脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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パーティ⑤グリニエル目線

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随分と目を輝かせた2人が去った後、私の元に来たのはロレンザ様だった。


「いやぁ。まさかこの場でグリニエル殿を指名するとは少々考えが至らなかったな。」


「…ロレンザ殿…。」


私が多少眉間にしわを寄せたことなど気にもしない彼の側にはレヴィ殿が遅れてやってきた。


「ロレンザ従兄さん。
さっきのは何だったのです。
エミリーはピアスを付けていないどころか、指名をする時でさえ、とても不安に押し潰されそうな顔をしておりましたが、まさか何か…。」


「ふん…普段あまり喋らないくせに、やはりエミレィナのこととなると饒舌になるな。」


「っ。」

「…どういう意味でしょうか。」



「お前がエミレィナを好いていることなど当に知っているということだ。他にどんな意味があるというのだ。」


会場の中央から少しは外れた場所。
周りが賑やかなお陰で不穏な空気はバレてはいないが、ここで話すには少々、場が悪い。


「グリニエル。皇帝がお呼びだ。」

「ケイン…!」

「それから、お二人も…。」

「…。」「…。」


私達の話している最中、割って入って来たのはケインシュアだ。
皇帝が呼んでいる。その言葉に3人とも従った。










「お呼びでしょうか。皇帝陛下。」

「ああ。4人とも揃ったか。」


案内されたその場所は、王座のあったその場所から逸れた控え室の様なところだった。

私達の雰囲気を汲みとった皇帝が私達を別室へと呼んだのかもしれない。そう思った。


「4人ともご苦労だった。貴族面々にエミレィナの存在が割れたときにはどうしたものかとも思ったが、無事に遂行できて感謝する。」


皇帝はエミリーの存在が公となった原因を知らないのだろうか。そう思ったが、それはすぐに払拭された。


「ロレンザよ。我がなにも知らないと思うか?…」

「…っ⁈」

「其方が無茶をしたせいで、エミレィナは随分と尻拭いをさせられた。同族として、あの子の幸せを考えてやらんでどうする。」

皇帝の指摘に、ロレンザ様は苦い顔をする。



「し、しかし、エミレィナは聖女と勇者の子。最悪の双子のようなこととなれば…」

「ロレンザよ。エミレィナには魔力などない。それが彼女の力の特徴。

何日か過ごしてお前も分かっておろう。
エミレィナは闇に染まるようなことがないほどに純粋だということ。

それに風の精霊に気に入られたとレヴィから報告を受けておる。
闇の加護であれば注意が要ったが、風であればあの子の追い風となり得るのだ。

あの子のそばにはジョルジュワーンの異端児も勇者もついておる。
我らが彼女を縛りつける必要はない。
分かるな?」


「……っ…はい。」



「それに、お前の推測は初めから違っておる。
しっかりと気持ちを見極められなければ、後を継いだところで足元を救われかねん。」

「…。」

「エミレィナもレヴィも互いに家族以上の気持ちは持ち合わせてはおらぬ。2人を擦り合わせようとしたところで、力にはならない。」


「え?」


ロレンザ様はレヴィがエミリーを好いているのだと思っていたらしい。私も同様にそう思っており、2人が共に過ごしているのを見た時は胸が張り裂けそうだった。

唯一、彼女が好いているのは自分だと分かった時は言い表せないほど舞い上がり、結果としてロレンザ殿の作戦を助ける形となってしまった点は反省しなければならない。



「私はエミリーに恋心を抱いたことはありません。私には想いを寄せている方がおりますから…。」


「なっ…。それは誰だ。
どうして婚約しない⁈」


「…私は、その方に嫌われておりますから…。名前を出すのはちょっと…。
その方が楽しそうに仕事をする姿を見れるだけで十分です。」

「そんなこと…。っ。」


ロレンザ様が戸惑うのも仕方がないだろう。
想いが通じれば力が増幅する種族なのだから、モタモタする意味が分からないといった顔をしている。

しかし、嫌われているとなれば話は別だ。
