脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

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案内①

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城に着くと、案内されたのはブルレギアス様の応接室だった。



「遅くなりまして申し訳ありません。」


「失礼します。」



「構わない。話はあらかた聞いたから、状況整理をする。座ってくれ。」


「はい。」




私と隊長は空いてあるその席に座り、ことの流れに耳を傾けた。







「まず、エミリー。」

「は、はい。」



「君の能力でシェリーを追っていると聞いている。もし場所が分かったら、話を中断してでも声をかけてくれ。」


「あ、分かりました。」




一番最初に声を掛けられたことに一瞬戸惑ったものの、その理由に私は頷いた。





「まずは昨日の話し合いに参加していなかったエミリーにも最近あったことを踏まえて説明が必要だね。
…事の発端はひと月前。
ロティスタディアとジョルジュワーンの国境沿いで、王女であるティトリリー姫が誘拐紛いの事件に巻き込まれた。」


「っ。」

ティトリリー様が拉致されそうになった。
それを聞いて勢いよく彼女の方を見てみたが、彼女は顔色変えずにその話を聞いていた。


「その件は、近くにいたレオッツォ・バリトンのお陰で阻止することができ、それを調査しているうちに、ジョルジュワーンで人攫いがあったことを掴み、こちらの国へと来たのだ。」


人攫い。
それはヴィサレンスの皇女であるミレンネが拐われた事件。あの事件を計画した者たちはもうすでに牢に入れられている。


「レオッツォが牢に入った者を見て回ったが、計画した者の中にティトリリー姫を狙った輩はいなかった。」


「…。」


「そしてそんな中、国内では行方不明者が相次ぎ始めた。
主に一般市民が多く、その中で貴族は2人だけ。それも下流貴族だ。」


隣にいる隊長が紙を見せてくる。
そこにはリストアップされた10名ほどの名前が上がっていた。
 

「見て分かる通り、全員の共通点は性別以外にがないんだ。だから苦戦している。」


「メアリーロゼ…。リタリー。ナタリア…。」


何かが引っかかる。
確かに会ったことはない人も中にはいるが、名前を口に出すと、あることに気付いた。


「この方々、愛称は皆ではありませんか?」


「っ!」


「先程、対峙した際、名前を聞かれたのです。だから名前に繋がりがあるのではないかと思ったのですが…。」


先程の大男が唯一口を開いたことと言えばそれだけ。
女性を拐うのであれば手を掴んでいた私も連れて行かれていてもおかしくはなかった。
しかし、用はないと離されたのだ。

名前に繋がりがあるとしか思えない。


「それならばエミレィナ様。エミリーと呼ばれているあなたがどうして連れて行かれなかったと言うのです?
ティトリリー…その名前も確かにリーと伸ばす音があるから納得はしますが、その後彼女は襲われることはありませんでした。
それはどう説明なさるのですか?」



「店内ではレィナと名乗っておりますから、対象から外れたのだと思いますが、2度襲われない理由は分かりません。」


「何か対象から外れる理由もあると言うのか…?」


「…。」



私の推測にティトリリー様が反応したが、謎は少し深まってしまった。














コンコン。


「失礼します。クローヴィスでございます。」


「入ってくれ。」


「お話中申し訳ありませんが、報告をしてもよろしいでしょうか。」


「ああ。丁度その話をしていたんだ。
連れ拐われなかった令嬢から話は聞けたかい?」



「はい。」



クローヴィスはコツコツと中へと入り、私たちが座る場所に向かい立つと、口を開いた。


「狙われたらしいキュリー嬢のお話ですが、その日は特に変わったことはなく、連れの者と共に買い付けをしていたようです。
そこで、少し背の高い男に『可愛いお嬢さん。お名前は?』と聞かれ、名乗ると同時に腕を掴まれたそうです。」



