脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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黒幕②

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コンコン。

「グリニエルです。失礼致します。」

「エミレィナで御座います。」


その扉を開けると、前と同じように短い廊下のようなものを過ぎたあと、窓際に佇むロレンザ様の姿を確認した。


「ロレンザ殿。今少し宜しいでしょうか。」

「ああ。もちろんだ。街はどうだった?
イザベラはをしていただろう。」

振り返ったロレンザ様は笑みを浮かべながらそう聞くので、私は彼が城内のことは把握していても、それより外のことは把握していないことを知った。

「…。」

「どうかしたのかい、グリニエル殿。」

「……イザベラはどうした。
一緒に戻らなかったのか?」

「…。」


ロレンザ様はイザベラが戻っていないことを少し不思議に思ったようで、彼女の所在を聞く。



「…あ、イザベラ様は街に降りてきたグリフォンにやられまして、今はミレンネの所に向かっているはずです。」

いつになってもグリニエル様が口を開かないことで、イザベラの行方は私が口にする。


「っ。な、なんだと…
イザベラが…?」


「はい。」

「あぁ…なんということだ…。
私も今すぐに向かおう。」



額に片手を当て、衝撃を受けつつも、ロレンザ様はイザベラを気にかけて動き出す。
そんな彼に私はコクンと頷いた。







「……待って頂きたい。ロレンザ殿…。」

「なんだグリニエル殿。話は後にしてくれ。
今は早くイザベラの元に向かわなければなるまい。」



焦るロレンザ様はグリニエル様にそう言う。

私も同様に、今呼び止める理由が分からずに困惑した。



「…ずっと不思議だったのです。」

「何がだ。」


「イザベラと想いが通じ合った貴方が、防壁を破られ、それを知ってか知らずかジョルジュワーンに滞在したこと。
そして帰国後も防壁にはさして触れず、それを張るのは二の次に、執務を優先していたこと。
そして先程、まだ覆いきらない防壁を入ってきたグリフォンが消された後、既にその防壁は完全に張られていた。」


「…。」

「つまり、貴方は自ら防壁を解き、そしてそれを意図的にそのままにした…。
貴方がやっていることは国民を危険に晒すことだったと、御自分で理解しているのだろうか。
先程のグリフォンが倒されてすぐに防壁が張られたのは、そのグリフォンが国に入ってくるのを待っていたということと思いましたが…国民に被害でも出ていればどうしていたのですか。」




「…。」


国民を大切にしているグリニエル様にとって、国民を危険に晒すことは許せないことなのだろう。それが他国だとしても、それは変わらないようだ。


「ロレンザ様…。本当なのですか?」

「はぁぁ…。エミレィナ。君も気付いていたのかい?」

「………いいえ。」


気付いていた。そう言うということはほぼ間違いなくロレンザ様の仕組んだことだということがはっきりとした。

それを聞いて私は彼が何を考えているのかを掴むことが出来ず、ただ、戦闘になってもいいように、体勢を整えた。


「…。グリニエル殿。さすがだよ。
半分は、正解だ。」


「…。」


「君には理解し難いか?
そうでもないはずだ。

……私の愛したイザベラは出自もわからない記憶喪失の女騎士。王族である私との婚姻…つまり、時期王妃となる為には貴族からの承諾も必要なんだよ。
それを良しとしない者も中にはいる。
だから彼女が強く、そして国民の為に戦う女性だというその姿を手っ取り早く見せたのさ。」

「…。」「…っ。」




「最初はそれだけでいいと思った。
しかし、イザベラは勇者の妹。
それが国民の目に映ればその資格が確立されるんだ。
ちょっとしたパフォーマンスだ。」


「結ばれたい相手のその地盤を固めたいのは理解できますが、国民を危険に晒しておいて、パフォーマンスとは…些か言葉が過ぎます。」


ロレンザ様は国民を守る立場の王族。
それなのに微塵も反省している色は見えない。


「まさかそれでイザベラが怪我をするとは思わなかったよ…。私の愛しいイザベラ…。
っ。ああ、そうだ。怪我の様子を見にいかなければならない…。」

ロレンザ様は前へと踏み出し、グリニエル様の横を通り過ぎようとする。



「…話はまだ終わっておりませんよ。」


グリニエル様の横を通り過ぎるのと同時、グリニエル様はロレンザ様の肩をがっしりと掴んだ。




「……………。私の肩を掴むとは…。
身を弁えるべきだと思わないか。」


「同盟国の王族同士…上も下もないのですから、弁えるものなどありませんね。」


一触即発のその雰囲気に、私は動くことが出来ず、ただ冷や汗を流しながらその様子を伺うだけだった。



「…。」


「…。」
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