脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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黒幕④

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目を覚ました私は、世話役として置かれたステファニーに朝だということを告げられ、驚いた。

今まで、魔力など使う機会がなかった私は、魔力切れという経験も初めてで、その疲れから、朝まで眠っていたらしい。


夜、食事をとらなかった私を不思議に思い、何度かステファニーが私に声を掛けたのだが、一向に起きず、慌ててグリニエル様に報告。そこで心配いらないと教えられてやっと息ができたようだったと聞かされた。

戻ってからステファニーに声をかけると言っていたのに、すっかり眠りこけてしまった私の落ち度だ。その点はすごく反省した。


そして私は今、ステファニーに湯あみとマッサージを施してもらい、軽食を済ませてロレンザ様の所へと向かっている。


何やら話があるようなので、急ぎはしたかったが、昨日のままの姿で会うわけにもいかないため、少し時間をずらしてもらって会うことととなった。






コンコン。

「エミレィナでございます。」

「ああ。入って構わないよ。」




キィ…。
私はその扉を開け、昨日も入ったその部屋を進むと、執務をこなしている最中の彼がいた。





「如何様でお呼びでしょうか。
ロレンザ様。」


私は念のため、その書類の内容が目に入らない場所で声をかける。


「ああ。来てもらってすまない。
昨日はよく眠れたかい?」


「…はい。ステファニーに心配をかけてしまうほどに熟睡していたみたいです。」

「君がもう一体のグリフォンを仕留めたのだとイザベラから聞いたよ。すまなかったね、危ないことに巻き込んだ。」


「いえ…。イザベラ様のお怪我の具合はどうですか。」

「大丈夫だよ。傷は残るが、本人も大丈夫だと、そう言っている。」

「…そうですか。」


昨日、国に現れたグリフォンを止めたのがイザベラと隊長だった。
それはロレンザ様の仕組んだもので、イザベラはわざと腕に怪我を負いながら、グリフォンだけでなく、ロレンザ様をも止める事に成功したのだ。


「それでだ。
昨日の一件で、君の存在が公となってしまった。」

「…?」

「こちらへ滞在するのは、君がヴィサレンスの王族へと正式に加わり、この国を知ってもらう為だった。それが終わればすぐにジョルジュワーンへと帰国させ、貴族達へのお披露目はせず、名ばかりの知られた王族として処理する。…そうグリニエル殿に話していたんだ…。
だが…。」


「誰かが私への謁見を申し立てたという所でしょうか?」





「……間違ってはいない。
しかし、それは数人の話ではないんだ。」


「…。そ、そうなのですね。」


正直甘くみていた。
昨日私がグリフォンと対峙したのはほんの一瞬。それを見ていた者はごく僅かだと思っていたのだ。


「ヴィサレンスの王家の髪色は珍しいんだ。そんな髪色の女性が空を舞い、グリフォンを蹴り飛ばしたのだ。それもミレンネやセレインとは違う、若い女性王族…。
王族との繋がりを求めている貴族達にしてみれば、我先に動くべき理由に申し分ないだろう。」

「…。」


ミレンネも以前言っていた。
王族は次から次へと縁談が舞い込む。
それは婚約者が正式に決まるまで行われ、やっとミレンネは解放されたばかりだ。

自身ではなくその家柄を求めての結婚。
それはヴィサレンスの王家が許すはずのないことで、1度顔合わせした後は本人達が惹かれ合うかで付き合いが分かれる。

今のところ婚約者がいないのはレヴィとセレイン。その2人とも関係が紡ぎ合えなかった貴族が、次に私に狙いを定めているというのだろう。


「…つまり私は一体何をすれば宜しいのですか?」


このままジョルジュワーンに帰国するのか、それとも家々に文書を書く手伝いをしなければならないのか、そう思ってロレンザ様に確認をした。


「…悪いがパーティーに参加して欲しいのだ。」




「パ、パーティーですか?」

「ああ。君の王族即位式典という名目だ。
参加者は、参加したい者のみ。
君と話す場が設けられる。
だからそこで、もし気にいるものがいれば君の力ともなるだろう。」


「…!」

それは、願ってもないチャンスなのかもしれない。
恋をすれば力は安定する。
その人と想い合えれば更に力は強くなる。
そうすればグリニエル様のお役に立つことができるのではないだろうか。
そう思えば私の返答は一つだけだ。


「…その場に参加する…それだけで構わないのですよね?」


「ああ。」



「…やらせて頂きます。
自分の失態ですもの…自身で拭えるならそうします。」


「…そう言ってもらえてこちらも助かるよ。
急すぎるが、パーティーは今夜だ。
他に予定を組める日がなかった。
至急準備に取り掛かってくれ。」




「…はい。」


私はそう返事をしてから元来た道を戻った。










「王族即位式典は名目としてだけなんだがな… 。
本当のことは当日気付くか、はたまたそのまま気付かずにいるか…。
あまり勘は良くないみたいだが、念のため慎重に行うか…」






その部屋に残った彼の独り言は、私の耳に入ることもなかった。

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