脚フェチ王子の溺愛 R18

彩葉ヨウ(いろはヨウ)

文字の大きさ
76 / 104

案内②

しおりを挟む

コツコツと鳴り響くその足音に後ろを振り返ると、シルバー色の髪をした綺麗な顔立ちの男性が立っていた。



「エミリー…あなた様の手を取れるこの日を、私はとても楽しみにしておりました。」

私の右側にしゃがみ、その手の甲にキスを落とした彼は、私のことを見上げたままジッと見ている。



とても綺麗な顔立ち。
しかし、こんな綺麗な知り合いなどいない。




「分からないかい?彼はだよ。」


「えっ…ルキア⁈
ルキアって猫の…?」


ブルレギアス様の説明に、私は驚きのあまり声を大きくし、どう言うことかと考えさせられた。


「…彼はそもそも猫じゃない。…魔族だよ。」



「え?魔族…?」


キョトンとする私の前で、彼はずっとニコニコと笑っている。




「どういうことです。ブルレギアス殿。私は何も知らされてはおりませんよ。」


「そうです、兄上。エミリーが男と…しかも魔族と共に暮らしていたならもっと早く教えておいてもらわないと…。」


「ほう。魔族は初めて見るが、人そのものだな…。」


各々不満やら感心やらで場が騒がしくなると、ブルレギアス様が左手を上げた。


「っ。」



「気付かないのが悪いでしょう。
彼はただ彼女に付き従っているだけ。
何も害などありません。
彼女のためなら手を貸してくれると私に約束したのです。」


「しかし…、魔族を信用できるのですか?
連れ去ったのは同じ魔族です。
共謀している可能性だって…っ。」


「…静かに。
…と伝えたはずです。ゾゼダイル殿。
魔族は1度忠誠を誓った者に忠実に従う種族。それを信じるしかありません。
さあ、ルキア…君の手を借りたいのだ。
返事を聞かせてくれるかい?」


「…。エミリーのお言葉を頂ければ従いましょう。」


「え?」


「エミリー。私はあなたの手となり足となります。盾だろうと剣だろうとあなたのお役に立てるのであれば何でもいたします。
さあ、私に命じてくださいませ。」


「っ…。」


どうしてそこまで…。
私は怪我をしていた彼を保護して少しの間共に過ごしただけ。
そんなに大それたことなどした覚えはないのだ。



「何かが不満、という顔だね。
エミリー。話してご覧。」


「い、いえ…ただ、私に付くのではなく、もっと強くて先陣を切るような方に仕える方が良いのではないかと思っただけです…。」


「…私はあなた様に命を救われた。
だからここにおります。
私が他に仕える者などおりません。
それは覆ることはなく、誰にも覆す事のできない事実でございます。
…改めて忠誠を誓いましょう。
私、ルキア・ロードはエミレィナ様の下僕となり、あなた様の一部となることを誓います。
…さあ、命を下してください。」




「っ………ルキア…。
私は、下僕は要らないわ…
だから従者としてお願いします。
私たちをソリシエールへ案内して、みんなを助ける手助けをして頂戴。」


「…。仰せのままに主人様。」





もう1度私の手にキスを落とす彼に、先程まで静かだった人がもう1度騒ぎはじめた。






「わざわざ手の甲にキスする必要などないだろう!今すぐ拭け!
それと、今まで猫だと偽ってエミリーと共に過ごしたことを謝れ!」


こちらを指差ししている手が震えるほどに怒っているのはグリニエル様だ。

今まで私はそれがただ妹を想う兄心からくるものだと思っていたが、先ほどもしかしたら恋心を持たれているのかもと期待してしまっているため、その反応をされたのは少しばかり嬉しかった。





「…何か問題でもありますか?
仮に目の前で着替えが行われようと、一緒に湯船に浸かろうと、一緒の布団で眠ろうと、それは猫の姿なのですから、問題はありません。」


「~~っ。問題だらけじゃないかぁぁっ!」



ルキアは猫の姿の頃からあまりグリニエル様とは折が合わなかったため、2人の言い合いは勝手にさせておく。


そんな2人を尻目に、他の6人で話を進めた。


「それではブルレギアス様、場所も分かった所ですし、早く準備を致しましょう。」


「そうだな。
一刻も早く人質の解放を優先する。
もし仮に戦闘になった場合、まずは人質の安全を確保し、国へ戻ってくるのだ。
ルキアが言うには城にいる魔族は15人。
クローヴィスは転移魔法で人質の解放をし、エミリーとルキアはそれの補助。
ケインシュアとグリニエルで前線に立つ。つまり、3手に分かれて動くようにするんだ…。いいね?」



「はい。」


「もし人手が必要な場合、クローヴィスが人質を連れて帰るときに言ってくれ。
そうでなければ何かあった際、一度で戻ってくることは難しいからね。」




「十分だ…。
軍で動いても守る物が増えるだけ…
俺は身軽の方が動きやすいからな。」


「信じているよ、ケインシュア。
みんなを頼む。」


「言われなくとも分かっている。」



まだグリニエル様とルキアの言い争いが収まらないまま、その会議は終わりを迎え、遂にソリシエールへと向かうこととなった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...