脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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伝わらない③

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「エミリー。いつでも来ていいのだからね。」

「………ありがとう、ミレンネ…。」

チラリと殿下の方を見ると、ロレンザ殿と話している。


そんな私にコソッと告げるように、セレイン様が腰を屈めた。

「エミリー。良いわね。
グリニエル様とちゃんと話しなさい。
後悔なんてヴィサレンスの名が廃るわよ!」


「…っふふ…。ええ。従姉様もお元気で。
落ち着いたらジョルジュワーンを案内させてくださいね。」


私が帰国後、正式にヴィサレンスからの訪問者だと公言されるまで1週間。
その後にセレイン様とレヴィが貿易としてジョルジュワーンに来るのだ。
それまでに引き継ぎを終えておかなければならない。

そしてセレイン様とランドリフの仲が上手く結ぶ様に、私も力を尽くそう。

そう思った。


「エミリー。もう少し寄れ。」

グイッと隊長に肩を寄せられた私は、数歩、隊長の方に寄り、彼を見上げた。


「隊長…。イザベラ様とは話さなくてもいいのですか?」


「必要なことはもう全部話したさ…。
あいつが幸せなら俺は何も言うことはない…。
もし、あの変態から逃げたくなったら、俺が命に変えてでも守ってやる。」


「…。」


あの変態。そう発言しているのに、誰のことか見当がつく辺り、私もそう思っているのだろうか。





「これからより一層強固たる同盟を期待しましょう。」

「ああ。宜しく頼みます。
ロレンザ殿もお元気で。」




ロレンザ様とグリニエル様が手を交わすと、そのままゆっくりと光に包まれた。




「っエミリー!お手紙書くからね!
これでさようならじゃないのだから!」

「ええ。ミレンネ。
私も書くわ。離れていても、繋がりは切れたりしないもの。」


眉を下げ、寂しそうに叫ぶ彼女に、私は微笑みながらそう言い終えると、見慣れた景色へと変わった。







「…お帰り。」


「ブルレギアス様…。
…ただ今戻りました。」


ヴィサレンスへと移動する際に使われた場所。
そこにはブルレギアス様がいた。

ロレンザ様と連絡を取り合い、ここに転送されることが事前に伝えられていたのだろう。
そこにはブルレギアス様以外の姿はなく、
私はやっとそこで、容姿魔法を掛け直した。



「あと1週間で、その姿も見納めだね。」

「…はい。」


あと1週間。
その後はヴィサレンスの名を正式に持った者として振る舞わなければならない。



「疲れただろうから、1週間は自由にしていていい。君の後釜はまだいないが、本来の目的は果たし終えているのだから、とりあえず3人で十分だ。
その日までは自由に過ごして構わないが、必ず期日にはここに戻るんだよ。いいね?」

「……はい。お心遣いに感謝いたします。」



本来の目的。
それは彼らが潜入騎士を求めた理由だろう。

彼らが潜入騎士を置いたのは、そもそも私を第一王子の妃にすることが何かしらの思惑が絡んでいるのではないかという考えからで、国王陛下が前聖女のレティシアーナの娘である私を、守りたいからという理由で王族として置いておきたかったということが分かった今、特に潜入騎士に拘る必要はないのだろう。

しかし、完璧に解散とならないあたり、やはり彼は用心深いといえる。

これから先、何かが起こった際には、潜入騎士の仕事もあるかもしれない。
だから、私がその仕事から降りても、潜入騎士はその仕事に留まることとなるだろう。



「それでは、失礼致します。」


「あっ、エミリー!話が…っ」

丁寧に腰を折った私がその場を去ろうとするのを止めるのはグリニエル様だ。

あれからグリニエル様とは話すこともなく、開けた耳の穴はまだ透明な針を刺しているからか、かろうじて塞がってはいない。




彼の結婚が決まっても、私の魔力石は彼の襟元に飾られる。しかし、ひとつしかない私の魔力石は私の耳に飾られることはないのだが、いつかまた自分の魔力石を作ったとき、また穴を開けてもらう手間をかけさせたくはないとして、こうやっているのだ。


彼から、男除けとして借りている魔力石は首にかけたまま…。早く返さなければとは思っているものの、その温かさを離したくないと思ってしまい、まだ返せずにいる。

まあ、あと1週間後には気持ちを整理して、笑顔でこれを返そうと思ってはいるところだ。



「グリニエル…。
お前は仕事がたんまりと溜まっているぞ。
それに、婚姻の話をしたいとロティスタディアから王族とその護衛が来ている。
すぐに応接室へと向かってくれ。」


「っ…わ、分かりました。」


「…!」


ロティスタディアの王族。
それは3人いる。

1番上の長子。ロティスタディアの次期王女と言われているリゼロッテ様。

その二つ下でグリニエル様とは同じ年である王子、ゾゼダイル様。

最後に、ロティスタディアの宝石と謳われている麗しきティトリリー。


親はなく、まだ若いながらにして貿易国の繁栄を止めないその指揮は、各国からは一目置かれている。

きっと、リゼロッテ様か、ティトリリー様のどちらかがグリニエル様と婚姻を結ぶ方なのだろう。

私の勘で言えばティトリリー様が有力。


リゼロッテ様は次期王女。
国を出ることはまずあり得ないだろう。
第二王子であるグリニエル様に話が来るのは頷けるが、グリニエル様はジョルジュワーンの異端児。きっとその才能を外に出そうなどと、ブルレギアス様は思わないはずだからだ。

まあ、それに見合うようなメリットがあれば別ではあるが、自国の攻防を考えればやはり有力なのはティトリリー様の方だ。


継承権第3ともなれば、国に残る可能性は低くなる。
となれば、同盟を結ぶ国に嫁がせるのがあり得る。



宝石とも呼ばれる姫であれば、グリニエル様が虜になってもおかしくはない。




その彼女が結婚の話を進めるためにわざわざロティスタディアからやってきたのだ。
私の胸は傷むばかり。

早くこの場から去りたい一心だ。


「…それでは、何かありましたらお呼びくださいませ。」

「ああ。
…あ、ルキアは君の元使っていた部屋にいるよ。その隣の部屋を彼が使えるようにしておいたから、迎えに行ってやってくれ。」



「…何から何までありがとうございます。」



そう言って私は、ルキアを迎えに歩き出した。






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