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第三章:さよなら未確認
8ピースマイルドチーズ
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テレビ『さて、続いての特集は冬のデートスポットです』
少しのミルクと砂糖を入れたコーヒーを口に含みながら、渡は控室のテレビでそんなニュースを見ていた。その横では、修が小さなソファーで体をすぼめて寝そべりながら、寒そうな窓の外を眺めている。耳だけはテレビ、といった具合だ。
修「もう、デートのことは考えたくないな……」
渡「当分ね……」
修は体を起こすと、ローテーブルの上の『8ピース・マイルドチーズ』に手を伸ばした。
修「はぁーっと、チーズがぁー、私をー」
修は即興のチーズ歌を歌いながら8ピース・マイルドチーズから1ピースを取り出すと、慣れた手つきでチーズが着ている銀色の服を脱がした。脱がされたチーズは独特の香りを放ち、修を誘惑する。そのお誘いを断ること無く、修は口へチーズを運んだ。
修「かーっ! 相変わらず美味いね君は! この何とも言えない『まったり感』がいい!」
チーズを美味しそうに頬張る修。渡はその様子を目を細め見ていた。修がチーズを頬張るたびに首を左右に小さく振る渡は、思い出してしまったチーズの味をコーヒーでかき消した。
渡「なにが美味しいんだか……」
修「へっ、一番チーズが好きそうな奴が言うセリフかよ? ヨーロッパの伯爵家みたいな実家に住んで、ワインセラーまであるじゃねぇか。それがなんだ? チーズもワインも嫌いですってか? 冗談言っちゃいけませんぜお嬢さん?」
渡「うるさいよ! 誰がお嬢さんだよ! 別にいいでしょうが嫌いでも。ったく、うちの家族ときたら『何産のワインには何処産のチーズがあう』だの『トマト、モッツァレラ、トマト、モッツァレラ……』だの、全く理解できないね!」
渡はイライラしながら、カップに残っていたコーヒーを一口で入れた。が、残っていたコーヒーの量は、渡の口の許容量をわずかに超えており、渡の口とカップの隙間からこぼれてしまった。
渡「ん!」
修「何やってんだよ、きたねぇな! ほら、ティッシュ!」
渡「ごめんごめん」
その時、事務所の引き戸が開く音が聞こえてきた。それと同時に、事務机で書類整理しているはずの重と椎名の驚いた声も聞こえた。
重「うわっ!」
椎名「うわっ!」
控室まで届いた二人の声に、修と渡は顔を見合わせた。
修「なんだ?」
修はそう言うだけで、ソファーから動こうとはしなかった。それを見た渡は呆れ半分で控室を出ていった。
渡「どうしたの、大きい声出し…… うわっ!」
二人に続いて声を上げた渡に、修は面倒くさそうに腰を上げると、ひとつ伸びをして気だるそうに歩いて控室を出た。
修「ったく、どうしたん、うおっ!」
他の三人が驚いた理由を見た修は、同じように声を上げて体を一度ビクつかせた。
修「な、なんだ?」
男四人を驚かせたものとは、事務所の入り口に立っていた男だった。もちろん、ただ男が立っているだけでは驚きはしない。驚いた理由は男の外見にあった。
男を一言で言い表すなら銀塊、もしくは宇宙人。重に似た天然パーマの長髪は白髪で、色白の肌に映える大きなサングラスは、ありがちな宇宙人の大きな目を思わせた。さらに、アルミホイルのように光る宇宙服を着ており、様々な箇所に何かを計測しているのかピコピコと動くメーターや、まったく用途のわからないチューブが付いた機械などが取り付けられていた。
修「……8ピースマイルドチーズ星人?」
修の形容も正解の一つだろう。
男「驚かせてしまったようで申し訳ありません。それでその…… ここは何でも屋さんですよね?」
男の風貌に呆然としていた四人だったが、渡がふと我に返り、男の質問に答えた。
渡「あっ、はい、そうです、何でも屋です。ど、どうぞこちらにお掛け下さい。ホラ皆!」
渡のその声で、残りの三人も我に返った。そしてあっという間にローテーブルをきれいに拭き、お茶と煎餅を出した。促された男はソファーに腰を下ろし、それを見てから渡もソファーに座った。
渡「それで…… どのようなご用件でしょうか?」
男「えーっとですねぇ、私の行っている研究を手伝ってもらいたいんですが……」
渡「研究…… ですか?」
