捕食者と逃げる者

ハーマ

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和睦

犠牲の果てに……

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視点特定なし

颯斗「とうとう来てしまった……」

12月20日  人間と捕食者の全面戦争が勃発

鳳凰「人間と捕食者の全面対決は既に始まっているな  ……行くんだろう」

颯斗「ああ  鳳凰地獄への旅路お付き合い願おう」

鳳凰「喜んで  我が主」

人の形になった鳳凰は颯斗の前に跪き手の甲にキスをしてから刀に戻り、颯斗は刀になった鳳凰を背中に背負って、エンジンをかけておいたバイクに乗ってファーストレディ達が戦場へ

颯斗「ファーストレディと仁がサシで戦っているのか」

鳳凰「その様だな」

ヴァルファード「よう」

颯斗「ヴァルファード」

戦場に着くとそこにはヴァルファードの姿が

ヴァルファード「最後の舞台を見繕ってやるよ  全世界にお前の事を知らせてやる」

颯斗「何処までもすまない」

颯斗  ヴァルファードは恐らく誰かと俺を被せている……誰かは知らないが放って置けないのだろう……

ヴァルファード「鳳凰とお前が目指した世の為に見繕うのなら喜んで手を貸すさ」

鳳凰「……有難う  ヴァルファード」

ヴァルファード「最期の別れだ  行ってこい」

颯斗「この恩は何時までも忘れない  本当に有難う」

最後に颯斗と鳳凰はヴァルファードに感謝を述べて走って、ファーストレディと仁の刃が交わるその瞬間に入る

颯斗「その戦い辞め!!!!!!!!!!!」

ファーストレディ、仁「颯斗!?」

颯斗「何故同じ「人」で戦う!?なぜ助け合おうとしない!?」

颯斗の声は戦っている人全員に届き全員戦闘中止

颯斗「………俺が望むのは捕食者も人も両立ができる平和な世界!!昔の元の世界に戻す為には犠牲が必要でありリスクを伴う!!!」

大きく響く颯斗の声……そして未だ臨戦態勢のファーストレディと仁

颯斗「戦いは終わった!!!もう誰も散るな!!!!!」

ファーストレディ「颯斗?」

颯斗「この世界の平和の為に!!!」

そう言って颯斗は刀になっていた鳳凰を鞘から出して思いっきり自分の首の動脈を掻っ切った

颯斗「我が命無駄にあらず!!!!!!!!!!」

首を切っても尚倒れない颯斗は鳳凰の刃の方を持ち渾身の力を込める……すると手から出血し溢れ出した血と共に鳳凰が「バギン」という大きな音を出して折れた……力をほぼ使い切った颯斗はそのまま倒れ武器を手放し、颯斗に駆け寄ったファーストレディと仁

ファーストレディ「颯斗!!しっかりして!!!颯斗!!!!!誰か……誰か止血を!!!!!」

颯斗「かあ……さん……」

颯斗は本当は知っていたのだ……ファーストレディが自分の母親であると……

颯斗「もう争わないでくれ……俺……は……母さんが……苦しむ所……を見たく……ない……和解……して……く……れ……頼む……捕食者……と……捕食者じゃない……人との境のない……世界で……生き……て……」

もうほとんど残っていない力を使って血で濡れた手でファーストレディの頬に颯斗は触れる

仁「お前……自分を犠牲に…………そこまでこの国の平和を望んで……?」

颯斗「……っ……平……和な……世界で……生き……延び……て……俺……の……分……ま………で……」

その言葉が最後になり、颯斗は出血多量のまま目を閉じる事も出来ずに呼吸が浅くなりそのまま息を引き取った……

ファーストレディ「……颯斗……?颯斗!!……どうして……何で颯斗が犠牲に……」

体温のなくなっていく颯斗の身体を抱きしめて、血をつくことを顧みずにファーストレディは涙を流した……

12月20日……その日は颯斗の29歳の誕生日……

そして颯斗の犠牲により捕食者と人間の和睦が決まり、人間と捕食者との短く長い戦争はようやく終わりを告げた……

そしてずっと動画を撮っていたヴァルファードが全国にその動画をテレビに流し、全国各地で捕食者と人間が両立できる世界を作ろうとする運動が始まる中、やはりそれに反感する者もいてそういう者達は仁かファーストレディかどちらかがそこに赴く

