脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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ディストネイルへ出向

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「今回はこちらの要望に応えていただき、感謝致す。第一王子、ブルレギアス殿。」

「いえ、今回の件は誠に申し訳ありませんでした。原因は先の書文でお伝えした通りです。」

ブルレギアス様の応接室。そこにいるのは前のオークション潜入時に、私が身代わりとなった、ヴィサレンス国、第一皇女であるミレンネ。

そしてその兄、つまり第一皇子にあたるロレンザ。そしてその護衛として後ろに付き添うのはあの時もいたトロアという男だ。

知らなかったとはいえ、帝国の皇女の代わり身をかって出るなど、下手をすればそれだけで失礼に当たるところだった。

その執務室では、余計なことを言わないようにと、私はブルレギアス様の隣でただ笑うだけだ。


すると、第一皇子であるロレンザ様が口を開いた。


「私の妹はエミレィナ殿に助けていただきました。あの時は本当にありがとう。」

シャンパンゴールドの髪にピンクの瞳。整った顔をした彼が笑いかけるので、私はピクッと反応した。

「…この国ではヴィサレンス特有の色が良しと思われてないと聞いたが、エミレィナ殿が色を隠すのは、それが理由なのだろうか。」

私はいつものように薄茶色の髪をしている。
彼はそのことに疑問を抱いたのだろう。


「…ええ。お恥ずかしながら本当です。
この国ではあまり親しみのない色でして、一部の人間の間では…。そして、であれば特にその対象となってしまうのです。」

「まあ、ハーフでこの色を受け継ぐことはほぼあり得ない。王家がそれを許していないからね。だから気味悪がられてしまうのだろう。」

ブルレギアス様とロレンザ様は2人でどんどん話を進めていくが、私は話が見えない為、その腰を折らないようにと黙っていた。


「ハーフでこの色を受け継がせることができるのは、王家の人間、それも力のある者でしかありえない。未知の力を分け与えてしまうと言われているのです。制御できなければただただ危険な存在。だから我が王家は、子を殺しの対象とさせないためにそれを禁止にしているのです。

幸い、エミレィナ殿には魔力を感じませんから、無害と考えております。
それが彼女の予想外の力ということでしょう。」


そこまで言われてハッとする。
彼らはもう既に私が王家の血を受け継いでいることに気付いている。

それが分かった途端、一気に冷や汗が噴き出す。

彼らは私をどうしようとこんな機会を設けたのだろうか。そう思った。


「エミレィナ殿は“れ”の名を受け継いでいる。それはヴィサレンスにとって、王家にしか許されてはいないもの。そして、彼女はハーフであるというのにその色を持っている。彼女は前聖女であるレティシアーナの遺娘で間違い無いでしょう。」


今更嘘など通用しない。
そうなれば仕方がないと思ったようで、ブルレギアス様は続けた。

「ええ…。如何にも、エミリーは聖女レティシアーナの娘です。それもつい最近知ったことですが。」




「…ほう。今までそんなことにも気付かなかったとは、随分と甘い洞察力なのですね。」

ヴィサレンス国のロレンザ様は、ブルレギアス様を軽視する様に言葉を口にした。


「…私が母の存在に興味がなかっただけです。ブルレギアス様をそう言わないでいただきたく思います。」

ブルレギアスに対する態度があまりにも酷いことに腹が立った私は、目に多少の怒りを灯したが、しかし、それは、すぐ隣の彼に止められた。



「エミリー。構わないよ。
その通りだからね。
それよりも、今回お話したいことはディストネイルのことです。如何お考えか、お伺いしても宜しいでしょうか。」



彼はとても冷静な人。

そんな彼にヴィサレンスの皇子も攻撃のしがいのなさに気づき、先程までの空気が一変し、落ち着いたものとなった。


「今回のそもそもの原因はディストネイルだ。それは相応の対応をするしかないだろう。
私の国からはトロア、そして外軍と呼ばれる者達をお貸ししよう。私たちの国も、この20年で随分と舐められたみたいだからね。
見せしめには丁度いい。」





ヴィサレンス国は聖女の力で繁栄してきた国。前聖女であるレティシアーナが国に戻らず、そしてそのまま命を落としてしまったことで、周りの国はその地位を崩せないものかと伺っているのだ。



「それは頼もしい。戦場の猛獣とも呼ばれるトロア殿がいれば、随分な箔が付くでしょう。


それでは、こちらからは第二王子である弟のグリニエルと、ケインシュアを同行させましょう。もちろん魔物の討伐に出ている騎士隊を率いさせます。
そして、ディストネイルの亡命姫であるリリマナも連れて行かせよう。」

