騎士団長と敵国国王

ハーマ

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最愛の人

彼の死を乗り越えて

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水月視点

仲間「っ……うう……」

大稀が王宮の見える場所で殺され大稀の仲間であった者が大稀の遺体を運び入れる

水月「大稀……」

水月  涙で濡れているけれど……顔は笑顔なんだな……大稀……

事切れた大稀を抱き締める水月はポケットにボイスレコーダーがある事に気がつく

ボイスレコーダーのスイッチを押すと……

大稀『水月聞いてくれ……お前の国に俺の姉が居るはずだ……だから姉に俺は元気だったと知らせてくれ……顔も名前も覚えてねぇけど……俺のたった1人の家族なんだ……水月……俺と出会った時のこと覚えてるか?お前道に迷ってて俺がそれを助けた……そん時に俺が一目惚れして……何回も密会して……どっちも敵対してるってわかってんのに会って……楽しかった……家族を亡くしてから人を心から好きになったのはお前が初めてだよ水月……お前との日々は楽しかった……充実していて…………っ……』

大稀の声だった……途中から涙が溢れだしたのか啜り泣く声が聞こえつつも大稀は続けて言う

大稀『生きてくれ……俺の分まで……例え俺が先に死のうとも……お前は俺の分も……明日を見てくれ……』

それが大稀の最後の言葉……

水月「大稀…………っ……あああああ……大稀……大稀ぃ……」

ボイスレコーダーの大稀の最後の想いを聴いた水月は大稀を抱きしめて大声で泣いた……初めてここまで人を愛しそして亡くしたのだ……

水月「大稀は正義だ……国を愛し……誰よりも国を護ろうとした……」

「埋葬してくれ」と水月が言うと憲兵達は快く頷き大稀の亡骸を埋葬しに行く

水月「……そこの方」

女性「国王様?何故こちらに?」

大稀の埋葬を終え華を添えてから水月はある女性の所へ

水月  多分彼女だ……大稀の「姉」と言うのは

水月「……龍虎  大稀を知っているか?」

女性「弟をご存知で?」

水月の予感はビンゴだった……街にある鍛冶の店に働いている女性は大稀の実姉弟……

水月「……つい先程大稀が国王の命で亡き者にされた……残されたボイスレコーダーに「俺は元気だったと伝えてくれ」との最後の言葉が残されていた……」

女性「大稀が……死んだ……?敵国の「騎士団長」と呼ばれる程に強かったのに?」

水月「……詳しく知りたければ王宮へ  話は通しておきます」

そう言い残して水月は王宮へ

水月「……置いて行ったのか……ここからいなくなる前に……」

ふと自室に入ると小さい棚の上に護身用の剣が置かれてありそれが大稀の物だと水月は察知

~夜~

憲兵「国王  街娘が来ておりますが如何なさいますか?」

水月「ここに連れてきてくれ  ……大稀の姉だ」

憲兵「畏まりました」

~数分後~

水月「……畏まらなくていい……彼の姉ならばタメで良い……」

女性「…………」

水月  そりゃ固くもなるか……弟が死んだといきなり言われたら

女性「……弟は……どうして居た国の国王に殺されたんですか?」

水月「大稀はあの国を愛していた……愛していたからこそ嫌ってもいた……この国と違いあの国は貧富の差を激しく大稀はそれが嫌だった……俺と出会ってから元々はこの国の人間であった事を思い出したみたいだが、大稀は俺が誘ってもこちらには来ようとしなかった……あの国を愛し嫌い街の人を護ろうとしていた……こちらに渡った憲兵が言っていたが大稀は、「王宮の無い街は貧富の差が激しく病院さえない……それどころか死んだ人の肉を喰らい、己の生命を繋ぐ者さえいる国を国民はどう思うと思いますか?……俺は元々この国の人間ではありません……敵国の人間……幼い頃に奴隷としてこの国に渡り「騎士団長」としての立場で、この国の此処に居ますがこの国は余りにも病んでいる……国王は敵国の街を見た事がありますか?敵国の街はどの街でも決して貧富の差が無く誰もが幸せに暮らせる街を作っている……だがここは違う……国王の命で徴収される税は高く貧富の差が起き餓死する者もいる国……このまま行けばこの国は自ら破滅へと向かう……美しい景色のあるこの国も所詮王が駄目ならば国そのものも駄目になると何故分からない!!??」と王を論し憲兵が大稀が地下牢にいる時に問いた時に「……見えてしまったからだ……この国はもう長続きしないと……」と言ったらしい……そして「国を作るのは人だ……人が国を作り人が居るからこそ国が成り立つ」と……大稀は心から国を愛しているからこそ……国の現状が納得出来なかった……それで牢屋から出て俺と会った時に密告され1度はこの国に渡った……だが大稀は国に戻り今日処刑された……大稀は正義であり間違ってはいない……大稀は貴方と似ている……美しい瞳の中にある誰にも負けない意思……それを彼は突き通した」

