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ディストネイルへ出向2
しおりを挟む「グリニエル様…。
気をつけてくださいね。
私も一緒に行けたら良いのですが…。
お帰りをお待ちしております。」
ディストネイルへと向かう早朝。
私たちは移転魔法陣の中にいた。
グリニエル様、隊長、そしてトロア殿が先頭立ち、その後ろに二国の軍が並ぶのは圧巻だ。
移転するのに力を使うのは、ブルレギアス様ただ1人。彼がいれば国境までこの軍を送り出すことができるという。
こんなに沢山の人数を送り出すことのできる彼、ロレンザ様は、やはり一国の次期皇帝だと思った。
「私は送り出すことしかしてやれない。戻りは急ぐものでもないからな。3日なり5日なりで、ゆっくりと戻って来ればいいさ。」
行きはディストネイルに守りを固めさせないように、移転魔法で国境まで進み、それから攻め込むようだ。
そして鎮圧を終えてから戻ってくるという。
私は初めて見送る不安を知った。
殿下はこんな不安の中、いつも私を見送ってくれていたのだろうか。そう思うと胸が苦しくなった。
その関係も、彼らが戻ってきたら無くなってしまう。
私はヴィサレンス国の彼らと共にその国へ行くことが決まってしまったのだ。
「エミリー。戻ってきたら話がある。
心配しないで待っていてくれるね?」
「心配しないのは無理です。
私は殿下が心配でなりません。毎日祈り続けます。だから怪我をしないで下さいね。」
私は殿下とゆっくりと抱き合う。
今は周りの目など気にしてはいられなかった。ただ、彼が無事に帰ってきてくれることだけで一杯だった。
「隊長、殿下のこと、よろしくお願いします。」
「ああ。お守りは任せておけ。」
私はいつも通りの隊長に少し安心する。
すると、少し離れた向こうでも、同じようなことが繰り広げられていた。
「トロア。気をつけて行ってきてね。お守り作ったから剣に付けて頂戴。怪我をしないで…待っているから。」
そう言ってヴィサレンス国の皇女であるミレンネ様は、トロア殿とコツンと額をぶつけ合っていた。
それは私と殿下の兄妹愛とは違い、明らかにそういう雰囲気を醸し出しているのだ。
「向かうもの以外は陣から出ろ。一緒に転送させてしまうからな。」
ロレンザ様のその言葉に、私もミレンネ様も後ろへと下がる。
「っ殿下!」「トロア!」
「「いってらっしゃい!」」
私と彼女の見送りに、彼らの言葉が返ってくることはない。
ただ、行ってきますと言うように、優しく微笑んでくれたのは見えた。
それだけで、私はあと何日、彼の帰りを待たなければならないのだろうか。
そう思った。
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