男「はい、私こう見えてもUFO研究家でして」
修「そうにしか見えませんよ!」
UFO研究家の言葉に素早く反応した修は、渡に自分と席をかわるように手で促した。修のUFO好きを知っている渡は素直に従った。
修「すみません、話が途切れてしまって…… それで、UFOの研究を?」
男「えぇ、そうなんです。まぁ、厳密にいえばUFOというよりはエイリアンクラフトなんですが、その研究を手伝ってもらいたいんです」
修「研究ですか。今の時代、UFOの研究は大変でしょう?」
男「えぇ。科学や技術の革新によりUFO事情はがらりと変わってきました。目撃談のみだったものが、写真や動画でUFOを撮影することが可能になりましたから。さらに多くのUFOの正体が科学的に解明されていき、研究者としては信憑性の低いものを除外する助けとなりました。しかし、その科学の進歩により、一般人にも簡単にCGが使えるようになると、UFO関連のCG動画が爆発的に増えてしまい、今となってはふるいにかけるのも一苦労。もちろん、本物の宇宙人やエイリアンクラフトを見たことが無いわけですから、遊びで誰かが作ったという事しかわかりませんが……」
修「まぁ、それでも、99.9パーセントが解明されても、残りの0.1パーセントはロマンに溢れていますからねぇ」
男「フライング・ソーサーなんてロマンがありますよね」
修「ケネス・アーノルド事件ですか」
男「えぇ」
修「ですが実際のところはどうなんでしょうかね? 今まで『地球外生命体が乗っているであろう飛行物体』の事件は多くありました」
男「そうですね」
修「有名どころで言うと、まぁ先ほどケネス・アーノルド事件、ロズウェル事件、そしてWW2のフーファイターと、挙げるキリがありません。ですがどの事件もどこまでが本当なのかわかりませんからねぇ」
男「そういった事件には必ずと言っていいほど軍事介入がありますからね」
修「軍事介入には時代背景もあるでしょうしね。東西二分に世界大戦ですからね。それに、カバーストーリーも流され、情報操作も行われているはずです」
男「他の機密を守るためにUFOやエイリアンの噂を逆に流したこともありましたし、NASAやCIA、それにFBIも詳細な情報を握っていたはず…… 初代長官ジョン・エドガー・フーヴァーはどこまで知っていたんでしょうか?」
修「情報処分に苦労したと聞きますが……」
男「さしずめ『長官の遺産』というところでしょうか、見てみたかったですね……」
修「同感です。それで……… あ、すみません、まだお名前を伺っていませんでした」
男「言われてみればそうでした、私の名前は灰田小次郎です」
修「灰田小次郎さん……」
灰田「そうですけど、どうかしましたか?」
修「いえ、何も……」
灰田「そう、ですか…」
休まず話し続けていた二人の間に、ようやく沈黙が訪れた。他の三人は黙る二人を見ながら互いに顔を見合わせていた、それはもう面倒くさそうな表情で。得体のしれない銀色の依頼人に、内容が全く理解できない会話をされたら誰でもそうなる。
修「………わかりました!」
唐突に口を開いた修は、胸を張って続けた。
修「そのUFOの研究、私たち何でも屋でお手伝いさせていただきます」
灰田「本当ですか!?」
修「大塚君! ボケーっとしてないで早く書類を持って‥」
渡は軽めの掌底を修の顔面に放り込むことで、意味不明な依頼の快諾を阻止した。
修「れぶっ!」
渡「なにが『さっさと書類を』だよ! 勝手に決めるんじゃないよ、こっち三人は全く意味がわかってないんだから!」
修「痛ぇな! そっち三人が勉強不足なんだろ!?」
渡「勉強不足? じゃあファラデーの電気分解の法則を簡単に説明してみな?」
修「…………あのー、まぁ、分解したらですよ、結局まぁ、ウェンズデーだったと」
渡「フライデーの電気分解じゃないんだよバカ! ファラデーって言ってるだろ! 大体、なんで金曜を電気分解したら水曜なんだよ! 勉強不足はそっちだろ!」
修「なんだとこの野郎!」
依頼人そっちのけで揉み合い始める修と渡。重と椎名が間に入るも止まらない。普通の客ならうんざりして帰るところだが、灰田は茶をすすりながら揉み合う四人を楽しそうに眺めていた。と、その時だった。
知哉「帰ったぜー」
別の依頼で出ていた知哉が帰ってきたのだった。だが知哉は揉み合う仕事仲間を見て、灰田と同じく楽しそうに笑う。