ファーストレディ「……気が付くのが余りにも遅すぎました……」

睦斗「本当に遅過ぎだよ  母さん」

数ヶ月後  漸く事が収まったファーストレディは退院した睦斗と久々に酒を飲む

睦斗「俺は別にしても颯斗とほとんど一緒にいたのに気が付かないってむしろ凄いよ」

捕食者「睦斗様……結構気にしているので余り言わないで上げて下さい……」

睦斗「自業自得だ  なあ母さん?」

ファーストレディ「…………」

自業自得過ぎて何も言えないファーストレディ

仁「睦斗  退院したのか」

睦斗「つい先日な  仁も酒飲むか?」

仁「飲む」

実は仲の良かった仁と睦斗

仁「たくもー……1度言ったんだから聞き分けろってな」

睦斗「無理だろ  今はほとんど落ち着いたけどまたま反感している奴らがいる」

仁「頭のイイお前なら何とかできそうだけどな」

睦斗「無茶言うな」

ファーストレディ  今みたいに人と捕食者が普通に会話できる世界を颯斗は望んでいた……

睦斗「……そう言えば母さん  子供できたの?」

2人「え?」

ファーストレディ「よく気が付きましたね……娘を身篭りました  名前も決まっています」

睦斗は生まれつき五感が鋭く人の変化にすぐ気がつく

睦斗「なんて名前?」

ファーストレディ「「さき」です  感じは「颯」に「姫」と書いて「颯姫(さき)」」

睦斗「いい名前だね  颯斗の「颯」を入れて女の子だから「姫」……か……良いね」

ファーストレディ「颯斗が平和を望み、自らの命を費やしたこの世界で幸せな日々をこの娘には送らせてあげたい」

睦斗  誰よりも平和を望んでいた颯斗の意志を継ぐ妹……か

「きっと優しい娘が生まれるんだろうなぁ」と睦斗は思う……

~10月20日~

睦斗「!産まれた」

10月20日  颯斗の意志を継ぐ妹が産まれた

~17年後~

睦斗「颯姫  起きないと高校に遅れるぞ」

颯姫「はっ……今何時!!??」

ファーストレディ改め楓「8時です  睦斗  送ってあげなさい」

睦斗「了~解  さっさと準備して行くぞ」

颯斗が亡くなってから17年後  睦斗が思った通り優しく育った颯姫は高校2年生

颯姫「兄さん  颯斗兄さんの事を教えて?」

睦斗「おう  颯斗は高校生の時から運動神経抜群で身長が高くて186cmあってな……」

時間が無いのでスポーツカーで学校に向かう日だと颯姫は必ず睦斗に颯斗の事を聞く

睦斗「誰よりも平和を望み捕食者と人間の争いを嫌っていた……最終的に颯斗が自殺した事によりこの世界に平和が訪れたが……表向きは良くても裏では多くの悲しみが生まれた……真は知っているだろ?」

颯姫「うん  兄さんと中の良い人でしょ?」

睦斗「そう  真も颯斗の死を悲しんだ1人で実は颯斗の事が好きで片想いをしていた……結局想いは伝えられなかったけど颯斗はボイスレコーダーを残していたらしくてな……それで最後の想いを聞いたらしい」

颯姫  ……1度でも会ってみたかったな……颯斗兄さんに……

自分の名前の由来にもなった颯斗の話を聞く度に颯姫は颯斗に「会いたい」と思う

睦斗「学校着いたぞ  終わったら迎えに行く」

颯姫「有難う」

睦斗「じゃ  頑張ってな」

そう言って睦斗は扉を閉めて帰路へ

友達「姫ちゃん  今日も寝坊してお兄さんに送ってもらったの?」

颯姫「朝起きられなくって……」

友達「スポーツカーだったからすぐに分かったよ」

颯姫「普通の車持ってるけど今整備中で……」

等と友達と笑いながら話している颯姫……

そう……漸く颯斗が望んだ平和な世界は颯姫が生まれたその日に訪れた……


捕食者と逃げる者                        完
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