何でも屋

ポテトバサー

文字の大きさ
20 / 52
第二章:よそでイチャつけ!

マジかよ杉田君

しおりを挟む
 気の遠くなるような長い一日がようやく終わり、四人は何でも屋へと帰ってきた。

椎名「いやぁ、ご苦労様でした。それで、どうだった?」

修「そりゃもう、疲れましたよ…… 麻衣お姉さまには気を使うし、バカな渡には映画館で恥をかかされますし」

渡「面目ない……」

重「こっちは小春ちゃんに振り回されて大変だったよ……」

知哉「いやいやいや! 俺が一番大変だろ! 勝手の分からない八百屋で朝からずっと働いてたんだぞ!?」

重「でもさ、実家がお店で、しかも暗算とか得意なんだから、八百屋さんでもうまく働けたんじゃないの?」

知哉「…………すっごくうまく働けた。正直自分でも驚きだねあれは。小春の親父さんが舌巻いてたからな」

渡「じゃ、今日の結果をもとにしてデートコース完成させちゃおうか……」

 その後、何でも屋たちは再び話し合いして、納得のいくデートコースを完成させた。渡はすぐに杉田へ知らせてあげようと電話を掛けた。

渡「あ、もしもし。依頼のデートコースが完成したんですけど、詳細をですね……」

杉田『あの先輩!』

渡「はい?」

杉田『申し訳ないんですが、デートの日程が変わりまして明日ということになったんですけど……』

渡「明日!?」

杉田『大学で色々とありまして、まるまる一日時間が取れるのは明日なんです……』

渡「えーっと、それでは…… 明日の朝、駅前の広場に来ていただけますか? そこで詳細を説明いたしますので…… はい、それでは、失礼いたします」

修「よう、どうした?」

渡「急きょ明日に変更になった」

椎名「デートが?」

渡「えぇ。いやぁ、今日中に決めておいてよかった」

修「そうだな」

知哉「なぁ、明日は休みなんだし、皆でついていこうぜ?」

修「趣味わるくねぇか?」

重「でも、こんだけ苦労して、しかも赤字なんだから、デートが成功するかどうかは気になるよ」

椎名「僕も気になるねぇ」

渡「じゃあ、とりあえず皆で行ってみるか……」

 翌日。何でも屋一同は駅前の広場で杉田の事を待っていた。

渡「もうそろそろ来るかな?」

重「やっと? 修が早くしたほうがいいなんて言うから、だいぶ待っちゃったよ……」

修「依頼人との待ち合わせに遅れるなんて出来ないだろ!?」

重「それにしたって早すぎでしょうよ?」

知哉「朝からうるせぇよ。ほら、杉田君が来たぞ?」

 知哉の指さす方向に他の四人が視線を移すと、何でも屋たちに気づいた杉田が小走りをして何でも屋たちに向かっていた。

杉田「いやー、お待たせしちゃいまして……」

 少しだけ息を切らした杉田は笑顔で言った。しかし、何でも屋たちの表情は硬く、黙ったままだった。

杉田「あれ、皆さんどうしました?」

渡「どうしましたって…… そのワンちゃんは何!?」

 杉田の右手にはリードが握られ、そのリードの先には当然ことながら犬がいた。

杉田「あれ? 言ってませんでしたっけ?」

 すっとんきょうな杉田に修はたまらず口を開いた。

修「言ってねぇって! どうすんだよ杉田君、俺たちが作ったデートコースのほとんどの場所はペット禁止だぜ!?」

杉田「えぇっ!?」

修「えぇっ、じゃないんだよ杉田君!」

杉田「困りましたねぇ… どうするリーナ?」

 修は『二度見』の見本となるような動きを見せた。

修「あぁ?」

 杉田はしゃがんで犬の頭をなでる。嫌な予感しかしない何でも屋たち。

修「ちょっと杉田君? もしかして、その犬……」

杉田「えぇ、クライナー・ミュンスターレンダーです」

修「ちが‥ 犬種の話じゃねぇよ! 今リーナって言ったろ!」

杉田「あれ、言いませんでしたっけ?」

修「言ってねぇよ! あっ、ちが…… リーナとは言ったよ! そうじゃなくて彼女ってそのワンちゃんのことか!?」

杉田「えぇ、そうです。僕、いま親戚の家にホームステイしてるんですけど、リーナはそこで飼われてるんですよ」

一同『……………………………』

 何でも屋たちは黙って杉田のことを見つめ続ける。

杉田「おじさんとおばさんには娘さんがいるんですけど、今はドイツで働いているんですよ。それで、両親にもなかなか会えなくなるので、寂しくならないようにドイツの犬種のクライナー・ミュンスターレンダーをブリーダーから譲り受けたらしいんですよ」