女性「……っ……すいません……」

彼女は生前の大稀の話を聞き涙が溢れだした……優しく強く育った大稀を彼女は1度として見ることが出来なかった……

水月「憲兵  彼女を俺の部屋に案内してやれ……今日はもう遅い一番安全な俺の部屋で休んで」

涙を流す彼女に優しくそう伝え部屋に残った水月は軍議を行う

水月「ルヴァーナは大稀を失った事により軍や街の者達が王に対して、今迄の反感を乗せてデモも起きているらしい……話によれば騎士団の副団長が消息を絶ち騎士団の動きがストップしているとの事だ  ……ルヴァーナを叩くのは今がチャンスだ……無関係の街の者は保護し降伏しない者は殺していい」

部下「御意」

水月「大稀が愛したあの国を俺が壊してはいけないんだ……「生きてくれ」と言われたからには出来る所までやる」

部活「我々は国王についていきます」

部下の言葉に水月は「有難う」と答えて1人立ち上がって「少し出る  護っていてくれ」と言う

水月「…………」

仁「…………」

水月が来た場所には仁が居て体操座りでどこかを眺めている仁の表情は暗くて見えない

水月「…………」

仁「…………」

水月「…………」

仁「……殺さないのか」

ふと仁が切り出す

水月「人質を取られていたんだろ?……1人息子の命を2度も危険に晒されて父たるお前はそうやるしかなかった」

仁「思い上がり過ぎだよ  俺はもう独りぼっちだからな……家族を国王に殺された……あの国でも俺は「裏切り者」だ……俺の居場所はどこにもない」

水月「…………」

水月  家族を盾にされて2度目も大稀を裏切り国王にも裏切られ……居場所を無くしたのか……

水月「居場所が無いなら名前を変えて顔を隠してこの国に居ればいい」

仁「俺の顔を知っている者が多いだろ此処は……」

水月「まぁ……」

仁「気持ちだけ頂いてくよ  国王?」

寂しげな声で仁はそう答え何処かへ歩いて行く

水月  居場所を失った者……弟を亡くした者……この国は傷を負った者が多い

そう思いながら水月も宮殿へ

~翌日~

水月「全軍進軍せよ  降伏する者は我らの国に送り降伏しない者は消せ」

仲間「はっ」

水月「全軍前進!!!!!!!!!」

軍の指揮は基本的に水月が取りながらルヴァーナへ向かう

水月「本当に愚かだな」

街の人達は全員降伏し軍の多くも降伏して残る王宮へと行くと国王は既に首吊り……

水月「貴様は自分の国を捨てた……己の家族でさえも」

敵「あ……あの……」

水月  この男の家族か……

水月「降伏しますか?」

敵「します!!!!!!!!!私達は死にたくない!!!!!!!!!」

水月「こちらへどうぞ  降伏した者は保護して我が国に送ります……悪巧みをしないよう」

敵「は……はい」

敵国の領地を手に入れ水月は己の国と同じ様に統治し月に1回ある誰でも払える、国王指定の税のおかげで国民からの支持が更に上がったらしい……

~2年後~

水月「あっという間に2年か……早いな」

大稀の死を乗り越え水月の国は「世界最強国」と呼ばれる迄に発展した

水月「…………」

ふと水月が甘味処で食事をしていると自分より3歳くらい若いであろう女性が、周りをキョロキョロしているのを見つけ声をかけに行く

水月「あの……何かお困りですか?」

女性「王宮を探しているんですけど……道がわからなくて……」

水月「王宮はこっちです」

一応前払いで料金は払っているのでそのまま女性に王宮へ案内

水月  似てるな……大稀に……

隣を歩く女性……その女性は大稀に似ていた……女性ならではの色気とまた違う色気……そして何よりも大稀と同じ色の目と瞳の奥に己の意思が宿っているのだ

水月「ただいま  客人がいるから何か軽食を」

憲兵「はっ」

女性「え……国王だったんですか?」

水月「そ  国は人が造り人が居るから国は成り立つと思ってるからか……自分の足で領地の街並とかを見て改善点等を調べていたりするんだ」

水月は良き国王なのだ……誰よりも国を愛し人々を愛するからこそ今は亡き大稀も自然と惹かれた

水月「所でお名前は?」

女性「銀鐘  美紗希(ぎんがね  みさき)と申します」

水月「俺の名前は神瀬  水月(かみぜ  すいげつ)」

美紗希「良いお名前ですね」

その後  美紗希と仲良くなり色々な話や場所を行ったりしている内に水月は美紗希に惹かれていった……美しく可憐で大稀に似る彼女を何時しか「護りたい」「もっと愛したい」と思うようになり、後に結婚し2人の子供にも恵まれたと言う

