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恋じゃない②
しおりを挟む「…わ、私の想い人の…名は言えません…。
その方とは身分が違いますし、彼には想い人がおりますから、私の想いなど伝えるべきではないのです。
ですから、関係を崩したくないという思いもあって、その気持ちは恋ではないと思い込んでいるということもあるかと思うのです…。」
「まぁ…。」
「ステファニー…。」
「そうだったのね…。」
ステファニーの話を聞いた私たちは、彼女がそんな気持ちを抱いているなど思ってもおらず、切ない気持ちになったのだ。
「全然知らなかったわ。
いつからその方を思っているの?」
「かれこれ3年程でしょうか…。
その方と思い合えなくても、彼が幸せならそれでいいと思うのです。
だから私は結婚よりも仕事をしていたいのです…。」
「あ、だから…。」
だから、伯爵に心配されていても結婚しないのだろう。いや、その人と意外したくないのかもしれない。
「まあ、私のことはさて置き、その人の邪魔になるくらいなら。と、知らず知らずのうちに自分の気持ちを抑えているのかもしれませんよ。ということが言いたいのです。」
「んー、なるほどね。」
「でも、確かに、グリニエル様には既に想い人がいるらしいのよね…。」
「え!」
「でもそれは…エ…むぐっ」
「お待ちなさいミレンネ!」
ミレンネが何かを話そうとすると、すぐさま着替えの終えたセレイン従姉様に口を押さえつけられた。
「それは本人からじゃないと意味がないでしょう!」
「でも誤解したままではいつまでも…」
「エミリーが動けば状況が変わりますっ。
グリニエル様の思いは告げずに気付かせるのがベターです!」
「……うぅぅ。も、もどかしいです。」
2人だけでコソコソと話していた2人は、私に向き合うと、口を開いた。
「エミリーはグリニエル様に想い人がいると分った時、ヤキモチは妬かなかったのですか?」
「えっと…。特には…。
ただ、あんなに完璧だというのに、なかなか手強い方を思っていらっしゃるんだなと思いました。」
「そ、そうね。わたくしもそう思います。
ちなみに、それが誰かということは聞いていませんの?」
「聞いていませんし聞けません…。」
「それはどうして?怖いからじゃないの?」
「え?」
「自分だけのグリニエル様じゃなくなるような気がして踏み込めない…とか。」
「っ…!」
確かにそうだ。私はグリニエル様の婚約者選定パーティーで、彼が私だけを愛してくれる義兄ではないと思って寂しくなったことを思い出した。
「…。」
「それじゃ、グリニエル様にお尋ねしてみれば宜しいんじゃないかしら。
苦しさもなく、聞いて、答えに何も思わなければ恋じゃないかもしれないわ。
でも、聞けなかったり、受け入れられなければ恋だと思ってもいいと思うわよ。」
「…っ。なんでそんなにグリニエル様を推すのですか…。男性なら他にも…。」
「今のエミリーにとって、グリニエル様以上に特別に想っている方が見受けられないからよ。
エミリーにとって、グリニエル様は命に変えても守りたい人。そして生涯付き従いたい人となれば、恋という答えに至ってもおかしくはないでしょう。
本当にそれが恋ならば、エミリーの力にも変化が生まれる。だから恋にしろ恋じゃないにしろ、区切りを付けられたらいいかと思って聞いているのよ。
実らなくとも、恋というものが分かれば次に繋げることもできるでしょう?」
「それは…確かに…。」
「…それじゃ、明日中に聞いてみたらいいじゃない。期限はあった方がいいでしょ?」
「え?」
「そうね。エミリー1人じゃ、恋なんて分からないでしょうし。」
「え?」
「僭越ながら、私も含めて、判断させていただきます。」
「ええっ?」
「善は急げよ!」
「~~っ…。わ、分かりました。
でも、ひとつお聞きしたいのですが…。」
チラリとセレイン従姉様に目を向けると、何かしら?と言うとように首を傾げていた。
「その…。セレイン従姉様はグリニエル様のことを好いていた訳ではないのですか?」
ここにきてすぐ、セレイン従姉様はグリニエル様にべったりで、私はずっと、セレイン従姉様はグリニエル様を好きなんだと思っていたのだ。
「ある訳ないでしょ。
私にはもう、心に決めた人がいるの。
その人のことを知りたくて近づいたのだけれど、今回は情報すら得られなかったわ。」
「えっと…。聞きたいことが増えてしまったのですが、宜しいですか…?」
「ええ。構わないわ。」
「心に決めた人の情報とはどういうことでしょう…。」
「あー…それじゃ、少しだけ話してあげる。でも
その前に、ミレンネも着替え終えたことだし、エミリーも着替えちゃいなさい。
……ステファニー。」
「承知いたしました。」
私はセレイン従姉様の話を聞く前に、いつも通りのネグリジェへと着替えさせられ、そのままメイクも落とされ、スキンケアまでを施された。
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