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神殿でパニック!?1
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「相変わらずファルマは活気で溢れているね」
ファルマ城のバルコニーから外を眺めながら言えば、隣にいたメディが頷く。
窓の外に窺える光景は以前見た時と変わらず家や店が密集し、人々が賑やかだ。
きっと王様――ライの政治的な能力が高いからだろう。
「お兄様の生誕を祝うパーティーがあるから余計活気があるのかも。王都全体でお祝いして下さいますから」
メディが懐かしそうに王都の街並みを瞳に映している。
「ライは慕われているんだね」
「はい」
嬉しそうに微笑んでいるメディに対して、私もつい表情が緩む。
月日はあっという間に過ぎ、私とメディはパーティーのためにお兄様達よりも一足早く先ほど到着。
今は部屋でお茶を飲みながらゆっくり体を休めている。
事前にライ達にお知らせしていた時間よりも早く到着してしまったため、ライ達にはまだ会っていない。
会議中らしく、会うのは終わってからになりそうだ。
「……ティア」
「ん?」
風に舞う髪を押さえながらメディを見れば、彼女は眉を下げ、添えている両手を握り締めていた。
メディは以前よりもかなり痩せてすっきりしている。
元々綺麗な子だなぁと思っていたが、痩せたことにより目元等がはっきりしてますます綺麗に。
メディはダイエットに励んでいるようで、ランニングや食事療法などを行なっていたのでその成果かもしれない。
ランニングにはコルタが付き合ってくれている。
最初聞いた時、「コルタが?」と首を傾げたが、コルタもトレーニングの一環でランニングをしているからだそうだ。
しかも、コルタは結構うちに来てメディのダイエットの食事管理などにアドバイスしてくれるし。
「あのね……私……」
彼女が纏っている空気が徐々に強張っているのを感じ、私に何か伝えたいことがあるのかもしれないと頭に過ぎる。
「ティアに聞いて欲しいことがあるの。その……私、レイガルド様の事が好き。ティアに好きな人が出来たら、私に遠慮しないで欲しい。私、ティアのことも好きだから」
メディがレイのことを好きなのかな? と時々過ぎることはあったけど、やっぱり好きなんだなぁと思った。
「好きな人かぁ。私、好きな人はまだよくわからないんだ。ライから告白して貰ったけど、今までエタセルのことばかりだったから。今、考えているところかな。ライのことは絶対的に信頼出来るし頼れる人だなぁとは思う。あと、怒られるとメンタルに一番響く人」
「ティア、お兄様に怒られたの?」
「うん。ラシットに噛まれた時に安静にしていろって怒られた」
「それは、お兄様の言うとおりですわ。お兄様へのお返事はゆっくりで構わないと思う。お兄様は、きっとティアが答えを出すのを待っていてくれますから」
「うん」
私は頷き、広がる城下町の一角へと視線を向けるれば、家や店が連なっている王都の中で、広々とした開け切った敷地に石造りの建物と噴水広場が目立つ。
今日も人で賑わっているようだ。
――いるかな? スーちゃん。
ふとメディの回復祈願のために、神殿にお参りに来てくれている女児のことを思い出した。
「メディ。ライもまだ来ないから、神殿にでも行ってみようか?」
「神殿ですか……?」
「うん。もしメディが大丈夫なら」
メディはエタセルではもうローブなしでも外へ出ることが出来るようになり、買い物も出来るようになっていた。
だが、それはファルマと違って人口が多くないし、敵であるご令嬢もいない環境という限定的なもの。
「女の子……今日もいると思う?」
「覚えてくれていたんだね」
「はい。ティアに聞いてからずっと忘れていません。私も一度お会いしたいと思っていたの。行くわ」
「無理しないでね」
「はい」
メディが頷いたので、私はバルコニーの柵に止まっているコルへと声を掛ける。
コルも私とメディと共にファルマを訪問中。ライに懐いているから、きっとコルも彼に会うのを楽しみにしているだろう。
「コル。城下町に行こう」
