何でも屋

ポテトバサー

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第二章:よそでイチャつけ!

相変わらずの会議

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渡「それではさっそくなんですが、デートコースを決めるためにいくつか質問をさせて頂きます」

杉田「はい」

渡「まず、彼女さんはどのような性格なんでしょうか」

杉田「性格はですね、活発な感じです。なんというか、元気に満ち溢れているというか……」

渡「活発で元気に満ち溢れている……」

 渡は綺麗な字で聞いたことをメモしていく。

渡「次に、好きなものなんですか? スポーツとか音楽とかいろいろありますが」

杉田「うーん、そうですね、スポーツは全般的に好きですね。サッカーが特に好きで」

渡「ほぅ、サッカーですか……」

 話を聞きながら修はいろいろと考えていたが、大した考えが浮かんでこないので、杉田の話を聞くことだけに集中した。渡はそんな修をちらっと見たが、そのまま杉田に質問を続けた。

渡「そうすると、スポーツとかアクティビィティができるような場所が入っているほうがいいですかね?」

杉田「そうですね、そうして頂けたら嬉しいです」

渡「好きな食べ物とかはなんでしょう?」

杉田「そうですね、リーナは……」

渡「リーナっていうのは……」

杉田「あっ、彼女の名前です。えーっと、とにかくお肉が好きですね。もうお肉を食べている時はとても幸せそうにしてますよ! ……あっ!」

 何気なく見た腕時計に杉田は大声をあげた。何でも屋たちはその急な大声に驚いた。

渡「ど、どうしたの杉田君?」

杉田「すみません! 比較経済体制論があったの忘れてました! 急いで大学にいかないと!」

渡「えっ!? それじゃあ急がないと!」

 話を聞いていた修は、壁に掛けてあった車のキーを手にすると、アイスコーヒーを一口だけ飲んで事務所の引き戸に手をかけた。

修「杉田君、俺が送ってってやるから」

杉田「え!? でも……」

修「早くしないと遅れちゃうんだろ?」

杉田「すみません、ありがとうございます!」

 引き戸を軽快に開けて外に出る修の後を杉田が続いた。修は軽トラに乗り込むと、散らかっていた助手席を手早く片し、内側から助手席のドアを開けた。

修「ほい、乗った!」

杉田「はい、失礼します!」

 ポンコツ軽トラは意外にも一発でエンジンがかかった。

修「おっ、珍しいな……あ、杉田君準備いいかい?」

杉田「はい、大丈夫です」

渡「ちょっと杉田さん!」

 今にも発進しそうな軽トラに渡が走り寄る。手を上下に振り、杉田にウィンドウを下げるようにジェスチャーで伝える。

渡「杉田さん、デートコースはいつまでに決めておけばいいですか?」

杉田「えーっと……2週間後です!」

渡「じゃあ、デートコースが決まり次第、連絡します! 修、連絡先聞いておいてね」

修「おう、じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」

杉田「渡先輩、失礼します」

渡「それじゃ気を付けて」

 軽トラは走り出し、大通りの方へと消えていった。雨に打たれながら消えていく軽トラは、どこか寂しげだなと渡は思った。ただ何となく。

渡「デートコースか……」

 渡は顔をしかめながら事務所へと足早に戻った。

渡「うーん……」

 渡は服についた雨の粒を手で払うと、再びソファーに座り腕を組んで考え出した。だが、モジモジと動く知哉が視界に入り、中断せざるをえなかった。

渡「何をしてんの?」

知哉「えっ、言っていいの?」

渡「当たり前でしょ」

知哉「じゃあ、言わせてもらうけどよ、全くといっていいほど女っ気のない生活をしてる俺たちに、デートコースなんか決められるのか?」

渡「うーわ……なんで早く言わないの!?」

知哉「いやぁ、黙ってるって自分で言っちゃったからさぁ」

渡「そういうことは言いなさいよ!」

 それから十数分後、杉田を送った修が戻った来た。

修「帰ったぞー」

重「あっ、おかえり」

修「あぁ、ただいま。ん? 二人はどこ行ったんだ?」

重「コンビニにいったよ。雑誌買いに」

修「ふーん、あれか? とりあえず手に入る情報を集めようってわけだな?」

重「そういうこと。こっちはネットでいろいろと検索してるけど、今は休憩中」

修「そうか……」

 修はソファーにふんぞり返り、重は机に上半身をだらしなく預けた。そして二人とも窓越しに見える雨を見ながら考えをめぐらした。事務所の静かな空間に、雨音だけが響いていた。

修「はぁー」

 修はため息をつきながら座り直して目をこすった。

修「何でも屋らしい依頼っちゃ依頼だけどよ……大体、彼女もいない奴らだけでデートコースなんか決められるのか!?」

重「それ知ちゃんも言ってた」

修「まったくよ」

 修は立ち上がり、引き戸を開けて雨雲を見上げた。

修「つーかいつまで雨降ってんだよ? 洗濯もんが生乾きになるからいい加減に止んでくれねぇかな」

重「明後日くらいまでは雨らしいよ」

 重は上半身を起こし、イスの背もたれにアゴをのせ修の方を向いた。

修「明後日まで? まじかよ」

 修はため息を吐きながら首を回した。

修「なぁ大先生、あいつらどこのコンビニまで買いに行ったんだ?」

重「いや、すぐそこのコンビニだけど、ちょっと遅いね」

修「ったく、何やって……あっ、帰ってきた」

知哉「うぃー、帰ったぞぉ」

 知哉は軒先に入ると傘をたたんだ。

修「よう、買えたのか雑誌?」

知哉「おう、教授さんが持ってるよ」

 知哉はそう言って事務所の中に入っていった。

修「おかえりぃ」

渡「あぁ、ただいま。ありがとね修、送ってくれて」

修「別に構わねぇよ。それで?」

 修が渡の持つコンビニ袋に目をやると、『特集』というピンク色の文字が透けて見えた。

修「………おい、いい年こいてエロ本買ってきたのか?」

渡「ピンク色の文字で特集ってあればエロ本なのかよバカ!」

修「あははは……違うの?」

渡「くだらないこと言ってないで会議やるよ会議」

 会議とは依頼についての話し合いのこと。どんな小さな依頼でも大きな依頼でも会議をすることになっている。一見、真面目そうな会議だが中身は文句の言い合い、罵倒の応酬。だが四人は子供の頃からこの方法でいろんなことを解決してきた。

