脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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お出かけ③

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「フルーツサンドとコーヒーで良かったかい?」

「はい。苦いものと一緒だと、より甘さが際立つのが好きなのです。ヴィサレンスは比較的寒い地域ですから、国産の珈琲を味わえないのは少し残念ですが、やはり入れ方は違うと思いますので、飲んでみたかったのです。」


カフェに着き、彼と共に注文を終えてすぐ、席へと座ろうとしたのだが、席を離して設けられているテーブルは、どれも埋まっており、空いているのは1人席の小さなテーブルだけだった。

「…あ。椅子、借りましょうか。」


私は空いていた椅子を一つ借り、小さなテーブルに椅子を向かい合わせで置く。

彼が座ったのを見届けてから向かい合った席へと座ると、コツンと膝がぶつかってしまった。

思いの外、テーブルが小さく、その為、どうやっても膝がぶつかってしまうのだ。

「っ。」

何度か座り直してはみたものの、やはりどうしても膝がぶつかる。



「あ、すみません。」


「か…構わない、よ。」

私の膝と膝の間に彼の膝を置いてしまい、ピクッと彼が反応した。


テーブルに近づこうとすれば膝がぶつかり、遠ざかれば食べにくい。



「このまま食べましょうか。」

最終的に私の膝とグリニエル様の膝は、多少右外部分がぶつかる程度に収められ、私はそのまま食事にありついた。


「このフルーツサンド美味しいです。」

「そうか。
やはり噂のことだけはあるね。
エミリーの幸せそうな顔を見れて、私も嬉しいよ。」

「…ふふっ。」

こんなに近くで食事をとることなんてない。
そんな状況を不思議には思うのに、緊張はしなかった。




「食べたらもう少し歩いてみようか。
人混みを歩くことなど滅多にないことだからね。」

彼があまりにもワクワクしたようにいうので、私もその感情が伝染する。


「そうですね。街中を歩くことなどできませんから、今日は楽しみましょう。」


先程までの不安はどこに行ったのだろうか。
そう思うほどに私は彼との街歩きを楽しんでいた。



「…ジョルジュワーンに戻ったら、エミリーの扱いを変えなければならないからね。1週間ほどは自由にしてやれるかもしれないが、以前のように別宮で暮らすこととなるだろう。」


「…はい。」

それは致し方がない。
私の扱いはヴィサレンス王家への扱いに繋がるため、雑にすることができなくなったのだ。
もちろん、街にあるアパートを解約しなければならないし、別宮で暮らすということは、ルピエパールにも通えないということだ。

私の自由はまたなくなることだろう。


まあ、良かった点は、やはり彼のそばにいれることだろう。それ以外はない。
これからきっとヴィサレンスの血筋として婚約の話が上がるかもしれない。

それで好き人が見つかればいいが、ときめくことがなければ結婚するわけにもいかないだろう。

それは私の能力向上に繋がるのだから、安易に夫婦となるわけにはいかない。

彼のそばにいるには、彼の能力と渡り合えるほどの力がいる。

その条件に私はまだ当てはまらないのだ。
だからどうにかして好きになった相手と結ばれる必要があるのだ。



「出来る限りエミリーの思いは尊重してやりたいが、状況が状況だからね…。
あ、あの猫は一緒に連れてきて構わないからね。それは心配しなくていい。」


「ええ。お気遣いありがとうございます。」


自由がなくなる。しかし単身でヴィサレンスに渡るよりも何倍もいいと思うのだから、きっと問題はないだろう。そう思った。



「別宮で過ごすのですから、もし私に出来ることがあれば言ってくださいませ…。
夜も予定はありませんから…。」


私が別宮に入ればルピエパールのレィナは店から消える。そうなれば、グリニエル様が想い人と共に歩めるまで、彼の欲望を受け止めてあげたいと思ったのだ。

レィナの脚でいいのなら、私の脚でも構わない筈だろう。

「い…いいのかい?」  

「ええ。…私はグレン様と対等、なのですから…。
遠慮などなさらないでください。」


「っ…。」


彼は私がレィナだとまだ知らない。
できることなら知らせないままの方が良いのかもしれない。

ずっと彼に嘘をついていたなんて知られたら、私は嫌われてしまうかもしれない。
そんな怖さがあった。





するとガヤガヤとするのが聞こえる。

「何でしょう…。
急に前が進まなくなりましたね。」

「ああ。何だろうね。少しこのまま様子を見ようか?それとも抜けられる場所でも…っ」




グレン様はキョロキョロとし終えると、話していた言葉が途切れ、空を見たまま目を見開いていた。




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