 何でも屋の態度にお構いなくしゃべり続ける杉田。

杉田「それで、僕も日本人ですがアメリカ生まれアメリカ育ちなので、やっぱりホームシックになってしまいまして。そんなとき、リーナが元気づけてくれたんですよ。犬は人の気持ちを読み取るなんていうじゃないですか、家にいるといつもそばに居てくれるんです」

渡「………な、なるほどねぇ」

杉田「ですから、リーナに何かお返ししてあげ‥」

修「ようかなってデートコースを?」

杉田「はい!」

 屈託のない笑顔。杉田実。留学生。犬の名前、リーナ。

修「なーんだ、そういう事だったのかぁ、あはははは…… この野郎!」

 修は杉田の胸ぐらを掴むと揺らし続ける。

修「このこのこのこのこのっ!」

杉田「うわっ! ちょっと、どうしたんですか!?」

渡「ま、まぁ修、落ち着いて落ち着いて」

修「落ち着けって、最初から犬って言ってくれてりゃ、あんな思いしなくて済んだんだ!」

 文句を言っている修の頭の中に、麻衣との壮絶なデートの場面が巡る。

椎名「しょうがないよ修君。杉田君も別に悪気があったわけじゃないんだし、ちょっと、こう…… すれ違っちゃっただけだよ」

修「なんだとピエロ! 実際に反応見てさぁー、なんていうから余計にひどい目に遭ったんだぞ!」

椎名「えっ!? い、いや、でも、渡君が‥」

重「あ、それはそうですよ! 教授さんが詳しい話も聞かないで、お気楽に依頼を受けるから‥」

渡「仕方ないだろ! 杉田君は講義で帰らなきゃいけなかったんだから!」

知哉「つーかよぉ修、杉田君を大学まで送る間に何も聞かなかったのかよ?」

渡「そうだ! そのとき何の話をしてたんだよ!」

修「………ア、アメフト?」

渡「ア、アメフト? じゃないんだよ! またアメフトの話をしてたのか!」

修「うるせぇなぁ! 日本じゃあんまりアメフトの話をしてくれる人がいないんだよ! そんなとこにアメリカ人、しかも日本語がペラペラのアメリカ人が来たらアメフトの話するだろ!」

重「はぁー、情けない! 仕事の話をしなさいよ! そこで彼女の正体が犬ってわかってたらゲロを吐かずに済んだんだ!」

修「なにぃ!」

椎名「まぁまぁ、ちょっとみんな落ち着いてよ? 忙しい杉田君の貴重な休日なんだからさぁ。ねっ?」

修「……まぁ、確かに」

渡「……じゃあ、杉田君とリーナのリフレッシュ出来るところに行きますか?」

修「そうだな。それでいいかい杉田君?」

杉田「近くにあるんですか!?」

修「あぁ、あるよ。リーナちゃんも楽しめるところが」

杉田「本当ですか! よかったなリーナ」

 杉田がリーナに話しかけると、リーナはその場で二度三度回ると、横になって腹を見せた。

重「おっ、杉田君これは?」

杉田「お腹を撫でてほしいんですよ」

修「ったく可愛いやつだなぁ」

椎名「本当だねぇ」

 椎名と修は二人してリーナを撫でてやる。

知哉「よーし、それじゃ江戸川沿いの『プレイランド』だな。ドッグランもあるし、たしかトリミング? ってのもあったし」

修「よし、プレイランドに行くなら、そのトリミングやってる間は男だけのフラグフットボールだな! 女子がいないんじゃどうしようもねぇし」

杉田「アメフトはきついですけど、フラグフットボールは得意なんですよ僕!」

渡「そうと決まったら早速行こうか」

 苦労した赤字調査は無駄になった。が、その後、リーナはドッグランで楽しそうに走り回り、トリミングをしてもらったあと、ペットマッサージなるものまで受けてリフレッシュをしていた。その間、男どもは全身全霊でフラグフットボールに興じて、ストレスを発散させるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...