追放ご令嬢は華麗に返り咲く

歌月碧威

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ティアVS公爵令嬢1-2

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 みんなでお茶をした後。それぞれお仕事へと戻ることになり、ライは執務に。そして、リーフデ様とメディは国立製薬研究所に向かった。

 私もファルマにある商会へと顔出し売り上げなどの確認をしなければならなかったので、王都にある商会の支店を訪れることに。


 神殿の件で学習し、ライに馬車を借りて移動。
 何事もなく無事に城から王都のメイン通りを抜け、郊外にある純白の真新しい建物へ到着した。
 入口付近には「エタセルハーブ商会ファルマ支店」という鉄製の看板が掲げられている。


「送って頂き、ありがとうございます」
 私が馬車を降り馭者さんにお礼を告げると、建物へと体を向ける。手を伸ばしてドアノブを掴んで押せば、ガランガランと爽やかなドアベルの音が鳴った。
 すると、「いらっしゃいませ」という明るい声が届いたが、すぐに「え、ティアナ様っ!?」という驚愕の声に変化。


「こんにちは。皆さん、お元気そうで何よりです」
「ティアナ様、お久しぶりです」
「ティアナ様の活躍は新聞などで拝見していますよ!」
 あっという間に社員さん達に囲まれ、私は久しぶりに会う懐かしい面々に嬉しくなっていた。
 支店の人達は殆どがエタセル出身の人達で、異国に興味があり仕事がしたいと熱望を持っていた人達。
 そのため、面識があるのだ。


「差し入れを持って来ましたので、良かったらお茶の時間に食べて下さいね」
 私は手にしていた紙袋を渡せば、お礼を言って事務員さんが受け取る。


「ティアナ様。奥の部屋へどうぞ。ティアナ様に頼まれていた資料は全て揃っています」
「ありがとう。では、さっそく拝見――」
 私の台詞は後方から奏でられたドアベルにより途絶えてしまう。
 振り返ると従者に扉を開けて貰っているご令嬢の姿が。


 卵のような輪郭には少し吊り上がった瞳と高い鼻、それから薔薇色の唇が窺え、髪はラベンダー色で緩く巻かれている。
 髪には宝石で作られた蝶の髪飾りが留められていて、星のように輝いていた。
 身に纏っているドレスは、これから夜会に出席しても問題ないくらいに華やかだ。
 年齢は私と同じくらいだろうか。


「あら? 建物も小さいけど中も狭いのね」
 店に入るなりいきなり無礼な態度を取っている女性に対して、私はなんとかぐっと感情を堪えて唇を開くのを止めた。


「もしかして、貴方がエタセルから来たティアナさん? 違うわよね?」
 どうやら彼女は私に用があったらしい。
 私には見覚えが全く無い人だし、どうして私ではないと断言されたのかも不明だ。


「私がティアナです」
「まぁ! そうなの。ごめんなさいね。だって、あまりにもみすぼらしい恰好をしていたから。農民かと思いまして」
 私は彼女の上から目線の言い方に対して、とある女性の姿が脳裏に浮かぶ。


 ――この人、王女と同じ部類の人だわ。というか、そもそも誰?


 キャラが強すぎるので、一度見たら忘れないはずだから彼女が絶対に初対面だと断言できる。


「ティアナ様。こちらの方は、公爵令嬢のエスカ様です」
 私の疑問を隣に居た職員さんが答えてくれた。


「ライ達のいとこである公爵令嬢のエスカ様ですか」
「やめていただけないかしら? 私、嫌いなの。いわくつき王妃の血が流れている従兄妹と一緒にされるのが。私が王妃に一番近いと言われているけど、迷惑なのよね。まぁ、どうしてもと陛下が頭を下げるならば考えてあげてもいいけれども」
 ライは絶対に頭を下げないし、願い下げだと思う。
 随分と自信があるようだが、もしかして結構具体的に話が進んでいるんだろうか。


「エスカ様。私に用が? 奥の応接室へ案内致しますが」
「部屋? もしかして個室があるのかしら。すごいわね。ただでさえ狭いのに、もっと狭い所に押し込められるんでしょう。私は無理だわ。それに、用事もすぐに住むし」
「どういった用ですか?」
「お父様から貴方をお茶会にお誘いしてみては? と言われたの。明後日、私が主催でお茶会を開くから招待して差し上げても良いわよ」
「大変申し訳ありませんが、あいにくと予定が入っていまして。また次の機会にもでも……」
「なんですって? 私が誘ってあげているのに、断るつもりなの。私を誰だと思っているのかしら。聞いたわよ。貴方達一家はリムスから追放されたから、貴族の爵位もないんでしょう?」
「エタセルでお父様が爵位を頂きましたので、一応今も伯爵令嬢です」
「貴方の家は、リムスでも伯爵でエタセルでも伯爵なのね」
 エスカ様は鼻で笑うと、手にしていた扇を広げてクスクスと笑いだした。


「予定はキャンセルしなさい。私の誘いですもの」
「畏まりました。では、お断りいたしますね。隣国の王太子であるレイツ様との会食を」
「レイツ様ですって!? どうして貴方なんかが……」
「では、早速お断りのお手紙を。勿論、理由は明確に記載させて頂きます」
 私がにっこりと微笑んで告げれば、彼女は顔を真っ青にさせて体を戦慄かせると唇を噛みしめた。
 そして目を細めてこちらを睨む。


 一国の王太子と一国の公爵令嬢の力の差は決まっている。


「べ、別に貴方なんかに来て頂かなくて結構よ。帰るわ。こんな狭くて貧乏くさいところ居たくないもの」
「お見送り致します」
「結構よ」
 エスカ様はそう言い残すと乱暴に扉を開けて出て行ってしまった。


「初めてお会いしたけど、キャラが強い方なのね。一応、グロム様との取引履歴を見せて貰っても構わないかしら?」
「今、用意致します」
「ありがとう」
 私は深い溜息を吐き出しながら、パーティーでも一波乱ありそうだなぁと思った。










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