嫌われたままでは力にも影響などしない。
思い合うことが重要なのだ。





「お前がエミレィナを手放したくないとなれば、ジョルジュワーンものようだ。」

「…え?…同じ?」


意味が分からないというように眉を顰めるロレンザ殿に口を開いたのはケインシュアだ。


「…イザベラは俺の妹。
そんな姑息な手段ばかりをとる男の元に嫁がせようなど思わないのでな。
イザベラの婚約の話は白紙にしたいと思っている。」

「っ!
そ、それはやめてくれ!
わ、私にはイザベラが必要なんだ…
彼女がいなければ生きる意味も分からなくなってしまう!」


ロレンザ殿は後ろを振り返り、ケインシュアを見て声を荒げる。

「其方はジョルジュワーンの王子に同じことをしようとしていたのだ。
やっと事の重大さに気付けたようだの…。」


「…っ。はい。」




「はぁ……。愚息が申し訳ないことをした。」



「…いえ。
国や家族を思ってのことでしょうから…。
しかし、私もエミリーを手放す気は微塵もありませんで…。」

「ははっ。それで構わん。
容易く手放せるような輩の元へなど嫁がせる気など無かったからな。」


皇帝は豪快に笑ってくれる。
それを見て、一先ずエミリーを私の元へと置くのに、障害をひとつ解決することができたと思った。


「あんなに魔力石を輝かせるほど、貴殿の想いは大きいのだと皆に知れ渡ったことだろう。エミレィナはジョルジュワーンの王子に好かれている。そう噂が回るのはすぐだ。」


「お恥ずかしい限りです。
しかし、牽制できたのでしたら良かった。
誰にも譲りませんので、縁談が出てもお断りいただけると幸いでございます。」


「ああ。そう手配しよう。」





私がホッと安堵する頃、話は終わりだとしてそのまま4人、部屋から出る。






「…しかし、レヴィ。本当にお前はエミレィナを何とも思っていなかったのか?」

そう問いかけるのは今までずっと勘違いをしていたロレンザ殿だ。エミリーが私を好いていても、レヴィがエミリーを想っていればくっ付けてしまおうと考えていたのだろう。


「…エミリーが問題なわけではありません。
エミリーは素敵な女性ですから……っ。」


いつものように冷静に喋っていたはずの男は、話の途中で固まる。


「どうした。レヴィ?」

「…っ。」


立ち止まった彼は何も喋らない。
すると、聞いたことのある声が響いた。

「…申し訳ありません。
立ち聞きするつもりは無かったのです。
…仕事がありますので失礼致します。」



パーティを抜け出したであろう令嬢…しかし、見覚えのあるその顔は、エミリーに付いていたお世話係のステファニーだ。


するとレヴィ殿が足元からガックリと崩れた。


「レヴィ殿⁈」



私が彼の腕を咄嗟に掴むと、彼は何やらショックを受けたようにどんよりとしていた。


「…レヴィ殿が好いているのはステファニー嬢というところだな。」

その答えを1番早く導き出したのは頭の切れるケインシュアだ。


「なっ…レヴィ。
お前、ステファニーが好きだったのか⁈」

「…。」


レヴィ殿は表情が分からないように両手で顔を覆っており、どんな顔でいるかが全く分からない。

現に、ロレンザ殿に聞かれても何も答えようとはしなかった。






そして、ひとつ気がかりがあり、それを口にした。


「どこから聞かれていたかは分かりませんが、レヴィ殿がエミリーを素敵な女性だと表現したところを聞かれているかもしれませんね…。」


それはつい先程の会話。
それを最初から聞かれていればいいが、途中からであればただ勘違いされてしまったこととなる。

それを口にすると、レヴィ殿は顔を青く染めて冷や汗を流した。


「…っ!ど、どうすれば…
私はこれ以上彼女に嫌われたらどうしたらいいのか分からない…。」


「早く誤解を解くのが1番だ。
さあ、行け!」


私とケインシュアが少し考えているうちに、ロレンザ殿はあまりにも正面的なアドバイスを投げかける。


それに続いてレヴィ殿は、いつもは頭が回るというのに、そのアドバイスを受け入れて、走って行ってしまったのだが、きっと上手くはいかなかったことだろうと予想した私とケインの考えは見事に的中したことを後々知った。


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