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育ての両親のこと
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紅玉の部屋で夕飯を一緒の机で食べてから、部屋に戻って俺は寝る準備をしていた。
鏡が風呂からあがった俺の髪を丁寧にブラシを使って乾かしてくれる。優しい手つきだ。小さな頃に母親が髪を乾かすのをやってくれたような、そんな思い出に浸ってしまう。父と母は記憶喪失だった俺を大事に育ててくれた。流石に、王族の子だとは思わなかったんだろうなと思う。俺も今の自分の立ち位置があり得ないと思っているのだから。育ての母と父はとても優しい人たちだった。どんなに、人に騙されても、その騙した人には騙さなければいけない何かがあるのだと信じていた。俺はそれには賛同出来なかったが、二人がどんな時でも人を恨まずにいたので俺はなんてお人よしなんだと思った。まぁ、そんなお人よしだったから俺を山で見つけた時に見捨てずにいてくれたのかもしれない。そう思うと、お人よしな両親には頭が上がらない。母は畑仕事を年中している。冬でもあまり山でも降らない地方だったので食い物には困らなかった。父は猪や熊などを相手にする狩猟だった。父と母のしている事は村にとっては有難い事だったようで、食糧難で日々苦しんでいる村があっても、うちの村だけは母が育てている野菜がよく育ち、父が猪などを狩るので野菜にも肉にも困らなかった。村の人たちから愛されていた両親。平和な村だった。ちょっとしたイザコザはあるが、大きな事件はなかった。だが、俺はずっと後悔している事がある。それは父と母が死んでしまった事に関係している。父と母が亡くなったあの日の朝に俺は山の異変を耳で感じ取っていた。だが、本に夢中になっていて父と母が出かけるというのをとめなかった事を後悔している。もし、あの時、父と母に山の異変を教えていたら未来が変わっていたのかもしれない。どんなに悔やんでも悔やみきれない、俺の罪だ。少しの山の異変で人が亡くなる事はあるというのに。俺はその時は山の自然の恐怖をまだ知らなかった。その知識不足の代償と言わんばかりに父と母は亡くなった。
父と母が変わり果てた姿で現れたのは山の土砂から掘り出された時だった。
どんなに名を呼んでも、もう返事をしてくれない。
俺は山の異変に気づいていたのに教えなかったのは……、父と母なら大丈夫だと勝手に決めつけて、俺は何もしなかった。
記憶が消えても、心の傷は治らないだろうと思っている。
あの優しい笑顔の両親にもう永遠に呼んで貰えないのだから。
山の土砂で亡くなった両親から前日に俺と両親が血の繋がりがないと聞いていた。心の整理が出来ていなかったが、それとこれとは話が違う。言い訳にならない。血が繋がっていようがいまいが、可愛がってくれた両親に恩返しをしたかった。だから、苦手な勉強をするために本を読んでいた。血が繋がってなくても、両親の愛は本物だった。だって、俺は寂しいと思った日が無かったからだ。熱を出したら医者に診せて高い薬代を払ってくれたし、熱が下がるまで母が看病してくれた。山に父と一緒に狩りをしに行ったり、ちょっと遠出をして馬に乗せてくれたりしてくれた。俺はとても恵まれていた。血が繋がってないのがどうしたというのだ。過去の俺の馬鹿野郎。
「俺が王族だって墓に報告しに行きたいなー……」
だが、王族が簡単にこの王宮から出るのは難しそうだ。特に紅玉が承諾してくれるとは思えないから。俺の事情で俺の用事なのに、紅玉の承諾がいるのはなんだか違う気がするんだが、しょうがないよな。王族歴は紅玉の方が上だからな。
だけど、母と父に会いに行ってもいいだろうと思ってしまう。
父と母は村に居たのは俺を拾う数年前から村に住みだしたと聞いている。両親の親や兄弟などの情報はない。
最初は若い両親が突然山に住みだして、村の人たちは怪訝していた。
だが、野菜のおすそ分けや獣狩りなどしだして村に貢献していると村人たちに認められるようになって、仲良く住んでいたらしい。
両親には謎な部分もあるが、人を騙すよりも騙される性質だったのできっと何か理由があって村にまで二人で住みだしたのだろう。
育ての親があの二人で俺はとてもツイていたのだろう。
墓の掃除もしたいし、村の人にさよなら言いたいし、もう一度はアキナに会いたいし。