~20年後~

息子「父上」

水月「ん?どうした?」

息子「他国の国王が面会したいと言っています」

水月「通してくれ」

長男は19、長女は17と言う年齢になり、水月は「そろそろ次期王としての自覚も生まれてきた頃だし世代交代かもしれない」と思う

他国国王「初めまして私、「ファインゼン」と言う名の国王である水城  司(みずしろ  つかさ)と申します」

水月「初めまして  神瀬  水月と申します」

2人共一国の王  どちらも王としての気品が高い

水月「2人で話がしたい  憲兵達は下がって国の警備へ向かえ」

憲兵「はっ」

司「……此処は良い国ですね」

憲兵達が下がり司がそう零す

司「此処は……其れ其れの街も皆が皆幸せそうで貧富の差もなく豊かな国……」

水月「まだまだです  私が目指しているのは戦のない……誰も散る事の無い世界です……人間はいつか死ぬ……だけど死んでしまうだけでは寂しいから何かを残す」

司「志があるんですね」

水月「今は亡き恋人が目指していたんです……「戦の無い世界なら今より幸せになれる」と言っていた……私はそれが非現実的であっても目指してみたい」

かつて大稀が言っていた言葉……「戦の無い世界なら今より幸せになれる」……その言葉を水月はずっと胸に抱き生きてきている

司「「今は亡き恋人」?」

水月「同じ性の者でしたが……私が彼と出会った時彼は当時「世界最強国」と言われていた「ルヴァーナ」の「騎士団長」でした……とても強くて「最強」と歌われる程の実力者……国を愛しているからこそ国を嫌い民を護ろうとした……かつて彼は己自ら国王に、「国王の命で徴収される税は高く貧富の差が起き餓死する者もいる国……このまま行けばこの国は自ら破滅へと向かう……美しい景色のあるこの国も所詮王が駄目ならば国そのものも駄目になると何故分からない!!??」と王を論したらしいです……彼は国王が駄目で国がもう長続きしない事を知っていた……そして彼は私にボイスレコーダーで最後の想いを残し、自らの命を削ってまで護っていた国王の命で己の命を落としました……」

司「悲しい過去がおありだったんですね……」

水月「ええ……ですがそれがあったからこそ乗り越える事が出来た……彼への愛は健在していますしこの国も家族も愛しています  私はこの国をもっと良くしていきたい」

それは王としての……1人の人としての決意……国を愛し人を愛する水月の志

そして司はその水月の志に惹かれる所があったのだ……愛した人を亡くしても尚辛くても人を信じる水月の心に感服した

司  王たる人に相応しい心構え……志……決意……大切な人を亡くしたからこそ理解できる悲しみを彼は理解している……

水月「この国を愛し人を愛す……それは国王にとっては大切な者だと私は思うんです……国を造るのは人であり人が居るから国が成り立つ」

司「……国を愛し人を愛す……ですか……」

水月「国には必ずしも1つは美しい景色が存在します  私はその景色を護りたい」

司「特有の景色ですか……」

水月  何か引く所があるのか?

その後司と様々な話をして司は自国へ

~数週間後~

水月「水稀(みずき)が消えた!?」

憲兵「昨夜までは自室にいたんです……朝起こしに行ってみたらお姿がなく……」

水月「命懸けで探せ  水稀は俺の息子だ……紗乃(あやの)と美紗希の安全も保護をしろ」

憲兵「はっ」

水月  昨日までは確かに部屋に居た……なのにどうして朝になったらいないんだ……

息子である水稀が消え水月が焦りを見せる

仁「国王」

不意に仁の声が響きそちらを向くと仮面をして体と顔を隠すようにしている仁の手には手紙

仁「……お前  命狙われてるぞ」

水月  結局顔を隠して国にいるのか……

憲兵「貴様……王に向かって「お前」とは何事だ!!??」

水月「待て待て……俺の個人的な仲間だ  蒼仁(あじ)お前の言っている事は本当か?」

仁「蒼仁?……ってああ……成程…………この手紙読めば分かる」

そう言って仁事蒼仁は手紙を水月に投げ渡す

水月「……息子を返して欲しくば命を差し出せ……か……」

蒼仁「……後俺の首な」

水月  え?