「やはり共通点は名前か…
もしかしたら誰かに愛称で呼ばれた時に聞かれて連れ拐われたと言う可能性もあるな。」



「そしてその後、もう一つ質問されたそうです。」


「何?」



名前を聞かれただけでは事件性は少ないからと、報告されることはまず無い。

しかしキュリー嬢の場合は腕を掴まれており、貴族という点からも放っておく事はできないため、こちらへ報告が上がってきたのだろう。


「『父親はいるか?』と聞かれたそうです。それに答えた後、その男はそのまま去って行ったと…。」



「父親?」




「っ。そうだ。あの時、確かにティトリリー様もそう聞かれて、いると答えております。」


「…うーん。そうか…。
それなら、条件は名前と父親の存在となるのか?
名簿の女性は皆父親はいないのか?」


「私の知る限り、皆そうです。」


「そうか…。」



今の段階では連れて行かれた女性の共通点のみ。それ以外は分かってはいない。早くアネモスからの連絡が来ないものか。そう思った。







「ティトリリーが狙われる心配が無くなったのだ。その格好をいい加減辞めたらどうだ?」


「?」


グリニエル様の言葉に、私は誰に言っているのか理解ができず、彼の方を見た。


「はぁ…もう1度狙ってくれた方が手っ取り早かったんだがな…。」


そう言ったティトリリー様は髪を結えると、手元からハンカチを出して口に付くグロスを拭い取る。

そのままゆったりとしたそのドレスを脱ぎ始めたかと思うと、綺麗な男性に変わった。



「え…?」



ストレートの髪が揺れ、目の前の彼は、私に笑顔を見せた。



「この姿でははじめまして。エミレィナ様。ロティスタディア第一王子、ゾゼダイル・ロティスと申します。」




「…え。あ…は、じめまして?」


「気付いてくれないから少し寂しかったな。結婚まで申し込んだところで少し気にかけて欲しかったんだけど。」


「えっと…そ…の…。
ティトリリー様がゾゼダイル様…で?」


どうなっているのだろうか。
ティトリリー様とゾゼダイル様は同一人物。
そう思って混乱した。


「待て待てエミリー。勘違いすんな。
ゾゼダイル様はゾゼダイル様だ。
ティトリリーはティトリリーで国にいる。
ティトリリーはこの人と違って聡明でフワフワしていて可愛いを形取ったようなもんなんだ。一緒にするな。」


「ちょっと待て。レオッツォ。
義兄弟になるから遠慮はいらないと言ったが、随分と生意気なことを言うじゃ無いか。」


「え。義…兄弟?」


「あれ…言ってなかったか?
俺の婚約相手。ロティスタディアのティトリリーだよ。」



「え…?
あれ…それじゃ、グリニエル様の婚約者は…?」


「ん?っ。」


「は?……あー、ったく。
そんな勘違いしてたのかよ。
めんどくせーことになってるとは思ったけど、それは終わってから本人に聞け。」


「あ…。」

そりゃそうだ。
私は何を口走っているのだろうか。

そう思っているとグリニエル様が口を開いた。


「え、エミリー。いつからそんな…」

そちらを向くと、同時に風が吹き通った感覚になる。それを受け取り切ってすぐに私は口を開いた。


「っ。ブルレギアス様!
アネモスが戻りました。
シェリーを連れた男は北上し、そのまま国境を抜け、北の森を抜けた後、そのまま…っ…」


「そのまま、ソリシエールに入りました。」




「っ。」

「ソリシエールだと…?」



「なんてこった。よりにもよって…」






ソリシエール。
そこは魔族が住む場所と呼ばれ、人が住む国とは区別された所。

そこに行った者はないが、そこに入ったものは帰ってこれないと言い伝えられている。




魔物とは違い、知能のある魔族は、とても厄介だ。だから人は魔族と戦ったりはしない。同様に魔族も人に干渉することはない。


そんな場所に連れて行かれたとなれば、誰を連れて行っても危ない。

行った事のない場所で、見たこともない魔族と戦わなければならないのだから、リスクはかなり高いのだ。




「…。俺は行く。」

隊長は腕組みをしてそう言う。
私もそれに続くように頷いた。


「俺も一緒に連れて行ってください。」

レオッツォはティトリリー様を危険に合わせた魔物を許せないようで、一緒に来ると言ったが、すぐに隊長に止められた。


「お前は残れ。国ががら空きになる。」


「し、しかしっ…」



「俺とグリニエルが行けば問題ない。
一刻を争う今、軍を用意する時間も勿体無い。」


「ケインシュア。焦り過ぎだ。落ち着け。」


「っ。くそっ…」





「まあ、確かにケインシュアの言った通りだ。
軍を用意するには時間が足りない。
クローヴィスの移転魔法で動ける人数は限られているし、連れて行かれた子たちも連れてこなければならないことを考えると、5で行ってもらうのがいいだろう。」



「5人?どう数えても4人だ。」


「……君たちの他にもう1人。
………土地に詳しい案内をつける。」



「案内…?」



「…入れ。」

困惑する私たちを他所に、ブルレギアス様は扉に向かって声を掛けた。
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