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パーティ①
しおりを挟む「エミリー。どこに行ってた。」
パティー会場へと向かう途中。
たまたま居合わせたのは正装をした隊長だ。
髪をオールバックにかき上げ、特別な日特有の色気を醸している。
「え?ずっと部屋でヴィサレンス帝国の式典の流れを覚えていたのですが、何か用でもありましたか?」
パーティーの準備を終えた私は、ずっと部屋にいた。それなのに、廊下で偶々会った隊長は、まるで私を探していたかのように言うのだ。
「…なんだと?…まあ、今はいい。
もう時間がない。少し急ぐぞ。」
「え?あ、はい。」
まだ時間はあったと思うが、私の覚え間違いだろうか。私は、そう思いながらも、隊長に歩みを合わせた。
「それより、覚えられたのか?」
「あ、はい。なんとなくの流れはジョルジュワーンと同じみたいですし、ただ、ダンスの相手を選ばなければならないのは少し困っています。」
王族即位式典。それはヴィサレンスで成人が認められる16となった王族が行うもので、1番最近でいえばミレンネがやったはず。
名が読み上げられ、皇帝がそれを認めれば式典は終わる。…つまり、こちらへ来た時と同じことを貴族たちの前でもう1度行うということだろう。それと違うのは貴族が参加し、その人達と話す時間がとてもかかるということくらいで、その後には即位したばかりの王族が、ダンスをするのに会場内から1人を指名をしなければならないらしい。
ミレンネはロレンザ様と、セレイン様はレヴィとダンスを行ったという。婚約者のいる人とは踊れないというので、私はレヴィと踊るのが1番波風を立てずに済むのではないかと思っている。
本来、その儀は王族のみでひっそりと行って良いものだったのだが、成人を迎えた王族が少しでも早く恋できるようにと内容が変えられたらしい。
まあ、それはすでに恋をしている王族にとっては厄介なものなのだが、私のように恋すら知らない者としては有り難いのかもしれない。
そう思っていた。
「ああ…気になっている者を選ぶというやつか。まあ、ヴィサレンスの者を選ぶのが普通だろうが、こちらの者を選べば長く留めさせられるかも知れんからな。」
「…!」
隊長の言葉に、私はそこまで深く考えていなかったと驚く。
こちら側の者を選ぶのがベターかと思ったが、付き合いは簡潔にした方がいい。
気になっているならばこの国に残れば良い。などと言われてしまえばジョルジュワーンに帰ることすらできなくなってしまうのだ。
「え、ど、どうしたらいいのでしょうか。
婚約者がいる方は選べないと書いてありましたから、無難にレヴィかなと思っていたのですが…。」
「…はぁ……。そういうことか…。」
「え?」
「いや……お前は知らなくていい。
あの皇子は懲りていないようだ。
お前のその時の場の気持ちで選べばいいさ。
選ぶのはエミリー自身なのだから、思うように選べばいい。」
「…。」
てっきり、俺を選べばいいだろうとか言ってくれるかと思ったが、それとは違うらしい。
それに、隊長はなぜか喧嘩でも売られたかのように目が強張っていた。
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