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24 翼を持つもの3
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まるで夢を見ていたようだった。
彼は一体何をいうつもりだったんだろう。
翼がどうとか言っていたような気もするけれど、よく聞き取れなかった。
しばらくの沈黙。
その静寂を破ったのは陛下の方だった。
「身体は大丈夫か?」
「うん」
本当は手が少し痛い。
見下ろすと、案の定、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
私が手を見ているのに気づいて、陛下が説明する。
「ひどい怪我だ。痛むだろう」
「それほどでもないよ。平気」
「嘘つけ、三日も眠り続けていたくせに」
嘘、三日も?
「医者は雷に撃たれたようだと言っていた。それと打撲と。傷はなくても全身が痛めつけられている。昏睡状態になっても仕方ない。ゆっくり休め」
「リューンは?」
「お前よりひどい。命に別状はないが、動きまわろうとするんで、ベッドに縛り付けている」
「そう………」
ふうっと息をついた。
良かった、リューンも無事だったんだ。
「もう一度、行くのか?」
陛下が淡々と問う。
「うん」
「俺達にとってはありがたい。だが、やるにしてもリューンが回復してからだ。あいつ、しばらくは動けない」
「一人でやるからいい」
「なっ………」
陛下はぎょっとして言葉をつまらせた。
「馬鹿!生きていただけでも感謝せねばならないところなんだぞ」
「私がここにいるのは鏡を戻す為だよ。その為に来たんだから逃げない」
そう、リューンがいなくても、私はやらなきゃならない。
「死にたいのか!」
陛下が私の両手をわしづかみにしてして捕らえる。
「この手をみろ!包帯に巻かれているが、この下は焼けただれてしまっている。手当てをした女官が、あまりの酷さに卒倒しかけたくらいだ。風の守りがないままに挑んで、無事でいられると思っているのか?もう何人も死んでいるんだぞ!」
「痛い………」
はっとしたように手を離す。
「すまない」
顔をそむけて謝る。
掴まれた手首は赤くなっていた。
「レンディルム陛下………」
「レンと呼べ。許す」
「………レン」
優しさに、胸が熱くなる。
笑おうとしたけど、だめだ。きっと泣き笑いになっている。
「駄目なの。私、このままじゃここにいる理由がない。リューンがいてもきっと駄目だ。私が自分でやらないと、きっと結界は開かない」
そう、これは確信だ。
リューンは私を守る為に怪我をした。
あの触手は知っていたんだ。彼がいなければ私が結界に触れることも出来ないことを。
だから彼を狙った。
私が精霊を呼べていたら、リューンは怪我をせずにすんだかもしれない。
それにもっと楽に結界をはれていただろう。
ううん、そもそも私は自分で結界を張るくらい出来なきゃならなかった。
『風の乙女』ならば。
なのに私はルーンを知らない。
やっと覚えたのは鏡に風を戻す呪文だけ。
それすらも曖昧だ。
そして怖くなった。
もしかしたら、私はルーンを知っていたとしても、精霊を呼べなかったかもしれない。
彼は一体何をいうつもりだったんだろう。
翼がどうとか言っていたような気もするけれど、よく聞き取れなかった。
しばらくの沈黙。
その静寂を破ったのは陛下の方だった。
「身体は大丈夫か?」
「うん」
本当は手が少し痛い。
見下ろすと、案の定、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
私が手を見ているのに気づいて、陛下が説明する。
「ひどい怪我だ。痛むだろう」
「それほどでもないよ。平気」
「嘘つけ、三日も眠り続けていたくせに」
嘘、三日も?
「医者は雷に撃たれたようだと言っていた。それと打撲と。傷はなくても全身が痛めつけられている。昏睡状態になっても仕方ない。ゆっくり休め」
「リューンは?」
「お前よりひどい。命に別状はないが、動きまわろうとするんで、ベッドに縛り付けている」
「そう………」
ふうっと息をついた。
良かった、リューンも無事だったんだ。
「もう一度、行くのか?」
陛下が淡々と問う。
「うん」
「俺達にとってはありがたい。だが、やるにしてもリューンが回復してからだ。あいつ、しばらくは動けない」
「一人でやるからいい」
「なっ………」
陛下はぎょっとして言葉をつまらせた。
「馬鹿!生きていただけでも感謝せねばならないところなんだぞ」
「私がここにいるのは鏡を戻す為だよ。その為に来たんだから逃げない」
そう、リューンがいなくても、私はやらなきゃならない。
「死にたいのか!」
陛下が私の両手をわしづかみにしてして捕らえる。
「この手をみろ!包帯に巻かれているが、この下は焼けただれてしまっている。手当てをした女官が、あまりの酷さに卒倒しかけたくらいだ。風の守りがないままに挑んで、無事でいられると思っているのか?もう何人も死んでいるんだぞ!」
「痛い………」
はっとしたように手を離す。
「すまない」
顔をそむけて謝る。
掴まれた手首は赤くなっていた。
「レンディルム陛下………」
「レンと呼べ。許す」
「………レン」
優しさに、胸が熱くなる。
笑おうとしたけど、だめだ。きっと泣き笑いになっている。
「駄目なの。私、このままじゃここにいる理由がない。リューンがいてもきっと駄目だ。私が自分でやらないと、きっと結界は開かない」
そう、これは確信だ。
リューンは私を守る為に怪我をした。
あの触手は知っていたんだ。彼がいなければ私が結界に触れることも出来ないことを。
だから彼を狙った。
私が精霊を呼べていたら、リューンは怪我をせずにすんだかもしれない。
それにもっと楽に結界をはれていただろう。
ううん、そもそも私は自分で結界を張るくらい出来なきゃならなかった。
『風の乙女』ならば。
なのに私はルーンを知らない。
やっと覚えたのは鏡に風を戻す呪文だけ。
それすらも曖昧だ。
そして怖くなった。
もしかしたら、私はルーンを知っていたとしても、精霊を呼べなかったかもしれない。
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