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ティアと二人で星が見たい2

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 二人でおしゃべりをしながら、足を進めて神殿脇を通り過ぎて湖へ。


 湖へと到着すれば、メディとセス様が大きな敷物の上に二人で座っていた。
 彼女達が座っているふかふかの毛足の長い絨毯上には、ペンや紙の他に籠に入った薬草なども窺える。


「メディ、セス様」
 私が手を挙げて大きく振れば、二人が一斉に振り返る。
 メディは私の隣を歩いている人を視界に入れるやいなや、立ち上がると靴を履きライの元へと駆けだしていく。
 距離が近づくとメディは待てないとばかりに、ライへと抱きついた。


「お兄様っ!」
「久しぶりだな、メディ」
 ライは目尻を下げながら、抱きついたメディの頭を撫でている。
 国王バージョンでもライバージョンでもなく、お兄様バージョンのライだ。


「メディさんのお兄さんでしたか」
 セス様も私達の元へとやって来た。


「初めまして、神官様。メディの兄でライナスと申します。妹がいつもお世話になっています。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。メディから、とてもためになる勉強を教えて貰っていると伺っています」
「いえいえ、こちらこそメディさんにはお世話になっています。久しぶりに薬草学に触れ、楽しい時間を過ごさせて頂けて……現代の新しい薬草学の知識を教えて頂いたり、こちらもとても勉強になっています」
「現代の薬草知識ですか?」
「えぇ。私が暮らしていた時代には無かった薬に驚いています。錠剤というものを見せて頂きましたが、便利な世の中になりましたねぇ」
 セス様は穏やかに微笑んでいるけど、相変わらず祖父達が話していても違和感がない台詞だ。


 ――錠剤って、私とお兄様が生まれる前からあったんだけどなぁ。


「そういえば、メディさんに伺いました。諸外国では、謎の病が流行しているとか」
「お兄様、もしかしてその件で?」
「そうだ。同盟国より応援を頼まれたから、原因を究明するために医師団と共にやって来たんだ。医師団はそのまま治療を支援するために滞在。俺とエルドだけは帰国」
「謎の病の原因は一体なんだったのですか?」
「西大陸固有の動物だな。おそらく密猟やペットとして飼われていた動物が逃げ出したのだろう。早く保護しないとどんどん広がるぞ」
 ライが眉間に皺を寄せながら、深いため息を吐き出す。


「ラシットとかですか?」
「いや、ラシットはまだ確認されていない。ググ狼などだな。王立製薬研究所に治療薬があるから、リーフデに持って来て貰った。転移魔法が使える高魔術師だからな。今のところ、ラシット以外なら薬はこっちでも用意できるから大丈夫だ。ラシットのワクチンはうちでは作れない」
 ラシットのワクチンを西大陸の固有種であるネガロという動物と花から作られるため、こっちでは作ることができない。
 しかも、ネガロは頭数が昔に比べてかなり減っているから稀少だし。


「ラシット、こっちには居ないと良いよね。噛まれたり引っかかれたりしたら、早くワクチン打たなきゃならないし」
「そうなんだよなぁ。ラシットのワクチンは取りに行く時間がないし、うちでも十本しか所有していない。西大陸から輸入しなきゃいけないから、時間がかかるぞ。大陸越えの転移魔法使えるやつなんて、世界中で二・三人くらいじゃないか」
「ワクチンならば、三本貰ったからあるよ。私、一度噛まれたし免疫があるから不要だったけど、一応貰っておいたんだ」
「ティア、噛まれたのか!」
 セス様には以前話したことがあるが、ライもメディも知らなかったため目を大きく見開いている。


「うん、小さい頃に祖父の別荘近くの山で。ラシットって見た目がウサギみたいですごく可愛いじゃん。凶暴なのを知らなくて、抱きしめたら噛まれた。お母様が西大陸の人間だったからか、高熱とかは出たけど大丈夫だったよ。免疫があって良かったねってお医者様が。でも、私が元気になったらお兄様が心労で寝込んじゃって……一時期、ラシットの名前を聞くのもだめになっていたから、ラシットはお兄様のトラウマかも」
「ティア、ラシット見かけても絶対に追いかけるなよ」
「追いかけないよー」
「ティア様、初めてここに来た時、ウサギ追いかけてきましたよね」
「あっ」
 そういうのは黙っていて欲しいなぁと思っていると、視線を感じたのでライの方を見れば、彼は険しい表情を浮かべていた。


「ティア」
「大丈夫。ほんとうに大丈夫だから心配しないで。噛まれたら、『お兄様が気絶』しちゃいそうだし。でも、見つけたら捕まえるよ。私やお母様なら大丈夫だし」
「僕も噛まれても大丈夫ですよ。ですから、僕を呼んで下さい」
「セス様も免疫を持っているんですか?」
「いいえ。僕にはウイルスなどが全く効かないだけです。だって、僕は……」
 セス様は言葉を途中で終了させると、「内緒です」と不敵な笑みを浮かべた。




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