水月「何故蒼仁の首を相手は欲す?」

蒼仁「俺が極秘情報を持っているからな……元々はその国の衛生部隊隊長だった……国を離れてから随分と経ったが今頃首を狙われるとは思わなかった」

水月「何故国を離れた?」

蒼仁「仲間の裏切りで居場所を無くした  国に双子の兄がいるが生きているかは分からない」

蒼仁は少し寂しげにそう話す「双子の兄が国に居る」と……

水月「……国に案内してくれ  蒼仁」

蒼仁「命であれば」

憲兵「国王!!??」

水月「俺はもう長くは無い……次世代の国王は息子たる水稀だ……紗乃のも姫として充分に成長した……何よりも俺はもう大切な人を亡くしたくはない……もしそれに欺けば確実に家族や民、お前達は殺される……それは駄目だ  今迄の歴史を受け継ぐのは次世代の子供達……美紗希だって家族を失うのは辛いのは分かってる……だが大切な人を亡くしたくはないのは譲れない」

「なぁ?美紗希」と水月が言い出し扉を開くと其処には妻  美紗希の姿

美紗希「貴方は貴方らしく生きて?私はどこまでも貴方に着いていく」

水月「本当……俺には出来すぎた妻だよ……美紗希……」

何処か嘆く様に言う水月だがその表情は柔らかい

水月「もう1度言う  国に案内してくれ蒼仁」

蒼仁「はー……分かったよ……ただ行くのは明日にしてくれ……家族何も言わずには行かせねえぞ」

水月「恩に着る」

蒼仁の優しさを有り難く思いながら水月はそう零す

~夜~

紗乃「お父様……本当に行ってしまわれるのですか?」

夜  紗乃に全ての話をし悲しげな表情で紗乃は言う

水月「ああ……お前の兄を助けに行ってくる……きっと俺は生きて戻っては来れないだろう……だからこれをお前に渡しておく……俺がとても大切にしている剣だ……万が一の時に使いなさい」

紗乃「これ……お父様が常に肌身離さず持っていた剣じゃ……」

水月「今は亡き恋人が己の死の間際に置いて行った物だ……これを紗乃に渡すのは「生きていて欲しい」から……絶対に無駄死にはしないでくれ……自分の選んだ道を突き進むんだ」