知哉「おっ、なんだなんだ、一番取ってんのか? 行司やってやろうか?」
修「そのまま表で待ってろデクノボウ! おう教授、今あのデクノボウを殴ってから話をつけてやるから!」
知哉「へっ! アゴでカビ育ててる奴にデク呼ばわりされる覚えはねぇよ」
修「言ったな?」
知哉「言ってやったよ」
知哉も混じり、灰田そっちのけでモメる何でも屋たち。その間、灰田はモメる何でも屋たちを楽しそうに眺めていた。お茶のおかわりを自分で入れながら。
渡「あの…… 本当に申し訳ありませんでした」
モメること十数分、落ち着きを取り戻した一同は、渡の声に合わせて灰田に深々と頭を下げた。
灰田「いやいやいや、何かこう、ドラマを見ているようで楽しかったですよ」
渡「ほら、久石さんと寺内さんも」
修「申し訳ありませんでした」
知哉は修の後に続いた。
知哉「申し訳ありま…… うわっ! あんた誰!」
今さら驚く知哉。
灰田「UFO研究家の灰田小次郎と申します」
知哉「あ、UFO研究家さん…… これはどうも……」
渡「……本当に申し訳ありませんでした。それで、お手伝いというのは具体的に何をすればよろしいのでしょうか?」
灰田「あ、依頼の話ですね? えーっとですね、ここから近い江戸川沿いのポムポム公園で、私が追っている『Flying Yellow Eggplant』通称FYEが目撃されたらしく…… 」
渡「……空飛ぶ黄色いナス?」
灰田「そこで、そのFYEの撮影を手伝っていただきたいんです」
渡「……わ、かりました。それで期間のほうはどのくらいでしょうか?」
灰田はそのことを聞かれると、天井見つめ、ブツブツと言いながら腕を組み考え出した。
灰田「えー、準備は整えてありますから、まぁ、一ヶ月…… そうですね一ヶ月あれば大丈夫だと思うんですけど……」
渡「一ヶ月ですか…… やはり毎日のほうが良いですよね?」
灰田「そうですね、出来ればそうして頂けると助かるんですが。でも、あくまで出来ればのお話ですから……」
渡「わかりました。ちょっと失礼……」
渡はそう言い残すと、修だけを控室へと連れて行った。
修「なんだ、依頼受けてくれんのか?」
渡「そりゃ受けないわけにはいかないでしょ? 灰田さんの前であんな失礼をしちゃったわけだし」
修「まぁそうか。でも俺が言うのもなんだけどさ、一か月いけるか?」
渡「うーん、上手く予定と時間を調整すれば、毎日最低でも一人は灰田さんの手伝いができると思うんだけど…… でもあれだよ? 椎名さんと大先生と知ちゃんにも協力してもらわないと出来ないんだからね?」
修「わかってるよ、んな事。ちゃんとお願いするって」
渡「良し、それじゃ……」
渡と修は控室から笑顔で出ていくと、軽い足取りでソファーに近づき座った。
渡「お待たせしました。ご依頼承ります。それに際しまして……」
その後、細かな打ち合わせと契約を済ませた灰田は、意気揚々と事務所を後にした。一段落した事務所の中はまったりとした空気に包まれており、今しがた銀色の塊に遭遇してしまったことも、遠い日のように思えていた。
知哉「明後日から手伝いかぁ」
ソファーに浅く座る知哉が、伸びをしながら気怠そうに口ひらく。
知哉「なぁ修、UFOなんか撮れるのか?」
修「そんなんわかんねぇよ、けど『手伝う』ってのが今回の依頼だからなぁ」
知哉「そうだな。ま、気楽に真面目にやりゃいいか。さーて、タバコでも吸って……」
修「俺はトイレで踏ん張ってくるかな」
渡「いちいち言うな!」
トイレに行く修の背中を見ながら、重はいつものようにウーロン茶をすする。
重「なんかスゴイ事になっちゃったけど大丈夫かな?」
椎名はキャスター付き事務イスから立ち、腰を二回三回とゆっくりひねった。
椎名「なんとかなるとは思うけど…… そういえば重君と渡君はUFO見たことあるの?」
渡「俺は無いですねぇ」
重「僕は修と一緒に見たことあります。小学…… 三年生のときだったと思うんですけど、二人で江戸川で釣りをしてまして、修がブラックバスをばらしたんですよ。んで修が言うんですよ『今のは40・50アップはあったな』って。でもですよ? そのブラックバスが修と闘って水面から飛び出てきたとき、どう見ても20センチくらいしかなかったんです。それを修の奴、未だに50はくだらないって譲らないんですよ。まったく困った奴ですよ。逃した魚は大きかったってことですかねぇ? はははっ」
重は呆れたように笑う。
椎名「……………UFOの話じゃ?」
重「あぁ、すみません! それでブラックバスをバラした後にですね、二人揃って何だよー、なーんて言って空を見上げたら、何て言えばいいんですかねぇ、その、白いがんもどきみたいな物がふわふわ浮いてたんですよ! ホワイト・ガン・モドキだからWGM?」
渡「いちいち頭字語にしなくていいよ!」
重「通称WGMってとこだね」
渡「…………………」
重「それで、そのWGMを僕が宙狐だって言ったんです。そしたら修は宙狐じゃねぇエイリアンクラフトだ、って言うもんですから、こっちも負けじと宙狐と言い張りましてね? 修もエイリアンクラフトだって譲らないんですよ。それでもうケンカですよ! 僕が先に一発、修にくらわしましてね? そしたら修、僕のケツに蹴りいれてきまして、僕が返しに………」
椎名「……UFO見れるといいね渡君」
渡「そうですね……」
二日後の早朝。その日の担当となった知哉が両手に荷物を持ち、背中に大きなリュックを背負い、徒歩でポムポム公園へとやってきていた。
少しのミルクと砂糖を入れたコーヒーを口に含みながら、渡は控室のテレビでそんなニュースを見ていた。その横では、修が小さなソファーで体をすぼめて寝そべりながら、寒そうな窓の外を眺めている。耳だけはテレビ、といった具合だ。
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修「かーっ! 相変わらず美味いね君は! この何とも言えない『まったり感』がいい!」
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渡「なにが美味しいんだか……」
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渡「うるさいよ! 誰がお嬢さんだよ! 別にいいでしょうが嫌いでも。ったく、うちの家族ときたら『何産のワインには何処産のチーズがあう』だの『トマト、モッツァレラ、トマト、モッツァレラ……』だの、全く理解できないね!」
渡はイライラしながら、カップに残っていたコーヒーを一口で入れた。が、残っていたコーヒーの量は、渡の口の許容量をわずかに超えており、渡の口とカップの隙間からこぼれてしまった。
渡「ん!」
修「何やってんだよ、きたねぇな! ほら、ティッシュ!」
渡「ごめんごめん」
その時、事務所の引き戸が開く音が聞こえてきた。それと同時に、事務机で書類整理しているはずの重と椎名の驚いた声も聞こえた。
重「うわっ!」
椎名「うわっ!」
控室まで届いた二人の声に、修と渡は顔を見合わせた。
修「なんだ?」
修はそう言うだけで、ソファーから動こうとはしなかった。それを見た渡は呆れ半分で控室を出ていった。
渡「どうしたの、大きい声出し…… うわっ!」
二人に続いて声を上げた渡に、修は面倒くさそうに腰を上げると、ひとつ伸びをして気だるそうに歩いて控室を出た。
修「ったく、どうしたん、うおっ!」
他の三人が驚いた理由を見た修は、同じように声を上げて体を一度ビクつかせた。
修「な、なんだ?」
男四人を驚かせたものとは、事務所の入り口に立っていた男だった。もちろん、ただ男が立っているだけでは驚きはしない。驚いた理由は男の外見にあった。
男を一言で言い表すなら銀塊、もしくは宇宙人。重に似た天然パーマの長髪は白髪で、色白の肌に映える大きなサングラスは、ありがちな宇宙人の大きな目を思わせた。さらに、アルミホイルのように光る宇宙服を着ており、様々な箇所に何かを計測しているのかピコピコと動くメーターや、まったく用途のわからないチューブが付いた機械などが取り付けられていた。
修「……8ピースマイルドチーズ星人?」
修の形容も正解の一つだろう。
男「驚かせてしまったようで申し訳ありません。それでその…… ここは何でも屋さんですよね?」
男の風貌に呆然としていた四人だったが、渡がふと我に返り、男の質問に答えた。
渡「あっ、はい、そうです、何でも屋です。ど、どうぞこちらにお掛け下さい。ホラ皆!」
渡のその声で、残りの三人も我に返った。そしてあっという間にローテーブルをきれいに拭き、お茶と煎餅を出した。促された男はソファーに腰を下ろし、それを見てから渡もソファーに座った。
