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もしかしてメディの気になる人って…?2
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執務室を出て応接室へと向かう。
重厚な応接室の扉をノックし、私は中へと足を踏み入れる。
すると、ソファに座っていた二人の男性が立ちあがった。
一人は年齢的にお父様に近い方で、もう一人はお兄様に近い方だ。
「初めまして、ティアナ様」
男性から掛けられた言葉は東大陸の共通語だったので、私も彼らと同様の言語を使うことに。
「私、カルターと申します。ティアナ様のお祖父様……前伯爵殿には若い頃に大変お世話になりました」
「まぁ! お祖父様にですか」
私のお母様は西大陸のミットという国の伯爵家出身で、現在は叔父様が当主として伯爵家を纏めていらっしゃる。
「えぇ。今は隠居されて自然豊かな田舎町で暮らされているそうですね」
「はい。お祖父様は余生を大好きな絵を描いて過ごしたいとおっしゃっていましたので。お祖母様は畑仕事が楽しいとお手紙に書いてありましたわ」
祖父母が暮らしているミット国まではかなり遠く、私が訪れるのは数年に一度のみ。
そのため、顔を合せてお話をするのは滅多になく、手紙のやり取りが中心となっている。
私の結婚式には参加してくれる予定だったけれども、婚約破棄されてしまったから会えず。
「私は領地管理の他にハーブの輸入会社も経営しております。こちらにいる青年は、今回のエタセルとの取引を任せているドナと申します」
「ドナさんって、もしかしてラグーツ商会の?」
商会にハーブの取引依頼をしてくれたのが、西大陸のラグーツ商会。
担当者がドナさんという方で、書類のやり取りをしているのを思い出す。
「はい。なかなかエタセルまで赴くことが出来ませんでしたが、今回子爵様の御厚意で東大陸に連れて来ていただきました。ご挨拶出来て良かったです。噂以上にお美しい方で驚いています」
「お世辞でも嬉しいです。どうぞ、お掛け下さい」
「失礼致します」
私は彼等に促すと、自分も座った。
「突然の訪問になってしまって申し訳ありません。実は陛下の命を受けてファルマまで足を運ぶ機会がありまして」
「ファルマですか?」
「えぇ。ご存じかもしれませんが、西大陸では野生動物の密猟が問題になっているんですよ。見回りなどをして阻止しようとしているのですが、いたちごっこでして。密猟のせいで頭数も減り保護に力を入れています」
「一番狙われるのはなんですか?」
「ラッシットなどの愛玩用動物や毛皮目的のググ狼などですね」
「動物由来感染症などが心配ですね。特にラシットは」
「そうなんです。我々、西大陸の人間には生まれながらに免疫があるので、ラシットに噛まれたり引っかかれたりしても死にません。ですが免疫を持たない人間には……」
ラシットは見た目がウサギ。ふわふわとした毛並を持っていて可愛い。
だが、実際は結構凶暴で躊躇なく噛むし、触れようものならば容赦なく引っ掻く。
――ラシットってお兄様のトラウマなのよね。
私が子供の頃、東大陸にいる祖父母の屋敷に泊まりに行った時、森でラシットを見かけて捕まえようとしたら噛まれた過去がある。
幸い免疫があったため死ぬことはなかったけど、お兄様が私が噛まれたせいでラシットが駄目に。
一時期ラシットの名前を聞くだけで倒れそうになっていた。
「ラシットにはワクチンがありますよね? 四~五年前に開発されたと伺いましたけれども」
「えぇ、観光客用に開発されました。実はそのワクチンのためにファルマに赴いたんですよ。陛下より同盟国であるファルマの王・ライナス様にワクチンを届けるようにとの命を受けたんです。万が一のため十本程備蓄しておきたいそうで。密猟者の増加がを考慮してのためだそうですよ」
確かに密猟が増えた結果、運んでいる最中に動物が何らかのアクシデントで逃げ出すことがあるかもしれない。
禁止されているからこっそり飼っている人だっているだろうし。
「あっ、もしよろしかったらティア様もワクチンいりますか? 予備のワクチンが三本程ありますよ」
カルターさんは鞄からケースを取り出すと、私へと差し出してくれた。
「よろしいのですか?」
「勿論です。ティアナ様には不要かもしれませんが、万が一のために」
「ありがとうございます。密猟者は本当に迷惑ですよね」
「本当に迷惑な話ですよ。動物も我々にも。ラシットの恐ろしさも知らずに無謀な」
「えぇ、本当に」
私達の深い溜息が部屋に広がった。
+
+
+
空がオレンジ色に染まった頃。
仕事が終わった私は、肩に途中で会ったコルを乗せ神殿で合流したメディと共に家路についた。
二人と一匹でおしゃべりしながら家の敷地に到着すれば、玄関前にレイとコルタが立っているのに気付く。
コルタの手にはクロスのかけられた籠がある。
「あれ? コルタとレイがいるわ」
コルタ達に声をかけようとしたら、隣から「レ、レイ……」という裏返った声が聞こえたので、唇を動かすのを止めてしまう。
メディへと顔を向ければ、彼女の頬がうっすらと赤く染まり、視線がゆらゆらと定まっていない。
彼女は顔をゆっくり玄関先へと向けたが、すぐに視線を逸らすというのを繰り返している。
さすがにメディの反応を見て私でも気づいた。
――メディってレイのことが気になっているのかな?
