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第二章:よそでイチャつけ!
麻衣とは呼べない
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修「そろそろ待ち合わせの時間だろ?」
渡「いま姉貴から連絡来たから、もうそろそろだよ」
久しぶりの晴天の下、二人は駅前のロータリーで麻衣の到着を待っていた。渡の姉である麻衣は自身で会社を経営する多忙の身。なので移動中の車内で話を聞くこととなっていた。
渡「ん? あっ、来た来た」
修「えっ? どの車?」
渡「ほらあれ、白のコールスモイスだよ」
修「コールスモイス!? おい、ヴィンテージ? たっかい車だなぁ……」
駅前のロータリーには不釣り合いな白塗りコールスモイス。排気ガスを吐き出す鉄の塊とは思えない美しい容姿のコールスモイスは、優雅に旋回し華麗に停車した。それは風に吹かれた一枚の葉が水面にふわりと落ち、一つ二つと水紋が広がっていくようだった。
修が、何でも屋で使用しているポンコツ軽トラと、風に吹かれた一枚の葉との差を感じていると、運転席から五十代前半の男が降りてきた。もちろん、その男は運転手で、仕立ての良いスーツを品よく着こなしていた。
運転手「渡様、お久しぶりでございます」
運転手は渡に丁寧にあいさつをする。
渡「お久しぶりです」
運転手「これは修様! お久しぶりでございます」
修「……………あぁ! 中学の時、渡の執事さんだった篠塚さん!? お久しぶりです!」
篠塚「どうぞ、ご乗車ください。麻衣様がお待ちです」
そう言って篠塚がゆっくりと後部のドアを開けると、優しく甘い香りが車内から漂ってきた。ベルガモットの柑橘系の香りの中に、時折、惑わせるかのような甘さがあった。
麻衣「あらぁ修ちゃん、お久しぶり。一段と男らしくなっちゃってぇ」
香りにのせて麻衣のしなやかな声が聞こえてきた。
修「あ、どうも、お久しぶりです」
麻衣「さぁどうぞ」
ガラの悪さなど微塵も感じさせない、気品あるグレーのスーツを着こなす麻衣は、修に向かって何度も手招きをする。
修「……し、失礼します」
渡には、車に乗り込む修の姿が食虫植物に近づいていく虫に見えた。つまり渡には、実の姉が食虫植物に見えているのである。
渡「なに考えてんだか……」
麻衣「渡は前に乗りなさい。はい、聞こえたなら返事」
渡「はい、はい! 言われなくてもわかってますよ! あ、篠塚さん、自分で乗りますから」
渡が乗り込むと篠塚は運転席に戻った。
篠塚「それでは出発します」
白塗りのコールスモイスは駅前のロータリーを後にした。
麻衣「それで? 私に何を聞きたいの? 週末の予定かしら……」
渡「実はね姉貴、俺たちがやってる…… ねぇ聞いてる?」
麻衣は渡の問いかけを無視して修のことを見つめ続けている。
渡「ねぇ姉貴? 聞いてんの?」
麻衣「………あのねぇ渡」
しつこい弟にうんざりと返事を返す麻衣。
麻衣「私はあなたの姉貴じゃないの。お姉様なの」
渡「まったく…… あの、お姉様! 実はですね!」
麻衣「粗暴な話し方…… 修ちゃん代わりに説明してもらえるかしら?」
姉に呆れかえった渡は腕を組むと座席にふんぞり返った。
渡「ほら、早く説明してやってよ?」
修「えっと、それじゃ…… あの、今日お伺いしたのはデート‥」
麻衣「渡、今すぐ車から降りなさい」
麻衣は修の話をさえぎり、ドアを指差しながら言い放った。
渡「え!? なんでよ!?」
麻衣「修ちゃんが私にデートのお誘いをしてるの、空気を読みなさい。ほら、ドア開けて映画みたく飛び降りなさい」
渡「早合点しないで、最後まで話を聞きなよ!」
修「あの、そうなんです、デートのお誘いじゃないんです」
麻衣「あら、お誘いじゃないの? 残念だわ……」
修「すみません…… お、お姉様」
前に習い、お姉様と呼ぶ修。
麻衣「麻衣でいいわ」
修「へっ?」
麻衣「修ちゃんは麻衣でいいのよ?」
修の右手を両手で包みながら麻衣は少し身を乗り出した。
渡「あのさ、俺の親友に色目使うのやめてもらえる? あぁ、やっぱいいや、修の手を握ってていいから俺の話を聞いてもらえる?」
麻衣「うん……」
即答だった。
渡「今ね、何でも屋にデートコースを決めてもらいたいっていう依頼が来てるんだよ。それで、依頼主もそうなんだけどその彼女が海外の人なんだ」
麻衣「うん……」
渡「それで、あね‥ お姉様は大学、大学院とイギリスに行ってたでしょ? その時、お姉様の事だからボーイフレンドの一人や二人いたでしょ? だから……」
麻衣「なるほどね」
麻衣は修の右手を名残惜しむようにゆっくりと離した。
麻衣「イギリスじゃ私も外国人だものね、英国紳士がどうやって極東の美人をもてなしたかを知りたいのね?」
修「さすが、麻衣お姉様。お察しの通りです」
親友の姉を名前だけで呼ぶことなど当然できない修は、その呼び方を選んだ。
麻衣「わかったわ、教えてあげる……」
今度は修の左手を包み込み身を乗り出す麻衣。
渡「だから、俺の親友に色目を使わないでもらえる?」
麻衣「いちいちうるさいわね! ……うーんと、そうね、英国紳士はブレナム宮殿へ連れて行ってくれたの。綺麗な造りの宮殿だった。庭園も二人で散歩して優雅な時間を楽しんだの」
ブレナム宮殿を知らなかった修は渡に聞くと、麻衣の話の邪魔にならない程度に渡は答えた。
渡「世界遺産の宮殿だよ。たしかバロック建築で、あの… 風景式庭園だったかな、それなんだって。すごーく簡単に言えば、おしゃれなで美しい宮殿で『おきれいでございますねぇ』ってかんじ」
修「ほう……」
麻衣「ブレナム宮殿の次はコッツウォルズ。瞬きをするのがもったいないほど、いえ、瞬きの回数だけシャッターをきりたくなるほど美しい所だったわぁ」
修が小声で聞く前に渡が答えた。
渡「世界で一番綺麗と言われてる村が点在している丘陵地帯でね、写真で見たけどきれいだったよ」
麻衣「そのままストラトフォード・アポン・エイヴォンに行って……」
渡「ストラトフォード・アポン・エイヴォンってのは……」
修「シェイクスピアの生まれたとこだろ?」
渡「ちょっとでも文学に関係してると詳しいんだね…… というか、本を読んでたらブレナム宮殿くらい分かりそうなもんだけどね!」
修「本読んでても、興味のない情報は一時保存してるだけだからよ、脳内で」
何でも屋に着くまでの二十分間、イギリスでの優雅で情熱的な麻衣の留学生活の話が続いた。役立つ情報も多かったが、麻衣の振る舞いに二人は疲れてきていた。
渡「いま姉貴から連絡来たから、もうそろそろだよ」
久しぶりの晴天の下、二人は駅前のロータリーで麻衣の到着を待っていた。渡の姉である麻衣は自身で会社を経営する多忙の身。なので移動中の車内で話を聞くこととなっていた。
渡「ん? あっ、来た来た」
修「えっ? どの車?」
渡「ほらあれ、白のコールスモイスだよ」
修「コールスモイス!? おい、ヴィンテージ? たっかい車だなぁ……」
駅前のロータリーには不釣り合いな白塗りコールスモイス。排気ガスを吐き出す鉄の塊とは思えない美しい容姿のコールスモイスは、優雅に旋回し華麗に停車した。それは風に吹かれた一枚の葉が水面にふわりと落ち、一つ二つと水紋が広がっていくようだった。
修が、何でも屋で使用しているポンコツ軽トラと、風に吹かれた一枚の葉との差を感じていると、運転席から五十代前半の男が降りてきた。もちろん、その男は運転手で、仕立ての良いスーツを品よく着こなしていた。
運転手「渡様、お久しぶりでございます」
運転手は渡に丁寧にあいさつをする。
渡「お久しぶりです」
運転手「これは修様! お久しぶりでございます」
修「……………あぁ! 中学の時、渡の執事さんだった篠塚さん!? お久しぶりです!」
篠塚「どうぞ、ご乗車ください。麻衣様がお待ちです」
そう言って篠塚がゆっくりと後部のドアを開けると、優しく甘い香りが車内から漂ってきた。ベルガモットの柑橘系の香りの中に、時折、惑わせるかのような甘さがあった。
麻衣「あらぁ修ちゃん、お久しぶり。一段と男らしくなっちゃってぇ」
香りにのせて麻衣のしなやかな声が聞こえてきた。
修「あ、どうも、お久しぶりです」
麻衣「さぁどうぞ」
ガラの悪さなど微塵も感じさせない、気品あるグレーのスーツを着こなす麻衣は、修に向かって何度も手招きをする。
修「……し、失礼します」
渡には、車に乗り込む修の姿が食虫植物に近づいていく虫に見えた。つまり渡には、実の姉が食虫植物に見えているのである。
渡「なに考えてんだか……」
麻衣「渡は前に乗りなさい。はい、聞こえたなら返事」
渡「はい、はい! 言われなくてもわかってますよ! あ、篠塚さん、自分で乗りますから」
渡が乗り込むと篠塚は運転席に戻った。
篠塚「それでは出発します」
白塗りのコールスモイスは駅前のロータリーを後にした。
麻衣「それで? 私に何を聞きたいの? 週末の予定かしら……」
渡「実はね姉貴、俺たちがやってる…… ねぇ聞いてる?」
麻衣は渡の問いかけを無視して修のことを見つめ続けている。
渡「ねぇ姉貴? 聞いてんの?」
麻衣「………あのねぇ渡」
しつこい弟にうんざりと返事を返す麻衣。
麻衣「私はあなたの姉貴じゃないの。お姉様なの」
渡「まったく…… あの、お姉様! 実はですね!」
麻衣「粗暴な話し方…… 修ちゃん代わりに説明してもらえるかしら?」
姉に呆れかえった渡は腕を組むと座席にふんぞり返った。
渡「ほら、早く説明してやってよ?」
修「えっと、それじゃ…… あの、今日お伺いしたのはデート‥」
麻衣「渡、今すぐ車から降りなさい」
麻衣は修の話をさえぎり、ドアを指差しながら言い放った。
渡「え!? なんでよ!?」
麻衣「修ちゃんが私にデートのお誘いをしてるの、空気を読みなさい。ほら、ドア開けて映画みたく飛び降りなさい」
渡「早合点しないで、最後まで話を聞きなよ!」
修「あの、そうなんです、デートのお誘いじゃないんです」
麻衣「あら、お誘いじゃないの? 残念だわ……」
修「すみません…… お、お姉様」
前に習い、お姉様と呼ぶ修。
麻衣「麻衣でいいわ」
修「へっ?」
麻衣「修ちゃんは麻衣でいいのよ?」
修の右手を両手で包みながら麻衣は少し身を乗り出した。
渡「あのさ、俺の親友に色目使うのやめてもらえる? あぁ、やっぱいいや、修の手を握ってていいから俺の話を聞いてもらえる?」
麻衣「うん……」
即答だった。
渡「今ね、何でも屋にデートコースを決めてもらいたいっていう依頼が来てるんだよ。それで、依頼主もそうなんだけどその彼女が海外の人なんだ」
麻衣「うん……」
渡「それで、あね‥ お姉様は大学、大学院とイギリスに行ってたでしょ? その時、お姉様の事だからボーイフレンドの一人や二人いたでしょ? だから……」
麻衣「なるほどね」
麻衣は修の右手を名残惜しむようにゆっくりと離した。
麻衣「イギリスじゃ私も外国人だものね、英国紳士がどうやって極東の美人をもてなしたかを知りたいのね?」
修「さすが、麻衣お姉様。お察しの通りです」
親友の姉を名前だけで呼ぶことなど当然できない修は、その呼び方を選んだ。
麻衣「わかったわ、教えてあげる……」
今度は修の左手を包み込み身を乗り出す麻衣。
渡「だから、俺の親友に色目を使わないでもらえる?」
麻衣「いちいちうるさいわね! ……うーんと、そうね、英国紳士はブレナム宮殿へ連れて行ってくれたの。綺麗な造りの宮殿だった。庭園も二人で散歩して優雅な時間を楽しんだの」
ブレナム宮殿を知らなかった修は渡に聞くと、麻衣の話の邪魔にならない程度に渡は答えた。
渡「世界遺産の宮殿だよ。たしかバロック建築で、あの… 風景式庭園だったかな、それなんだって。すごーく簡単に言えば、おしゃれなで美しい宮殿で『おきれいでございますねぇ』ってかんじ」
修「ほう……」
麻衣「ブレナム宮殿の次はコッツウォルズ。瞬きをするのがもったいないほど、いえ、瞬きの回数だけシャッターをきりたくなるほど美しい所だったわぁ」
修が小声で聞く前に渡が答えた。
渡「世界で一番綺麗と言われてる村が点在している丘陵地帯でね、写真で見たけどきれいだったよ」
麻衣「そのままストラトフォード・アポン・エイヴォンに行って……」
渡「ストラトフォード・アポン・エイヴォンってのは……」
修「シェイクスピアの生まれたとこだろ?」
渡「ちょっとでも文学に関係してると詳しいんだね…… というか、本を読んでたらブレナム宮殿くらい分かりそうなもんだけどね!」
修「本読んでても、興味のない情報は一時保存してるだけだからよ、脳内で」
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