紗乃「はい」

「明日の早朝には出るから今日は3人で寝よう」と言い3人で寝室へ

水月  これが俺の生き様だよ……大稀……オマエが折れを護ろうとしてくれた様に……俺も家族を護り死ぬ

そう思いながら水月は夜を明かした

水月「……紗乃……美紗希……愛してるよ……ずっと……」

明け方国を出る前に王宮で眠る2人に最後の愛を伝えた……

蒼仁「言われた通り来たぞ  水稀を返せ」

国王「……まさか丸腰で来たのか?」

蒼仁「それ以外に何があるんだよ……」

水月「条件は呑んだ……俺の息子である水稀を返して頂こう」

水月が言うと明らか動揺している国王が憲兵に言い無傷の水稀が水月に返される

水稀「父上……」

水月「無事で何より……お前は国に帰るんだ……水稀……」

水稀「父上は?」

水月「ここで散る  仁と共に」

「父上……」と苦しげに言う水稀を水月は抱きしめ「2人を頼んだぞ」と言い残す

国王「仁  気様がここに来たという事は首を差し出しに来たんだろう?」

仁「まぁな……1つだけ聞きたい  俺の双子の兄である陸は生きているか?」

陸「仁!!!!!!!!!」

国王に仁が聞くと押さえ付けられていたのであろう陸が叫ぶ

仁「これで思い残した事はもう無い……好きにしてくれ」

国王「……仁を牢へ  憲兵は下がり息子を国へ返してやれ」

憲兵「はっ」

水月「水稀  これが最後だ……俺はお前達を何時までも愛してる」

息子である水稀にそう言い残し水月は国王と2人っきり

国王「……取り敢えず話をしましょう」

水月「ご自由に」

国王「……私は約束は護る  国王自らここに来た時から私は其方(そなた)の国に手を出さない」

水月「肝が座っていますね  王としての器も大きい」

水月の率直な感想

国王「……我らの情報では貴方は昔恋人を亡くしたと……」

水月「目の前で  でもそれがあったからこそ私は生きる理由を持った……彼が私に「生きてくれ」と言ってくれなかったら自ら命を絶っていたでしょう……」

国王「死を乗り越えて護る為に死を選ぶ……王として……1人の人間としての生き様ですか……」

水月「今は亡き恋人にまた笑って会うために私が選んだ道です  後悔等微塵もない」

それが水月の生き様であり自らが選んだ道

国王「……私は貴方の国を支持しましょう……貴方の様な賢き人が造った国ならば護る価値もある」

水月「それは有難い」

笑いながら水月は言うがその瞳は何処か寂しげで……とても儚い……

~翌日~

水月「……仁」

仁「先に逝く」

先に到着していた仁は双子の兄  陸が見ている所で処刑人の前に行き「殺れよ」と言う

陸「仁!!」

仁「兄さん  俺の分も幸せになってくれ」

その言葉の後すぐ仁は自らの命を散らせた……大切な兄と極秘の情報を護る為に……

水月「次は俺か……陸  仁の亡骸俺の国で埋葬してやるから持ってけ」

陸「……有難う」

まだ帰っていなかった水稀と共に陸は仁の亡骸を持って水月が作り上げた国へ

処刑人「言い残した事はあるか」

水月「「国に栄華あれ  家族に幸あれ」」

処刑人「しかと伝えよう」

そう言って処刑人は立っている水月の前に行き処刑用の鎌を振り上げ一気に振り下げる

水月「……有難う」

大量の血飛沫と共に水月は後ろに倒れ最後に「有難う」と言う

大稀『水月……』

水月『大稀……』

大稀『迎えに来たよ……一緒に行こう』

そう言って大稀は水月に手を差し伸べ水月もその手を取る

その日  水月は家族と国を護って死に「英雄」として称えられた……

~2年後~

水稀「父上……」

父  水月の墓が建てられてから早2年……国王となった水稀は父の墓参りをしに墓地に来ていた

紗乃「お母様  お父様の隣のお墓はどのお方のお墓ですか?」

紗乃が「水月の隣にある墓の名前の人は誰か」と美紗希に聞く

陸「かつて「世界最強国と呼ばれた国「ルヴァーナ」の「最強」と歌われた「騎士団長」の墓……誰よりも国を愛し国を嫌い王に殺された悲しき青年……水月が初めて愛した人で国の為に貢献し国を護ろうとした人……こっちに居た部下曰く「大稀は正義だ……国を愛し……誰よりも国を護ろうとした……」……1度はこの国に渡り死を覚悟で国に帰って水月の見えるところで死んだ……そして俺の弟である仁が本当は護りたかった人……水月と同じ様に「英雄」と言っても過言ではない青年」

美紗希「陸さん……」

陸「彼は正義だ……水月は英雄だ……輪廻で2人は結ばれただろう……」

水稀「陸さんは仁さんの墓参りですか?」

陸は水月の国に渡った後国籍を変え今は水稀の国に在住

陸「あいつ俺に生きろって言い残したからな……俺にとっては仁だけが枷だったのにさ」

水稀「今  いくつですか?」

陸「歳か?……39だけど」

水稀「……仁さんは17で「ルヴァーナ」の騎士団副長をこなしてその頃には国の極秘を知っていたんですか?」

水稀「生まれつき子供っぽくない性格で身長もかなり高かったから勘違いされてたんだよ……戦闘能力が高過ぎて若くして戦に立ってたから」

水稀  全く36に見えなかったぞ……もっと若いのかと思ったけどそれを考えたら、ルヴァーナに居た頃の歳はいくつなんだって言う話だし……

陸「仁は後悔してないって仁本人が言ってたからな……後悔して生きるよりかは楽にはなっただろう……」

「後悔のない人生が1番良い」と陸は言う

水稀「父上  俺は父上が目指したものを目指します……これからの俺の生き様を天国の世界で見ていて下さい」

墓標の中の水月に水稀は誓う……「良い国を造る」と……

時が流れ人々の生活が変わり墓標に書かれた名前を知らぬ者が増えていったとしても……「英雄」と「正義」の歴史は受け継がれていく……国を愛し国と家族を護り死んだ「英雄」神瀬  水月……国を愛し国を嫌い民を護ろうとした「正義」龍虎  大稀……2人の歴史と名前は「平成」の世になったとしても受け継がれていくであろう……其処に受け継ぐ者が現れ続ける限り……
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