修「そういや、椎名さんはまだか?」

渡「さっき連絡あって、いま帰ってる途中だって」

修「そっか、それじゃ椎名さんが帰ってきてから会議するか」

渡「そうだね」

 その後しばらくして椎名が帰ってきた。渡は杉田の依頼の事を説明して、準備ができたら倉庫内の会議室に来るよう頼んだ。

渡「それじゃ、先に行ってます」

椎名「うん、それじゃ準備してすぐに行くから」

渡「お願いします」

 渡は人数分のお茶をのせた盆をもって会議室に歩いて行った。

椎名「えーっと……」

 椎名は自分の依頼の書類を用意すると、何かが入ったビニール袋を片手に会議室に向かった。
 会議室では修、重、知哉が渡からお茶を受け取っていた。

修「おう、サンキュー」

知哉「玄米茶?」

渡「そうだよ」

重「椎名さんは?」

渡「あぁ、今来るよ」

 渡がお茶を配り終えてホワイトボードの前に立つと、椎名が扉を開けて入ってきた。

椎名「どうも、お待たせしちゃって……はい、これ皆で食べて」

 椎名は持っていたビニール袋からどら焼きを取り出し配って歩いた。

修「別にいいのに椎名さん」

重「そうですよ?」

椎名「いやぁ、自分が食べたくて買ってきちゃってねぇ」

修「……おい、知哉。椎名さんの分のどら焼きも四つに分けて俺らに配れ」

知哉「よーし」

椎名「あぁ、ちょっと!」

 子供のようなやり取りをしていると、渡が手をパンパンっと打った。

渡「はーい、会議始めるよ?」

 その声に四人はホワイトボードのほうへ顔を向けた。

渡「それで、杉田君のデートコースを決めるにあたって一番ネックになってるのは、俺たち五人に彼女がいないということ。最近なんかは全くと言っていいほど女性とのふれあいがない。女性と遊びにも行かなければ話もしてない。つまりは、今どきの女性がどんなものが好きなのかがわからない。これは致命的だ」

修「確かにサッパリわかんねぇな。椎名さんもサッパリですか?」

椎名「そりゃもうサッパリ」

渡「仮にわかったとしても、彼女のリーナさんはアメリカ人だから、文化的な違いも考慮して置いたほうがいいね」

重「んー、やっぱりさ」

 重は話しながらどら焼きの封を開けた。

重「やっぱり手あたり次第に聞いてまわって、情報を集めていくしかないんじゃない?」

知哉「聞き込みか……」

重「ネットだとさぁ、不特定多数の人が書き込んでたりして、本当の情報かわからないしね。請負で記事書いてると偏りもあるし」

椎名「確かにそうだね。ねぇ皆、身近な人で誰かいる?」

渡「修、美穂みほちゃんは?」

椎名「美穂ちゃん?」

修「俺の妹です」

椎名「やっぱりね! 弟さんか妹さんがいると思ったんだよね」

修「あ、そうですか?」

渡「それで、美穂ちゃんはどう?」

修「あいつに聞いても無駄だ。人とは少し違った価値観を持ってるからな。一体誰に似たんだか……」

渡「修以外の四人は『お前だよ』という言葉を飲み込んで話を進めた。それじゃ‥」

修「飲み込んでねぇだろ! だったら教授のとこの姉ちゃんはどうなんだよ?」

渡「姉貴? ダメダメ! 今は仕事が忙しいらしいからダメだよ! いま仕事の邪魔なんかしてみな? 俺たちに使った時間分の金を請求されるよ?」

修「別にいいじゃんか、教授が払えば済むことだろ? どう思います椎名さん」

椎名「やっぱり、渡君にはお姉さんが……」

修「………そっちの二人は?」

 修は残りの二人に賛同を求めた。当然、残った二人はその求めに応じた。

重「よし、じゃあ一人目は教授のお姉ちゃんで決まりと」

渡「ちょっと待ってよ大先生」

知哉「諦めろって、かわいい後輩のためだろ?」

渡「いや、そう言うけどねぇ」

 修は両腕を横に広げながらあくびをした。

修「いいじゃんかよ教授、そのかわりに地元にいる同級生の連絡先は俺達で調べておくからよ」

重「いや、俺と知ちゃんの二人で他の依頼の合間に調べるからいいよ。修は教授さんと一緒に行きなさいよ」

修「え? あぁ……まぁ良いけど」

椎名「僕はどうすればいいかな?」

渡「椎名さんは幼稚園の子供たちの為に入念に準備しててくださいよ。楽しみにしてるはずですよ」

椎名「ごめんね。でも何かあったら言ってね? 手伝うから」

渡「ありがとうございます」

 会議から二日後、まずは渡の姉、大塚麻衣まいに話を聞くため、渡と修の二人は待ち合わせ場所である駅前に来ていた。
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