「カァ!」
コルは羽を広げてふわりと飛ぶと、ゆっくり私の肩に飛び乗った。
ファルマ城のバルコニーから外を眺めながら言えば、隣にいたメディが頷く。
窓の外に窺える光景は以前見た時と変わらず家や店が密集し、人々が賑やかだ。
きっと王様――ライの政治的な能力が高いからだろう。
「お兄様の生誕を祝うパーティーがあるから余計活気があるのかも。王都全体でお祝いして下さいますから」
メディが懐かしそうに王都の街並みを瞳に映している。
「ライは慕われているんだね」
「はい」
嬉しそうに微笑んでいるメディに対して、私もつい表情が緩む。
月日はあっという間に過ぎ、私とメディはパーティーのためにお兄様達よりも一足早く先ほど到着。
今は部屋でお茶を飲みながらゆっくり体を休めている。
事前にライ達にお知らせしていた時間よりも早く到着してしまったため、ライ達にはまだ会っていない。
会議中らしく、会うのは終わってからになりそうだ。
「……ティア」
「ん?」
風に舞う髪を押さえながらメディを見れば、彼女は眉を下げ、添えている両手を握り締めていた。
メディは以前よりもかなり痩せてすっきりしている。
元々綺麗な子だなぁと思っていたが、痩せたことにより目元等がはっきりしてますます綺麗に。
メディはダイエットに励んでいるようで、ランニングや食事療法などを行なっていたのでその成果かもしれない。
ランニングにはコルタが付き合ってくれている。
最初聞いた時、「コルタが?」と首を傾げたが、コルタもトレーニングの一環でランニングをしているからだそうだ。
しかも、コルタは結構うちに来てメディのダイエットの食事管理などにアドバイスしてくれるし。
「あのね……私……」
彼女が纏っている空気が徐々に強張っているのを感じ、私に何か伝えたいことがあるのかもしれないと頭に過ぎる。
「ティアに聞いて欲しいことがあるの。その……私、レイガルド様の事が好き。ティアに好きな人が出来たら、私に遠慮しないで欲しい。私、ティアのことも好きだから」
メディがレイのことを好きなのかな? と時々過ぎることはあったけど、やっぱり好きなんだなぁと思った。
「好きな人かぁ。私、好きな人はまだよくわからないんだ。ライから告白して貰ったけど、今までエタセルのことばかりだったから。今、考えているところかな。ライのことは絶対的に信頼出来るし頼れる人だなぁとは思う。あと、怒られるとメンタルに一番響く人」
「ティア、お兄様に怒られたの?」
「うん。ラシットに噛まれた時に安静にしていろって怒られた」
「それは、お兄様の言うとおりですわ。お兄様へのお返事はゆっくりで構わないと思う。お兄様は、きっとティアが答えを出すのを待っていてくれますから」
「うん」
私は頷き、広がる城下町の一角へと視線を向けるれば、家や店が連なっている王都の中で、広々とした開け切った敷地に石造りの建物と噴水広場が目立つ。
今日も人で賑わっているようだ。
――いるかな? スーちゃん。
ふとメディの回復祈願のために、神殿にお参りに来てくれている女児のことを思い出した。
「メディ。ライもまだ来ないから、神殿にでも行ってみようか?」
「神殿ですか……?」
「うん。もしメディが大丈夫なら」
メディはエタセルではもうローブなしでも外へ出ることが出来るようになり、買い物も出来るようになっていた。
だが、それはファルマと違って人口が多くないし、敵であるご令嬢もいない環境という限定的なもの。
「女の子……今日もいると思う?」
「覚えてくれていたんだね」
「はい。ティアに聞いてからずっと忘れていません。私も一度お会いしたいと思っていたの。行くわ」
「無理しないでね」
「はい」
メディが頷いたので、私はバルコニーの柵に止まっているコルへと声を掛ける。
コルも私とメディと共にファルマを訪問中。ライに懐いているから、きっとコルも彼に会うのを楽しみにしているだろう。
「コル。城下町に行こう」
「カァ!」
コルは羽を広げてふわりと飛ぶと、ゆっくり私の肩に飛び乗った。
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