脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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婚約祝い③

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「す、すまない。せっかくのお祝いを中断させてしまって…。」

彼はシュンっとし、小さくなっている。
ルキアが花瓶にぶつかって割った時も、こんな感じになっていたなと庇護欲が湧く。



「…構いませんわ。
レオにはとびきりのお酒を用意しておきましたから、彼は気にしないです。」






「…。随分とレオッツォと親しいのだな。」



「あー…そうですね。
彼以上の男友達はいないでしょう。
さあ、入ってくださいな。」


彼は私が開けたドアからその部屋へと踏み入れ、辺りを見回していた。


「卒店となっても部屋はあまり変わらないのか?」


「ええ。まあ、次の子が使いますから…。」


グリニエル様は部屋を歩き、机に指を這わす。

「君がもう店にはいないと思うと、寂しくなるな…。」




「私がいなくとも、想い人様と仲良くなされば、私のいない寂しさなど感じないことでしょう。」


私はコツコツとその前へと進み、ベール越しにグリニエル様と目を合わせた。


「今日はなんの相談ですか?
ですから、とことん付き合いますよ。」



「っ…。」


にっこりと笑うと、彼の手が私のベール越しに頬へと添えられる。

そんな彼は眉を下げた後、ゆっくりと私のことを抱きしめた。




「君は本当に………
エミリーにそっくりだ…。」


「え…?」





その言葉を聞いて急に頭の中で整理が追いつかなくなった。


彼がレィナを大事にするのは想い人と似ているから…。
それなのに、ベールをかぶった私をと似ているから。と言ったのはどうしてだろうか。



まさか…


そんな期待が胸中渦巻く。




彼から数歩後退り、私はそのことに触れようと試みる。


「あ、あのっ…
エルさんの想い人様は…。」


「ん?」




「その…。エミリー…なのでしょうか。」






どう聞けば自然なのだろうか。

そう思いながらもそれを言葉にすると、廊下の方から何やら揉めているような声が響いた後、ドンっと建物が揺れるほどの音が鳴った。


「っ!」

「っ…なんだ!」

ガラガラと建物が崩れるような音もするが、この建物はそんなに脆くはない。
どこかの客が暴れて壁に穴でも開けたのだろうか。


そう思ったが、嫌な予感が拭えず、そのまま走り出した。



「っ…グリニエル様はここでお待ち下さい!」



「!」




私は急いで部屋の扉話を開け、ドアに隠れて廊下の様子を伺うが、すぐに隊長の声が聞こえて飛び出した。

「シェリー!」

「っ!」


シェリーに何かがあった、そう思ってすぐに飛び出ると、シェリーは気を失っているのか、大男に担がれていた。


「シェリー!」


隊長とレオの腰に剣があるのに抜かないのは、廊下ではそれを使える広さがないからだ。
そして隊長の魔法ではシェリーにも当たりかねない。

そのことを一瞬のうちに頭を過り、行動に移す。



っ」



グッと足に力を込めてその男に飛び掛かる。
するといつもとは比べ物にならない速さでターゲットに近付いた。


「っ。」


急所となる場所に次々と攻撃を当てていく。
すると3発目は腕により防がれ、そのまま回転させた腕に捕まった。



「くっ…」


掴まれた手を振り解こうにも、びくともしない。
そう思ってその手を握り返すと、その大男はやっと口を開いた。












『……可愛いお嬢さん。お名前は…?』


「っ⁈」






「レィナ!」


隊長の呼びかけと共に、その大男の顔が爆発する。


私とシェリーにはなんの怪我もないそのコントロールに、私は誰の攻撃なのかすぐに分かった。


「っ。」




『…そうか…レィナと言うのか。
…………ならお前に用はない。』




煙の上がる中、その攻撃を気にもしないその大男は、そう言った後、私の手を離した。



するとすぐに後ろへと飛び下がり、瓦礫を投げつけてきた後、壁に空いたその穴から外へと出て行った。



「…っシェリー!」


慌てて追おうとする隊長は、その大きな瓦礫に阻まれ、追うことができない。




「っアネモス!追って!」



アネモスの力は私の想像とリンクする。

それは私の魔力と想いからなるのだが、その時の私は自分の魔力の少なさを考えている余裕はなく、何がなんでもシェリーを見失わずに追うことだけをアネモスに伝えた。





「どういうことですか。
なんでシェリーがっ…。」





「……ひとまず城に行く。急ぐぞ。」



「…っ。」



シェリーの身に何があったのか、さっきの者は一体何者だったのか。色々と聞きたいことはあったのだが、隊長の余裕のない表情を見て、私はそれ以上何も言えなくなった。




「…エミリー。」

「……っ。グリニエル様…。
説明は後ほどさせていただきます。
今は、申し訳ありませんが、城へ…。」



「ああ。…分かった。」



今日のことで、グリニエル様には私が嘘をついていたことがバレてしまった。これでは愛想尽かされても仕方がない。しかし今は、シェリーの奪還が優先事項。


「グリニエル…直せるか?」

「粉々にされたわけじゃないから可能だ。
それより、店に彼女達を置いていくのか?」

「…ランドリフに声をかけてくる。
グリニエルとレオッツォは壁が治り次第城に向かってくれ。
ランドリフに店を任せた後、俺とエミリーで向かう。エミリーは騎士服に着替えろ。それなら1人でも着替えられるだろう。」


「分かった。」


「はい。」






王太子殿下に会う以上、ちゃんとした格好でなければならないが、そうであれば動きにくくなってしまう上、時間がかかる。
だから私は最後であろう騎士服に袖を通し、準備を整えてから城へと向かった。





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