村になんとか帰れるようにならないといけないな。
俺はそう思って目を瞑ってベッドに横になったのだった。
鏡が風呂からあがった俺の髪を丁寧にブラシを使って乾かしてくれる。優しい手つきだ。小さな頃に母親が髪を乾かすのをやってくれたような、そんな思い出に浸ってしまう。父と母は記憶喪失だった俺を大事に育ててくれた。流石に、王族の子だとは思わなかったんだろうなと思う。俺も今の自分の立ち位置があり得ないと思っているのだから。育ての母と父はとても優しい人たちだった。どんなに、人に騙されても、その騙した人には騙さなければいけない何かがあるのだと信じていた。俺はそれには賛同出来なかったが、二人がどんな時でも人を恨まずにいたので俺はなんてお人よしなんだと思った。まぁ、そんなお人よしだったから俺を山で見つけた時に見捨てずにいてくれたのかもしれない。そう思うと、お人よしな両親には頭が上がらない。母は畑仕事を年中している。冬でもあまり山でも降らない地方だったので食い物には困らなかった。父は猪や熊などを相手にする狩猟だった。父と母のしている事は村にとっては有難い事だったようで、食糧難で日々苦しんでいる村があっても、うちの村だけは母が育てている野菜がよく育ち、父が猪などを狩るので野菜にも肉にも困らなかった。村の人たちから愛されていた両親。平和な村だった。ちょっとしたイザコザはあるが、大きな事件はなかった。だが、俺はずっと後悔している事がある。それは父と母が死んでしまった事に関係している。父と母が亡くなったあの日の朝に俺は山の異変を耳で感じ取っていた。だが、本に夢中になっていて父と母が出かけるというのをとめなかった事を後悔している。もし、あの時、父と母に山の異変を教えていたら未来が変わっていたのかもしれない。どんなに悔やんでも悔やみきれない、俺の罪だ。少しの山の異変で人が亡くなる事はあるというのに。俺はその時は山の自然の恐怖をまだ知らなかった。その知識不足の代償と言わんばかりに父と母は亡くなった。
父と母が変わり果てた姿で現れたのは山の土砂から掘り出された時だった。
どんなに名を呼んでも、もう返事をしてくれない。
俺は山の異変に気づいていたのに教えなかったのは……、父と母なら大丈夫だと勝手に決めつけて、俺は何もしなかった。
記憶が消えても、心の傷は治らないだろうと思っている。
あの優しい笑顔の両親にもう永遠に呼んで貰えないのだから。
山の土砂で亡くなった両親から前日に俺と両親が血の繋がりがないと聞いていた。心の整理が出来ていなかったが、それとこれとは話が違う。言い訳にならない。血が繋がっていようがいまいが、可愛がってくれた両親に恩返しをしたかった。だから、苦手な勉強をするために本を読んでいた。血が繋がってなくても、両親の愛は本物だった。だって、俺は寂しいと思った日が無かったからだ。熱を出したら医者に診せて高い薬代を払ってくれたし、熱が下がるまで母が看病してくれた。山に父と一緒に狩りをしに行ったり、ちょっと遠出をして馬に乗せてくれたりしてくれた。俺はとても恵まれていた。血が繋がってないのがどうしたというのだ。過去の俺の馬鹿野郎。
「俺が王族だって墓に報告しに行きたいなー……」
だが、王族が簡単にこの王宮から出るのは難しそうだ。特に紅玉が承諾してくれるとは思えないから。俺の事情で俺の用事なのに、紅玉の承諾がいるのはなんだか違う気がするんだが、しょうがないよな。王族歴は紅玉の方が上だからな。
だけど、母と父に会いに行ってもいいだろうと思ってしまう。
父と母は村に居たのは俺を拾う数年前から村に住みだしたと聞いている。両親の親や兄弟などの情報はない。
最初は若い両親が突然山に住みだして、村の人たちは怪訝していた。
だが、野菜のおすそ分けや獣狩りなどしだして村に貢献していると村人たちに認められるようになって、仲良く住んでいたらしい。
両親には謎な部分もあるが、人を騙すよりも騙される性質だったのできっと何か理由があって村にまで二人で住みだしたのだろう。
育ての親があの二人で俺はとてもツイていたのだろう。
墓の掃除もしたいし、村の人にさよなら言いたいし、もう一度はアキナに会いたいし。
村になんとか帰れるようにならないといけないな。
俺はそう思って目を瞑ってベッドに横になったのだった。
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