重厚な応接室の扉をノックし、私は中へと足を踏み入れる。
すると、ソファに座っていた二人の男性が立ちあがった。
一人は年齢的にお父様に近い方で、もう一人はお兄様に近い方だ。
「初めまして、ティアナ様」
男性から掛けられた言葉は東大陸の共通語だったので、私も彼らと同様の言語を使うことに。
「私、カルターと申します。ティアナ様のお祖父様……前伯爵殿には若い頃に大変お世話になりました」
「まぁ! お祖父様にですか」
私のお母様は西大陸のミットという国の伯爵家出身で、現在は叔父様が当主として伯爵家を纏めていらっしゃる。
「えぇ。今は隠居されて自然豊かな田舎町で暮らされているそうですね」
「はい。お祖父様は余生を大好きな絵を描いて過ごしたいとおっしゃっていましたので。お祖母様は畑仕事が楽しいとお手紙に書いてありましたわ」
祖父母が暮らしているミット国まではかなり遠く、私が訪れるのは数年に一度のみ。
そのため、顔を合せてお話をするのは滅多になく、手紙のやり取りが中心となっている。
私の結婚式には参加してくれる予定だったけれども、婚約破棄されてしまったから会えず。
「私は領地管理の他にハーブの輸入会社も経営しております。こちらにいる青年は、今回のエタセルとの取引を任せているドナと申します」
「ドナさんって、もしかしてラグーツ商会の?」
商会にハーブの取引依頼をしてくれたのが、西大陸のラグーツ商会。
担当者がドナさんという方で、書類のやり取りをしているのを思い出す。
「はい。なかなかエタセルまで赴くことが出来ませんでしたが、今回子爵様の御厚意で東大陸に連れて来ていただきました。ご挨拶出来て良かったです。噂以上にお美しい方で驚いています」
「お世辞でも嬉しいです。どうぞ、お掛け下さい」
「失礼致します」
私は彼等に促すと、自分も座った。
「突然の訪問になってしまって申し訳ありません。実は陛下の命を受けてファルマまで足を運ぶ機会がありまして」
「ファルマですか?」
「えぇ。ご存じかもしれませんが、西大陸では野生動物の密猟が問題になっているんですよ。見回りなどをして阻止しようとしているのですが、いたちごっこでして。密猟のせいで頭数も減り保護に力を入れています」
「一番狙われるのはなんですか?」
「ラッシットなどの愛玩用動物や毛皮目的のググ狼などですね」
「動物由来感染症などが心配ですね。特にラシットは」
「そうなんです。我々、西大陸の人間には生まれながらに免疫があるので、ラシットに噛まれたり引っかかれたりしても死にません。ですが免疫を持たない人間には……」
ラシットは見た目がウサギ。ふわふわとした毛並を持っていて可愛い。
だが、実際は結構凶暴で躊躇なく噛むし、触れようものならば容赦なく引っ掻く。
――ラシットってお兄様のトラウマなのよね。
私が子供の頃、東大陸にいる祖父母の屋敷に泊まりに行った時、森でラシットを見かけて捕まえようとしたら噛まれた過去がある。
幸い免疫があったため死ぬことはなかったけど、お兄様が私が噛まれたせいでラシットが駄目に。
一時期ラシットの名前を聞くだけで倒れそうになっていた。
「ラシットにはワクチンがありますよね? 四~五年前に開発されたと伺いましたけれども」
「えぇ、観光客用に開発されました。実はそのワクチンのためにファルマに赴いたんですよ。陛下より同盟国であるファルマの王・ライナス様にワクチンを届けるようにとの命を受けたんです。万が一のため十本程備蓄しておきたいそうで。密猟者の増加がを考慮してのためだそうですよ」
確かに密猟が増えた結果、運んでいる最中に動物が何らかのアクシデントで逃げ出すことがあるかもしれない。
禁止されているからこっそり飼っている人だっているだろうし。
「あっ、もしよろしかったらティア様もワクチンいりますか? 予備のワクチンが三本程ありますよ」
カルターさんは鞄からケースを取り出すと、私へと差し出してくれた。
「よろしいのですか?」
「勿論です。ティアナ様には不要かもしれませんが、万が一のために」
「ありがとうございます。密猟者は本当に迷惑ですよね」
「本当に迷惑な話ですよ。動物も我々にも。ラシットの恐ろしさも知らずに無謀な」
「えぇ、本当に」
私達の深い溜息が部屋に広がった。
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空がオレンジ色に染まった頃。
仕事が終わった私は、肩に途中で会ったコルを乗せ神殿で合流したメディと共に家路についた。
二人と一匹でおしゃべりしながら家の敷地に到着すれば、玄関前にレイとコルタが立っているのに気付く。
コルタの手にはクロスのかけられた籠がある。
「あれ? コルタとレイがいるわ」
コルタ達に声をかけようとしたら、隣から「レ、レイ……」という裏返った声が聞こえたので、唇を動かすのを止めてしまう。
メディへと顔を向ければ、彼女の頬がうっすらと赤く染まり、視線がゆらゆらと定まっていない。
彼女は顔をゆっくり玄関先へと向けたが、すぐに視線を逸らすというのを繰り返している。
さすがにメディの反応を見て私でも気づいた。
――メディってレイのことが気になっているのかな?
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