脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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伝わらない②

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「楽しんでいるところわるいが、今少しいいかな。」

「っ。」

「あら、お兄様。」



急に背後から声がしたので、私は一瞬驚いたが、そこに現れたのはロレンザ様だった。

その後ろからはグリニエル様、そしてレヴィがいる。



「話があったからこちらに寄ってみたんだが、なんだか楽しそうな声が聞こえてね。」

トントンと肩を叩かれた瞬間、何故か悪寒が走り、またこの人は何か企んでいるのではないかと思った。

「私にしか聞こえていないから安心しろ…
応援…してるぞ。」



「…。」

ありがたい…ような、あまり嬉しくないような、そんな気持ちだ。

グリニエル様には聞こえていなくとも、この人には聞かれていた。そう思うと、弱みを握られたように顔が引きつった。


「ロレンザ殿。
私のエミリーにあまり触れないで頂きたい。



「そうですわよ、お兄様。
女性には気安く触れてはなりませんわ。
お義姉様に言い付けますわよ。」

「そ、それは困るな…。
すまなかったね、エミレィナ。」

「…いえ。大丈夫です。
…それより、皆さんお揃いでどうしたのですか。」


いつもながらのグリニエル様のシスコンはさて置き、ミレンネの一声に助けてもらった私は、ロレンザ様に用件を聞いた。



「ああ。先程まで、グリニエル殿と一緒にセレインの外交の話を進めていたんだ。
初めての外交は必ず3柱が行かなければならないからな。本来ならセレインは行くことができないのだが、レヴィの補佐として向かってもらうこととなった。」

「まあ!宜しいのですの?」


「ああ。レヴィであれば何かあっても動くことができるし、丁度いいだろう。
それで、何人も従者は連れて行くこともできないから、付き人としてステファニーに同乗してもらう。彼女であれば上手く立ち回りが出来るだろう。」


「…かしこまりました。」


つまり、セレイン様がランドリフに接触するためには、貿易の陰となる必要がある。というのだろう。

相手がランドリフだという確証はまだないのだから、慎重に事を運ぶらしい。


「私とエミリーの帰国に合わせることは出来そうにないんだ。だから、エミリーの移住を名目としたパーティー後に、貿易として来てもらうこととなるだろう。
それでもいいかな?」

「ええ。それまでは自分磨きに勤しみます。
一目で私を気に入ってもらえるように、気は緩めませんわ。」


セレイン従姉様は随分と気合が入っており、私は少し心配だ。




「…私はセレインが暴走しないように、しっかりと見張らせてもらうつもりです。
…それに、仮に怪しい奴だったら、私はセレインの婚姻に賛同しないつもりでもある…。」


「っまあ!レヴィったら。
やっと姉が結婚を目前と構えているというのに、何なのかしら。少しは自分の心配でもするべきだと思うわよ。」

「っ…わ、私は別に…。」


レヴィはなんだかんだセレイン従姉様のことを心配しているようで、きっと自ら志願したのだろう。

そんな彼がもしかしたら反対するかもと口にすると、セレイン様は次から次へとレヴィに対して毒を吐いた。




「お母様に聞いたわよ。
またお見合いを断ったんでしょう。
1度でも会ってみれば惹かれるかもしれないというのに、いつまでもしゃんとしないんだから!
しかもその理由が好いている人がいるから。と言ったそうじゃない。」


「っ…。」


「それが事実ならね、それも問題よ!
好いている人に想いを告げずにそうやって漂っているだけの姿がとても腹立たしいのよ!
想いは告げなければ伝わらないの!
あなたは1度でもその女性と向き合ったことがあるの?」

「っ…。」


「乙女の心は移り変わる物なのよ!
想いも告げられないような人に、心を変えることも、心をつなぎとめておけることも、あるわけがないでしょう!」


「…っ。」


「モタモタしているうちに、その子が結婚でもしたら、もう想いを告げることもできなくなってしまうのよ。
考える前に行動することも大切なの!
あなたに足りないのは度胸と行動よ!」


「…。」


その毒は、レヴィには随分と効いたようで、フラフラとなりながら下を向いてしまった。


「お、落ち着け、セレイン。
レヴィにも色々と上手くいかないところがあってだな…。」



ロレンザ様が慌てて止めに入ったが、セレイン様はまだ止まらない。


「レヴィ。いい加減になさい。
ヴィサレンスの名を持つ男として、情けないでしょう。
想いは告げる。
伝わらなかったら振り向かせる。
諦められないのなら、それとなりの行動をなさい!
あなたができないと言うのであれば、私が責任を持ってその方に伝えてあげましょうか?」

「…。」


フラフラとしていた彼は急にピタリと動かなくなると、視線を上げてセレイン様を見た。

「勝手なことばかり言うな。
私にもプライドがある。
…告げられるくらいなら自分で告げる。」



そう言って、立ち上がって腕組みしているセレイン従姉様の横を過ぎ去ると、そのままステファニーの手を取ってその場を後にした。





「はぁー…。
本当に手が焼けるわね。」

「…まあ、あそこまですれば上手くいくんじゃないか?」

「え?どういうこと?」


状況を飲み込めていないのは私だけではない。ミレンネもその通りのようで、彼女はセレイン従姉様に聞いていた。




「ミレンネもエミリーも気付かなかったのね…。この間ステファニーが言ってたでしょ。手の届かない相手だって。
それを聞いて何となくそうじゃないかと思ったのよ。確信したのは昨日だけど、あの様子ならきっと大丈夫だと思うわ。」


「嫌な立ち回りをさせたな。」

「そんなことないですわ。
これでやっとレヴィに腹を立てなくて済みそうですもの。
むしろ感謝したいくらいです。」



その会話はロレンザ様とセレイン従姉様のもの。きっと2人は手を組んでレヴィにけしかけたのだろう。



「これでみんな婚約者ができそうですね。
私も、みなさんと次に会う時は、改めて私の婚約者を紹介することができるから、楽しみにしていてくれると嬉しいな。」

「……え…?」


「私のだよ。
ずっと言えなかったそれを公にできるんだ。エミリーも楽しみだろう?」


「…っ。」


遅かった…のだろうか。

いや、最初から私の思いは意味のなかったことに過ぎなかったのかもしれない。


先程のセレイン様の叱責で、私もやっと踏ん切りがついたような気がしていたが、一歩遅かった。



彼はいつの間にか、知らぬ女性との婚約を決めていたのだ。

そう思うとそこに留まることができなかった。


「あ……そ、そうでした。
明日の帰国に向けて荷物を纏めなければなりません。申し訳ありませんが、これで失礼させていただきます…っ。」




私は慌ててその場から立ち去ると、流石のグリニエル様もポカンとしていた。




「照れていた…んだよな?」

「んー…どうでしょう…。」


苦笑いのミレンネは眉を下げているだけで、ロレンザは少しばかりややこしくなっているな。と言いながらもそれが楽しいようで、微笑していた。


そんな中で声を上げたのはセレインだ。





「グリニエル様。わたくしからひとつ宜しいでしょうか。」


「え?ああ。構わない。」



「僭越ながら、グリニエル様は言葉が足りないように思います。いえ、言葉が周りくどいのです。」


「え?」



「…エミリーにはわたくしの方からきちんと話を聞くように言っておきますから、国に戻ったら時間を作るといいかと思います。
くれぐれも、丁寧に、分かりやすい説明でお願い致しますわ。」



「あ…わ、分かった。」



そのまま、グリニエルとエミレィナは、話す時間をとることはなく、そのまま帰国の時を迎えた。
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