渡「それで…… どのようなご用件でしょうか?」
男「えーっとですねぇ、私の行っている研究を手伝ってもらいたいんですが……」
渡「研究…… ですか?」
男「はい、私こう見えてもUFO研究家でして」
修「そうにしか見えませんよ!」
UFO研究家の言葉に素早く反応した修は、渡に自分と席をかわるように手で促した。修のUFO好きを知っている渡は素直に従った。
修「すみません、話が途切れてしまって…… それで、UFOの研究を?」
男「えぇ、そうなんです。まぁ、厳密にいえばUFOというよりはエイリアンクラフトなんですが、その研究を手伝ってもらいたいんです」
修「研究ですか。今の時代、UFOの研究は大変でしょう?」
男「えぇ。科学や技術の革新によりUFO事情はがらりと変わってきました。目撃談のみだったものが、写真や動画でUFOを撮影することが可能になりましたから。さらに多くのUFOの正体が科学的に解明されていき、研究者としては信憑性の低いものを除外する助けとなりました。しかし、その科学の進歩により、一般人にも簡単にCGが使えるようになると、UFO関連のCG動画が爆発的に増えてしまい、今となってはふるいにかけるのも一苦労。もちろん、本物の宇宙人やエイリアンクラフトを見たことが無いわけですから、遊びで誰かが作ったという事しかわかりませんが……」
修「まぁ、それでも、99.9パーセントが解明されても、残りの0.1パーセントはロマンに溢れていますからねぇ」
男「フライング・ソーサーなんてロマンがありますよね」
修「ケネス・アーノルド事件ですか」
男「えぇ」
修「ですが実際のところはどうなんでしょうかね? 今まで『地球外生命体が乗っているであろう飛行物体』の事件は多くありました」
男「そうですね」
修「有名どころで言うと、まぁ先ほどケネス・アーノルド事件、ロズウェル事件、そしてWW2のフーファイターと、挙げるキリがありません。ですがどの事件もどこまでが本当なのかわかりませんからねぇ」
男「そういった事件には必ずと言っていいほど軍事介入がありますからね」
修「軍事介入には時代背景もあるでしょうしね。東西二分に世界大戦ですからね。それに、カバーストーリーも流され、情報操作も行われているはずです」
男「他の機密を守るためにUFOやエイリアンの噂を逆に流したこともありましたし、NASAやCIA、それにFBIも詳細な情報を握っていたはず…… 初代長官ジョン・エドガー・フーヴァーはどこまで知っていたんでしょうか?」
修「情報処分に苦労したと聞きますが……」
男「さしずめ『長官の遺産』というところでしょうか、見てみたかったですね……」
修「同感です。それで……… あ、すみません、まだお名前を伺っていませんでした」
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修「いえ、何も……」
灰田「そう、ですか…」
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修「………わかりました!」
唐突に口を開いた修は、胸を張って続けた。
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灰田「本当ですか!?」
修「大塚君! ボケーっとしてないで早く書類を持って‥」
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修「れぶっ!」
渡「なにが『さっさと書類を』だよ! 勝手に決めるんじゃないよ、こっち三人は全く意味がわかってないんだから!」
修「痛ぇな! そっち三人が勉強不足なんだろ!?」
渡「勉強不足? じゃあファラデーの電気分解の法則を簡単に説明してみな?」
修「…………あのー、まぁ、分解したらですよ、結局まぁ、ウェンズデーだったと」
渡「フライデーの電気分解じゃないんだよバカ! ファラデーって言ってるだろ! 大体、なんで金曜を電気分解したら水曜なんだよ! 勉強不足はそっちだろ!」
修「なんだとこの野郎!」
依頼人そっちのけで揉み合い始める修と渡。重と椎名が間に入るも止まらない。普通の客ならうんざりして帰るところだが、灰田は茶をすすりながら揉み合う四人を楽しそうに眺めていた。と、その時だった。
知哉「帰ったぜー」
別の依頼で出ていた知哉が帰ってきたのだった。だが知哉は揉み合う仕事仲間を見て、灰田と同じく楽しそうに笑う。
知哉「おっ、なんだなんだ、一番取ってんのか? 行司やってやろうか?」
修「そのまま表で待ってろデクノボウ! おう教授、今あのデクノボウを殴ってから話をつけてやるから!」
知哉「へっ! アゴでカビ育ててる奴にデク呼ばわりされる覚えはねぇよ」
修「言ったな?」
知哉「言ってやったよ」
知哉も混じり、灰田そっちのけでモメる何でも屋たち。その間、灰田はモメる何でも屋たちを楽しそうに眺めていた。お茶のおかわりを自分で入れながら。
渡「あの…… 本当に申し訳ありませんでした」
モメること十数分、落ち着きを取り戻した一同は、渡の声に合わせて灰田に深々と頭を下げた。
灰田「いやいやいや、何かこう、ドラマを見ているようで楽しかったですよ」
渡「ほら、久石さんと寺内さんも」
修「申し訳ありませんでした」
知哉は修の後に続いた。
知哉「申し訳ありま…… うわっ! あんた誰!」
今さら驚く知哉。
灰田「UFO研究家の灰田小次郎と申します」
知哉「あ、UFO研究家さん…… これはどうも……」
渡「……本当に申し訳ありませんでした。それで、お手伝いというのは具体的に何をすればよろしいのでしょうか?」
灰田「あ、依頼の話ですね? えーっとですね、ここから近い江戸川沿いのポムポム公園で、私が追っている『Flying Yellow Eggplant』通称FYEが目撃されたらしく…… 」
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渡「……わ、かりました。それで期間のほうはどのくらいでしょうか?」
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渡「わかりました。ちょっと失礼……」
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知哉「明後日から手伝いかぁ」
ソファーに浅く座る知哉が、伸びをしながら気怠そうに口ひらく。
知哉「なぁ修、UFOなんか撮れるのか?」
修「そんなんわかんねぇよ、けど『手伝う』ってのが今回の依頼だからなぁ」
知哉「そうだな。ま、気楽に真面目にやりゃいいか。さーて、タバコでも吸って……」
修「俺はトイレで踏ん張ってくるかな」
渡「いちいち言うな!」
トイレに行く修の背中を見ながら、重はいつものようにウーロン茶をすする。
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椎名はキャスター付き事務イスから立ち、腰を二回三回とゆっくりひねった。
椎名「なんとかなるとは思うけど…… そういえば重君と渡君はUFO見たことあるの?」
渡「俺は無いですねぇ」
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重は呆れたように笑う。
椎名「……………UFOの話じゃ?」
重「あぁ、すみません! それでブラックバスをバラした後にですね、二人揃って何だよー、なーんて言って空を見上げたら、何て言えばいいんですかねぇ、その、白いがんもどきみたいな物がふわふわ浮いてたんですよ! ホワイト・ガン・モドキだからWGM?」
渡「いちいち頭字語にしなくていいよ!」
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渡「…………………」
重「それで、そのWGMを僕が宙狐だって言ったんです。そしたら修は宙狐じゃねぇエイリアンクラフトだ、って言うもんですから、こっちも負けじと宙狐と言い張りましてね? 修もエイリアンクラフトだって譲らないんですよ。それでもうケンカですよ! 僕が先に一発、修にくらわしましてね? そしたら修、僕のケツに蹴りいれてきまして、僕が返しに………」
椎名「……UFO見れるといいね渡君」
渡「そうですね……」
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その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
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