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ㅤ目を開くとそこは、地面に矢印が星型に五つ浮き出ているのがシンボルになっている、白い空間だった。別名、〝時空のポルタ〟という。ポルタはイタリア語で、扉という意味だ。
ㅤどうやら立ったまま気を失っていたらしく、体を起こす必要はなかった。汚れていた靴と靴下はどういう訳か綺麗になっている。新品と同様の綺麗さだ。
ㅤしかし、私はこうなる理由を知っている。何故なら此処は、時間と空気の狭間だからだ。この空間にいる時だけは自分の気持ち次第で、自分の体、または身につけているものだけが過去に戻り、未来に行くことが出来る。つまり、子供にも大人にもなることが出来る場所。
ㅤそんな夢のようなところがあるのかと思うかもしれないが、この空間では夢も現実と同様。意識がはっきりとしているために、記憶にもちゃんと残ってしまう。
ㅤ私は五つの矢印が並ぶところに向かって歩いた。矢印の向く先には大きな扉がある。これは、五つの平行世界への入り口だ。私が生きる世界とは別に、同じ〝時間〟で動き、同じ〝私〟がいる世界。
ㅤ平行世界は様々で、例えばその日私が振られたとする。実際にこの世界にいる私は辛い思いをしているが、もう一つの世界では振られずに付き合い、幸せな自分がいる。また、もう一つの世界では、返事を別の日に聞く自分もいる。性格が正反対の自分もいる。パラレルワールドは、同じ時間で自分に起こったことや自分が起こしたこととは他に、平行して違うことが起こっている世界が多く存在するのだ。
ㅤ私は五つの矢印の中で一番長い矢印がさす、扉の前に立った。この世界に入るのも、元の世界に戻るのも最後かもしれない、そう思いながらドアノブに手をかける。
(これもすべて、〝あの〟約束を果たすため)
ㅤ身につけているガラスのペンダントを握った。目を閉じ、息を深く吸う。この世界と別れを告げる時は、いつも不安な気持ちになるからだ。そして、自分がいつ消えてしまうか分からない恐怖に襲われる。
(大丈夫。これが助けてくれる)
ㅤ握っていたペンダントから手を離し、また握る。このペンダントは、亡くなった祖母の持っていた物だ。心臓を患っていた祖母は、私がお見舞いに来る度によくペンダントのことを話していた。見た目はペンダントだが、何かの鍵になっているらしい。そして、強い力を持っているということも聞いた。それがどんな力を持っているのかはまだ不明だが。
ㅤいざ、入ろうとドアノブを捻る。普通のドアノブとは重みが全然違く、最初は片手で捻ったものの、力が足りず両手を使ってドアノブを右に捻った。
「バイバイ、私が存在した世界」
ㅤ小さな声でお別れを告げた。後悔はしていないし、残したものも特にはない。やり残したこともない。
ㅤ扉を開けると、虹色の光が見えた。迷子にならないように、道を示している。中に入ると、入ってきた扉は消え、私は白い光に包まれた。ふわふわとした感覚と温かさを感じながら、真っ直ぐと歩く。そこに迷いは、微塵も無かった────。
ㅤどうやら立ったまま気を失っていたらしく、体を起こす必要はなかった。汚れていた靴と靴下はどういう訳か綺麗になっている。新品と同様の綺麗さだ。
ㅤしかし、私はこうなる理由を知っている。何故なら此処は、時間と空気の狭間だからだ。この空間にいる時だけは自分の気持ち次第で、自分の体、または身につけているものだけが過去に戻り、未来に行くことが出来る。つまり、子供にも大人にもなることが出来る場所。
ㅤそんな夢のようなところがあるのかと思うかもしれないが、この空間では夢も現実と同様。意識がはっきりとしているために、記憶にもちゃんと残ってしまう。
ㅤ私は五つの矢印が並ぶところに向かって歩いた。矢印の向く先には大きな扉がある。これは、五つの平行世界への入り口だ。私が生きる世界とは別に、同じ〝時間〟で動き、同じ〝私〟がいる世界。
ㅤ平行世界は様々で、例えばその日私が振られたとする。実際にこの世界にいる私は辛い思いをしているが、もう一つの世界では振られずに付き合い、幸せな自分がいる。また、もう一つの世界では、返事を別の日に聞く自分もいる。性格が正反対の自分もいる。パラレルワールドは、同じ時間で自分に起こったことや自分が起こしたこととは他に、平行して違うことが起こっている世界が多く存在するのだ。
ㅤ私は五つの矢印の中で一番長い矢印がさす、扉の前に立った。この世界に入るのも、元の世界に戻るのも最後かもしれない、そう思いながらドアノブに手をかける。
(これもすべて、〝あの〟約束を果たすため)
ㅤ身につけているガラスのペンダントを握った。目を閉じ、息を深く吸う。この世界と別れを告げる時は、いつも不安な気持ちになるからだ。そして、自分がいつ消えてしまうか分からない恐怖に襲われる。
(大丈夫。これが助けてくれる)
ㅤ握っていたペンダントから手を離し、また握る。このペンダントは、亡くなった祖母の持っていた物だ。心臓を患っていた祖母は、私がお見舞いに来る度によくペンダントのことを話していた。見た目はペンダントだが、何かの鍵になっているらしい。そして、強い力を持っているということも聞いた。それがどんな力を持っているのかはまだ不明だが。
ㅤいざ、入ろうとドアノブを捻る。普通のドアノブとは重みが全然違く、最初は片手で捻ったものの、力が足りず両手を使ってドアノブを右に捻った。
「バイバイ、私が存在した世界」
ㅤ小さな声でお別れを告げた。後悔はしていないし、残したものも特にはない。やり残したこともない。
ㅤ扉を開けると、虹色の光が見えた。迷子にならないように、道を示している。中に入ると、入ってきた扉は消え、私は白い光に包まれた。ふわふわとした感覚と温かさを感じながら、真っ直ぐと歩く。そこに迷いは、微塵も無かった────。
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