彼のその言葉に3人…いや、私までもが驚いた。


「まさか戦場の剣だけでなく才能の異端児まで…。随分とディストネイルを相手に豪華すぎやしないだろうか。」


「…実際、我が国では毒の被害が出ている上、それが父にも行われておりましたからね。仕方がないというものではないでしょうか。

それに姫がいれば被害も最小限に抑えられることでしょう。話を聞くに、王とその近しい者たちだけが目論んでいるようですから。
根だけをを摘み取り、出来る限り穏便に済ませようと思います。」

そう言って彼は笑っていた。


「くっ…はははっ。ブルレギアス殿は面白いことをお考えになられる。
……根だけでいいとは…。
まあ、それでいいのでしたらそれで構わない。ただ、恨みを買ったりしないだろうか。
戦いが戦いを呼ぶぐらいであれば皆殺しにするのが手っ取り早いぞ。」

「いえ。ディストネイルの民はひどい仕打ちを受けているとリリマナに聞きました。恨みを持つようなものはそもそも今回の闘いで摘み取りますから、心配はいらないでしょう。
それに、ディストネイルの科学は進歩している。私はその技術が欲しいのでね…。」

「科学に頼る…か。
民全てが魔法を使えないと苦労するのですね。」


ロレンザ様はまた嫌味を織り混ぜる。
あまりにも自然に口から出るので、驚いた。
こんなに刺々しい王太子がいるのだろうか。

他国へと来てそんな態度とは…

しかし、今回の件はジョルジュワーンの責任もあるため、こちらが強く出るわけにもいかない。

「ええ。まあ、民の暮らしを良くするためですからね。ですが、民が魔法を使わなくて助かることもありますよ。
そう…があった時、抵抗されることが無いですからね。」

「まぁ、確かにな。
それは羨ましいと思うさ。
犯罪人を野放しにしなくて済むからね…。」

ロレンザ様は目を瞑り、何かを考えているらしい。

ジョルジュワーンでは魔法を使える者が珍しく、かつ人の目に留まりやすい。
だからすぐにその者を魔法コントロールできるように教育してやれる。

そうして恩恵を受けたものはほぼ自動的に国に役立つために働いてくれるのだ。

しかし、話に聞くと、ヴィサレンスは違う。
殆どの者が魔法を使える為、学校に通うことのできない貧しい者がそのまま育ち、ならず者となって暴れてしてしまうのだ。

それが治安隊よりも強ければ捕まえることは難しくなっていく。
きっとそれを思い返しているのだろう。

自分で放った矢が自分目掛けて飛んで返ってきたように、ロレンザ様は動かなかった。






「…それでは、準備が整い次第、ディストネイルに向かわせましょう。外軍もこちらへと向かわせておりますから、明日明後日には出発できます。」


ロレンザ様は時間を少し置いてそう言った後、それと。と付け足した。





「エミレィナ殿はヴィサレンス国で貰い受ける。
此度の皇女誘拐の代償、そして今までエミレィナ殿の情報を共有しなかったことに対して、償ってもらなければなりませんからね。

それに、彼女はレティシアーナ様の娘。
ヴィサレンスで暮らすことが、彼女の本来あるべき姿です。」


異論は認めない。そう言うように彼が言い放つと、ブルレギアス様は眉を下げて私を見た後、頷いたのだ。



「……その話、お受けするしかないようです。しかし、エミリーをしっかり王家の血縁者と認め、相応の処遇であることを断言してもらわなければなりません。」


「…ああ。約束しよう。
彼女はヴィサレンス現国王の姪、そして皇女を救い出した救世主として国で讃える。
そして相応の相手と結婚させ、幸せにすると誓う。」


彼がそう言ったことで、ブルレギアス様は再度了承したことを伝えた。



私はというと、ジョルジュワーンの役に立つことが、ヴィサレンスへと赴くことならば、それを受け入れるしかないと思った。

それ以上に私の心を渦巻くのは、
突然ディストネイルに向かうこととなったグリニエル様のことだ。

私は彼の身が心配でならない。

隊長が一緒だと思っても、心を持たない魔物との戦いとは違う。人と争うことになるのだ。

そう思うと怖くて仕方がなかった。






そんな私の気持ちを他所に、
ディストネイルに向かう日は
すぐに訪れてしまった。
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