69 / 104
伝わらない①
しおりを挟む「それで?、…結局聞くことができず?」
「意識した途端、グリニエル様を避けていらっしゃると?」
「エミレィナ様。心中お察ししますが、あまりにも不甲斐なさすぎます。」
「ゔっ…。」
「あれからもう2日よ?明日にはジョルジュワーンに戻るというのに、大丈夫なの?」
「…。」
そう。パーティーの夜…つまり、彼女達に発破を掛けられてから、既に2日目。
今日は中庭でセレイン従姉様主催のお茶会が開かれている。
「自分の気持ちに気付けたところまでは良かったのだけれどねぇ…。」
「私、そんなにグリニエル様が好きだと全面に出ていたのかと思うと余計に恥ずかしくなってしまったの…。
このままではグリニエル様のお側にいることでさえ、迷惑になってしまうかもしれないわ…!」
「その心配は要らないと思いますわよ…?」
「でも…。」
彼には好いている人がいるというのに、私が彼を想っていたら、きっと気を負わせてしまう。そんなギクシャクしていては近くにいないで欲しいなんて言われたらと思うと辛い。
彼のそばにいられなくなることは嫌なのだ。
「いっそのことオープンに話しちゃえばいいじゃない。
私はグリニエル様が好きです。
嫌がられてもそばに居たいのですーって。」
「そ、そんな我儘なこと言えないわよ…。」
「……でもね、エミリー。
想いは伝えなければ変化しないのよ。
告げれば彼の見方は必ず変わる。
意識してもらえるって大切なことなの。」
「………意識…?」
「エミリーだって、自覚して気持ちが変化したわけでしょ。それと同じで、想っているだけでは何も変わらないのよ。」
「「…っ。」」
セレイン従姉様の言葉に頷くのはミレンネだけで、言葉が刺のように心に刺さったのは、私だけでなく、お茶を淹れてくれるステファニーもだった。
「で、では、どうしたらいいのでしょう…」
私はカップの水面に映る、自分の情けない顔を見る。
「んー、私だったら事あるごとに
〇〇様のそういうところが格好いいです。とか。〇〇様のそういうところ好きです。とか言って、遠回しに好いていることを伝えるわ。」
先にアドバイスをくれたのはミレンネ。
しかし、そのアドバイスにすぐさま反応したのは私ではなく、セレイン従姉様だった。
「…ミレンネ。意外とあざといのね。」
「え?そうでしょうか?
あとは視線でアピールしたらいいと思います。
目が合った時に嬉しそうに微笑むだけで、意外と効くものですから。」
にまーっと笑う彼女は、きっと実践してそれを推しているのだろう。
「…それでトロアは落とされたのね。」
「しーっ。エミリー。声が大きいわよ。」
まだ聖女式典を行っていない為、トロアとミレンネの仲を知る者はあまりいない。
しかしそれは本人だけが思っている事で、準備が進められているのだから聞かれてまずいことではない。
「わたくしでしたら、とりあえず抱きついてキスしますわ。きっとすぐに意識して下さるもの。」
「それは…」
参考にならない。
セレイン従姉様は今まで想い人を探し続けてやっとランドリフを見つけることができたのだ。
その気持ちは溢れんばかり。
そういう行動をしたいと思うのも分かるが、あまりにも積極的すぎる。
「従姉様…それでは引かれてしまいますわよ。」
「えっ…えぇ?そうなの?」
ミレンネが止めてくれたことで、留まってくれればいいが…と、そう思った。
「なかなか、自分から動くことは難しいですよね。」
「…ええ…。
ステファニーならどうする?」
そばで聞いていたステファニーは、私のカップに、また美味しい紅茶を注いでくれた。
「…そうですね…。
これは案ですが、グリニエル様の行動に、しっかり応えるだけで、違うと思います。」
「行動に…応える?」
「はい。見たところ、グリニエル様からのスキンシップは多めです。
ですから、それに合わせて、今までと行動を変えたら良いのではないでしょうか。」
「……今までスルーしてきたのに、急に態度が変わったら戸惑うんじゃないかしら。」
「それでいいではありませんか。
少し意識してもらえる。
それだけで良いと思うのですよね?
もしその先、もっと意識して貰いたいとなれば、あざとさも積極性も取り入れれば宜しいではありませんか。」
「…んー……そうね。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる