挟む通報するべきだと解かっているが、頭と体が拒否をする。
「なんなんだよ…くそぅ…なんでこんなことに…!」
俺はやり場のない憤りでしゃくりあげながら、手近にあったものを壁に向かって投げつける。
心臓の早鐘はとまらない。全身から血の気が引いて呼吸は浅くなり、背中には嫌な汗が伝う。口の中はからからに乾き、きつく握りしめた手には食い込んだ爪のせいで血が出ていたが気が付かなかった。
どうしよう
どうしよう
どうする―――?
落ち着け――――
落ち着け――
こんな女にこれ以上振り回されたくない
こんなことはすべて嫌な夢であってほしい
なんで自分がこんな目に合うのか…こんなことになっているのはけっして自分のせいではない
何度か深呼吸して、少し気持ちを落ち着けながらそんな考えにたどり着く。
血が足元までつたって来たところでようやく、まるで自分のものでない重い体を動かし、近くにあったタオルでミチルの傷口を押さえる――。
しかしそれは止血行為等ではなく、無意識にこれ以上床に血が広がらないようにするためのものだっただろう。
獣医師というのは基本的に人間の医師と学ぶことは同じなのだが 、俺にはもはや彼女を救うことはできない。
打ちどころも、ナイフの刺さった場所も悪かった。
すでに瞳孔散大しているように見える。
止まらない出血、呼吸停止に心停止――おそらく彼女はもう助からない…頭の片隅で冷静に現実を見極める自分がいた。
震える手でミチルの目を開き、おそるおそる携帯のバックライトをつけて対光反射をみるが、やはり反応はない。
―――――――ああ、人を殺してしまった。
保身のためとはいえ、見殺しにしてしまった…。
ほんの僅か、自分が襲われる危険が無くなった安堵と、しかしそれを遥かにかき消す焦燥感と罪悪感に苛まれ、どうすればいいかわからず、俺は愕然と肩をおとしたままうなだれた。
―――――――そうしてどのくらいたっただろうか?
とてつもなく長い時間だったようにも思えるし、まだそれだけしか過ぎてないのか?と思うような時間だったかもしれない。 窓の外ではもう陽が沈みかけている。
もはや血は流れてこない―――…
俺はフラりと起き上がると、血がつかないよう自分の服を脱ぎ、彼女の遺体をバスルームへ運んだ――――。
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